「あ、どもミルーです。ハム吉って呼んでください」
「──ネズミが喋った!?」
「シシっ、こいつおれのいもーと!好きに呼べってさ」
麦わら帽子の中からこんにちは。いつもニコニコあなたの隣に這いよるユメヌシ、ユメイノ・ミルーです。
うっかりフーシャ村から旅立つことになってしまった私は、我が兄であり弟でもある双子の片割れではない幼馴染の頭の上に住んでいる。
つまりは麦わら帽の中にな。
ルフィはあの日、もとよりフーシャ村から出る気のなかった私を旅に連れ出すにあたって三つの約束を交わした。そしてそれを守ることを条件で私は村から出たのである。
約束その一、私は基本人の姿にならない。
その二、私は基本戦わない。
その三、もしもの時だけ、私は戦闘する。
以上の三点のお約束。
その一は、私が既に人として生きることが困難だから。この能力は良くも悪くも人の感情や思想を歪ませ、それに伴ってルフィの今後のお仲間との関係に支障をきたす可能性がある故に。
だって夢主だよ?支部で検索すると大半恋愛に偏るユメヌシだよ?船内でイチャイチャするカップルを悪くは言わないが、ないと思いたいが自分が無意識にそうさせてしまう可能性があるのではと考えると正直言って気が滅入る。ゲロ吐く。そうじゃないと泣きたくなる。
だってあの大人なシャンクスがロリにはしるくらいよ?これ以上誰かの性癖を歪めるユメヌシになんてなってたまるか!
昔より能力を使いこなしてると思うが、無意識に垂れ流してたらただの迷惑なクソ野郎に成り下がってしまうではないか。
ルフィだって無意識なゴム人間なんだもの、私がシャンクスをロリに変えてしまったようにまた無意識にこの能力がやらかさない自信はない。故に基本動物になってりゃいいやと考えた。え?男主になればいいって?甘いな、世の中にはビーでエルなユメヌシを好む人もいるんだよ。色んな意味であかんて。
なので動物主。流石に動物愛・ズーフィリアの方はいないだろうと思いたい。なむさん。
その二はそのまま言葉通りの意味で。エースからお前は戦うなとかなり口煩く言われていたから、ルフィもそこは異論はなく。
何せ私、敵だと判断するとどうも歯止めが効かなくなってしまったようなので。テンション上げまくって首狩りにいってしまうらしい。どこの首狩り族かな?茹でてネックレスは作らないけど、絶対これもユメヌシ補正だよ!あーいやだ!
だって昔は戦うのも怖かったもん!でも
これって戦闘最強主設定では?望んでなくとも死にたくないと願ってしまった結果がこれなのかも知れない。だとしたらルフィ達が私に勝てないのもわかんね!ちくせう。
むやみやたらな殺生ダメゼッタイ。ワンピースは全年齢対象少年漫画です。
その三、はその二と関連していてどうしてもルフィがヤバめな時にだけ私も戦闘に出る。その二と矛盾してると思うやん?でも大丈夫!主にルフィとその仲間の命がすげぇやばい時、ルフィからお願いされた時に限る。ま、知らん相手が気絶したルフィに手を出したらそれはそれで首チョンパしますが何か?家族は守るものです。手を出したら死ぬ覚悟はして欲しい。家族は大事、私の精神的ストッパー。むしろルフィとエースに至っても全身全霊をかけて妹主固定にしてやるので、安心してやってる節もある。家族は恋愛しない、以上。
てなことを約束して海に出て、早速であったのが海兵になりたいらしい少年A。女海賊の下っ端になっていたところをルフィが助け、そのまま小船に乗り出航。そして私が麦わら帽子からこんにちはしたわけだ。話すハムスターに驚きやしたのの、世界は広いので話すハムスターもいると嘘をつけばあっさり信じやがった。大丈夫かなこの子。
船はゆったりと進み、海軍基地の街へとついた。まさか海賊王を目指すものか海軍基地に行くとは思ってやしなかったが、此処に来たかったのは少年だから文句はない。
私はどうせルフィが海兵に負けることなんてないだろうなと考え、帽子の中でお昼寝タイムとさせていただく。
グゥグゥと数時間ばっかし睡眠を貪っていると、不意にふわっと風を感じた。喧嘩でもしてるのかと目を覚ましてみれば、案の定ルフィがスーツを着た不良?をボコっていたいたのである。
流石主人公、手が早い!
はっきり言って私はルフィの仲間集めにも冒険にも、手を出す気はない。だってルフィはジャンプの主人公だもの、へんに夢主補正の私が関わってしまったらそりゃ悲惨な結果を生むに違いない。
ワタシ、ユメヌシ、シタクナイ。
昔はチマチマアニメを見ていたけれど、正直言ってそれもかなり昔の話なので、どこで誰が仲間になるとか覚えてないし。ルフィとのお約束があるからと悠々と堕落した旅を満喫させていただきます。つまりは今回もその次も、よっぽどのことがない限り私はノータッチ。そこんとこよろしく。
ルフィの戦いは淡々と続き、海兵モーガン親子はもれなくフルボッコだドン!やったね!
なんか戦ってる最中ルフィの頭から落ちそうになって大変だったけど、必死にしがみついていた。けどちょっとゲロった。あとでごめんなさいしておこう。
そんでもって記念すべきクルー一人めは海賊狩りのゾロさんになりました。さすがに海兵希望の少年Aは仲間にならないらしい。
モーガン親子が倒されたことにキャッキャする他の海兵達をみて、あ、恐怖政治でしたかと世界の縮小図を見たような気もする。
その後はぶっ倒れたゾロをルフィは引きずって運び、道中声をかけてきた女の子のお家へお邪魔する。どうやらそこでご飯をご馳走になるらしく、私も帽子から出てパンをもぐもぐさせていただいた。
「なんだお前、ペット飼ってんのか」
「いんにゃ、これ、いもーと」
「頭大丈夫か?」
ま、帽子の中からハムスターが出てくればそうなるわな。でも大丈夫、私は、話せるハム公なので。
「あ、初めましてこんにちは。ミルーです、ハム介って呼べばいいよ」
「──ネズミが喋った!?」
「なんてデジャブ!」
毎回このやりとりすんのかな、面倒だななんて思いつつパンをモグモグ。うまー。この小ささだと食費かからんし良くね?
ひたすらモグモグしていると家の周りに海兵が集まり始め、ついでに少年Aがルフィを殴って殴り返しての攻防を繰り返し私たちは海兵に追われる?いや、敬礼されてたから感謝されてはいたのか?ま、いいか。そんなこんなで島を出ることになったのである。
さて次は誰を仲間にするかなんて小船で話し合っていれば腹を空かせたルフィが鳥に攫われそれを追うゾロは溺れていた遭難者を拾い、そいつからかはなんともまぁ懐かしい名前が聞こえてきたのである。
なんとそれは、私のあの能力の被害者赤髪の友人、バギーさん。
会いたいような会いたくないような。昔お世話になったから遠目に見てみたいと思うが、アレと同じようにロリコンになっていたら申し訳なくて吐き気がする。
一人悶々としているとゾロは腹巻きに私を仕舞い込み、いつの間にかバギーがいるであろう島に着陸してしまったのである。
「ハム介、てめーはとりあえず此処にいろよ」
「ゾロさん、恩にきる!」
何せ私、ハムスターですので。人並みに歩けません故に。
とりあえず遭難者、もといバギー一味の下っ端達にバギーの元へ案内して貰えば、そこではすでに勃発中。相変わらず手が早い。そしてそこに乱入していくゾロも手が早いけど、激しく動かれると吐きそうになるのでご注意いただきたい。ごめん嘘、ちょっと吐いた。
「ルフィー!」
「あ、ゾロんとこにいたのか。帽子中にいねぇと思ったら」
「いや、攫われてったのそっちやん」
ルフィが閉じ込められている檻に入り込み、そのまま帽子の中にイン。どうせこのまま戦闘になんのだろ、黙っておこ。
バギーの悪魔の実の能力言っておいた方がいいかなと思ったが、そんなことを考えているうちにゾロが刺されてた。どんまい。
これじゃあもう戦闘開始だよなポケ◯ン並に出会って即バトルやんと思いつつ、私はルフィの頭の上で勝敗が決まるまで待機。
バトルに関与、絶対しない。
ワタシ、ユメヌシ、ナラナイ。
そんな決意を胸に、私は今日も今日とても麦わら帽子の中で過ごすのであるマル。