いつも通りに兄弟分二人を投げ飛ばし、私は高らかに勝利を宣言する。
クソ腹立つがこの能力もそこそこ使えるようになってきて、戦闘のできる誰かしらに成り代わっていればまぁ負けることはないので。
意識を飛ばしてしまったルフィをエースが背負い、私は姿を戻し隣を歩く。この時エース16才、ルフィと私が13才。旅立ちはもうすぐそこまできていた。
「にしてもよぉ、なんでミルーはそんなに強ぇんだ?ぜってぇおかしいだろ」
「それな。私が強いのはおかしい。それ真理」
「自分でもそう思ってんのかよ……。んでよ、相手の首、切り落とすのはやめとけ。わざわざ殺す必要ねぇだろ」
「ん?敵は殺してなんぼだろ?」
こんな会話をするのも初めてではない。
何ならついうっかり、グレイ・ターミナルで人攫いを先日チョンパしたところである。もち、エースもルフィもいる前で。本体だと微妙に力が足りなくて切り落とせないから豊久になって斬り落とすのだが、どうもその行為を二人は気に入らないらしい。
「俺だってヤベェ時は人を殺す、とおもう。でもよ、ミルー、お前は見境なしじゃねぇか。何でそんなに殺そうとするんだ?」
「だって敵ですし。生きてたらまた殺しにくるかもしれないでしょ?」
何当たり前なこと聞いてんだと首を傾げれば、エースは呆れたように深き息を吐いた。
実のところエースはまだ人を半殺しにした軽々はあるが、決定的な死に結びつける戦い方はしていない。なるべく殺さない、わけではないが、殺そうとして戦っているわけではないのだと思う。まぁ、そこが私と違うところだよね。
「私だって最初は殺すの躊躇ってたよ。ただそれだとこの能力が許してくれないだけで」
「はぁ?」
「殺さなきゃ、進めないこともあんの。私には」
初めて人を殺したのは、5歳の時。飛ばされた先の冬島で。いきなり飛ばされて戸惑う私は、鳥籠のようなものを抜けようとして死んだ。多分体が半分に切れたんだと思う。
そんで目覚めて二度目。死んだ痛みは覚えているのに、またしても同じように行動して死んだ。馬鹿は死んでも治らないのである。
三度目はそれを避けて走って逃げたが、キャーキャー喚いている海賊に殺されて、その次も同じように殺されて。いい加減死に戻りループしてる事に気づいたわけだ。
原因が何かわからなくてループを終わらす手段も分からなくて、それから何度か死に戻って。時には死にたくなくて誰かの命を奪って。手に残った感触に吐いてまた殺されて。ようやく見つけた法則がピエロみたいな人の死。大体その人が死ぬとリスタートだったから、間違いない。
殺されないように代わりに死んでみてもフーシャ村には戻れないし、ならどうするかって相手を殺すしかないって思うじゃん。
だから頑張って覚悟決めるわけ。人を殺すぞって。でもまぁ、何度やっても殺さずに殺されのは私だったけどね。弱いって罪だよマジで。
ならどうするって考えまくって、よし回復魔法できる夢主になろって考えて。ピエロが死に寸前に『エピスキー(癒えよ)』で無視やり治しわけ。まぁ、使うタイミングが悪くて殺されることも何度かあったけど、最終的には上手くいったし読んでてよかったハリー◯ッター!魔法最高!って死んだ目してただろうけどテンション上がったよね。
でもさ、そこでループは終わって帰れると思うじゃん。こん時体感三ヶ月くらいよ?救済成功!帰れる!って思ったのに帰れないの。なんで?
敵さんにバレないように頑張って、意識ない男背負って雪道あるいて。やっと洞窟見つけて一休みーって思ってたら驚いた顔した少年が現れて?なんか知らんけど何をした!って怒鳴られて。
我5歳ぞ?幼女だぞ?こいつ助けたの私だがぁ?とテイヤーと殴って威嚇するとそのまま倒れ込んだ。
えぇ、また厄介ごとかと頭を悩ませたけど、私は悪くないよね?
すぐに起き上がった少年に話を聞くと少年もなんか悪魔の実を食べたらしく?オペをするって言い出して?おう頑張れと、端っこで魚カジカジしながらオペ?とやらを見守った。
最後に気絶した少年を引き寄せてピエロと同様に地面に転がし、どうすっかなと考えていれば今度はおじさんが登場。助けてくれるらしいんだけど、私彼らの仲間じゃないんだが?ま、いいけど。
世の中ギブアンドテイク!と叫んだおじさんの言う事には頷けたし、いつまでここにいなきゃいけないか分からない私はそのまま居候させてもらうことにした。早く帰りたいけど、こればっかりはいつ帰るか分からないのだ。
炊事洗濯を5歳児にさせるのはどうなのかと思っていると先に助けたピエロの方がようやく目を覚まして、何度も私にお礼をいう。
なぜ私が助けたと思うのかと聞いてみれば、夢で見たと。
何回も死ぬ、私を。
えー、そういうことしちゃうの。めんどくせぇな。私は帰りたいから頑張っただけで、ピエロを助けるためにやったわけじゃないんだけれど。
なんて言ったところで聞き入れてはくれず、扱いがまるで恩人。ヤメテ。
とりま私のことはいいから少年の面倒を見てくれと頼めばそれに従ってくれたが、まるで神をみるかのような目で見てくるのが辛かった。くそ、こんな事に能力使ってない、と信じたい!
少年も少年で、起きたら私に怒鳴ったことあるくせにキラキラしたお目目で見てくるし、若干そん時の記憶を思い出したとかなんとかないとか?
ふざけるなや。信仰主なんていらん。
いあ!いあ!みるー!なんてすな!
私はただの5歳児なんだよ。目が死んだ5歳児。だからお家に帰りたい。と言ってもまだ帰れないぃぃい。イ"ィィィィイイイ!
毎秒のようにオウチカエリタイって唱えていたらすっごくピエロと少年が優しくなったが、どうせお前らはこの能力にかかってんだろ?信じてやらん。本心じゃないくせに。
おじさんに任された仕事を淡々とこなし、ドジっ子ピエロの世話と、本を読んで寝るのを忘れる少年の世話をして。オウチカエリタイと唱えて。
いつの間にやらピエロの膝上が定位置になったところで少年が喋るシロクマを連れてきた。
と思ったら、今度は大怪我をした子供二人を連れてきた。何だよお前主人公か?
ぱっと見『エピスキー』で何とかできそうだったけど、ここで私がなんかしていいことあんの?信仰されるだけじゃね?となって何にもしなかった。少年が医学齧ってたから何とかなったし、モーマンタイ!
けれどまぁ、ピエロに何とかならないかとかなりお願いされてしまったから、ちぎれた腕がちゃんと動くのを確認して『ゼロレイ(小回復)』をかけてやった。小回復だから、傷口がいくらか早く癒えるだけですけどね!へけ!
そんなこんなをしていれば、いい加減私の精神がおかしくなるわけですよ。
死にかけて?いや、何度も殺されて?崇拝されて持ち上げられて。お家にも帰れない。
SAN値ピンチです。ついにお家に帰りたいしか話せなくなった。
ぐずぐず泣き出すとみんな集まって慰めてくるけど、求めてるのはそれじゃない。私のお家。フーシャ村に帰してくれ切実に。
いい加減マックス発狂すんぞ!と息を吸い込みピギャーと叫べば、ぐわんと視界は歪み、目の前にいるのは驚いた顔をしたマキノさん。
え、今なの?何で今なの?どれ?どれで帰れたのぉぉおおお?
発狂してベソベソなく私を慰めるマキノさん曰く、一週間行方不明だったとの事。なんやそれ。私の時間かえちて。
けれどもまぁ、帰って来れてよかったけど強烈な経験でした。
「ってことがあってね、生きる為なら手段を選ばない私が出来上がった、と」
「────、おまえ、なんつぅ経験してんだよ。今は、平気なのか?」
「おにぃちゃんずが甘やかしてくれるので、平気ですかねぇ。でもまぁ、いつどこに行くか分からない能力でもあるから、殺す事に躊躇いはない。だから殺しても許してね!」
「……はぁ、そうなった理由は分かったが、俺らがいるときは無理に殺すなよ」
「なんで?」
「たとえ慣れたとしても、妹にんな顔させたくねぇ」
「──にぃちゃん、すきぃ」
エースにぎゅぅっと抱きついて、私はニマニマとする。
殺すのに慣れても、無情には慣れないのでね。
「はっ、これが家族愛?」
「そうだな、コレが家族愛だ!」
エースはわたしのにぃちゃん、これは決定事項であります。
え?おいてきた崇拝者たち?知りませんねぇ。