養殖が天然に勝てると思うなよ?【本編完結】   作:物体Zさん

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怪物には怪物をぶつけんだよ

 

 「恐れるな!恐れるな!」

 

 ツーテイが飛んできた戦闘機群を見て皆を鼓舞した。

 

 ホームツリーの正面にある湖の上空に巨大な戦闘機が一機と沢山のヘリがホバリングしながら待機していた。

 

 正直今直ぐ森に逃げた方がいい。

 

 戦闘機相手ではいくら鍛えていても無駄だ。

 

 戦闘機に備え付けられている武器は人間が手に持つ銃とは比べ物にならない程強力な威力を誇っている。特に、あの巨大な戦闘機は地球で起きた戦争で単騎で街をものの数秒で滅ぼしていた。

 

 そんなものに地を歩く生身の生物が挑んで勝てるわけがない。

 

 「〈矢を放て!!!〉」

 

 エイトゥカンが号令を出す。

 

 弓矢を持ったナヴィ達が次々に矢をつがえ放っていく。

 

 人の大きさを優に超える大きさの矢が勢いよく飛んでいく。

 

 ……あれ?

 

 飛んでいった矢に当たったヘリが次々に墜ちていってる……

 

 「〈ツーテイ!イクランに乗り空から攻めろ!!〉」

 

 コックピットを貫通し操縦者に矢がブッ刺さっていたり、機体に刺さって堕ちたり……ちょっと待て……あれ普通の矢だよな?

 

 流石にデカい奴は墜とせないか……あ!

 

 デカいやつと生き残っている奴等から榴弾のような物が発射された。ポンポンポンポンという音が聞こえホームツリーの中に向かって山なりに飛んでいった。そして破裂音が聞こえガスが出て、充満していく。

 

 ガス弾か!

 

 中にいたナヴィ達がガスに煽られ出てくる。

 

 「《火炎弾を撃て!!!》」

 

 俺のマスクがデカい戦闘機から漏れる音声を捉えた。

 

 「マズい!!!エイトゥカン!!!森に逃げるんだ!!!」

 

 デカい戦闘機やヘリからミサイルが放たれホームツリーを支える幹に直撃する。そしてガスに誘引し一気に爆発した。

 

 爆風が俺の髪を揺らし、周囲にいたナヴィの戦士達が腕をクロスして爆風に耐える。

 

 「〈森に逃げろ!!!〉」

 

 流石にヤバいと思ったのか、エイトゥカンが撤退を促しホームツリーへと走っていく。あそこにいた者達を助けにいくのか。

 

 ナヴィ達が悲鳴をあげながら森へと走って逃げていく。そしてネイティリも…え?ジェイクとグレースは?ネイティリさん?見捨てちゃうの?

 

 流石に縛られたままじゃ死んじまうっつーの!

 

 俺は縛られている2人に近づき、縄を解こうとセレモリアルダガーを引き抜き切ろうとしたところで妙な気配を感じた。

 

 「動くな」

 「あ?」

 

 俺の背後から声が聞こえた。聞いたことのある、勇ましい声だ。

 

 刃物の鋒が俺の背中に当てられているのかチクリと痛みが走った。

 

 首だけで振り返ると、()()()()()()()()()。クロークだ。

 

 この気配、この声、そして音もなく俺に悟られる事もなく近づける者。

 

 「おいおいおいおい!なんでいんだよ!」

 「まさかお前がいるとはな、エイペックス」

 

 空間が侵食するように姿が現れていく。

 

 上裸にサスペンダーガンベルト、手には鋭く研がれたロングソードを持ち俺の背中に当てている。そしてその身体は筋骨隆々で一本一本の筋が分かるほど引き締まり無駄がない。()()()()()()俺を見据える瞳は煌々と橙色に輝き威圧感をより増長させている。

 

 嘗て俺と戦い、親友になり、エルダーとボディビルに励んでいる筈の男。

 

 「ダッチ……!」

 

 ダッチ・シェイファーが俺の背後を取り剣を当てていた。

 

 「人を襲いまくる怪物がいると聞いてやってきたが、お前なのか?」

 「……ん〜襲ったけど正当防衛だ!」

 「……まあいい、やるぞ」

 「はいー?今大変なとこなんですけど!?」

 「あ、あの〜」

 

 未だ縛られているジェイクが俺に言った。

 

 「今は戦っておけ、奴らが見てる」

 

 ダッチはそう言って後ろを指差した。

 

 「ぐぐぐ……とりあえずジェイクとグレースは解放させてくれ!」

 「早くしろ」

 

 俺は剣を払い除け、すぐさまセレモリアルダガーでジェイクとグレースを解放した。

 

 「2人とも、逃げ遅れた人を連れて逃げろ」

 「エイペックスさんは?」

 「俺はダッチとちょっと戦う。早く行け!」

 

 爆風が俺達の身体を撫でる。ホームツリーを見ると根元を支える太い幹が全て燃え、爆発の影響で粉砕されている。じきに倒れてしまうだろう。ミシミシという音が聞こえる。

 

 巨大戦闘機とヘリはホームツリーを倒すことが目的だったのか、今は静観している。

 

 そしてジェイクとグレースが去っていくのを横目で確認し、ダッチに向き直る。

 

 周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図だ。戦えない女子供のナヴィが泣き叫び狂乱している。戦える者達も故郷であり神聖な象徴であるホームツリーが倒れるのをただ見ていることしかできない。

 

 しかし、まさか此処でダッチに会うとは思わなかった。傭兵の仕事で来たのか?俺はてっきりエルダーとひたすら合トレしてるもんかと思っていた。

 

 「お前と戦うのは久しぶりだな」

 「はは、確かにそうだな。そういえば最初に会った時もこんなジャングルだったっけ」

 「ふっ……あの時と同じと思うなよ…!」

 

 ダッチがそう言った瞬間、俺の目の前から姿がかき消えた。

 

 「うおお!!」

 

 そして直ぐ横から殺気を感じて瞬時にリストブレードを伸ばしてガードした。

 

 ガキィィン!と甲高い音が鳴り火花が散る。

 

 とんでもねぇスピードで動いて俺の横に現れやがった!速すぎんだろ!?一瞬見失ったぞ!

 

 「おらぁ!」

 

 ガードしている剣の横っ腹を殴り払い除けると、そのまま拳をダッチに放つ。

 

 しかし、ダッチはそれを身体をスッと横にズラして避けると、腰からリボルバーを引き抜き俺の頭に向けて撃った。

 

 バァン!と大きな音が鳴り、頭に物凄い衝撃が伝わる。

 

 ダッチぃ!?普通に頭撃つなよ!?マスクしてなかったら死んでたぞぉ!?

 

 「おい!!!」

 「なんだ?」

 「なんだじゃねぇよ!!」

 

 ちょっとピキッときた俺はダッチのリボルバーを掴み握り潰す。パラパラと金属の破片が俺の手からこぼれ落ちた。

 

 「あっ」

 

 ダッチの声が聞こえた気がするが無視してダッチの頭蓋を掴んだ。

 

 「危ねぇだろ!」

 

 俺はそう言ってダッチを地面に叩きつけた。

 

 「ガハッ!」

 

 ズーンという音と砂埃が舞ってダッチが地面に埋もれる。俺は追撃に拳を握り上腕の筋肉を隆起させ倒れるダッチに放った。

 

 しかし、人体ではない硬いものに阻まれた。

 

 ダッチは倒れながらも手に持った剣の腹で俺の拳を防いでいた。鋭く綺麗に磨かれた剣身に俺のマスクが映った。

 

 「随分硬い剣だなぁ!やるじゃねぇか!」

 「そう簡単にやられんぞ!(まだ勝てないのか…!)」

 「ははっそうこなくっちゃ!」

 

 ん?

 

 周囲が急に暗くなった。

 

 「うぇええええぇ!?」

 「あれはちょっとヤバそうだな」

 

 上を見ると倒れるホームツリーが迫ってきていた。直ぐ横に太い枝が落ちてきた。

 

 「ちょちょおおお!!!!」

 

 俺は急いでダッチを引っ掴み起こした。

 

 「走るぞ!!!」

 「ふんっ」

 

 流石にあんなデカい木が倒れてきたら俺でも潰れちまう。

 

 宇宙にまで届きそうなほど巨大な大樹が根元を失い倒れてくる。

 

 オマティカヤ族の集落は完全に崩壊してしまった。

 

 「うああああああああああああ!!!!!!!」

 「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ひぃ〜〜なんとか避けられたな」

 「ふぅ……(今回も勝てなかったな…まだまだ強くならねば)」

 

 迫り来る大樹をなんとかやり過ごした俺とダッチ。

 

 周囲を見渡すとまるで隕石でも墜ちてきたんじゃないかってぐらい酷いことになっていた。

 

 人間の放ったものによる爆発で軒並み吹き飛び、空高くまで伸びていた大樹は今は倒れ横たわっている。大樹の燃えた灰が舞い上がり、火山の噴火後の様に降り注いでいた。

 

 その元凶たる人間たちは大樹が倒れる前にそそくさと行ってしまったようだ。

 

 「なんてこった」

 

 ここまでする必要があるのか?たかが金属を掘る為に自然を壊し命を犠牲にする必要が…?

 

 沸々と怒りが湧いてくる。

 

 人間は愚かだ。

 

 以前地球に乗り込んでブラックグーを撒き散らそうとしていたエンジニアがいた。彼はこう言った。「完璧な種を作った筈だった」と。しかし人間はただ欲望のまま突き進みエンジニアを裏切った。

 

 この星でもそうだ。

 

 話を聞こうともせず強引な手段で星を開拓し、無辜の命を奪った。ただそこで生きていた者達を、罪のない者達を、故郷を奪った。

 

 そしてこの有り様だ。

 

 俺は人間が好きだ。

 

 だが……こうも愚かな人間を好きになる程俺は優しくない。

 

 しゃがんで、足元に積もったホームツリーの灰を手に取った。そして手を開くと風に吹かれ消えていく。故郷を失う辛さはどれ程のものなんだろうか?俺には分からない。

 

 「エイペックス…」

 「ダッチ、今回ばかりはダメだ」

 「……」

 

 俺が怒りを滲ませながら言うとダッチが俯く。そして俺を見て言った。

 

 「やるのか」

 「あぁ、狩られる獲物の立場を思い出させてやろう」

 

 

 これまで人類を守ってきた頂点捕食者(エイペックス)が人類に牙を剥く事を決意した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 一方、ホームツリーを爆砕し多数の原住民ナヴィを滅殺したクオリッチ大佐率いる傭兵軍団は怪物狩りとプレデターが倒れる大樹に飲み込まれていくのを見届けた後、RDAの基地へと帰還した。

 

 「諸君、銭湯でさっぱりしようではないか!俺の奢りだ!」

 

 人間側も犠牲を出したものの目標を達成し上機嫌に帰還したクオリッチ大佐は無線で傭兵達にそう伝えた。

 

 そして汗ばんだ身体を流しに基地施設の隣にある【頂点銭湯】へと向かったクオリッチ一同は、銭湯の入り口で衝撃なものを目にすることになる。

 

 「撤退だとぉっ!?どういうことだ!?」

 

 銭湯の入り口にはデカデカと大きな看板が立てかけられており、そこには大きな文字で【撤退】の2文字が書かれていた。

 

 そして出発前まで存在した筈の銭湯の建物は、まるで最初からそこに無かったかのように綺麗さっぱり消えていた。建物があった筈の地面には黒い煤のようなものが残っているだけで、雑草の一本も生えていない綺麗なコンクリートだけが残るのみだった。

 

 「大佐、こりゃ一体…」

 

 クオリッチの腹心であるウェインフリートが尋ねた。

 

 「わ、分からん…まあいい!銭湯は無しにしてビールでも飲もう」

 

 そして基地に残っていた傭兵やRDA社の民間人に銭湯の事を聞いても何時消えたのか誰も知らなかった。




エイワ【やっちゃったねぇ〜………】





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