ビビッときたので書きました。お願いしますー!
エイワ!!!!
宇宙はとても広い。そりゃもうめちゃくちゃ広い。今もなお広がり続け膨張している空間には、無数の星がひしめいている。
地球のある太陽系や、アヌ族の母星がある宙域。それらを大きく包み込む銀河系を更に包み込んだ大銀河系とか超銀河系とか、とにかく宇宙は広い。
時は2154年。俺は宇宙を放浪していた。地球や母星で過ごすのも悪くないが、やっぱり外に出てサバイバルをしたり、獲物を狩ったりする方が性に合っている。どうも一定の場所に留まっていると身体がムズムズしてきちゃって我慢できない。走って跳んで身体をしっかり動かして1日を終えたいんだ。
アヌ族の母星のある宙域や地球のある太陽系付近は大体探索した。雨しか降ってない星とかガスだけの星とか不毛な星が山程あった訳だが、生物のいる星は実は滅多にない。1,000の星を探索しても生物のいる星は20〜30ってとこだろう。
以前は適当に船を飛ばして別の銀河系に訪れたりとかしてたが、遠くまで行くと帰ってくるのにもまぁ時間がかかるから面倒だった。だから最近は近場で生き物のいる星を探していた。
プレデターは狩りを生業とする宇宙狩猟民族なのだ。筋トレばかりしてる宇宙人ではないのだ。狩りをしろ狩りを!なーんてゴンジに怒られて母星を追い出されたなんて口が裂けても言えないが、確かにここ最近は人間を助けては母星に放り込んでたりしてたわけだからプレデターとしては失格だなと思った。いや…でもゼノモーフクイーン狩ったりケルティックモーフ君を狩ったり養殖プレデターを成敗したりと俺はかなり頑張っている方だと思うんだけど、ゴンジの目には俺が筋トレばかりしている腑抜けに見えるようだ。困ったぜ。というか最近ゴンジの奴は地球ばっか行ってるって聞いた。何やってんだろうな?
まぁそんなこんなで俺は母星を追い出されてプレデターとしての生を謳歌している最中なんだけど、今俺の目の前に地球からやってきたであろう宇宙船が横切っていた。
スキャンをすると沢山の人が乗っている。俺には気づいていない。船にクロークを施し宇宙の闇に溶け込んでいるからだ。
船には人間だけではなく、見たことのない人型の生物も乗っていた。しかし、その生き物は大きいカプセルの中に入れられ水の中にぷかぷか浮いていた。まるでフェイスハガーのようだった。
その生き物は人間よりも遥かに大きく、背丈は普通のプレデターよりも大きいかもしれない。俺と同じくらいかも。
だが身体の線は細く最低限の筋肉しかついていない。プカプカ浮いて筋肉が落ちてしまったのだろう。勿体無い。
にしても何処へ向かっているのだろうか?ついていっちゃおーかなー?
実はこの辺りに来たのはついさっきだったりする。彼らがどこに向かうか知らないけど、地球ではない別の星に行くつもりなのだろう。なんか面白そうだ。
「ウェイランドユタニじゃなけりゃ大丈夫だろう」
人間とよく分からん生き物が乗る船にはRDAと大きく記入されている。地球の会社だろうか?
暫く宇宙船の後ろにひっそりとついていくと、巨大な星とその周りに浮く衛星が見えてきた。惑星をスキャンすると巨大な星はガス惑星でただ大きいだけだが、衛星は地球と同じような雰囲気が感じられる。大気構成も地球と大して変わらないが、随分と揮発成分が多い。二酸化炭素や硫化水素といった人間には毒物である成分が大気中に充満している。俺にはマスクがあるし、散々色々な星でサバイバルをしてきたから平気ではあるが、人間にとっては致死的な環境だろう。
星の見た目は完全に地球と同じだ。海があって大陸が見える。多様な生物に溢れ、俺好みの熱も感じる。
強そうな生き物がいそうだ。
船から一隻の輸送機が射出され星に向かって突入を始めた。俺もその後ろから突入を始める。
人間の輸送機から放出される熱波の届かない距離を保ちながら星に突入すると、ジャングルを切り開かれ採掘されている場所や人間の手によって建築された広い施設が見えてきた。
施設から少し離れた広大なジャングルには天をも貫く程巨大な大樹が何本も見え、その周りに小さい翼竜が何匹も飛んでいるのが見えた。とても自然豊かな星だ。まぁ、それも人間達によって破壊されているみたいだが…
俺は施設から少し離れた上空に船を待機させ施設の観察を始める。
基地とも施設とも工場とも呼べる場所には人間が溢れていて、せっせと仕事をしている。大きな人型の機械に搭乗し荷物を運んでいる者や、銃を持った兵士達が並んで動いている。施設の周りは排出された汚い煙が舞い上がり、あまり景観は良くない。
人間は此処で何をしているのだろうか?
着陸した巨大な輸送船から沢山の人が降りてくる。皆、銃を持っている。
そしてマスクをつけている。やはり人間にとってこの星の空気は害なのだろう。
「ん?」
輸送船から降りてくる人間達の中に1人気になる存在がいた。
車椅子に乗った男だ。こんな過酷な星に車椅子で?それにどこかで見た事がある顔だ…うーん…思い出せない。さっき見たような…周囲を見まわし、意を決した表情で車椅子を動かしている男は一際大きな建物へと向かっていった。
人型機械が男の側を通り、そして大きなダンプカーが横切った。
ダンプカーのタイヤには人間が扱う物とは明らかに違うサイズの弓矢が何本も突き刺さっていた。
太くて大きい矢だ。この星に住む生物が扱う物だろうか?
やはり人間はどこに行っても歓迎されないようだな。そりゃこんな環境破壊してりゃ怒られるか…人間はどこまでも欲が深い。
此処までくる途中で見た巨大な機械が地面を掘り何かを採掘していた。人間にとって価値ある何かがこの星にあるのか…まぁ俺には関係ないか…
「……!!!」
おお!銭湯があるじゃねーか!
車椅子の男が向かった建物の隣に湯煙が立ち上る建物があった。看板には日本語で大きく【頂点銭湯】と書かれている。
頂点銭湯……ちょっと恥ずかしいんだけどな〜あれ…
なんでオブライエン&ハワード産業じゃないのか?と以前銭湯の連中に聞いた事がある。
「エイペックスさんのお陰ですから」
と連中は言っていたが…まさかこんな所にまで出店しているとは思わなかった。
とりあえず入るか。
俺は船の搭乗口を開けて自身にクロークを施し飛び降りた。
そのまま施設を囲う大きな鋼鉄の壁を跳躍して飛び越え敷地に侵入し銭湯を目指した。
俺の側を通る人間はまるで気づいていない。俺の纏うクロークは以前まで使っていた旧式の装備ではなく、フジティブお手製のクロークである。
ジオメトリクス族滅亡後、オブライエン&ハワード産業に身を寄せたフジティブは技術提供を条件に自身の思うがままに物を作っている。以前助けたクイン・マッケナの息子ローリ・マッケナと共に全生物が気持ち良くなれる銭湯を開発し宇宙にまで勢力を広げたなんて話は少し前の事だ。
銭湯を開発し宇宙にまで勢力を広げたなんて話は少し前の事だ。
クロークは完全に景色に同化し、俺の放つ気配や体臭まで抑える。もはやゼノモーフはクロークを起動した俺達プレデターを捉えることはできず、なすすべもなく斃される憐れな獲物に成り下がった。もちろん成人の儀式ではフジティブの作った装備は使用禁止であるが、突発的に起こったゼノモーフ発生なんかで死んでしまうプレデター達は圧倒的に少なくなった。…ゼノモーフはプレデターの放つフェロモンを察知してクローク越しでも反応してくるが、フジティブお手製のクロークはそれすらも抑えてしまう。原理はさっぱり分からん。ナノテクノロジーがどうとかなんとか言ってたが。
銭湯に必ずある宇宙人銭湯の通用口から建物に入ると、身体全体を暖かな空気が包み込んだ。
宇宙に進出した人類といえど未だハッキリと宇宙人と遭遇していない。ゼノモーフやら原生生物には遭遇しているが、知性ある宇宙生物とは一部を除いて交流はない。混乱を避ける為に銭湯は人間用と宇宙人用に分かれていた。
「ホッ」
風呂に入ってないのにもう気持ちいい。
「あ!いらっしゃい!……あーーーー!!!エペじゃん!!!」
「あ…モリー」
番台に照射されていた光が徐々に人の形に変わり、見覚えのある女性が姿を現した。
100年以上前に死した人間の女性、モリー・オブライエンだ。
彼女は自身の意識をデータとして保存し、それをフジティブがAIとして再生した。意識、記憶、彼女の全てが再現されているが、所詮偽物である。俺はあまりいい気分ではなかった。なんというか、生き物じゃない物を好きになれないんだ。
ちなみにこのデジタルモリーは全銭湯に存在する。どこの銭湯に行ってもモリーがいるのだ。
「こんな辺境に来るなんてビックリ!」
「たまたまだ。この星に人間が向かうのを見かけてな。ついてきたんだ」
「へぇ……そうなんだ!まぁ!ゆっくりしていきなー!」
「おう」
俺はモリーに手を振ってズカズカと銭湯の中を進み、
銭湯のデザインはどこもほぼ同じだ。大きな湯船があって身体を洗う場所が並んでいる。壁にはティムが誇張してデザインしたゼノモーフと戦う俺とウルフ大先生の絵が描かれており少し恥ずかしい。
桶を手に取り、溜まった湯をすくって身体を流すと湯船に浸かった。
「ふぃーー……」
気持ちいいーーー!!!
やっぱ風呂は最高だ。
身体についた汚れから悪臭やら全部落ちて綺麗になれる。身も心もポカポカして最高の気分だ。
あれ、俺何しにきたんだっけ…?
暫く銭湯を堪能した俺は建物から出て、外に見えたジャングルへと入った。
ジャングルは見たことのない動植物で溢れており、俺の好奇心をくすぐる。
人間の基地があった場所からかなり離れた場所まで移動した俺は、目の前で繰り広げられている巨大なサイのような生き物と同じく巨大だが獰猛なヒョウのような生き物が睨み合いをしているのを木の上から観察していた。
巨大なサイは頭蓋にカラフルな膜を持ちそれを広げて威嚇をしている。地球にいた襟巻きトカゲという生き物の特徴に似ていた。
一方それに対して巨大なヒョウは鋭い牙を剥き出しにしてサイを見据えている。表皮は漆黒でつるりとしている。見た限りとても硬そうだ。正直言うとすごいカッコいいし強そう。
両者は威嚇し合い今にも戦いを始めそうだ。
「ん?」
その間にふわりと白い小さなクラゲみたいなものが舞い降りた。
すると今の今までお互い威嚇していたサイとヒョウが驚くほど大人しくなり木々の間に消えていってしまった。
「なんだ?」
せっかく面白そうな戦いが見られそうだったのにな。あのふわふわと漂う白いやつはなんだ?
んーーー???
待て…俺に近づいてきてないか?
ふわ、ふわ、と木の上にいる俺に近づいてくる白いクラゲ。
「ありえない」
あんな目も鼻も、感覚すらもなさそうな生き物かも分からないやつに俺の存在を察知できるはずがない。クロークを起動し極限まで気配を絶った俺に気付けるのはウルフ大先生くらいしかいない。
白いふわふわは一直線に俺に近づき、見えないはずの俺の腕にふわりと止まった。
白いやつが俺の腕に触れた瞬間、腕から身体全体に何かが駆け巡った。
「おごごごごごごごぼおご」
身体が痙攣し、白目を剥き仰反る。そして視界が真っ黒になった。
【た……け…】