どうぞ!!
メイソンを炎が燃え盛る部屋に投げ込み、みんなを見るとドン引きしていた。
「あ〜殺すのは構わんが案内がいなくなった」
「おめえどうすんだこれ」
エルジンとジョナーが俺に言った。
「……ハハハハハハーし、心配ない。この船はスキャンしてある。マップはマスクでいつでも確認できるから安心してくれ」
2人が本当か?みたいな顔で怪しんでくるが、残念ながら本当だ。ヴィンセントが言っていた通りに進めばベティに着く。
「俺についてきてくれ」
俺は皆にそう言って、ケイをおぶった。
暫く進むと冷却塔の手前の部屋で人間の反応があるのを見つけた。
「ここに1人いるぞ」
「え?」
部屋に入ると、拘束された人間が死んでいた。どれも胸に大きな穴が空いていた。チェストバスターだ。少なくとも5人以上の死体があった。
「こいつは一体なんなんだ?」
クリスティーが言った。
「これがエイリアン、ゼノモーフの苗床。チェストがバスターした跡だ」
「チェ?チェスト?なんだって?」
「フェイスがハガーしてチェストがバスターよ」
「よくわかんねぇよ…!!」
クリスティーにはまだ理解できなかったようだ。
そして俺はこの中で今も生きている人間の下に近づいた。人間は壁に寄りかかり寝ている。
体内を見るとチェストバスターを抱えているのが分かった。だが、随分と成長が遅いように見える。
「おい、起きろ」
男の肩を揺さぶると、目が開き俺と目が合う。
「うわあ!!!」
「うおおおわ!!!」
俺に驚いたのか叫んで飛び起きた。皆が銃を構える。皆ビビりすぎだぞ。俺はちょっとビックリしてドキッとしただけだ。
「寄るな!近づくな!」
「落ち着け!落ち着くんだ!」
俺は両手を前に出し安心させようと近づく。気のせいかどんどん離れている気がする。
「エイペックスさんよ、アンタじゃ逆効果だ。おい!俺達はユーレイ船から逃げようとしてるとこだ」
「船?船って?ここは?わ、私はザーレムに行こうとして冷凍睡眠を……ザーレム星のニッケル鉱へ…それで目覚めたら信じられない光景が」
彼がそう言うとエルジンらがバツの悪そうな顔をした。ベティで運んでた物は彼等だった。まさかゼノモーフの生贄になるとは思ってなかったんだろうな。
「一緒に逃げましょう。ここは危険なの」
アナリーが誘う。だが…
「彼は寄生されてるぞ、体内にいるのが見える」
「マジかよ…」
「おぅ……」
ジョナーやブリースがショックを受け、言葉を漏らす。そして周囲の面々も顔を仰向け俯いた。
「え?俺の体内に何が?」
男が言った。彼は自分の中にいるものをまだ認識できていないようだ。確かに、コイツに宿っているチェストバスターは成長が少し遅い気がする。ただ、確実にゆっくり蠢いているから、何もしなければ数時間後に胸を突き破って出てくるだろうな。
「アレを産み落とされちゃ困る」
「ヤバい」
ジョナーとブリースが言った。お前ら普通に確信突くなよ!可哀想だろ。
「た、た、体内に何が?」
「一緒に連れて行きましょう」
アナリーがそれでも連れて行こうとする。
「アレを増やす気か?」
「手術すればいい!」
「今そんな事できるわけないだろ、頭の後ろに一発。それで苦しまずいける」
クリスティーが言った。それを皮切りに皆で、あーでもないこーでもないと言い争いが始まる。ベティで冷凍して手術すればーとか、別の手を考えましょうーとか、殺しちまおうとか、男は何が何だか分からずあたふたしている。
「体内に何がいるんだーーーーーー!!!!!!」
「…………」
男が叫び、言い争いが止まった。
「まあまあ、皆落ち着け。一昔前は寄生されたら終わりだったが今は違う。いいか?まずお前の体内には化け物の幼体が宿ってる。あ〜でも安心してくれ」
俺はそう言って腰帯の袋に手を突っ込み、あるものを出した。
「これを飲め」
俺が出したのは一錠の錠剤だ。
「……これは?」
「はぁ…それを持ってるなら早く言いなさいよ」
「あっはっは、ごめーーーん。お前名前は?」
「わ、私はラリー・パーヴィス」
「そうか、パーヴィス。これはな……」
この錠剤は地球で作られたニコチンタール錠剤だ。オブライエン&ハワード産業が開発したゼノモーフ成長阻害錠剤である。俺にはさっぱり分からないが、ニコチンとタールという物質は人間がよく吸うタバコという嗜好品に含まれているものだが、コイツは摂り過ぎるとガンになったり、本来するはずの成長が阻害されたりと正直問題だらけの物質だった。妊娠中の女性が吸ったりすると体内の胎児に栄養や酸素が正常に渡らなくなり成長が阻害されてしまう。彼らはそこに着目してこの錠剤を開発した。此処に来る際にレックスに渡されたんだ。
「お前タバコはよく吸うか?」
「1日3箱は吸うが…」
やはりな、コイツの体内に宿るゼノモーフの成長が遅いのは、体内にあるニコチンやタールが多いからだろう。肺を見ると真っ暗だ。幸いガンにはなってないが。
「ふむ、これはゼノモーフ成長阻害錠剤だ。飲めば体内に寄生したチェストバスターの成長を阻害し、進行を遅らせる事ができる。まぁ飲み続けると危ない副作用があるが、チェストがバスターするよりマシだし、飲むのは除去手術するまでだから大丈夫だ」
「これを飲めば助かるのか?」
「ああ、助かる」
パーヴィスが錠剤を受け取り、それをすぐに飲んだ。体内を見ると錠剤が食道を通り、胃に到達する前に溶けた。
体内のチェストバスターの成長が更に遅くなったような気がする。これで一先ず大丈夫だろう。
「即効性の副作用としてちょっとクラっとしてハイになるが心配ない……」
「フォオオオオオオオオオ!!!!」
パーヴィスが最高にハイになっていた。
「これ大丈夫なのか?」
ジョナーが俺に聞いてくる。
「だ、大丈夫だ。問題ない」
俺達は先へ進んだ。
冷却塔に到着した。ヴィンセントとクリスティーが床の蓋を開けると一直線に下に伸びる大きな筒と梯子があった。
「これじゃ俺はいけねーな」
車椅子に乗ったブリースが言った。
「はぁ…まったくよ仕方ねぇ。俺がおんぶしてやるよ」
「ケッケッケ、昔のように?すまねぇな」
クリスティーがブリースに近寄り肩を叩いた。ブリースが嬉しそうに言った。
下へ降っていくと、水浸しになっていた。至る所から水が溢れ溜まっていく。このままだと此処は水で一杯になってしまうだろう。
「誰かが冷却水タンクのバルブを開けたんだ!」
「エイリアンどもがやったのかな?」
俺達の前を進んでいたブリースとクリスティーが言った。
進むと、先は水で通路が浸水して泳ぐしかなさそうだった。
俺はアナリーに声をかける。
「アナリー、マップの情報をお前に送信しとく、皆を先導しろ。それとジョナー!」
「あーん?なんだ?」
「ケイを頼む」
「はぁ!?……まぁ仕方ねぇか」
俺はケイをジョナーに任せ、アナリーを側に寄せた。
「アナリー、コードを挿すぞ」
「ええ、ここにお願い」
皆に見えないように俺の大きな身体で隠し、アナリーの腕にある接続端子にガントレットから伸ばしたコードを挿した。
送られる情報量にアナリーが一瞬震え白目を剥いた。すぐに戻りコードを抜いた。
「あなたはどうするの?」
「俺は後ろにつく、ゼノモーフが近づいてるからな。それと…」
「わかってるわ、先の事ね」
「ああ、頼むぞ」
アナリーにデータを渡し、皆の前に行かせる。
「みんな!ここから泳ぐことになる!30メートルほど泳いだ先に貨物エレベーターがある。行くわよ!」
アナリーがそう言って、潜っていった。
皆が次々と水の中へ入っていく。俺もそれについていった。
泳ぐのは久々だ。
以前、海と小さな島しかない星に降りた事があって、そこの生き物はどれも美味かったな。海に潜ると巨大な魚とか海蛇とかよく分からん鯨みたいなのがウヨウヨしてて襲いかかってくるもんだから手当たり次第狩って食ってた。
その星には人間とか魚人もいたなぁ…まあ宇宙を旅してれば色んな種族に会う事があるが、あの星の人間達は結構不思議だった。なんか変な力を使ってきたんだ。俺が出会ったのは汚くてデブで黒い髭を生やした大男だった。そいつは俺を見るなり襲いかかってきてな……
全身から黒いモヤモヤを出してよ。あと、凄い揺れてたな。そんで俺をそのモヤモヤとかちょっと光った拳で殴ってこようとしたから腹に手突っ込んで内臓引っ張り出して殺しちまった。周りにいた人間が大口開けて驚いてたけど、そのあと全員襲いかかってきて、どいつもこいつも変な力使ってきやがったが俺には何も効かなかった。話す暇もなく襲ってきたからコイツらも全員殺した。身体を黒くしたり、俺の動きを読んで巧みに身体を動かしてくる奴がいたけど、戦ってるうちに慣れてすぐに殺せた。
その後も、その星にあった1番大きな大地で獲物を探してたら、俺をペットにしたいとかなんとか言ってきた宇宙服をきた人間達がいた。対話を試みようとしたが、ぺちゃくちゃと騒いで銃を撃ってきたから頭を握りつぶして殺した。1人殺したら、周りにいた奴等も銃を撃ってきたから…
あの星は食い物は美味かったがな……まあまた行こうかな。
そんな事を思い出しながら泳いでいると、後ろに気配を感じた。ゼノモーフだ。
2匹優雅に泳いでやがる。
俺と同じようにジョナが気づいて水の中で叫んだ。そして榴弾を放った。
水中をゆっくりと進んでいき、俺を通り過ぎた榴弾がゼノモーフに当たりそうになるが、そいつはすんでのところで榴弾を避けると、気づいていない後ろのもう1匹のゼノモーフに当たった。
「ぐゔぉゔぉふふぃど(すごい威力だ!)」
水中爆発を起こし死んでいった仲間を見てゼノモーフが驚くのが見えた。そしてこちらに泳いでくる。
俺は前にいたジョナーとザヴラー、エルジンに早く行くよう合図を送る。
俺はゼノモーフに向き直り、スピアを取り伸ばした。
「もふぉごぼぼ(銛漁だ!)」
足で水を蹴って勢いよく進むと、一気にゼノモーフに近づく。そして俺はスピアをゼノモーフの頭に向かって、腕を伸ばし突いた。ゼノモーフは避けもせずに頭にスピアが突き刺さり頭から緑色の粘液が漏れ出す。俺は足をゼノモーフの頭に向け、頭を押さえスピアを引き抜いた。
沈んでいくゼノモーフ。体内をスキャンして心臓が止まっている事を確認した。が、念の為近づき心臓にもスピアを突き刺した。ビクッと一度動いた。小賢しい奴め。
ゼノモーフを殺し、皆が行った方へ進んだ。
扉を潜り抜け上を見ると膜のような物が張っており、そこに3つの大きな穴が空いていた。
やはり…
スキャンで巣の反応があったから警戒していたが、まさか顔を出す場所にエッグチャンバーが置いてあるとは思わなかった。
この船のゼノモーフは中々狡猾である。
しかし、これは事前にアナリーに送ったデータに入れておいた。対処して上がっているはずだ。
床を蹴って一気に浮上し水面から顔を出すと岸にあったエッグチャンバーが吹き飛び一面火の海になっていた。水の中から榴弾を撃ち爆発させたようだ。
貨物エレベーターは水没している為、自力で上に登るしか無かった。梯子を皆で登っているのが見えた。何人かは通路に出ている。ブリースを背負うクリスティーが辛そうだ。
俺は水から飛び出し、壁を蹴って跳躍するとクリスティーの上まで行った。
そしてクリスティーに手を伸ばす。
「掴まれ」
「ハッハ、もう限界だった。あんがとよ」
クリスティーが手を掴むと、俺は一気に引き上げた。
そうして、皆無事に通路に出る事ができた。あとはベティのある格納庫へ一直線に向かうだけである。
だが先の通路に繋がる扉をディステファノが開けようと端末を操作するがアクセスを拒否され開けることができなかった。
「ダメだ開かない」
「どういう事だ?」
端末を叩くディステファノにパーヴィスが聞いた。
「分からねぇ…もしかすると誰かがファーザーを乗っ取ったのかもしれない」
「こんな時に?一体誰がそんな事やったんだよ」
ジョナーが言った。
誰もが脱出したい状況のはずだ。それをわざわざこの区画の扉を閉めるなんて確かにおかしい。
「ターミナルは?」
「ダメだ、ここにはない。戻らないと」
「いや、ダメだ今更戻るのは危険だ。……アナリー」
「……そうね仕方ないわね」
アナリーが唯一ここから繋がる部屋に行った。
「何をするつもりだ…?」
エルジンが怪しみながら言った。
「まあすぐに分かる」
俺はそう言い放つと、ケイを抱きアナリーの向かった部屋に入った。
部屋に入ると、俺を追って続々と部屋に皆が入ってくる。そんなに気になるのか?
「ちょっと…見せ物じゃないわよ」
「お!お前!ロボットだったのかよ!」
アナリーが部屋の壁に埋め込まれた機械から伸びるコードを腕に差し込んでいた。
「へぇ…あのかわいいコールちゃんが?人造人間にハートがあるなんて知らなかったぜ!」
「コールお前…まさか」
ジョナーがニヤニヤしながらアナリーに言った。そして、ブリースが目をキラキラさせながらアナリーに聞くと、アナリーが隠していた事を語り始めた。
「私はオブライエン&ハワード産業が製造したアンドロイドなの。皆、今まで騙していてごめんなさい」
「おいおい嘘だろ…オブライエン&ハワード産業って…もしかして此処へは…」
「まぁご想像にお任せするわ。ただベティのみんなをアレコレするつもりで近づいたわけじゃないから安心して」
「ホッとしたぜ…」
エルジンがアナリーの話を聞き、ホッと胸を撫で下ろしていた。もう悪いことすんなよ。
太陽系のみならず銀河中に根をはるオブライエン&ハワード産業は犯罪者やその他悪人にとって最も恐れられる企業だ。アナリーのように組織に潜り込み、秘密裏に悪人を消し去っていくからだ。
「みんな、大変よ。ファーザーを操作したのはメイソン・レンよ。奴もベティに向かってる」
なに?
「はぁ!?アイツはエイペックスさんがやったはずだろ!?」
「あぁ…確かに炎の中へ投げ入れたはずだが…」
まさか生きてるとは…どういう事だ?
「奴の行く手を塞いでおいた。今の内にいきましょう」
「よし、行こう」
そうして部屋から出るとベティのある格納庫へ走った。
「みんな!もうすぐだ!あと90メートル!」
「やっとかよ!!」
暫く通路を走るとディステファノが言った。しっかしデカい船だなぁマップで見るとそうでもないんだけどなぁ。
「エイペックス、待って」
「ん?どうした?」
ケイが俺を止めた。そして背から降りると、床に手をつき何かを感じ始めた。
「下にいる。わたしの子供達が…苦しんでる…」
「…?」
下だと?確かに奴らの反応が……あ!!
「うわああ!!!」
下にいたゼノモーフに気づかなかった!エルジンがやられたように床が抜けて落ちていった。
急いで下を見ると、ケイが奴らの肉に取り込まれているのが見えた。
「何があったんだ!?」
パーヴィスが近づいてきた。
「あ〜ケイが…」
「助けに行かないのか!?」
「あれは無理だ……」
あの先が見えない。どうなってるか分からなかった。それにあの肉に包まれれば俺とてどうなるか分からない。アレはただの巣とは違う、もっと恐ろしい何かを感じる。
「すみやかな死を祈るしかない」
パーヴィスがそう言って、俺の腰を叩いた。
「クソッ!!!!」
俺はベティに走っていった。
マップにはまだケイの反応が残っていた。
ゼノモーフの肉に落ちたケイ。彼女はゼノモーフに抱かれ、女王のいる場所へと運ばれていた。
「ここは?」
「目覚めたね…」
「あなたは」
ケイはゼノモーフの肉の壁に囲まれる部屋で目覚めた。周囲を見渡すと天井が高く、上に通路へと繋がる
そして部屋の中央には仰向けで横たわるゼノモーフのクイーン。ケイが産み出したエッグから出たスーパーフェイスハガーから生じ、成長したクイーンだ。そして、その巨大な胎には何かがいた。
「女王は卵を産み、最初は何も異常はなかった。だが、そのうち彼女の身体に変化が起こった。見ろ」
母の間で繭に包まれながらも唯一生き残っていた科学者、ジョナサン・ケディマンが囁いた。
「宿主はもう必要ない。もう卵は産まない。新たな命は子宮の中に宿っている、そう子宮の中だ」
ケイは感じた。クイーンの巨大な胎の中にいる強大な気配をだ。
「君からの贈り物だ。人間の生殖機能を授かったのだ。女王は子供を産む!!!これで女王は母として完成される!!!」
ゲディマンが大きく声を荒らげた。そしてクイーンが唸り声をあげる。まるで人間が赤子を産むように息を吐いた。力を全身に入れ声をあげた。
クイーンの胎が蠢く。固くなった表皮が木の皮のように割れて中の膜が見えた。そしてその膜を突き破ろうと大きく動く何かがいた。
どんどん動きが激しくなり、クイーンが咆哮をあげる。そして、膜が伸び、中にいたものが膜を破りながら出てきた。
「なんと素晴らしい!美しい…!美しい蝶々だ!」
膜を突き破り出てきたもの。それは乳白色の肌を持ち、顔は人間に似ていて、毛が生えていない。身体は見上げる程大きく、筋肉質で、姿形は完全に人間だった。
「ハァァァァァァァァァァ…………」
産まれ出たものが大きく蒸気を伴う息を吐き、両手を頭に持っていき纏わり付いた粘液を拭っていく。
クイーンがそれを見て嬌声をあげる。
「クウゥーーン」
その声に気づき、それがゆっくりと振り向いた。
「クゥーン」
産まれたものがゆっくりと顔をクイーンに近づける。そして、鼻の穴をヒクヒクさせて匂いを嗅いだ。
クイーンが大きく口を開け吐息を吹きかける。
産まれたものの顔が離れ、顔に怒りの表情が現れた。
「よせ!」
ゲディマンが産まれたものの、やろうとしている事を察知し声を上げた。
しかし、それを無視し、腕を上に大きくあげてクイーンの頭蓋を薙いだ。
腕がクイーンの顔半分を吹き飛ばし、血が溢れる。そしてそのまま動かなくなった。
「ウオオオオオオオオオ!!!!!」
何か嫌な事でもあったのか、大きく雄叫びをあげる産まれいでたもの。そして、静かにその場を去ろうとしているケイの存在に気づき、振り向いた。
「(かあさん)」
薄く緑に光る瞳に睨まれ動けなくなるケイ。死したクイーンの胎からゆっくりと立ち上がり、ケイに近づいていく。産まれたばかりだというのにその足取りはしっかりしていて、逞ましい。
ケイは微動だにできなかった。クイーンから産まれた巨大で強大な気配を感じる生物が恐ろしくもあり、愛おしかったからだ。
「あなたは...」
「(母さん、僕のかあさん)」
怪物の声が脳に響く。そしてケイは幻視した。遥か昔、自身のオリジナルが産んだ異形の赤子を。エイペックスに殺された赤子を。ケイ自身が変質させてしまった大事な子を。
「私の赤ちゃん...?」
「フゥゥ」
怪物が手を伸ばし、ケイの頬を優しく撫でる。ケイは優しくそれを受け入れた。
「かわいい、かわいいベビーだ。君を母親だと思っている」
怪物がゲディマンの声を聞きそちらを向いた。そして怒りを激らせる。
「ダメ、一緒に帰ろう」
ケイの手が怪物の手に触れる。怪物の怒りが鎮まり、ケイを優しく抱くと、壁に飛び移り部屋を去った。
「待て!待ってくれ!私も、私も連れていってくれーーーー!!!」
ケイと怪物にその声は聞こえなかった。
ケイが肉に取り込まれていくのを見る事しかできなかった俺とパーヴィスは前を行くベティの人間達と合流し、ベティの前まできていた。
そしてアナリーが言う。
「脱出する為に船の隔壁を下ろし、エンジンをスタートさせておいた。後は乗るだけよ!」
「待て」
気配を察知して皆に伝えた。
「え?エイリアンか?」
「違う。みんな俺の後ろに下がれ」
俺の後ろに皆を下がらせ、俺は前を見据えた。そして俺の視線の先。通路の陰から何かが出てきた。
「まさか生きていたとは…だがお前…」
もはや喋る事すらできないようだが…目の前に現れたのはメイソン・レンだったものだ。奴の特徴がある。しかし、俺が最後に見た奴の姿と今の姿はかけ離れていた。まず、奴の口が大きく限界を超え開き人間とは思えない牙が乱雑に生え、腕は手がなくなり鋭い大きな爪になっている。そして胴体は服が焼け落ち、皮膚が見えているが、肉がぐちゃぐちゃに混ざったような形相だった。それにアイツの元の身体よりも大きい。
今まで見た事がない生き物だ。
涎を垂らし、不規則にカクカクと動きながら俺ににじり寄って来ていた。
体内をスキャンすると、臓器の位置がバラバラになりよく分からないことになっている。そしていつか見たホロウェイと同じように蠢き今も変化し続けていた。
「気持ち悪いやつだ」
「ウゲエエエエエエエエエエエイ!!」
俺がそう言うと叫び声を上げ、走ってくる。
スピアを取り、伸ばした。
投げようと思った時、俺の横にジョナーとクリスティーが立った。
「全然撃ってねぇからな撃たせろや」
「化け物退治だ」
2人がそういうと、銃を撃ちまくる。
抵抗することもなく撃たれていくメイソンだったもの。弾を撃ち尽くした2人が銃を捨てた。
「死んだか?」
「あんだけ撃って死なねー生き物はいねーよ」
しかし、2人の健闘虚しく奴がゆっくりと起き上がる。
「おいおいどうなってんだぁ?」
「不死身か?」
奴が起き上がり、肉が蠢き血が噴き出し、人としての形をどんどん変えていく。そして奴が完全に変態を終えた。
「ウッギギギフィフィゲゲエエエエエエイ!!!」
また奇声を上げ走りこちらに向かってくる。
俺は2人を下がらせて、スピアを構えた。そして跳ぶように奴に近づき、頭蓋に向かってスピアを放つ。
スピアが刺さり一瞬力が抜けるがすぐに復活し、両腕の鎌を俺に振るってきた。俺は刺さったままのスピアを動かし、奴の身体を動かした。そのまま近くの壁に叩きつけ、怯んだところで右腕のリストブレイドを伸ばし、両腕の鎌を切り裂き落とした。
スピアを頭から引き抜くとズルりと身体が落ちた。
「お前はなんだ?」
体内を見るとまだ動いている。俺が切り落とした腕の断面の肉が蠢いている。
「溶かしてやる」
俺は腰帯に括り付けてあった容器を手に取ると、中身を倒れた奴に向かって振りかけた。容器に入った青い液体が奴にかかると蒸気を上げ溶けていく。全体にかけると跡形もなく消え去った。
「気色悪かったな…」
メイソン・レン…お前は一体何をしたんだ……
だが、もう奴は完全に死んだ。俺が奴にかけたのは掃除用の溶解液だ。有機物だけを溶かし、無機物には全く影響を与えないよく分からん液体だ。昔地球での任務で使った。
そうして俺達は船に乗った。操縦席にザブラーとエルジンが座り、色々とチェックを始めた。
そしてエルジンがモニターを見て叫んだ。
「おい!あのガキが知らねぇ
なに?
マップを確認すると確かにケイのマーカーが近づいてきている。だが、あれはなんだ??
「おい!ハッチはまだ開いてる!早く行け!」
エルジンに言われハッチに向かうと、俺たちが来た通路から白い大きな人型の奴に抱かれたケイがきていた。
誰だ?あれは…?それにこの気配はあの時の…
「飛び移れ!!」
俺が手を振り合図を送ると、ケイを抱きながら奴が跳躍した。
そして着地する。すごい跳躍力だ。俺たちに似ている。
だが、俺はスピアを伸ばし奴に向けた。
「待って!」
ケイが俺に手を向け止める。
「ケイ、そいつはなんだ」
「この子は…私の赤ちゃん」
「はいぃ!?」
赤ちゃんだと?どう見てもそんな形じゃないが…いやだがそう言われてみれば200年前に殺したケイの赤子に雰囲気が似ているような気がしないでもないが…
だがあの時の奴よりもコイツは体格が良く、健康的に見える。すごい筋肉だな。
「ぶー」
「うふふ」
奴がケイに愛おしそうに頬擦りをする。うーん…大丈夫か?
「うわああ!!化け物だ!!」
様子を見にきたディステファノが驚き銃を構える。
俺はその銃を押さえた。
「ディステファノ、大丈夫だ。コイツは味方だ」
「わけわからんけど…勝てそうにないからやめとくわ…」
ケイの赤子を見ると、筋肉を膨張させケイの盾となっていた。
「《おーい何やってんのか知らんが早くハッチを閉めてくれー》」
エルジンの声が響いた。
ディステファノがそれを聞いて、恐る恐るケイらの横を通りハッチを操作した。そして、ハッチが閉まり船が発進した。
俺もガントレットで船を操作した。
ベティがオーリガを出ると、オーリガがまもなく地球の軌道上に差し迫るというところだった。
そこに通信が届く。
「《エイペックス、船は脱出したわね?》」
「え?あぁしたぞ」
「《了解》」
通信はレックスからだった。そして、操縦席のある部屋に戻るとエルジンが言った。
「エイペックスの旦那、オーリガが艦隊に囲まれてるぜ」
「え?マジ?」
そう言われ操縦席のガラス窓から見ると、巨大実験宇宙船オーリガが宇宙艦隊に囲まれ。総攻撃を受けているところだった。
「あ、危なかった〜……」
そうして、俺達は生き残った。
ベティの面々はまた仕事だとか言って早々に何処かへと飛んでいった。アナリーもそれについていった。
そしてパーヴィスはレックスが引き取り、除去手術でチェストバスターを取り出し無事助かった。暫くタバコは吸わないと言っていた。
ケイと謎の赤子は俺の船に乗せて母星に戻った。
なんというか赤子は最初不気味だったが、今では普通にコミュニケーションを取れるようになっている。乳白色のツルツル肌で毛が一切生えていない。体格はガッシリしていて筋肉質。身長は俺と同じくらいだ。
エルダーがこいつを見て驚いていた。
「おい、エイペックス…どこでこいつを見つけた……」
「ケイ?」
「私の赤ちゃんです」
「……なんて?」
エルダーが戸惑うように言った。
それから女園に赴きケイとケイを対面させた。
2人は手を繋ぎ、抱き合った。そしてオリジナルのケイは赤子を見て涙を流した。
「名前はどうするの?」
ショウが聞いた。そしてケイが答える。
「「ニュー」」
人間の言葉で【新しい】か。いい名前じゃないか。
宇宙に誕生した新しい命。こいつがどういう生を送るのか、俺達には分からない。だけどコイツが素晴らしい生を送れるよう俺は密かにお祈りでもしておこう。
宇宙には様々な未知がある。
もし何か困った事が起きたら。
救難信号を出してみれば…偶然通りがかった頂点捕食者が助けてくれるかもしれない。
エイリアン4終了しました。
原作で生まれたニューボーンは凶暴さ故に母であるリプリーに殺されてしまいますが、本作では200年前に生まれたZ01で変質してしまったケイの異形の赤子をニューボーンとして再誕させました。ケイ2号(8号)が産んだエッグチャンバーから出てきたスーパーフェイスハガーが紆余曲折あって成長しクイーンになりました。ケイのDNA情報から子宮を獲得するのは原作と同じですね。しかし、この科学者達の実験では2種のDNAからケイが造られています。注射器の針に残ったケイの血と異形の赤子の遺体です。それから色々あって同一個体ではないですが、ケイの赤子が再誕したという事にしてもらえたら、もうみんなハッピーなんです。ニューボーンとエイペックスのバトルを期待していた方々…!すみませんでした。
ニューはこの後母星で過ごし成長していきます。
あ、メイソンさんなんですが火に投げ込まれた時に自分に謎の因子を打ち込みまして…どこかの星で見つかった黒いマグロから抽出されたエネルギーだとかなんとか…ゼノモーフではなくネクロモーフという化け物になっちゃったみたいです。
そして、これにて当初考えていたエイリアン4まで書き終わりました。なんか毎日投稿してたんであっという間でした。皆さん今まで読んでくれてありがとうございました。まさかこんな沢山の人に読んでもらえると思わなかった本作。感想を見るのが毎日楽しみでした。本当にありがとうございます。エイリアン4まで書き終わりましたが、他作品のクロスオーバーでいいものが思いついたらまた投稿しようかなと思います。お疲れ様ブラックグースプラッシュ!