正義の国の怪盗   作:ルヴレ

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久しぶりの投稿です!


ナヴィなんとかさんはライバルポジらしい。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 泥棒は、金の入った袋を持って走り出す。外には、大量の警備員が泥棒を探していた。

 見つかるのも時間の問題だ、と泥棒は一度物陰に隠れながらも歯噛みする。

 

「や、泥棒さん。ピンチのようだね」

 

 ふわり。薔薇の香りが、広がる。泥棒は、耳元に響いた男の声に、肩を震わせた。

 まさか、もう警備員に見つかったのか。殺される前に、自首をするしかないのか。怖がる泥棒に、男はくすくすと笑った。

 けれど、男の格好はとても警備員には見えない。全体的に黒を身に纏い、顔を仮面で隠しているその容姿は、どう見ても「こちら側」にしか見えなかった。

 

「安心して。俺がお前の代わりに追いかけられてやろう。その間に、君は逃げるんだ。

 ほら、早く。見つかってしまうだろう?」

「え……」

 

 男が仮面から唯一出ている口元を、妖しく緩ませる。そして、目にも追えないスピードで、物陰から出ていった。

 

「ご機嫌よう、みなさん。そして、素敵なショーへのご招待、ありがとう」

「お、お前! 何者だ!」

 

 くるんとターンしながらうやうやしくお辞儀して見せる男に、警備員たちは警戒した。

 男は、一枚のカードを取り出す。それはまさしく、さっきの泥棒が盗んだ金の代わりに置いてあったものだった。

 

「何者……? ふふ、簡単なことさ。

 

 君たちの追っている泥棒さんを操っている──ボス、とでも言おうか?」

 

 男がそう言ってカードを投げたのを皮切りに──警備員たちは一斉に男を追いかけた。

 

 泥棒の男は、呆気に取られながらも、尻尾を巻いて逃げ出したのだった。

 

 

 

 

 

「あの男、早い! くそ、追いつけない……!」

「ふ、俺と鬼ごっこでもするつもりか? 悪いが、俺はお遊びに付き合うつもりはないんだよ」

 

 男は、マントを翻しながら、あらゆるところを足場にして、ものすごいスピードで駆けていく。

 声は、男性にしては、やや高めのアルト。その素顔は、仮面をしているせいで、よく見えない。夜の黒に紛れたマントに、白っぽい金髪が、異質な存在感を醸し出している。

 

「そんなに余裕ぶってて大丈夫? あたしに捕まるわよ?」

「おや、随分と華麗なお嬢さんだ。君は確か……棘薔薇の会の、会長か」

 

 怪盗は、仮面に隠れていない口元の口角を上げた。挑発的な笑顔だった。

 ナヴィアも、自然と挑発的な笑みになる。

 

「悪いが、俺はやりたいことがある! 今は残念ながら、君に捕まるわけにはいかないな」

 

 怪盗が、何かを握るような動作をする。その途端……大きな爆発が巻き起こった。青い炎が、ナヴィアの服の端を燃やす。ナヴィアが爆発の勢いを生かして、下がった時には、怪盗はいなくなっていた。

 まるで身代わりとばかりに、一枚の紙が落ちている。

 

「美しいお嬢さん、また近いうちに俺たちは再会するだろう……ね」

 

 ナヴィアは、薔薇の添えられた手紙を見て、険しい顔をしながら、困ったように笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「な、ナヴィなんとかさんだぁぁぁぁ!!!」

 

 ワープ先の自室で、さっさと衣装を早着替えで脱いだ私は、声が聞こえないように顔をクッションに埋めて、真っ先に叫んだ。

 ……今回、初めての怪盗としての活動を終えたが、まさかの逃げてる途中にナヴィ……なんとかさんに遭遇した。

 ナヴィ……なんとかさんは、前世の友人の最推しのキャラだ。棘薔薇の会と言う、何でも屋みたいな会のボスらしい。

 

「なんとか逃げれたけど……バレてないよな」

 

 ちなみに最後にばら撒いた手紙は、いつか現れるであろう、特巡隊隊長のシュヴルーズ用に書いた手紙である。なんで書いたのかと言うと、かっこいいからだ。

 いや……だって、かっこいいじゃん。こう……警察と怪盗みたいな関係。「あいつだけは私が絶対に捕まえてやる」みたいなこと言われる怪盗、よくないか? 

 

 と思って挑戦状的な感じで書いたんだけど、結局ナヴィなんとかさんに渡す羽目になった。

 

「それにしても、あのセリフ毎回言うのか……。印象付けのためにやってるけど、恥ずかしくて死にそう……」

 

 ちなみに、私が言ってた「ご機嫌ようみなさん……」みたいなセリフは、全部台本がある。咄嗟にキザな台詞なんて、出てこないに決まっている。

 あのセリフ、言う意味あるのか、と思うかもしれないが、怪盗が基本的に終始無言で、時々「ひぇっ」とか攻撃が掠るたびに言ってたらダサい。

 そう、カッコいいから言っているだけである。カッコいい怪盗になるため、恥ずかしさを堪えてカッコつけてるのだ。

 ────一応、ロゼというのがバレないように、性格を変えている、という理由もある。流石に、素顔を見られた時、バレないのは難しいが、性格が違ったら「本当にロゼか……?」くらいには思ってくれることだろう。

 

「ふぅ……それより、服を隠さないとなぁ」

 

 私は、丁寧に畳んだ服を、そっと自室のベッドの下に隠そうとして……やめた。よく考えたら、この部屋も時々掃除が入る。ベッドの下は間違いなく掃除されるだろう。

 

「やっぱここかぁ」

 

 私は悩んだ結果、クッションカバーの中に、入れることにした。ここなら、触られても、普通のクッションよりちょっとゴワゴワしてる、くらいにしか思われないだろう。これでバレる心配はほとんどないし、安心だ。

 

「でも、元素を使ったせいで……ゲホ……胃、胃が……」

 

 私がさっき、ナヴィなんとかさんに会うまで頑なに元素を使ってワープしなかった理由が、これである。

 元素を使うと、胃がクッソ痛い。神の目は胃の中に入れちゃダメだ。絶対。

 私はかっこいい顔の化粧を落として、そのままベッドに横になった。怪盗……思ったより重労働だが、リネリネ死亡回避のためだ。頑張らなくては。

 

 私は、血を吐きながらベッドに横になった。

 

 

 

 

 

 

 

「ロゼっ! ロゼっ!」

「え!? な、なんだ!?」

 

 朝起きた瞬間に、耳元で爆音で叫ばれた。

 私は何かあったのかと、勢いよく飛び上がった。

 

「……よかった。生きてた」

「り、リネット〜。どうしたの〜? いきなり叫んで」

 

 どうやらリネットが、叫んでたらしい。生きてたって……私が死んだとでも思ったのだろうか? 私は元サーカス団員なだけあって、丈夫なんだけど。

 あ、そうだった。私病弱設定で、過ごしてるんだった。

 

「どうしたの……じゃない。こんなに血を吐いてたら、誰だって心配する」

「血を吐く……? ────あっ」

 

 私はリネットが指した部分に、昨日元素を使ったせいで吐いた血が広がっていた。しかも、私の頭部くらいのところだから、頭から血が出てるように見えなくもない。

 うん、心配するのも当たり前だ。私だってもし、リネットがこの状態で寝てたら叫ぶ。

 

「ごめんなさいね〜。心配かけたかしら?」

「──心配した」

 

 リネットは、私の服の裾を掴んで、呟いた。……あまりにも妹属性が、強すぎる。可愛い。

 リネットの頭をニコニコしながら撫で回した。驚いたのか、猫耳がピクリと動いた。ケモナーではないが、思わず耳を触りたくなる。

 

「……そろそろ、朝ごはんの時間。あと、今日はロゼも仕事じゃなかった?」

「あ、そうだったわね〜! すっかり忘れてたわ〜。千織さんに怒られちゃうところだった!」

「ロゼは……無理に仕事をしなくてもいいと思う」

 

 リネットは、心配そうだった。確かに血を吐いてはいるし、胃は痛いが、それだけなのだ。しかも、理由が自業自得だし。

 でも心配してくれると、ちょっと嬉しいな。私の友達情報だと、リネットは死んじゃうみたいだし、余計に救済をしたくなる。

 

「ふふ、心配してくれてありがとう。でも平気よ〜! この病気だって、自業自得なの。だから、仕事くらいはしないと。私もみんなの役に立ちたいもの〜!」

「……自業自得? そんなこと、ないでしょ。ロゼは……何も悪いことはしてない。リネからも、そう言われなかった?」

 

 いや、悪いことしてるから!! 自分からなんだこれうまそう、とか思って、神の目を飲み込んでるから! 

 なんて言えない。病弱キャラでしばらくはやっていくつもりだからだ。救済ができたら、怪盗のこととかも打ち明けて、素直にメロピデ要塞に行くつもりだが、それまでは言えないのだ。

 

「……この話は、終わりにしましょう?」

「ロゼ」

「そろそろ朝ごはんでしょう〜? それに今日はお仕事があるから、早く支度しないと。ね?」

 

 咎めるように、リネットは私の名前を呼ぶ。けれど、バレるわけにはいかないので、私は話を無理やり終わらせた。

 リネットは、複雑そうな顔をして、どこか悔しそうに目を下に向けた。罪悪感がすごいけど、仕方ない。でも、今度からは自業自得とか、言わない方が良さそうだ。

 部屋から一緒に出るように促しても、リネットは立ちすくんだまま動かない。私は困って、リネットの腕を弱い力で引っ張った。

 

「リネット、朝ごはんは……」

「ロゼは、今まで病気はどうしてたの。ここに来る前は」

「…………えっ」

 

 ちょっとまってそれは聞かないでっ! 

 叫びたくなる気持ちを堪える。私はここに来る前は、神の目を飲んでないから、当然血なんて吐いてなかったのだ。だから、どうしたも何もない。元気にサーカスをしていたのである。

 

「あー、特に(病気じゃなかったから)何もしてなかったわ〜」

「…………やっぱり」

 

 やっぱりって何!? え、も、もしかして、神の目飲んだこと、リネットにはお見通しってこと!? 

 それは困る。元素を使えたらファデュイのエージェントに、されるかもしれない。私はリネリネ救済をしたいのだ。そんなことをしている暇はない。

 

「……リネット。このことは、黙っていてくれないかしら〜。あまり、知られたくないの」

「うん、安心して。リネにも言わないから」

「ありがとう、助かるわ〜!」

 

 やったぜ。

 リネットは、真剣な顔で頷いてくれた。リネットは、約束を守ってくれそうだし、情報が漏れることはないだろう。

 私はふぅ、と大きく息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「や、泥棒さん。逃げ切れたようで、何よりだ」

「ひっ……! あ、そ、そうか。この前の!」

「しーっ。ふふ、声が大きいよ。また追われるのは、君も嫌だろう?」

 

 私はこの前の泥棒から、少しでも何か情報をもらうために、夜中に部屋を抜け出して、泥棒のいる場所までやってきた。

 安心させるように、仮面の下の口元を緩ませて、口元に人差し指を当てた。すると、泥棒が頭を深く下げた。

 それはもう、地面に這いつくばり頭を地面に擦り付けるレベルの……つまり土下座だった。

 

「この前は、本当にありがとうございましたっ! そのおかげで、俺の母さんの薬を買えてるんです! あなたは命の恩人だ! 俺になんでも言ってください! なんでもしますっ!」

「……はは。そ、そ、そんなに畏まらなくてもいいさ」

 

 な、なんか思ったより事情が、重そうー……。私はどうすればいいか困ってしまった。ここからは台本がないから、全部自分でセリフを考えなくてはならない。

 

「俺は、情報が欲しいんだ。だから、君の持ち得る情報を、全て教えて欲しい。どんなことでもいいさ。でも、できたら「水」についての情報が欲しい」

 

 確か、友人はリネとリネットの話をした後、水と言った途端に号泣していた。きっと、水でリネとリネットは死んでしまうのだろうと私は予想している。水の国だし、人魚姫みたいに泡になって消えちゃうとか、ありそうじゃない? 

 でも、水に触るな、とかはどう考えても言えないし、二人とも今の水に触っても平気そうだし、何か変な水でも開発されるのだろう。フォンテーヌは化学とかも、すごく発展してるし。ありそうな話だ。だから、水についての情報を集めているのだ。

 

「水……分かりました! 水の情報をたくさん集めます! そ、それで、もしよければ……あなたの仲間に加えてくれませんか!?」

「ありがとう……って、なかま?」

 

 なかま……なかま……え、もしかしてチームとかそういう意味の仲間!? 

 もしかして、私が犯罪組織のリーダーだと勘違いしてないか? 違う、私は孤高の怪盗である! 

 

「俺は基本的に一人で動いている。仲間は今のところ、いないな」

「無理なお願いだとは、分かってます! でも、俺、あなたの役に立ちたいんです!」

 

 あー、これ勘違いしてないっぽいなぁ……。でも、どうしよう。怪盗って、私の中では孤高のカッコいい存在なんだよな。群れるのはちょっと違うって言うか……。

 うーん、普通に考えたら、一人よりも二人の方が調査も早く進むかな? この泥棒さん、そんなに運動神経は無さそうだったし、情報係とかになってくれたら、私も楽だ。

 

「そこまで言うのなら、いいだろう。君には、俺の情報係として動いてもらおう」

「いいんですか! ありがとうございます! 薔薇の怪盗さん!」

「…………ばらのかいとう?」

「はい、薔薇の怪盗って呼ばれてるんですよ! 知らなかったんですか?」

 

 知らねーよ!! もう二つ名みたいなの流れてるの!? 

 薔薇の怪盗ってなんだよ……。私、どんな名前で名乗るか色々考えてたのに。まだ思いついてないだけだったのに……。ガッカリである。

 ガッカリなのはなるべく顔に出さず、私は優雅にくすくすと笑ってみせた。

 

「ふふ、そう呼ばれていたとは、知らなかったよ。君は情報に詳しいんだな。

 さて、俺は水に関する情報を集めるため、君のような犯罪の初心者を助けている。君は、犯罪をしそうな人物の情報と、水に関する情報を調べてくれ。報酬のモラは、次に支払おう」

「も、モラ!? そんなの、平気ですよ!」

 

 私はようやく台本に近い話の流れになって、安心した。私はなるべく怪しい感じの笑みになるように心がけ、暗記した文章をちょっとだけ変えて、話し出した。

 

「俺はお遊びでこんな真似をしているが……君は違う。病気の家族がいるんだろう? そして、その治療のためにはモラが必要だ。

 遠慮なんて、する必要はないさ。俺はここで何の代価も払わない、なんてことはしない。俺の美学に反するからね」

「怪盗さん……」

 

 感動したように、潤んだ目で見てくる。そんなふうに尊敬の目で見られると、結構照れる。実際のところ、私は犯罪者を助けたので普通に犯罪者なのだが、すっかり頭から抜けそうだ。私は照れたのを誤魔化すように、咳払いした。

 

「さて、次は一週間後に、同じ場所でまた会おう」

 

 私は一旦、離れたところにワープした。

 ワープした時に出た青い炎を、すぐ消化する。

 

「よし……家まで繋ぐか……」

 

 どうして、直接家に繋がないかと言うと、室内にワープするのは、めちゃくちゃ集中力がいるからだ。壁が一枚あるだけでも、ワープするのが大変である。この前のワープは、ペラペラ話している間や手紙を投げつけて驚いた隙にワープできたのだが。

 

「──あ、あんた! あの時の!」

「え…………あ、おや。まさかここまで早くお会いできるとはね」

 

 ちょっと待ってくれー! なんでワープ先にナヴィなんとかさんがいるの……!? 

 なんとか平然とした態度を装っているが、内心は心臓がはち切れそうだ。ナヴィなんとかさんは、傘を構えて私に何かを放ってくる。

 強い岩元素の気配。私は慌てて片手剣を逆手持ちにして構えて、空中で、一回転しながら避けた。

 

「残念、避けられちゃった?」

「随分と物騒なご挨拶じゃないか。美しいお嬢さんを傷つけるのは、心が痛むが……俺も捕まりたくはないのでね。せいぜい抵抗させてもらおうか」

 

 ペラペラと捲し立てている間に、テレポート先を自室に設定する。

 けど、ナヴィなんとかさんが、猛攻を仕掛けてくるので、全然集中できない。この前は、攻撃を仕掛けて来なかったので、早く繋げたのだが。

 

「…………仕方ないな」

 

 仕方ない。小刻みにワープを挟みつつ、逃げて距離をとってから家までワープしよう。

 ちょっと明日は胃がとんでもなく痛くなるけど、背に腹はかえられない。

 私は剣でナヴィなんとかさんの攻撃をいなしながら、青い炎でナヴィなんとかさんを攻撃する。けれど、ナヴィなんとかさんは、やっぱり強い。全て華麗に避けられてしまった。

 ……うん、無理だこれ、勝てません。逃げよう。

 私は一旦近くの曲がり道にワープ先を設定して、ワープした。

 

「────消えた!?」

 

 ナヴィなんとかさんが、驚いて私を探している隙に、家の中になんとかワープ先を繋げる。

 

 

 

 一度炎に包まれて、瞬きをした間に、私はいつもの部屋に戻っていた。私は安心してへなへなとベッドに座り込んだ。

 

「はぁー……。ようやく逃げ切れた。ナヴィなんとかさん、神の目持ってたのか……」

 

 神の目を持っているなんて、予想外だ。私は元素を使いすぎると胃が物理的に痛むから、殆ど神の目なんて持ってないようなものだ。そのせいで、絶対勝てない。だから、ナヴィなんとかさんにはなるべく遭遇したくない……のに。

 手紙を渡したせいなのかわからないけど、めちゃくちゃ「絶対にあんたは捕まえる!」みたいな勢いを感じた。

 ……あんな手紙、渡したのは失敗かもしれない。でもこの前は、あの手紙が囮になったおかげで逃げ切れたし、文句は言ってられない。

 

「私……ナヴィなんとかさんのライバルポジになってない? いや、でもそれいいな」

 

 私はニヤニヤしながら怪盗の服を、クッションカバーの中に押し入れて、痛む胃を抑えた。

 ライバルポジも悪くはないだろう。カッコいいし。ま、それでもし捕まったら全て水の泡なんだけどね! 私は、壁に向かって無気力に笑った。

 おっと、そうだ。今日はこのまま寝ることはしない。またリネットに心配されるわけにはいかないのだ。咳をしながら、ある程度血を洗面台に吐いておく。

 なんか、これに慣れてきた自分が悲しくなってくる。

 

「……(前世の)お父さん、お母さん、ごめんなさい……。こんな(怪盗なんてやってる、中二病みたいな)子でごめんなさい……」

 

 鏡に向かって、前世の家族に謝っておく。転生したのでもう会えないが、育ててくれた前世の家族に、申し訳ない。多分もっとまともな職に就くと思ってたことだろう。それが今、犯罪者に手を貸す、というお先真っ暗なことをやっているのだ。しかも自称怪盗。中二病と言われても、何も言い返せない。

 

「……ん?」

 

 なぜか、部屋の扉に気配を感じたので振り向く。けれど、誰かが急いで通り過ぎただけのようだ。全力で走っているような、足音が聞こえた。

 

 私はグッと唇を強く引き締めた。謝るのは済んだ。もうこれ以上、マイナスに考えるのは辞めだ。これから、たとえ牢屋に入れられようとも、犯罪者に裏切られて殺されようとも──私は後悔しない。

 私の行動がほんの少しでも、リネとリネットの人生を変えられるのなら……私はそれだけで幸せだから。




※リネとリネットはそもそも(今のところ)死にません。
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