「パヤカンどこだ!!!」
急いで三兄弟の岩に向かった俺達はそこでイルに跨るロアクを見つけた。大声を出してパヤカンを呼んでいる。
メトカイナ族の集落からリーフの外にある三兄弟の岩はそれほど離れていない。しかし、ロアクの方が早く着いたのはちょっと驚いた。
「ヴィーン、船の操縦を頼む」
「りょーかい!」
俺はヴィーンにそう言って船を三兄弟の岩の麓に停め降りると、海の中に飛び込みロアクの下に泳いで向かった。
「ロアク!」
「エイペックスさん…!みんなも!」
俺達がロアクの下へと泳いでやってきたと同時に大きな気配を感じた。
大きく海が揺れ、海面からトゥルクンが顔を出した。
「パヤカン!!」
ロアクに寄り添うように現れたパヤカン。しかし様子がおかしい。
パヤカンが身体を傾けヒレを見せた。そこには光が点滅する赤い銛が刺さっていた。
「こ、これは!」
「発信機だ。スカイピープルにやられたのか」
「クゥーン《逃げてたんだけど…つけられちゃった…》」
「大丈夫よ」
パヤカンの声が聞こえた。キリがパヤカンを撫でて落ち着かせている。
そしてそれと同時に三兄弟の岩の岩礁の影から大きな音と共に巨大な船がやってくるのが見えた。
「きたぞ!!!」
俺は皆にそう言うとパヤカンに刺さった発信機を抜き取り、握り潰して投げ捨てた。
「ロアク、すぐにジェイクに連絡しろ。『敵が現れたぞ』とな」
「……!わかった!!」
ロアクが俺に言われると、首に巻きつけてある通信機のボタンを押し通信を始める。
「父さん!スカイピープルだ!三兄弟の岩にいる!みんなもだ!」
ロアクが通信している間、俺は船に残ったヴィーンに手を振った。船に皆を乗せてジェイク達に合流だ。
船が離陸し、やってきた人間の船に向かっていく。あれ…?なんでそっちいくの?こっち来て乗せてよ!!!
そして俺の船の砲台が青く輝きエネルギー弾が連続で3発発射された。
「あ、あのエイペックスさん?」
「ちょぉ!!!?」
ヴィーンさん!?!?
ジャミングによってロック機能が使えないからか発射されたエネルギー弾は船の左船体を掠めて海に着弾して大爆発を起こした。水飛沫が舞い、まるで雨が降っているかのように落ちてくる。
「クィーン!(おぉぉぉ!すごーーい!)」
パヤカンがヒレを海面から出して振っている。そ、そんなにすごかった?
エネルギー弾に直撃はしなかったものの、爆発の衝撃で船体が大きく傾き、横にあった三兄弟の岩に連なる岩礁にまで押され乗り上げてしまった。
そして何かが起きたのかいきなり船の後方で爆発が起こり火の手が上がる。
「なんだ?何が起きてる!?」
ヴィーンの操縦する船がUターンしこちらへ戻ってくる。そして後部ハッチが開きヴィーンが現れた。
「エペさん!あの船で暴動?が起きてるみたい!」
「なにぃ!?」
本当に何が起きてるんだ??
マスクで視界をズームして熱源サーマルに切り替え船を見ると、人間やナヴィが入り乱れ忙しなく動いている。そして生体反応が消失していく。誰かが戦っているのか?ん?あれは…
4人組のナヴィと小さな子供が船内を動き次々に人間やナヴィを殺していっている。誰だ?
「……いくぞ!!」
なんだかよく分からないがあの船を制圧するチャンスだ。
「パヤカン!乗せてくれ!キリとアヌオングは危ないから船に戻ってろ!」
「私もいきます!」
「クィーーン!(いいよ!)」
俺がそう言うとロアク、ネテヤム、トゥク、そしてキリがパヤカンに掴まった。
そしてパヤカンに全員が掴まると、猛スピードで泳いでいく。回り込むように泳ぎ船の右側に行くと潜水し、船が近づくと海面に向かって一気に加速した。
水飛沫と共に飛び出し、勢いに身を任せ船に飛び移ると、俺たちに気づいた兵士達が慌てて銃口を向けてくる。
「出たぞぉぉ!!!出たぞぉぉぉぉ!!!」
「やらせん!」
俺は脚に力を込め筋肉を隆起させると、思い切り甲板を踏み付けた。
震脚によって船がグラリと激しく揺れ人間とアバター兵士が体勢を崩し銃の照準が外れる。
その隙を突きネテヤム、ロアク、トゥク、キリの姿が掻き消え待ち構えていた兵士に向かっていった。
「ゴボォ!」
「ゲバッ!」
「グボッ!」
「グポッ!」
それぞれが待ち構えていた兵士の胴体に貫手を放ち殺すと直ぐに引き抜き、また隣の兵士に蹴りや拳を放ち倒していく。機械外骨格を纏っている人間は機械ごとへし折られ吹き飛び数人を巻き込みながら壁に激突し、力尽き倒れていく。目にも止まらぬスピードで兵士達を殺していくネテヤム達を見つつ、俺はシュリケンディスクを取り出し振って六枚刃を展開し、甲板上のデッキで銃を構える人間達に向かって投擲した。
フィンッという軽快な音共に風を切り裂きながら高速回転し飛んでいくシュリケンディスクが、並んでいる人間達を真っ二つにしながら円を描くように飛び俺の手に戻ってきた。
返ってきたシュリケンディスクを再度振るい刃を収め腰帯に戻して周囲を確認すると、甲板にいた人間やナヴィはどれも息絶えていた。
「此処は終わったな」
「大したことないですね」
ネテヤムが両手を振るい付いていた血を振るい落とすと言った。
「ネテヤム、油断するな。人間の持つ銃は一発でも喰らえば終わりだ」
「はい!」
そうして時に隠れ、時に大胆に人間とアバターに対し攻勢を展開していくと、目の前に4人のアバターと剣を背負った人間の子供が現れた。
真ん中にいるアバターは見た事がある顔だ。そして俺の腹にチクリと痛みが走る。摩っても何も感触はしない。まさか奴は…
「スパイダー!」
トゥクとキリが人間の子供を見て声を上げた。
スパイダー、捕まってしまったというジェイクとネイティリの養子か?
アバターは銃を構えず、俺たちを見据えている。
俺が船に突入する前に見た4人組のナヴィだな?
「プレデター……いや〈祝福の戦士〉」
見覚えのある顔のアバターが聞き覚えのある声で言った。
「お前……まさか」
「俺はクオリッチ、マイルズ・クオリッチだ。俺達に戦う意志はない」
クオリッチだと?お前はエイワに囚われてる筈だろ…?何がどうなって…
「ど、どういうことだ?」
「あ!あのアバター!」
「どうしたトゥク?」
トゥクが2人を指差しながら言った。知ってるのか?
「花畑で聖なる木の精にやられてた人達だよ!」
「あぁ…そういえば見た事がある顔だな」
トゥクの言った事にロアクが反応する。花畑であの白ふわエイワに何かされてたのか?
「ビクビクしてて気持ち悪かったけど…」
ビクビク???おいおいおい…マジかよ。
「パパ、4人からエイワを感じる…」
「えっ」
エイワ?一体あのアバターに何をしたんだ?戦う意志がないのは分かる。だが奴はオマティカヤ族の怨敵、ナヴィを殺しホームツリーを破壊した男だ。
「お前達が警戒するのは分かる。だが俺達は
「みんな!クオリッチが俺の本当の親父なんだぜ!」
クオリッチが落ち着いた声で説明し、横にいたスパイダーという少年が笑いながら言った。
「以前敵だった俺達がこんな事を言うのはおかしいと思うだろう。それは仕方ない。だが信じてほしい、俺達は味方だ」
「……」
エイワの導きでコイツらの何かが変わった。コイツらだけが。何をしようとしてるんだ?エイワ。
「とにかく今は信用してくれ、そして見せたいものがある。ついてきてくれ」
クオリッチがそう言って、部下と思われるアバターとスパイダーを連れていってしまった。
「どうする?」
「……いくしかないでしょう」
「彼らは信用できると思う。偉大なる母が導いてくれたのなら」
「そうか…」
「おーい!早くこいよー!」
先に進んでいったスパイダーの声が聞こえた。
「いきましょう、エイペックスさん」
「分かった」
そうして死屍累々の船内を進み、彼らについていく。船の上部へと昇り、一旦外に出て階段を上がると操縦席のある部屋にやってきた。司令室のような所だろうか。中には縛られた人間が何人かいた。
頭を屈めながら中に入ると、縛られた小汚い人間が罵声を浴びせてくる。
「おい!!離せ!!クソ野郎!!裏切りやがって!!クソ!クソ!」
随分とお怒りだな。
「黙れ、コイツはこの船の船長スコーズビーだ。そして…」
クオリッチが小汚い男をスコーズビーと呼び、平手打ちをして黙らせるとその隣にいる女性の前で屈んだ。
「コイツが今パンドラ侵略を指揮するフランシス・アードモア将軍だ」
「クオリッチ大佐…この裏切り…ただで済むと思うなよ」
「そうかお前が…」
俺が声を出すとアードモア将軍と言われた女性が睨んでくる。
「ふんっ宇宙狩猟民族のプレデターか、そうかやはり貴様だったか」
「ん?俺を知ってるのか?」
天井に頭がつきそうだから俺も屈んでアードモア将軍を見た。割と年が行ってる熟年の女性だ。将軍というからには偉い奴なんだろう。強いのか?
「14年前の動乱、そして地球で貴様達がやった事は全て知っている。あの忌まわしきオブライエン&ハワード産業の回し者だということもな。貴様らのような蛮族など――」
「ん〜〜大体合ってるけどちょっと違うな」
俺はマスクに手を掛けて外した。
「……!」
俺の顔は怖いか?
「俺は誰の回し者でもない。まぁオブライエン&ハワード産業は俺も
アードモア将軍の頭を掴みグイッと俺の顔に近づける。
「俺の顔をよく見ろ、いいか?俺達プレデターは何よりも名誉というものを重んじる。まぁ…お前も知ってるだろ?武器を持たない者や戦う意志のない者、子供なんかは武器を持ってても狙わない。プレデターってのはどんな奴でもそうだ」
「そ、それがなんだというのだ!」
「俺はなぁ…アヌ族のエイペックスだ。知ってるか?プレデターにも色々な部族があるんだ。そして俺の部族は
手に徐々に力を込め頭を締め付けていく。
「グァ…私を殺すのか!?名誉はどうした!!」
「俺の部族はバッドブラッドを狩る断罪の部族、お前みたいな悪い奴等を狩る事を生業にする部族だ。お前に明日を生きる資格はない」
「グピッ!」
そう言って俺はアードモア将軍の頭を握り潰した。頭蓋骨が割れ脳が潰れ目玉が飛び出て血が溢れ俺の手を汚す。
首を失ったアードモア将軍の服で血を拭い床に置いたマスクを顔に装着した。
「ヒィッ!お、お前!殺したのか!?」
「あぁ、殺した」
「し、知ってるぞ!プレデターは戦う意志のない者は狙わないんじゃないのか!?」
「そうだな…狙わない」
俺は立ち上がり、頭を屈めながらスコーズビーと呼ばれた男を見た。そして尋ねる。
「お前は此処へ何をしにきた」
「俺は仕事をしにきただけだ!」
「仕事?どんな仕事だ?」
「これだ」
俺が聞くと横にいたクオリッチが言う。なんだこれ?
クオリッチが言いながら俺に見せてきたのはカプセルに入った黄色い液体だった。
「えっ……!?」
「どうした?キリ」
キリがその液体を見た瞬間、驚き悲哀に満ちた表情をした。そして瞳に涙を浮かべるとポロポロと泣き始めた。
「そ、そんな…どうして…」
「キ、キリ?一体なんなんだこれ?」
「これはアムリタ、トゥルクンから僅かしか取れない脳髄液だ」
「なに?」
脳髄液…ロナルの魂の姉妹ロアにあった脳に伸びるあの筒状の穴は…コイツを取るために空けたものか…!
クオリッチがキリにカプセルを渡すと、キリはそれを受け取り嗚咽しながら抱きしめた。
「トゥルクンを狩ったのはそれが理由か、そしてお前の仕事ってのは…」
「うるせぇ!クソ野郎!それは一本8000万ドルの価値があんだぞ!返しやがれ!」
「トゥルクンを殺してなんとも思わないのか?」
「はぁ?たかがデカい魚だろうがよ!何も感じてねぇよ!」
「……」
あぁ…ダメだコイツは。
「魂の姉妹を殺し、赤子を殺めたのはコイツか」
「ま、待ってくれぇ!お、俺は仕事でやってただけなんだよぉ!勘弁してくれぇ!」
「そうだな…お前は仕事をしただけ…だけどな、許されるようなことじゃないんだよ」
俺は奴に近くに落ちていた酸素マスクをつけると、奴の服を掴んで持ち上げ外に出た。
そしてそのまま俺達が乗り込んできた場所――甲板まで跳躍して移動すると、先に見える海を見た。
海からはツラックに騎乗したナヴィの大群が迫っていた。ジェイク達とメトカイナ族の戦士達だ。
「ヤッヤッ!フォオオヤァッーー!!」
ツラックに跨り槍を構えながら雄叫びを上げるロナルが見えた。その瞳は憎悪に満ちている。
「見えるか?感じるか?スコーズビー、ナヴィの怒りがエイワの悲しみが」
「もうわかんねぇよぉーー!!!やめてくれぇ!頼むぅ!仕事なんだよぉ!」
少し待つと一団が船に到着した。
ツラックから船に飛び移り、槍を俺の持つスコーズビーに向ける。
「エイペックスさん…もう終わったみたいだな」
「あぁ大体な、あとはコイツだ」
「それは?」
「手土産だ、ロナル。ロアの仇だ」
俺がそう言うとロナルが歯を剥き出しにし怒りを露わにする。
「よこしなさい!はやく!」
俺はロナルの前に奴を突き出した。
甲板の上に放られ、みっともなく転がるスコーズビー。
そしてメトカイナ族に囲まれ見えなくなった。
エイワ【永和神拳……頭蓋握り潰しッ!!!】
キリ
アバターグレースから産まれたナヴィ。人間のDNAが混ざっている為指が5本ある。
グレースが瀕死の重傷を負った際、エイワの助力を得てアバターへ魂の移動を試みた。しかしグレース自身の体力が無く移動が困難と考えたエイワは魂を素材に新たな命をアバターに宿らせようとした…が、エイペックスによる祈祷式シャヘイルによる魂の接続で膨大なエネルギーとエイペックスの魂の一片を注がれたエイワは、有り余ったエネルギーでグレースの傷を治し命の創造を行った。ナヴィ、人間、そしてプレデター(エイペックス)の要素を併せ持つ唯一の存在。エイワとの親和性が異常に高く、エイワの力の行使や野生動物や植物を意のままに従う事ができるが、本人はまだ気づいていない。