バーサーク族。プレデターの世界で支配者階級に位置する部族。
その部族にあるプレデターが生まれた。
そのプレデターは大事に大事に育てられ、愛情を深く与えられた。父や母、そして周りにいた従えられた下僕達によってそのプレデターは何不自由なく暮らし育っていった。
そのプレデターは年齢の割には大きく育ち、強くなった。そして成人の儀式に挑む事になった。
成人の儀式とは
それをそのプレデター、ブラックと呼ばれたプレデターは齢14にして挑戦した。
そして、彼は見事にゼノモーフを討ち取り、プレデターの世界で史上最年少で成人の儀式を突破するという偉業を成し遂げた。
何不自由なく育てられたプレデターがだ。
それから彼の人生は歓喜に染まった。金は父や母がくれ、何か言えばそれは絶対に叶えられた。
自分の船を買ってもらい、親が厳選した狩場で獲物をごまんと狩った。そしてトロフィーを下僕に作らせ部屋に飾った。
なんと楽しい生活だ。
なんと豊かな人生だ。
だが、彼はそれで満足できなかった。
獲物は沢山狩った。だが遠くからプラズマキャスターを撃てば終わりだ。つまらない。
だから自分で作る事にした。
親に金を出させて星を手に入れた。まだ誰も手をつけていない星だ。大昔の戦争で墜ちた船があるくらいでそれ以外は自然が広がるだけで何もなかった。
まずそこに近場から捕獲した野生動物を放し狩猟した。これはすぐに飽きてしまった。
次に彼は知性ある動物を捕獲し放した。楽しめたがスリルが足りなかった。
次に知性と理性を持つ種族を捕まえ放した。これまでにない快感を覚えた。
そして、さらなる快感を得る為同族に手を出した。
部族の力を用いて誘拐し殺した。掟?禁忌?そんなものはどうでもいい。ゼノモーフを殺す時に使った麻酔が役に立った。アレを使えばどんな屈強な狩人でもたちまち深い眠りについてしまう。それで猟場で吊るし弱らせ狩った。
なんと素晴らしいかな人生。ブラックは遂に人生の最高潮へと達した。
だが、これを自分だけのものにするなんて勿体無い!と彼は考えた。親しい友人や懇意にしている者を絶対に口外しない事を条件にして呼び共に狩った。
そして、彼はある時新たな獲物を探す為に部族のデータベースをクラッキングし、とても興味深い情報を得た。
【アヌ族:成人、名:エイペックス、成人:20、身長:320cm、実績:特になし…】
アヌ族と言えば部族にいるプレデターの数が極端に少ない部族で、偉業を成した者が少ない事で有名な部族だった。その他の部族の間で【弱小部族】とまで云われている部族だ。
そんな中で最近成人になったプレデターを見つけた。まだアヌ族には手を出した事はなかった。よく狙っていたのは数だけは無駄に多いクラシック族だった。
いつも通りやれば何も問題はない。弱らせ、逃し、ジワジワと追い詰め狩る。
そして、彼らはエイペックスを見つけて攫った。それが全ての終わりの始まりとも知らずに。
ブラックはリストブレイドを振おうとした腕を誰かに止められた。腕を掴み止めた腕はクロークで見えなかった。
「そこまでだ」
声がすぐ横でする。
「てめぇ!誰だ!?」
ブラックが吠えるとその姿が顕になっていく。
そこに現れたのはブラックよりも大きく筋骨隆々で無骨なマスクを被ったプレデターだった。
「俺はアヌ族のスカー」
「アヌ族だとぉ!?邪魔すんじゃ…ねぇ…!?」
ブラックは腕を振り解こうと動かすがびくともしない。ノヴルを離したその手で離れようとスカーの腕を掴み動かしても無理だった。そして骨が軋む音がする。
「逃げるんだ。あっちに船がある」
「え、え!?あ、ありがとうございます…!」
「て、てめぇ!勝手な事すんじゃねぇ!殺す!」
ブラックはそう言って身体をスカーに向けて至近距離でプラズマキャスターを放とうとする。
しかし、そこでスカーの空いた右腕が微かに動いたのが見えた。
フィンッ
「あ?」
地面に何かが落ちた音がした。ブラックが下を見ると自身の愛用していたプラズマキャスターの砲身が根元から綺麗に切られ落ちていた。
(なにぃ!?こ、こいつ!今の一瞬で──!)
スカーを見ると右手に6枚の刃が展開されたシュリケンディスクを持っているのが見えた。それを、手首を軽く振い刃を収納して腰帯につけた。
「てめぇぇぇぇぇぇ!!!」
ブラックが指を伸ばし、指先に伸びた鋭い爪を刺そうとスカーの顔に向かって動かそうとすると。
「やめておけ、これ以上恥を晒すな」
スカーがこう言い、ブラックの腕をまた掴む。そうして両腕を掴まれたブラックは完全に動けなくなってしまった。
「クソがぁぁぁ!!」
離れられる気配がない。スカーに向かって蹴りを放つが大木を蹴っているかのようで重く硬かった。
スカーがブラックのマスクの目を覗き込み言う。ブラックにだけ聞こえるような声で。
「お前は手を出してはいけないものに手を出した、我らアヌ族の大狩人にして大勇者。頂点の名を冠するただ1人のプレデター、エイペックスさんに」
そして、ブラックは後ろから強大な殺気を感じた。
「ヒィッ」
ジワリ…と汗が出てくる。そして悪寒がする。
これが死の恐怖だとでもいうのだろうか?まだ自身の両腕を掴むスカーというプレデターの方がマシだ。だが、一体俺の後ろにいるモノはなんだ?なぜこんなにも気配を感じるんだ?と震えながらブラックは思った。
ブラックはゆっくりと振り返る。
そこには森があった。ノヴルと人間達が出てきた森だ。
そして、音がした。
ジャリ…ジャリ…
足音だ。
森が静かになった。
風が止んだ。
そして、森をかきわけ大きなプレデターが出てきた。
「スカー」
「エイペックスさん」
「久しぶりだな、成人式以来か」
「はい、会えて嬉しいです」
「なぁスカー…絶望って知ってるか?」
「え?」
時は遡りエイペックスがキャンプに向かっている途中……
「君は!!!」
俺の目の前に現れたのはプレデターのガントレット、マスク、アーマープレートを纏い、ゼノモーフの尻尾を加工した槍を手に持つレックスだった。
「レックス!」
「久しぶりね、エイペックス」
レックスがマスクをずらし俺を見る。
成人の儀式でゼノモーフを倒しスカーを助け、俺の事も助けてくれた。そして狩りを成し遂げた事によって人間からプレデターになったレックス。成人の儀式後はスカーと共に星々を巡る旅に出た。
「そうか!スカーと一緒に来たんだな」
なんて勇ましいプレデターになったんだ!見違えた。俺が思わずスピアを伸ばしてしまうくらいには気配が強かった。
だが、俺は少し急いでいる。レックスといえども今俺を止める事は許せない。
「レックス…再会は嬉しい、だがそこを空けてくれ。俺は行かなくちゃならない」
「わかってる。ヤツは今スカーが止めてくれてる。私は伝言を頼まれただけ」
「伝言?」
「あなたが助けたかった人間は皆無事…。それだけ、さあ行って!」
「おお!」
良かった。間に合ったんだな。
実は休息した部屋から出る直前、ガントレットに通信が入った。聞き取り辛かったがスカーからだった。
スカーが来てくれることを俺は知り、俺はノヴル君とロイス達をキャンプまで向かわせたんだ。ただ、間に合うか分からなかった。スカーの船がこの星に入る直前、妨害にあったからだ。その内容はよく分からんが、バーサーク族とかいう奴らの警備隊に囲まれたらしい。なんだよバーサーク族って。
そして俺は怒りに支配され、あの鳥を操作していたプレデターを始末するのに時間がかかり急いでいた。
本当に良かった。もし、ノヴルやロイス達が死んでいたら俺は…どうにかなっていたかもしれない。
「ありがとうレックス」
俺はレックスに感謝を告げキャンプに向かって走った。
森に入り木々をかき分け進むとキャンプが見えた。
そして、奴がスカーに捕まっている。
「スカー」
「エイペックスさん」
「久しぶりだな、成人式以来か」
「はい、会えて嬉しいです」
「なぁスカー…絶望って知ってるか?」
「え?」
スカーは知らないだろう。此処で何があったか、捕まった者達がどんな目にあったか、俺の船がぁ!!!!!
「そいつを離せスカー、そいつは俺の獲物だ」
「分かっています。その為に待っていたんですから」
「そうか」
俺が前に出るとスカーが奴の手を離す。
「さっきから何を言ってるか分からねぇーがてめぇら俺様が誰か知ってるのかぁ!?バーサーク族のブラック様だぞ!お前らなんか俺様の力で……」
スカーに離された瞬間何かわちゃわちゃと吠えてやがる。
奴は後ろにいるスカーに飛び掛かろうとするがスカーにまた腕を掴まれそのまま投げられる。そして俺の前にやってきた。
「立て、武器を出せ、戦いだ」
俺は奴にそう言った。
「あぁ!?何言ってんだぁ!?クソが!!」
奴がリストブレイド伸ばし向かってくる。
俺は奴のリストブレイドを手で掴んだ。そして力を加えへし折る。
「なぁ!?」
へし折ったリストブレイドを投げ捨て、奴を手で前に押した。防ぐ間もなく尻餅をつき倒れた。
「立て、戦え」
立ち上がり俺に拳を突き出してくる。
奴は俺の身体、脇腹鳩尾に次々とパンチを放ってくる。
(クソォ!なんて筋肉だ!)
「なんだマッサージか?」
そう言うと、奴は腰帯から注射器のような物を取り出した。
「ヒャハァ!!」
そしてまた俺に向かってくる。俺は何もせずに奴の攻撃を受けた。
鋭い針が俺の脇腹に刺さり何かが注入されていく。なんだ?毒か?
「眠っちまえバカが!」
眠れ?そうかお前はこれで俺や他のプレデターを眠らせ攫ったのか。
だが、俺は眠らない。
「なぁ!?なんで眠らない!?ゼノモーフ用の麻酔だぞ!!」
「あのなぁ…もう経験済みなんだよ」
極限サバイバルで見境なしに食いまくってたら、こういう毒を持った生き物や草が沢山あって何度も死にそうになった事がある。だけど、次第に食べれるようになって最終的に毒は俺に効かなくなった。毒を持っているものほど味が良くてなぁ…食えば体中痺れて動けなくなったり、1ヶ月下痢が続いた事もあった。大変だったな…
だがそのお陰か知らんが俺は毒に強くなった。くらった事のない毒でも一度くらえば次は殆ど効かなくなった。だから美味いもんをひたすら食えた。
だからコイツが使うゼノモーフ用の麻酔も俺にはもう効かない。眠る事はない。
「お前本当に強いのか?そんなもん使いやがって…」
「俺様はどんな獲物も狩ってきたぁ!俺様が最強なんだぁ!」
「あぁそうか、もう充分に分かったよ」
俺はコイツの底を知り失望した。俺はこんなしょうもない奴に怒り狂ってたのか…?
そうか…
俺は奴の首を掴み持ち上げた。
「おい…最期に一つ教えてくれ。船を爆「俺だよぉ!バー…」死ね」
俺は奴が言葉を言い終える前に奴の右腕を捥いだ。
「ああああああああああ!!!」
奴が叫ぶが気にせず次は左腕を捥ぐ。
「やめろおおおおおおお!!!」
奴から夥しい量の血が噴き出す。
そしてマスクを剥ぎ取り素顔を見ると、白目を剥き泡を吹いていた。
「汚ねぇ顔だ」
思った以上に醜い顔だ。
首を持ったまま地面に叩きつけ、手を離し、そのまま勢いをつけ全力で拳を胸に放った。
「ゴフハッ!!!!!」
奴の胸に拳が当たった瞬間、衝撃と共に胸の周りが弾け飛び、拳が貫通し地面に触れる。俺の力が地面に伝わり地割れを起こした。
そして首をへし折り捩じ切って捨てた。
「…………」
「あの…エイペックスさん…まさか船を(いくらなんでも強すぎる)」
「言うなスカー…もう…いいんだ…もう」
俺の足元にある死体が蛍光色の血に沈む。俺はそれを見てもう二度と大切な物達が帰ってこない事を悟った。
空を見上げる。
星がキラキラして綺麗だった。
エイペックス君、空を見上げ咽び泣く。星になった船を思って。