4人で遺跡に侵入して俺達は暫く行動を共にしたのち3組に分かれた。
ケルティックとチョッパー組、俺とスカーはそれぞれ単独で動くことになった。
俺とスカーが単独で動くことにケルティックはどこか納得していなかったが、「勝手にしろ」
と言って先に行ってしまった。
人間達が遺跡を完全起動させたことにより一定の時間で遺跡内部の構造が変化する。遺跡の動き方はガントレットからマスクに同期され随時把握できるが、それでも完全に遺跡の動きを把握するのは難しい。少しでも集中を欠けば迷ってしまうだろう。
遺跡に侵入した人間達も2組に分かれていて、生贄の間にいるチームと装備を奪ったチームがいる。残念ながら生贄の間にいた人間達は遺跡が起動したことによって閉じ込められていて今頃ゼノモーフの餌になっていることだろう。
つまり俺達が今追うべきは装備を奪った人間達ということになる。
だが俺は別段装備を必要としていないので人間達を無理に追う必要はない。
スカーにそれを伝えるとただ一言「わかりました」と言って別れた。
さて、どうするか。
成人の儀式でする事は遺跡に安置されているプラズマキャスターを入手し、生贄から生じたゼノモーフを狩ることだ。
エルダーの説明では状況に関わらずゼノモーフを一体殺しその血でマスクと身体に証を刻めば儀式を通過したことになると言っていた。
しかし、やはり俺はプレデター。挑戦するからには一番強い奴に挑みたい。
そう、ゼノモーフの中で一番強い奴とはクイーンのことだ!!!
この遺跡に座すクイーンは太古の昔、この遺跡が設置された頃のプレデター達を神と崇めていた時代の人間から生じたクイーンだ。およそ100年周期で行われる成人の儀式の為に普段は冷凍保存されている。
地球では何箇所か儀式の為の施設があったようだが、地球に現存するのは此処だけになったようだ。他の施設は全て数百年の内に行われた儀式によって消滅している。施設の消滅とは儀式の失敗を表しており、プレデターが死の間際に広域殲滅爆弾を使用したということだ。
果たしてクイーンを討伐してもいいのか分からないけど、やっぱデカいヤツ狩りたいよなぁ。
というわけでクイーンの座す【母の間】に向かうことにする!
なんて意気込んだのは良いけどちょっと遺跡の動き方が上手く予測できなくて若干迷い中だ……これ母の間まで辿り着けるのか?ゼノモーフの気配は至る所に感じるが、俺の場所に来る気配は今のところない。他の3人は大丈夫だろうか。
一方その頃……
私とチョッパーは装備を奪った人間達を追いかけ遺跡の動きと共に奇襲をかけた。
更に2組に分かれた人間達は一部が遺跡に取り込まれ合流できなくなり、残るは武器を持たない3名と武器を持った兵士然の男が1人だ。
奪われた武器を女の持つ袋に入れたことを確認し、私はチョッパーに指示を出した。
「女が持つ装備を取り返せ、殺しても構わん」
「わかッタ」
私が指示を出すとチョッパーがクロークを起動し景色に溶け込んだ。
そして私は、未だ警戒する武器を持つ兵士の前に躍り出た。
兵士が武器を向け放とうとしてくるが、その前にガントレットの上部に取り付けたネットランチャーを射出した。
発射されたネットの勢いに巻き込まれて壁に縫い付けられた人間は必死に脱出しようとするが、ネットはそれを無視し次第にその四方に展開された装置に巻き取られていく。
ネットには極小の刃がついておりそれは鋼鉄すらもへし折る強度を持っている。
現に、仲間を助けようと近寄った人間達はどうしようもない現状に絶望しているのが分かる。
私はトドメを刺す為にネットに捕まった人間に近づいた。
「来ないでっ!!!」
人間の女が鎌のようなモノで立ち向かってくるが受け止め投げ飛ばした。
更にその人間の後ろからもう1人やってきて私の強靭な肉体にボディブローを決めるが、まるで効かない。
男の首を掴み片手で持ち上げ、背中に取り付けてあったスピアを伸ばしそのまま持ち上げた男の後ろにいるネットに捕まった人間へと突き刺した。
ビジョンでネットの人間の死を確認し持ち上げていた男を殺そうとした時、少し離れた場所でチョッパーの声が聞こえた。
「まさか」
声のした場所へ振り向くとチョッパーが不自然に浮いていた。
チョッパーの背中から何かが飛び出し我ら特有の蛍光色の血が溢れ地面を照らしていた。
ビジョンをゼノモーフを検知するものに切り替えるとその原因がハッキリと映し出された。そして、一瞬の間にチョッパーの後頭部が破裂し、そのまま投げ捨てられるように地面に落ちた。
「ゼノモーフかッ!!!!」
掴んでいた人間を放し、リストブレイドを伸ばした。
コイツを倒し、儀式を通過して私はグレートハントを成し遂げるのだ!!!
「今の内に逃げましょう……!ウェイランドを!」
レックスが謎の異生物達が戦っている隙に逃げ出す為、昏倒していたセバスチャンを起こしウェイランドを連れるよう、指示を出す。
ケルティックとゼノモーフの戦いは熾烈を極め周囲の壁や柱が崩れ始めている。
今しかない――!
レックスとセバスチャン、そしてウェイランドはこの場から逃げ出した。
「ゼノモーフめ、思いの外素早いな……!リストブレイドも尻尾を切った時に溶けてしまった」
ケルティックはゼノモーフの尻尾を切り飛ばし、その流れで尻尾を掴みジャイアントスイングしながら壁に叩きつけ最後に投げ飛ばした。
溶けたリストブレイドを確認し、投げたゼノモーフを見た。
「今トドメを刺してやる……!!!」
ケルティックが地面を踏み締めゼノモーフへと走る。
すると、ゼノモーフは切れた尻尾から滴る酸性血液をケルティックへ飛ばした。
「クソっ!!」
ケルティックの身に着けるアーマープレートに血液が付着し、強力な酸により腐食しだした。このままでは皮膚に到達してしまうので急いで身体から剥ぎ取り捨てた。
そして再度突撃しようと前を見ると、ゼノモーフは忽然と姿を消していた。
「どこへいった?」
ビジョンを切り替え捜索していく。
「フフフ、奴の気配は掴んでいる……そこだ!」
ケルティックはゼノモーフに気づいていないフリをし、ゼノモーフが背後から飛びかかるところへネットランチャーを射出しゼノモーフを捕えた。
ネットに巻かれたゼノモーフは脆い床に落ちそのまま突き破って地下へと落ちていく。地下に敷き詰められた人骨の上を転がっていくゼノモーフを追いかけ地下へと降りたケルティックは、ゼノモーフへ近寄り脛に取り付けた鞘からセレモニアルダガーを抜く。
ネットが装置により巻き取られ網につけられた極小の刃がゼノモーフを格子状に傷つけていき緑色の血が溢れ出す。
「ふんっ他愛もないな!楽勝ではないか」
ケルティックが勝利を確信し、ダガーを振りかぶった瞬間ー。
ネットが酸性血液により焼き切れゼノモーフが解放される。
「なっ!?」
まさかの事態に呆気に取られ怯んだケルティックはゼノモーフに押し倒され後頭部を人骨で強打し気絶してしまう。
「キイイエエエエエエエッ!!」
ゼノモーフがケルティックの上へ乗り咆哮を上げた。そしてマスクを器用に剥ぎ取り呼び出したフェイスハガーをケルティックに……。
「アレは一体なんなんだ!?」
「私が聞きたいわ!!」
レックス、セバスチャンはウェイランドを連れて無事逃げることに成功した。
そしてウェイランドが咳き込み一時休憩を取ろうと提案する。セバスチャンが周りを警戒し、レックスはウェイランドを介抱する。
「休ませてくれ……!」
「ウェイランド!しっかりして!私を見て!呼吸よ、ゆっくり深呼吸して!」
「ふぅ……もう私はダメだ」
「何を言ってるの!諦めないで!」
「もういいんだ」
ウェイランドは諦めを口にし、レックスが窘めるように身体を支える。そこで別の個体が近づいてくることを察知したセバスチャンが叫んだ!
「別の奴がきた!!逃げるぞ!!」
「ウェイランド!いきましょう!」
「君たちだけで逃げるんだ!私は置いていけ!」
「そんな!」
「レックス!行こう!」
ウェイランドは己の死期を悟り、若い2人を逃す為、恐ろしい生物を止める殿になった。それが死を早めることになるとは知らずに。
「これは……」
エイペックスさんと別れ、武器を持った人間を探していたら複数の人間の遺体を見つけ、更にチョッパーの遺体も見つけた。
しゃがみ込み、チョッパーの遺体を検分する。
腹から背中にかけて大きく穿たれ、頭に至っては破裂したかのように原型を留めていなかった。強固なバイオマスクを何かが貫通したようだ。
「まさかゼノモーフにやられたのか……?一緒にいたケルティックは?」
更に辺りを見回すと、チョッパーを貫いたゼノモーフのものだろうと思わしき尻尾が見つかった。周りの壁や柱は崩れており、かなり激しい戦闘があったことが知れる。
それとアーマープレートの一部か?これは溶けている……?
まさかケルティックも……いや、ケルティックはエイペックスさんほどではないが強い、ゼノモーフ程度油断しなければ大丈夫なはずだが……もしかすると狩猟を終えて外に出たのか?ケルティックの気配はまるでない。
ん?あちらに人間の反応がある。行ってみるか。
ビジョンを切り替えると人間の形跡が見て取れる。追跡は容易だ。武器を回収してゼノモーフを狩猟し帰還しよう。
人間の足跡を追うと広い階段で人間達が休んでいるのが見えた。
「武器を持っているのはあの女か」
返してくれれば何もしない。
近づこうとするとその内の1人が鎌で斬りかかってきた。
私は鎌を持つ腕を掴み、反対の手で首を掴んだ。
「そうまでして立ち向かってくるか」
しかし私の言葉を人間が理解することはない。
「ぐふっ……」
なんだ?妙に苦しそうだ。
ビジョンを切り替えて人間の体内をスキャンするとその原因がわかった。
「これは病巣か、長くないな」
心臓から肺の周辺まで悪性の病が広がっていた。私が手を下さずとも放っておけば勝手に死ぬだろう。
「今ある命を大切にしろ。此処で無駄にするな」
クソ。言葉が通じればな。
私は病気の人間を放し、武器を持つ人間を追いかけようと足を踏み出した。
「……舐めるなよ」
「ん?貴様っ!!」
見逃した人間が私の一瞬の隙を突き火炎を放ってきた。
「そこまでして死を選ぶか!人間!」
一度見逃したのに、この仕打ち。今楽にしてやる。
私はリストブレイドを最大限伸ばし腹から心臓に向かって突き刺した。
口から血が溢れ即死したのを感じた。
そのまま人間を階下に投げ捨て歩を進めた。
走って逃げた2人を追いすんでのところで遺跡の変動を感知した。クソ!このままだと逃げられてしまう。
腰帯に括り付けたシュリケンディスクを広げ思いっきり投げた。
勢いよく飛んでいったディスクは2人が通った狭まる通路を上下にぶつかりながらも向こう側へと到達したように見えた。
「仕留め損ねたか」
はぁ……人間の思わぬ動きに少しイライラしてしまった。私達の武器を奪い、逃げ惑う人間達、そして敵うなど絶対に不可能なのに立ち向かう人間を見て正常な判断を下せていない。エイペックスさん、私はまだまだ未熟者のようです。
「追いつかなけれ…」
殺気を察知し、手に持っていたシュリケンディスクをその方向へと投げた。
すると投げた方向からフェイスハガーが飛びかかってきていてシュリケンディスクがフェイスハガーを真っ二つに切り裂き、ディスクが私の手に戻ってきた。
シュリケンディスクは実に扱いやすい武器の一つだ。投げると投げた者の微弱な電気信号を認識して必ず手に戻ってくる機能が付いている。
そして……
「分かっている」
このように近接武器としても扱える。
私は頭上から静かに忍び寄ってきていたゼノモーフを手に返ってきたディスクから伸びた6枚の鋭利な刃で頭から切り捨てた。
ズルッと頭が横にズレ息絶えたゼノモーフが崩れ落ちる。
「これで儀式は通過した」
ゼノモーフを一体狩猟した。後は武器を取り戻し、帰還するだけだ。
「エイペックスさんに言われた通り、額に印を刻むのはやめておこう」
斃れたフェイスハガーの脚をへし折り、腕にゼノモーフの印を焼き付けた。マスクは落ち着いたらでいいだろう。
「エイペックスさんは大丈夫だろうか」