養殖が天然に勝てると思うなよ?【本編完結】   作:物体Zさん

59 / 103
パンドラを取り戻せ!!

 

 

 「ジェイク、コイツはクオリッチだ」

 「はぁ!?あ!?えぇ!?」

 「悪魔!!!!」

 「あーあー!父さん母さん落ち着いて!!この人俺の本当の父ちゃんなんだって!」

 

 トゥルクン漁に使われた船の完全な制圧が終わり、三兄弟の岩の岩礁で俺達は集まっていた。

 

 船にいた人間とアバターは非戦闘員以外全て殺した。船に乗っていた殆どの人員が武器を持ち戦闘の意思を見せた事から戦う以外の選択肢はなかった。それに奴らは侵略者だ。許すわけにはいかない。

 

 船にはパンドラに理解を示す者達もいた。グレースやノーム、マックスのようなパンドラに興味を持つ研究者だ。それらはゴムボートに乗せ逃した。海の民や海に住まう生物に見つからなければ死ぬ事はないだろう。

 

 そしてナヴィとして蘇ったかつての敵、クオリッチとその部下をジェイクらに紹介すると、案の定ジェイクは困惑、ネイティリは憎悪の眼差しを向け身構えている。

 

 「俺も最初は困惑したが、キリが大丈夫と言うからな。受け入れた」

 「キリが?」

 「あぁ、『エイワが導いた』と言ってたぞ」

 

 そんなキリはトゥルクンの命とも言えるアムリタを持ち海を見ていた。

 

 キリはエイワとの繋がりが強い。彼女と出会ってから数日共に過ごしていたが、彼女は時折大地や海に手をつき1人で何かを喋っている。多分エイワと交信しているのだろう。

 

 あのトゥルクンの命はどうするつもりなのだろうか?

 

 「〈偉大なる母が…?ガァッ!でも何かやったらすぐ殺すわ〉」

 

 ネイティリが歯を剥き出しにして言った。それに対しクオリッチは腕を組み悠然と言い放つ。

 

 「〈その時は受けて立つとしよう。小娘〉」

 「クオリッチ…」

 「ジェイク・サリー、目に掛けてやったお前に裏切られたが、より強くなったお前と再会できたこと…エイワに感謝しよう」

 「お…?おう…(なんか怖いくらい変わってないか?)」

 

 とまぁ、クオリッチや部下達はなんとか理解を得る事ができた。

 

 メトカイナ族は集落へと帰った。これから俺達が向かう場所に彼らは連れていけない。トノワリやロナルは復讐心から行きたがっていたが、なんとか説得して落ち着かせ帰らせた。ロナルは妊娠している。もうすぐ産まれる子供に何かあれば今度こそ地獄に堕ちるまで戦い続けてしまうだろう。そんな事はさせられない。

 

 これから向かう場所。それはRDA社の本拠地『ブリッジヘッドシティ』だ。

 

 奴等を徹底的に叩き潰し、このパンドラから完全に追放する。それが俺達が今からやろうとしている事だ。

 

 1年前から始まったRDA社による強行侵略は今日で終わりを迎える事になる。

 

 エイワによって人類を裏切ったクオリッチ等によってブリッジヘッドシティで様々な工作が行われた。

 

 時間が無かった故にあまりできなかったらしいが、一つ目は星全体に張り巡らされている強力な電磁波をシャットダウンする事。これはブリッジヘッドシティにあるタワーと呼ばれている場所から発信されているらしい。そこに爆弾を設置し時が来たら爆発させるというものだった。

 

 そして二つ目はエイワの力によってリコンビナントを懐柔し戦力を増やす事。これはハレルヤマウンテン攻略を理由に兵を森に連れていきエイワによって考えを改めさせたと言っていた。よく分からんが、偉大なる母の為に人類の愚かさを気づかせてやったと誇らしげに言っていたが、目がガンギマリで怖かった。エイワさん何したんや?その兵達は今もブリッジヘッドシティで待機し時を窺っているという。

 

 できたのはこれぐらいだとクオリッチは言っている。変な電波を無くしてくれるだけでかなりありがたい。これさえ無くなれば外に通信ができるし、船の遠隔操作もできるようになる。でも…正直今のところ制限されてても困ってないなんて口が裂けても言えんけど…

 

 そんなこんなで皆を船に乗せて空に飛び立った。

 

 ブリッジヘッドシティに行く前にハレルヤマウンテンに隠されたオマティカヤ族の集落に訪れた。

 

 オマティカヤ族の集落の巨岩の上には既に戦士達が集結しており、モアトが先頭に立ち俺達のことを待っていた。

 

 「モアト!」

 「〈神託があった〉戦だ!!!!」

 「「うおおおおおおおおおおお!!!」」

 

 モアトは一言そう言って槍を携えイクランに跨った。周囲に戦士達の雄叫びが轟き共に飛び立った。

 

 そしてハレルヤマウンテンを抜け嘗て大森林が広がっていた場所、ブリッジヘッドシティが見えてくると何か様子がおかしい。

 

 ブリッジヘッドシティの上空に巨大な戦艦が何隻も浮いていた。

 

 何を言っているか分からねーと思うが街を覆い隠してしまう程の大艦隊が上空に鎮座し、巨大な砲台を街に向けていた。

 

 「な、なにあれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少々遡り地球の日本、摩天楼より更に高く聳え立つオブライエン&ハワード産業の本社――

 

 本社ビルの最上階の一室で1人の女性がテーブルに映し出された映像を見ながら事務仕事をしていた。

 

 「レックス〜」

 「ん?どうしたの?モリー」

 

 レックスと呼ばれた女性の背後に声と共に光が照射され集まり少女の形になった。オブライエン&ハワード産業を支えるAIであるモリーだ。

 

 「なんかねぇ…辺境にある支店と連絡が取れないんだよねぇ」

 「そう…それは珍しいわね。どこの支店かしら?」

 「えっとね…アルファケンタウリ系ポリフェマスの衛星パンドラってとこ!」

 「パンドラ…なんだか少し前に聞いたことがあるような…」

 

 レックスはパンドラという星の名を聞いて少し思案する。そしてテーブルに置いてあった端末を操作して情報を見ていく。

 

 そしてパンドラの項目に止まるとそれを読み始めた。

 

 「パンドラ……そうそう思い出したわ。ちょっと前にダッチさんが行ってた所ね。エイペックスもいたとか」

 「そう!エペも来たことあるんだよねー!その時はRDA社ってところが悪いことして色々あったんだけどさ!」

 「RDA社…」

 

 RDA社と聞き途端に怪訝な表情をする。

 

 (RDA社、最初は2人の若者がシリコンバレーの自宅の小さなガレージで始めた会社だった。それが今や宇宙に進出し惑星を開拓する大企業へと成長した。我が社の創業と似た部分があり、親近感から彼らが赴く惑星に銭湯を派遣したこともある。しかし14年ほど前に惑星開拓の折、現地の原住民や生態系に多大な影響を及ぼし、非道な事も行なったという事から一時は倒産目前にまで迫ったが軍事産業で立て直し、今現在は政府の仕事も肩代わりするようにもなった。第二の故郷を見つけるやら何やらと連日テレビやネットで騒いでいるが……最近妙な噂を聞く)

 

 レックスは端末を操作し、端末に表示された画面をテーブルのバーチャルモニターに映し出す。

 

 そこにはRDA社が現在売り出している物が表示されている。

 

 「摂取したら老化しなくなるってやつ?最近凄いよねぇ…」

 「えぇ…1年ほど前から裏で販売されているものよ、名前はアムリタ、値段は0.1mlで100万ドル」

 「たった一滴で1億円かぁ!!たっかーい!!レックスもしかして使ってる?」

 「こんな眉唾物使わないわ…よく分からないし、なんだか怖いわ」

 「そうだよねぇ…」

 「これがパンドラから送られてるって噂を聞いたわ」

 「えぇ!?そうなの!?知らなかったー!パンドラとは全く連絡がつかないからさー、ホント急にポツーンって!私のアプデも送れないからさぁ…困っちゃうんだよねぇ〜それに追ってたエペも急に消えちゃうし…」

 「ん?エイペックス?」

 「うん!エペはたまに行方不明になるから追ってろってダッチに言われてるんだよね!」

 「どこで消えたのかしら?」

 「パンドラだよ!」

 

 レックスは飲んでいたプロテインを思わず吹きそうになる。なんとか飲み干しモリーに向き直ると言った。

 

 「それ絶対なんかあるでしょ」

 「やっぱり?」

 

 レックスに言われたモリーがペコっと笑った。

 

 そうしてオブライエン&ハワード産業が秘密を暴くため動き出す。

 

 なんやかんやと動き、調べ、聞き出し、RDA社と政府がやっている後ろ暗いビジネスを知った。

 

 開拓した惑星での原生物の虐殺、密猟、そして違法侵略…

 

 「本当に何をやってるのかしら……モリー!直ぐに一個艦隊をパンドラに派遣、RDA社を問い詰めましょう。こんなヤバい事()()に知られたら大変な事が起こるわ…!!」

 「もう起きている」

 「!!!ッ」

 

 レックスが背後から聞こえた声に瞬時に反応し、腰に帯びていたスピアを伸ばしながらその声のした場所へ振るった。

 

 キィンッという音と火花が散り暗い部屋を照らす。そして空間が歪み侵食するように姿が現れていく。

 

 「あなたは!!」

 「いい反応だね。流石スカー君の番になっただけの事はある」

 

 そこに姿を現したのはかつて地球に来訪し、プレデリアンと死闘を繰り広げ、オブライエン&ハワード産業の創業者達を救った内の1人。そして銭湯の壁画に描かれた伝説のプレデター。

 

 「やあ、久しぶりだね。レックス」

 「ウ、ウルフ先生…」

 

 ザ・クリーナー、またの名をウルフと呼ばれるプレデターだった。

 

 

 「つまりもう彼等には知られていると…」

 「うんそうだね。それもかなり昔に知られている。今も何故族滅をされずに済んでいるかは…まぁエイペックス君のお陰としかいえない」

 

 部屋のソファに腰掛け、対面に座るウルフは告げた。RDA社による禁忌を。彼らは命を創造し、操作し、そして魂にさえ触れてしまった。

 

 まだそれで何もしていなければ許されたかもしれない。だが――創造種族エンジニアは命を弄ぶ事を良しとしない。それを侵略に使うなどもっての外だった。

 

 しかしエンジニアは今現在、昔ほど精力的に活動していない。いや、新たな種の創造という点に於いては熱心に行なっている。かつてジオメトリクス族を滅ぼしたように、禁忌を犯した種族を族滅するという行為はあまりしなくなった。

 

 こうなると広大な宇宙に『悪』が蔓延る。安寧を脅かす者達が増えてしまう。

 

 アヌ族は嘗てエンジニアより拝命した。同族殺し、バッドブラッドの狩猟をだ。そして今は宇宙の『悪』の芽を摘む事を新たな任として拝命されたという。

 

 「僕が地球へ来たのは狩るためだ。命を蔑ろにし、あまつさえ不死へと手を伸ばそうとする人類をね。今回ばかりは見過ごせない事態にまできている」

 「……ゴクリ」

 

 レックスはウルフと出会ったのは初めてではない。スカーと旅をしている時や、アヌ族の母星に訪れた時に何度か会った事がある。共に話し合ったり、食事をしたりしたこともあった。

 

 しかし、レックスはウルフがアヌ族で何を任されているか()()()()

 

 ウルフの放つ狩人…いやザ・クリーナー(掃除屋)としての悍ましい気配に気圧されていた。

 

 「あぁ……大丈夫大丈夫。()()じゃない。それに此処へは僕から協力を申し出にきたんだ。この()()を1人でやるには少々面倒でね…君達にも手伝ってもらいたいんだ」

 「な、何をですか」

 「うん?そんなの決まっているじゃないか…掃除だよ」

 

 

 そうして地球にいたRDA社の今回の事態に関わっていた者達、無辜の命(アムリタ)を貪る者達全てがウルフとオブライエン&ハワード産業の手によって抹消された。

 

 そして現在――

 

 パンドラ、RDA社が森を焼き尽くし、その跡に築いた『ブリッジヘッドシティ』に勅令を受けたオブライエン&ハワード産業の大艦隊が襲来、パンドラの周囲にいたRDA社の宇宙船を全て制圧し、空を落とすようにやってきた艦隊はブリッジヘッドシティを包囲した。

 

 「な、なにあれ」

 

 それを今まさにブリッジヘッドシティを襲おうとやってきていた一団の中にいた巨軀のプレデターが間抜けな声を出し言った。

 

 

 

 

 

 

 

 いざパンドラを取り戻すための戦いだ!!なんて息巻いてそこに向かったら、バカでかい宇宙船が沢山きてて街を包囲してた。

 

 ちょっと怖いからオマティカヤ族の戦士は街の外に待機させて、俺たちは船を操縦して街の中心へと向かった。

 

 街は驚く程静かだった。上を見上げれば戦艦が砲身を輝かせている。今撃たれたら俺でも死ぬかもしれない。

 

 かつて人であったものであろう肉片やら破片やらを踏み越え、中心の一番デカい建物に着いた。クオリッチが言うには此処が司令部らしい。

 

 中に入ると壁やら床やら血だらけで内臓がべっとりついてたり、人がバラバラになっていたり、首根っこが転がっている。恐る恐る進み1番広い部屋に着くと、そしてそこには見覚えのある狩人がいた。

 

 「うぇー!?えー!?なんで!?」

 「うわー!えー!!」

 「やぁ、エイペックス君とヴィーンちゃん。相変わらずだね(やっぱデカいなぁ…)」

 

 RDA社の偉い奴と思われる首を持った1人のプレデター。古代文字が刻まれた独特なマスクを被り、身体は傷だらけだけど鍛え抜かれた筋肉がビシッと引き締まり無駄な贅肉がない。俺たちプレデターの間でザ・クリーナと呼ばれる伝説の狩人。

 

 「ウ、ウルフ大先生!!!うほぉぉ!!!」

  

 

 そうしてなんやかんやあって、パンドラからRDA社を完全に追い出すことができた。街を包囲していた大艦隊はオブライエン&ハワード産業のもので、ウルフ大先生と共にやってきたという。

なんでも、RDA社は色々ととんでもない事をやっていたらしく、創造種族を怒らせてしまったらしい。ウルフ大先生が言うには地球を滅ぼすまではいかないものの、かなりの人数が族滅にあったと言っていた。ブラックグーを使われないだけマシだね!なんて笑いながら言ってたけど……街にいたRDA社の社員は問答無用で抹消されてしまった。彼らにも家族や友人がいただろうが、この星にいたのが運の尽きだ。俺たちが逃したトゥルクン漁の人達だけでも助かってほしいとお祈りしておいた。

 

 それからジェイク家はオマティカヤ族へと帰還し、RDA社に焼き尽くされた森を再興したいと言っていた。血に塗れたブリッジヘッドシティはオブライエン&ハワード産業の協力によって一度更地に戻され、再興の足掛かりとして新しい銭湯が設置された。皆で入ってさっぱりした。やっぱ風呂は気持ちがいい。

 

 人類を裏切ったクオリッチ等とリコンビナント達は贖罪の為、パンドラを放浪する旅に出た。

 

 そして星を離れる前に俺とヴィーンはハレルヤマウンテンの魂の木に赴き祈った。

 

 (ヴィ、ヴィーンと番になれますように…)

 (エイワさん、エペさんは私のものです)

 

 

 パンドラは真の自由を取り戻し、未だ嘗てない平和な時代が到来する事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「オリオンも言ってたんだけど、此処は本当に美しい星だね。彼が守りたくなるのも分かる」

 「え?オリオン?誰すか?それ」

 「え?」

 「え?」

 

 オリオン?なんかどっかで聞いたことあるような…まあいいっか!

 

 「こういう星が宇宙には沢山ある。それを狙う者達も」

 「ウルフ大先生って今何してるんです?」

 「変わらずだよ」

 「かっけーっす!」

 

 






これにてアバター2終了です。最後少し急いだ感じありましたが、どうかご容赦下さい。オマティカヤ族を強くしすぎた!今回もお読みいただきありがとうございました!
また何か思いつけば書きたいと思います。


2025年12月?にアバター3やるらしいですよ…!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。