スカーの船から小型船に乗り、イシムラにドッキングした。ドッキングステーションには無理やりドッキングしたであろう故障した小型船が停まっていた。中に人はいない。小型船は、完全に壊れていて使い物にならなさそうだ。
ステーションから長い通路を渡る。通路にはゴミが散乱していて、人が居なくなって何十年も経ったような様相だ。人間用の扉を身体を屈め中に入ると、外と同様ゴミが散乱し、閑散としていて人気がない。天井が低くて頭をぶつけそうだ。
先へ繋がる扉は閉ざされていて進む事ができない。扉の前に出ると上部についている機器からレーザーが俺に照射される。セキュリティスキャンだ。
「【RIGの同期ができません。未確認の生命体を検知しました。エラー…】」
「うむ……」
勿論、俺にRIGなんてもんはついていないし、俺は人間じゃないから通れない。
RIGは最近人類の間で普及している装備品だ。背骨にそって背中に取り付けられ、人間の体調管理をサポートする。宇宙空間での酸素確保や装備品のエネルギー制御も行える。生命パラメーターを可視化して自身の状態をすぐに確認できる優れ物だ。
まぁ俺たちには必要のないものだ。
突っ立っていても埒が明かないので、俺は扉を殴りこじ開けた。
「【不法侵入…】」
上部の機器がうるさかったからジャブを放ち壊した。扉を潜り奥へ進むと、中は血だらけで、窓と床に血が飛び散り臓物が撒き散らされている。床には薬莢が沢山落ちていた。だが肝心の死体が見当たらない。
マスクのビジョンを熱源サーマルに切り替え部屋を見渡すと、この部屋で何かが起きたのはつい先程の事のようだ。血や臓物にまだ熱が残っている。そして複数人の人間、情報にあった3人だろうか?その痕跡が二手に分かれ部屋から離れていた。
俺は下に降るエレベーターに続く痕跡を追った。
細く暗い通路を進んでいくと、エレベーターについた。扉に夥しい量の血とネクロモーフのものであろう死体の肉片が散らばっていた。
この任務に就く前にゴンジから煩く言われた事がある。
(ネクロモーフの体液を浴びたり、体内に入れないようにしろ。少しでも入ればネクロモーフに変質する可能性がある。いいか?絶対に食ったりするなよ)
とゴンジがこれでもかと俺に念押ししてきた。だから今回の俺の装備は少し邪魔くさいが、ナノ粒子で作られた全身を覆うアーマーを装備している。俺の素肌やドレッドヘアーにいたるまで全てがナノ粒子に覆われ、側から見たら謎の金属生命体だろうな。フジティブ渾身の作と言っていた。
ナノ粒子だから重さを感じず、可動域の邪魔をしないから、こういった危険な任務に就く時に重宝されている。まぁ俺は正直いらなかったけど、ゴンジがどうしてもというので今回は装備した。
今回持ち出した装備品はこのナノ粒子アーマー以外にもある。愛用のスピアは勿論持ってきた、リストブレイドとシュリケンディスク、まあこの辺は俺の標準装備だが、これに加えもう一つ持ってきた武器がある。それがこれだ。
俺は背中の鞘からそれを振り向きざまに抜き放ち、後ろに迫ってきていたネクロモーフを両断した。
ネクロモーフが縦に両断され真っ二つに分かれ倒れた。刀を鞘に戻し、死体を見た。
しゃがんで死体の断面を見ると、高温で焼かれたように焼き上がっていた。傷は焦げ一滴の血も流れていない。
俺が持ってきたのは高周波ブレードと呼ばれている刀だ。刀は日本で大昔から戦士の間で使われてきた刀剣で、素晴らしい切れ味と美しさを兼ね備えた剣だ。それをオブライエン&ハワード産業とフジティブの共同制作で作った。
刀に使われている金属は俺たちのスピアやリストブレイドに使われているゼノモーフの酸性血液でも溶けることがない特殊金属で、それをフジティブが加工し、オブライエン&ハワード産業の技術で完成させた。刀身を超振動させ剪断力を強化し、あらゆる物を焼き切る。しかし、通常の刀では超振動させただけで金属が融解し崩壊してしまう。そこで高周波パルスを鞘から刀に纏わせ金属の原子結合と刀剣の強度を高め超振動による崩壊を防いだ。と、フジティブが語っていた。
背中に少し大きな鞘を背負う事になるのが欠点だが、使い易さを考えれば多少のデメリットは気にならない。
ネクロモーフの死体に溶解液をかけ消し去り、エレベーターのボタンを押した。船の中は辛うじて電気が通っていてエレベーターは動いてる。
チンと音がしてエレベーターの扉が開く。中には扉についた血の持ち主の死体が転がっていた。
中に入り、下階に向かった。
下階に到着して、降りた。部屋を見渡すと、刃物で乱雑に何回も切られたようなネクロモーフの死体があった。
「ふむ……」
まだ温かいな。ネクロモーフを殺した奴が近くにいるな。
更に部屋を探索すると、壁に【四肢を切れ】と血で書かれているのを見つけ、その下の机にメモが置いてある。
メモを手に取り読んでみると、プラズマカッターの使い方が記されていた。
プラズマカッターは岩を切断する為の
銃による点の攻撃ではなく、カッターなどの面の攻撃で四肢や胴体を切断し行動不能にするのがネクロモーフにとって有効なのか…勉強になった。俺の持ってきた武器で有効なのはスピア以外のものだな。スピアいらなかったか…
ん??
何か聞こえる。
通路を駆け抜け、音の出所に行くと茶色のパワースーツを身に纏った1人の人間がネクロモーフと戦っているところだった。
手に持つプラズマカッターをネクロモーフに発射している。四肢を的確に狙い切り落とし、床に倒れたところに近づいて大声を上げながら踏み潰した。
中々やるなぁ!
工具をしっかり使いこなせている。此処に訪れた修理技師の1人だろうか?
とりあえず俺はクロークを解除し、後ろから近づいた。
そして、肩に手を置き声をかけた。
「よう!」
「うおおおおおおう!」
驚き、仰け反り、俺にプラズマカッターを向けてきた。そりゃビックリするか!
俺は両手を上にあげて襲う意思がない事を伝えた。
「お前はなんだっ!」
「俺はエイペックス、プレデターだ。此処にはネクロモーフを殺しにきたんだ」
「ネクロモーフ?この化け物のことか!?」
「そうだ」
男が俺にプラズマカッターを向けながら言った。
「とにかく、俺にそれを向けないでくれ」
「わ、悪かった…化け物の仲間かと思ったんだ」
「まぁいきなり声をかけられたらビックリするよな、俺も悪かった」
男に謝られ俺も謝った。それから軽く自己紹介をした。
彼の名はアイザック・クラーク。
「なぁ…アイザックはマーカーというものを知っているか?」
「マーカー?なんだそれは?目印の事か?」
「いや、知らないならいい」
「お、おう」
嘘はついてなさそうだ。俺のもう一つの目標はマーカーの存在を知る人間を探す事だ。アイザックは違う。彼は純粋にこの船を修理し、行方が知れない恋人のニコールを探しにきただけだ。残る2人を探さなくちゃいけない。
俺はガントレットを操作し、スカーにメッセージを送った。
「【スカー、船内はネクロモーフが蔓延ってる。3人のうち1人を見つけて行動を共にする事にした。そちらはどうだ?】」
「【こちらはハイブマインドを処理。ただ、マーカーは採掘場ではなくイシムラに積まれたようです。しかし、船内をスキャンしても詳細な位置が分かりません…あるはずなんですが】」
「【妨害かなにかされているのか?もしかすると特殊な感応波やらで隠れてるのかもしれん。なんとか見つけて外に出す】」
「【了解、船外で待機してます】」
通信を終えると、俺の事をまじまじと見ていたアイザックに気づく。何か気になる事でもあったか?
「どうした?」
「あ、いや、エイペックスさんの背中のものなんだが…」
「あぁ、これか?」
俺は背中の高周波ブレードを鞘ごと取りアイザックに渡した。俺が渡すとアイザックが興奮したようにそれを見始めた。
「おほおお!こ、これはまさかオブライエン&ハワード産業の装備!?」
「あぁ、そうだ。俺はそこから任務を受けて此処にきたんだ」
「も、もしやあなたはあの銭湯の壁に描かれているプレデターでは…」
「あーハハハ………」
銭湯の常連だったか、風呂好きに悪い奴はいない。
アイザックから高周波ブレードを返してもらい、共に先へ進む事になった。
アイザックははぐれた仲間を探しながら船の修理をしていくそうだ。
船の更に奥に進んでいくと、ネクロモーフに襲われた。両手が鎌の奴だ。こいつが1番数が多い。最もポピュラーなネクロモーフなのだろうか?俺は高周波ブレードでバッタバッタ斬り殺して、アイザックはプラズマカッターで四肢を切り飛ばした後、近づいて踏み潰していた。
アイザックが着ているスーツは宇宙船修理用のスーツなだけで何もパワー補助がついていない筈だが、凄い勢いでネクロモーフを踏み潰していた。血が飛び散り当たった箇所が爆散していた。それに、踏み潰す度に「フガァァ!」「フオオオ!」と声をあげるのでちょっと面白かった。
しかし、ただの修理工のはずなのにこの事態に上手く適応しネクロモーフと戦えている。ちゃんと訓練すれば強い戦士になるだろう。
両手が鎌以外のネクロモーフもいた。赤子が変異した悍ましいもの、片腕に光るデカい唐揚げをつけたもの、蹲り背中からガスを放出しているもの、蠍みたいなやつ、とにかく色んな奴らがいた。
アイザックと俺はネクロモーフを倒しながら進んでいった。船の中は正に地獄だった。人間の死体に取り付くエイのようなネクロモーフが死体を瞬く間にネクロモーフに変え一緒に襲いかかってきたりする。エイは俺が刀で粉微塵にしてアイザックは途中で見つけた作業台でプラズマカッターの出力を上げ切断範囲と威力を爆上げした、もはや工具とは言えないものでネクロモーフを殺していた。
そして、船を探索していく中で見つけた乗員のログでこの船で起こった事を知った。乗員の殆どがネクロモーフと化してしまったという情報を見て、アイザックは自身の恋人であるニコールの事が更に心配になった。
だが、アイザックはニコールの生存を信じて疑わない。
そして遂に、アイザックの2人の仲間を見つけた。
「アイザック!!」
「良かった!無事だったのね!」
仲間の2人がアイザックに駆け寄る。2人は傷だらけで、はぐれた後なんとか生き残ってきたのが分かる。
そして2人が俺に気づいた。
「あ、あんたは……」
「俺はエイペックス。プレデターだ」
「プ、プレデターだって!?おい!ケンドラ!」
「プレデターがこの船で何をしているの!?」
2人が手に持った銃を俺に向けてくる。その間にアイザックが入り止めた。
「2人とも!彼は味方だ!ここまでこれたのは彼がいたおかげだ!彼は此処に化け物退治にきたんだ」
「驚かせてすまない」
俺は2人に頭を下げ謝った。そして2人に聞いた。
「聞きたい事がある。君たちはマーカーというものを知っているか?」
ん?
「マーカー?なんだそれは?」
「知らないわね……」
「……そうか」
ハモンドと名乗った男はマーカーの事を知らないようだ。ただ、このケンドラという女性は少し心拍が上がった。怪しい〜。
「ふむ…まあいいか。アイザックも含め、俺と同行してもらうが、いいか?安全は保証しよう」
「だ、だが私達は此処へ修理と調査にきたんだぞ任務が……」
「ハモンド!此処は地獄よ!任務は諦めて脱出しましょう!」
ハモンドが任務の為と言うが、ケンドラが冷汗をかきながらハモンドを説得する。ケンドラ…?どうした?心臓がバクバクじゃないか。
「エイペックスさん、俺はニコールを探したい。彼女は生きているはずだ。助けを求めるメッセージをもらったんだ」
「ああ、俺もまだやる事が残っている。ついでに探そう」
ケンドラの心臓が暴れ回ってるが、無視した。コイツ焦りすぎだろ。
そうして同行者が増えた。
彼らは乗ってきた船で脱出を試みようと話していたが、俺は彼らの船の状態を言った。
「3人が乗ってきた船は完全に動かないと思う…脱出は俺達の船でどうだろう?」
「やはりか…ドッキングする時に急にイシムラ側に重力アンカーにエラーが発生して衝突したんだ…」
「そうか」
そうなれば、俺の目的を速やかに達成して彼らを脱出させないといけない。マーカーがイシムラのどの区画にあるのか調べないといけないな。
「ハモンド、この船の積荷目録はどこにあると思う?」
「……恐らく艦長が持っているはずだ。バイタルサインによれば既に艦長はこの変事で亡くなり遺体は安置所に置かれているようだが……」
「よし、じゃあそこに行こう」
俺たちは遺体安置所を目指し部屋を出た。
道中ネクロモーフに襲われながらも、俺とアイザックで瞬殺した。アイザックは、食糧庫に陣取った巨大なネクロモーフをサクッと倒していた。俺は殆ど何もしてない。たまに飛んできた触手を斬り飛ばしてたぐらいだ。
もし此処を生き残って出る事ができたら、オブライエン&ハワード産業を紹介してやろう。彼は優秀なシステムエンジニアだ。
そうして遺体安置所に到着した。遺体が所狭しと置かれていてどれが艦長の遺体か分からない。
「あれだ」
ハモンドが指差しそこへ向かおうとする。
そして一歩足を踏み出したところで、エイ型のネクロモーフが大量に天井から落ちてきた。気持ち悪いな!!!
エイは大量の死体に取り付き次々とネクロモーフに変異させて襲いかかってきた。
ハモンドが尻餅をつく、俺はすかさず前に出て背中から高周波ブレードを抜き放ち、ハモンドに迫っていたエイ型のネクロモーフを両断した。
そして俺の感覚を掻い潜り横に迫っていた、グロテスクな身体を大きく広げたエイが突然消えた。
「アイザック!」
只の修理工、アイザック・クラークが特徴的なマスクを光らせながらプラズマカッターを構えていた。
「ハゲモンドォ!!エイペックスさんを困らせるなー!!」
「これは剃ってるんだ!!」
焼肉しながら敵を殺せる高周波ブレード、エイペックス君は意外と気に入ってます。