エルダーに成人式の説明を受けその場は解散となった。これから成人式会場のある【地球】に向かうそうだ。
そう地球である。俺の前世で生きていたあの地球である。俺が生きていた地球とまるっと全て同じ……というわけではないだろうけど、太陽系に存在する人間がいる地球に俺はプレデターとして赴くことになった。
そして俺はエルダーから成人の儀式の説明を受けた時に、前世の記憶を朧げながらも少し思い出した。俺がこれから地球で行う成人の儀式とは十中八九映画で観たエイリアンvsプレデターで行われていたプレデターの試練のことだろう。
極寒の地で見つかった謎の古代遺跡で繰り広げられるホラーSFアクションで、何人もの無実の人がエイリアンやらプレデターに惨殺されてしまうというどちらが勝っても人類に未来はないヤバい映画だ。正直、プレデターは儀式をしに来ただけでプレデター自体は人類をどうこうするつもりは全くないからプレデターが勝てば人類に未来はある。俺ら蛮族だけど一応知性あるから。
それと死ぬかもしれないという説明を受けた。更に酷ければ死よりも恐ろしい目に遭うとも言われた。まあ、そうだよな……エイリアンと戦うんだ、サクッと殺されればいいけど捕まってフェイスがハガーされてチェストがバスターされたら流石の俺の鍛えた身体でも耐えられない。
しかし。プレデターとして生きて20年、前世では何年生きたか知らないけど、プレデターとなったからには成人になって自分の宇宙船を手に入れて宇宙に飛び出しグレートハントを成し遂げたい!怖いけど……
地球までは数時間で着くようで今は部屋で寛いでいる、到着すると設置されている端末に知らせが入ると聞いた。
ふぅ〜と硬いベッドに寝転がり一息つくとインターホンが鳴った。
「はいどーぞー」
入ってきたのは整列していた時に俺の隣にいたプレデターだ。
確かスカー君だったかな?映画ではめちゃくちゃカッコよかった覚えがある。最期は悲惨だけど。
「おぉ!君はスカー君!どうしたんだい?」
よっこいせとベッドから起き上がった俺はスカーに声をかける。
「エイペックスさん、お久しぶりです。覚えていますか?」
「ん?」
久しぶり?どこかで会ったことあるか?でも俺これまでずっと1人でサバイバルしてたし、知り合いなんてゴンジくらいしかいないんだけど……
「あの時、あなたがずっと手を握ってくれていた赤子……と言えば分かりますか?」
「あの時手を握った?あー!俺の次に投げられてた喋れなかった赤子か!?スカー君だったのか!?お〜!」
で、でっかくなったなぁ〜!
「そうか、俺と同い年だったらスカー君も成人になるのか、てか、俺があの時のプレデターってよく分かったね」
「ええ、実は個人的に調べていたんです。でもエイペックスさんが隣に来た時はすぐに分かりましたよ、あの時と仕草が全く同じでした」
「マジか〜いや嬉しいな!もしかして他の2人も同じ場所で生まれたプレデターなのかな?」
「はい、あの2人も同郷ですね」
「儀式を受けるのが俺とスカー君と確かケルティック君とチョッパー君だったかな?それだけということはあの時、他に生き残ったプレデターは20年の間に死んだのか」
「そういうことになりますね」
そうかー、同じ時期に生まれてぶん投げ試験をクリアしたけど20歳まで生きられなかったか、まあ仕方ないか…プレデターの世界ってかなり過酷だし、油断したらサクッとやられちゃうからね。
というかスカー君って確か映画だとめちゃくちゃカッコよくてスカー君を見てプレデターを好きになった人多いと思うけど、ほんの少しの慢心でかなり悲惨な目に遭うはずだ。
本来いない筈の俺がココにいるということはスカー君を助けることができる……ということだ。
幸いに俺には状況をどうにかできる力がある(慢心)
よし、お兄ちゃん頑張るからね(同い年)
「スカー君ってゼノモーフは初めて?」
「え?えぇ勿論初めてです。だけどイメージトレーニングはバッチリですよ、師匠からどんな奴か聞いて対策してます」
「へ、へぇ」
マジ?結構ガチじゃん……俺は元々1人で動くつもりだし、あまり一緒に行動して邪魔しちゃうのもなぁ、でもなぁ、うーん、そうだ一言だけ助言しとこうかな。たった一言で全てが変わる。
「お!流石だね?ちなみに倒した時の証はどこにつけるつもりなの?」
「額につけようかなと思ってます。マスクも同様です。」
「カッコ悪いよ」
「やめます」
よし、コレで大丈夫かな?
スカー君と色々お喋りしていると、端末から電子音が鳴った。
手にとって見ると地球の軌道上に到着したので、装備を確認し出発せよと書いてある。
俺はスカー君に端末を見せると、共に部屋を出て作戦室に向かった。
作戦室に向かうと他の2人が既に入室していて俺達を待っていた。
「スカー遅かったな、其方はエイペックスと言ったか」
俺には負けるけど身体がガッチリしているケルティック君が喋りかけてくる。
「ケルティック、エイペックスさんと一緒にいたんだ」
「そうか」
そうです。どうもすみませんでした。
「これが儀式で支給される装備品のようだ、確認をしてくれ」
ケルティック君が示す場所を見ると、テーブルの上に様々な武器が置かれていた。
標準的なリストブレイド、スピア、シュリケンディスク、ネットランチャー、シミターブレイド、セレモニアルダガー、広域殲滅爆弾搭載ガントレット。
防具に関しては自由のようでプレートやら肩パッドやら色々ある。
持ち込める装備品には限りがあるようで1人4つまでの装備を持ち込めるみたいだ。ガントレットに関しては必ず持たないといけないので4つのうちに入らない。
俺はリストブレイド、スピア、シュリケンディスク、セレモニアルダガーを選んだ。防具は動きやすく軽い方が好みなので腰帯のみ。防具以外の装備に関してはスカー君も同じ物を選んだみたいだ。
チョッパー君そんなデカいシミターブレイド付けて大丈夫か?
ケルティック君もネットランチャーなんて高価なもんいらないでしょ?楽しようとしてる?見かけによらず慎重なのか?
各々が装備品を選び、壁に掛けてあるバイオマスクを手にとった。
そして、再度儀式内容を確認すべく船の端末に集まり、儀式の行われる遺跡のマップ、儀式でやるべき事を確認した。
今回、肩に装着するプラズマキャスターは遺跡に安置されており、それを取ることで儀式がスタートするみたいだ。正直いらないけど。
「行くぞ」
俺達は1人用のポッドに乗り込んだ。
ポッドが射出され大気圏を突破し遺跡から少し離れた雪原に着陸という名の墜落をした。
シュインッと扉が開き外に出た。
「いててて、くぅぅ〜寒いな〜!!」
少し震えながら辺りを見回すと、他の3人も無事に着陸できたみたいだ。
遺跡に入りプラズマキャスターを取るまでは一緒に行動することになっている。
3人の下に駆け寄り合流した。
「皆、無事のようだな、これから遺跡に向かう。遺跡には今回の贄である人間が既に入っている、予測不能な動きをされるかもしれん。注意するぞ」
いつの間にかリーダー格のようになっているケルティック君が俺達をまとめ上げ遺跡に向かう。
暫く雪を踏み締めていると、遺跡のある場所を見下ろす位置に着いた。
遺跡は厚い氷に閉ざされていて通常の手段で入ることができない。しかし、俺達がブリーフィングをしている間に船に搭載された粒子レーザーによって厚い氷を溶かし、一直線に遺跡まで到達できるようにしてくれた。
俺は崖際でしゃがんで遺跡の丁度真上にある人間の街を見下ろす。
吹雪に晒されボロボロになった建物は小突いただけで今にも崩れそうだ。
人の営みはまるで感じられず、何百年も経ったかのような様相だが人の気配がする。
マスクのビジョンを熱源サーマルに切り替え見渡すと、ちらほらと人間が動いているのがわかる。いくらなんでも少ないので大半は遺跡に向かったのだろう。
「奴らは武器を持ってイル、どうすル?ケルティック」
同じく偵察していたチョッパーがケルティックに尋ねた。
「狩るぞ」
ケルティックが言い放つ。
しゃがみ込み町を見ていた俺はその一言に少し驚きクロークを使用し景色に同化していった2人を見送った。
「行かないのか?スカー君」
俺が声をかけると俺の側に近寄りしゃがんだスカー君はこう言った。
「無益な殺生は好みません。武器を持っていてもコチラに何かしてこなければ狩る必要はないと思っています」
「そうか」
スカー君はプレデターらしくない性格だな、映画でもレックスという女性を殺さず自分の側に置き、最後まで守っていた(最初は殺意マシマシだった)。
まあ日本人の魂を持つ俺もそうなんだけどさ、無益な殺生は本当に良くないよ。やっぱり先ずは対話してコミュニケーションとってからで、それでも無理だったら殺せばいい。サバイバルしてた時も対話を試みてそれでも襲ってきたやつは殺して食べてた。
しかし、俺も20年プレデターして過ごしてきたお陰か知らないけど、殺しという概念にあまり忌避感を抱かなくなった。それぐらいプレデターの文化は野蛮で暴力に満ち溢れている。赤子でさえ基準を満たせず弱ければ容赦なく殺してしまうくらいだ。獲物に対して少なからず狩りのポリシーみたいなものを持ち合わせているが、そんなものは先程のケルティックのように「ただ武器を持っているだけ」という理由で簡単に獲物認定して理由も聞かずサクッと殺してしまうくらい脆いものだ。
ほらそんな事を考えていたら、下でケルティックとチョッパーが人間達を殺してる。
クロークを使って人間達に姿を見られず不意打ちで殺している。
人間達が反撃して銃を撃ちまくってる。
俺達でも銃弾は当たれば痛いし、血が出るから死ぬかもしれない。
ケルティックとチョッパーは人間を次々と殺していき高台に死体を吊るしていく。
「いやぁ此処でそんな吊るさんでもいいのに」
はっきり言って装備の無駄だ。俺達は人間を狩りにきたのではなく成人の儀式に挑戦するためにきたんだ。それを忘れちゃいけない。
それを見ていると町に残った人間が遂に1人になった。
ケルティックに追い詰められている。
人間が屋根上の気配に勘付き銃につけたレーザーサイトを向けた。緑色のレーザーポインターがクローク中のケルティックの身体に当たり光が乱反射すると人間は弾丸を放った。
おーしっかり命中してる。
ハッハッハ、クロークを解除されてケルティック君が怒ってる。沸点が低いなぁ。
ケルティックが人間の前に降り立ち、人間に殴りかかられるが腕を掴み受け止めた。そして投げ飛ばした後も人間に拾った木材で殴られるも意に介さず腕を一振りして吹っ飛ばす。
あ〜遺跡まで直通させた穴に落ちていった。結構深いんじゃないか?死ぬかもな。
「俺たちもそろそろ行くか」
スカーと共に崖から建物に飛び移り、ケルティックとチョッパーの待つ大穴の前に行き合流した。
「貴様達は見ていただけか」
「ああ、俺は最上の獲物を狩りにきたんでね、人間に興味ないんだ」
「同じく」
「ふん、勝手にしろ。遺跡内部を確認するぞ」
ケルティックがイラつきながらもガントレットで遺跡内部を表示した。
ガントレットの画面から幾何学的な映像が映し出されそれが遺跡の外観を表示し、内部へと移り変わっていく。
「遺跡内部に人間がいる、奴等は生贄になるだろう」
「ゼノモーフの餌だナ」
「ゼノモーフ……」
「行くぞ」
俺達は氷にできた穴を降っていった。
かなり長いこと降っていくと、人間達が掘り進んだのか遺跡までの道ができているように思える。
ケルティックとチョッパーが先行して進んでいき、俺とスカー君が穴の近くに残った。
「さっき落ちていった人間が生き残ってるけど、どうする?」
ケルティックとチョッパーが見逃した瀕死の人間を見て言う。
「気づかなかったんですかね?」
「さぁ?此処は寒いから体温では気づけなかったのかもな」
「あぁなるほど」
「スカー君、一つアドバイスだけどマスクのビジョンに頼りすぎない方がいいぜ、結局最後に頼りになるのは自分の感覚だからな」
「勉強になります」
ところでこいつはどうしよう?ほっといても死ぬだろうし、楽にしてやるか?
俺は資材と雪に埋もれた瀕死の人間の近くに寄った。
そしてしゃがんでクロークを解除し、人間に気づかせる。
「オイ、ニンゲン、ダイジョウブカ?」
いつか地球に戻れる日が来ると思って人間の言語を少し学んでたかいがあって少しは対話ができる。
「お、お前達はなんだ!?ウッ……!ここで調査していただけなのに……」
「マキコンデ、スマナイ、ラクニナリタイカ?」
「グフ……もう足の感覚がない……家族に……会い……」
「死んだか」
止めを刺さずに死んだ。家族に会いたいか……俺に家族なんていない。いつかあの世で会えるといいな。
「エイペックスさん、人間の言葉を……」
「あぁ、少しだけどな」
人間の死を見届け立ち上がり先行した2人の下に急いだ。
遺跡の入り口の前で律儀に待ってくれていた2人が俺たちのことを見つめてくる。
「はぁ全く何をしていた?」
「すまんすまん待たせた!」
ケルティックが先程と同じようにガントレットで遺跡内部を表示した。
「マズいぞ、人間が遺跡を起動させた」
「ナニ?安置された装備を取ったノカ?」
「そうだ、そうでもしなければ遺跡は動かない。急ぐぞ」
どうやら遺跡内部に侵入した人間達が安置されていたプラズマキャスターを奪ったようだ。
通常であれば俺達が装備を取り儀式がスタートする手筈だが、人間達が装備を奪って遺跡が完全起動した。
俺達はクロークを起動して遺跡内部へと侵入した。