出張先で会議が終わって帰ってきた夜遅い時間。深夜の静かな鎮守府に帰ってきた提督は執務室へ戻ってくると溜息をついてソファーへと深く座る。
思い出す会議の内容は、どこの鎮守府が次の大規模作戦で囮となる被害担当になるかという話だった。
艦娘を兵器として合理的に考えて使おうとしている自分含む軍人たちに嫌気が差している。
提督は今まで考えてこなかった、人と艦娘の違いについて考える。
人は生まれてくるのに決められた目的はなく、自分の自由に人生を選べる。
だけど艦娘は殺すために生まれてきた。
艦娘は深海棲艦が出てから、どこからか現れて人類のために戦い、生きるために協力してくれる。
生まれてきた理由が決められ、レールのように人生が決まっている艦娘を提督は悲しいと考える。では艦娘に幸せになってもらうにはどうすればいいか?
秘書の子は先に寝るように指示していたため、提督は1人で幸せについてのことを何時間も考えてしまう。
そんなときに夜間哨戒へ行っていた陽炎が戻ってくる。
いつもなら夜間哨戒の報告は翌朝に報告を受けるが、今日は執務室に光があるから起きていると判断して陽炎がやってきた。
陽炎は夜間哨戒の戦闘結果について報告をしていたが、提督がこちらのことを集中して聞かず別のことに深く悩んでいる様子を見て報告を途中で切り上げて部屋を出ていった。
怒らせただろうかと提督が落ち込んでいると、少ししてホットミルクが入ったマグカップ2つを持って入ってくる陽炎。
マグカップを持って隣へと座ってくる陽炎の姿を見ていると、人と変わらないように思う。
だからこそ感情移入をしないために仲良くしすぎないようにしていたが、今ではすっかり距離が近づいてしまっている。
その弊害として女子供を戦場に送り出すのがつらく、このままでは自分がつぶれてしまうと感じた提督は陽炎に人と艦娘の違いは何かと聞く。
陽炎は考えながらホットミルクを一口飲んであと、艦娘は量産できる人殺しの機械だとひどく冷めた声で言っては提督を冷たく見てくる。
それにちょっとおびえてしまうが陽炎はすぐに明るい表情になり、作られても自分のやりたいことは選んでいると言った。私たち艦娘は人類を守り、特に提督のために役に立つのが嬉しいと言う。他には殺し合いをしている時が一番の充実感があると。
それを聞いた提督は、まさしく艦娘が作られた存在の証明となり、人の役に立つことでしか成り立たない悲しい存在だと思い、陽炎に自身の考えを伝える。
難しい顔をして悩み始める陽炎だが、5秒ほどしてから楽しそうに勢いよく立ち上がって部屋の中をぐるりと回り歩く。
生み出された理由、生きる目的は決まっているかもしれないけど、幸せに思っているならそれでいいと。燃料や弾薬、装備が充実していて私たちの隣に提督が笑顔でいることが幸せだと言う。
それから提督が構ってくれたときも嬉しいと。
提督は陽炎の言う幸せを作ればいいかと考えるが、提督の悩む姿を見た陽炎は提督の隣へと素早く戻ってくる。
無理に作り出した幸せより、幸せが少なくとも作られていない自然な日々が一番だと。人と艦娘の違い、不幸と幸福を重く考えすぎだと陽炎は提督へ言う。
そもそも提督が私たち艦娘の幸福と不幸を決めつけないでほしいと言い、幸せは個々人によって大きく異なるという説教をする。
それを聞いた提督は無意識で艦娘たちを、自分より下に、守るべき対象と見てしまっていた。見た目は幼くとも精神は大人であるのに。
多くの艦娘たちを指揮している身なのに外見だけで決めつけをしていた自身を恥じる提督。
陽炎は落ち込む提督の頭を撫でながら、私たち艦娘のことを考えてくれるのが嬉しいと言う。
それでも落ち込んでいる提督を見た陽炎は、閉められたドアへ足音を立てずに行ってドアを開けると、そこには哨戒に行った艦娘たちが盗み聞きをしていた。
その艦娘たちは、怒られると思ったのか焦ったように提督へ感謝の言葉を伝えてから走って逃げていった。
陽炎はあの子たちは最初から聞いていたけど、それでも好かれていてよかったねと言ってくれる。
それを聞いた提督は安堵の息をついた。