お前も…
「あれ??ここどこー??」
目が覚めると真っ暗な場所にいた。見渡す限りの暗黒が空間を包み込んでいた。
「箱か?」
手を伸ばすと透明な壁に触れた。四方を壁に囲まれているみたいだ。
「俺って何してたんだっけ…」
なんだか思い出せない。銭湯に入ってさっぱりしたのは覚えているんだけど…
装備はいつもの俺の装備で、マスク、ガントレット、リストブレイドとスピア、そしてセレモニアルダガーを身につけていた。
「とりあえず出るかー」
拳を握り締め筋肉に力を込めた。上腕から肩、背中にかけて筋肉が隆起した。そして透明な壁に向かって拳を打ち付けた。
「痛いっ!あれ?」
かなり力を込めて壁を殴ったのに、傷一つ付かなかった。
「なんだこれ?」
透明な壁を触ってみる。ツルツルしていて傷一つない。感触はプラスチックのようなガラスのような…?よく分からない。
コンクリートでもなんでもぶち抜ける自信があったのに、こんな見るからに薄い壁を壊せない。それに壁を殴った拳からちょっと血が出ちゃってる。こんなの初めてだ。ちょっとショックかも…此処から出れたらもっと筋トレ頑張るぞ!
試しにリストブレイドでシュッと切り付けて見たらほんのり傷が付いた。しかし指でなぞってみると直ぐに消えてしまう。何やっても出られないみたいだ。
相変わらず周囲は暗黒に包まれていて先が見えない。バイオマスクで暗視や熱源サーマルに切り替えても何も見えなかった。
「マジでどゆこと?」
後頭部をぽりぽり掻きながら思案する。
「おっと…!」
急に俺のいる箱が動き始めた。横に縦に動いていき次第に何かが見えてくる。
「エレベーターか?」
真っ暗闇の暗黒の世界にエレベーターがあった。しかしエレベーターは扉だけが見えていて上にも下にも筒がない。
箱がエレベーターの扉に近づくとチーンと音が鳴り扉が開いた。
そしてまたガコッと音がして箱が動きエレベーター内に入ると扉が閉まり少し浮遊感を覚えた。
どうやら上に向かっているみたいだ。
どこへ向かっているのだろうか?まぁ出れるならなんだっていいんだけど…
そして暫く浮遊感を覚えながら待っているとエレベーターの扉が開いた。
「……!!!」
目の前に黒い軍服を着た人間の兵士が沢山いた。
「危ねぇ!!」
—殺せ—
急ぎスピアを背中から取り出し、回転させながら展開して放たれた銃弾を跳ね返した。
甲高い音と火花が散り銃弾を跳ね返し、跳ぶように前に進み俺を撃ってきた兵士にスピアを突き刺し持ち上げ、反対側の手で首を捩じ切った。そしてスピアを身体に突き刺したまま振り回して周りにいた兵士を薙ぎ倒した。
—殺せよ
「ひぇ…なんか反射で殺しちまったけど…うお!!」
集中していたのか視界が狭まっていたのが広がり周囲が見えた。
俺の周囲では見たことのない化け物が人間を殺しまくっていた。
明らかに地球にいるものではない巨大な蛇や、ノコギリがいっぱいついた黄色い機械、宙をちょこまかと飛ぶちっこい悪魔みたいなやつ、そしてモリーと一緒に観た映画に出ていたゾンビの集団。というか大体ホラー映画に出てる化け物ばっか!似てるようで似てない!なんだコイツら!
それらが人間に襲い掛かり殺している。身体を引き裂き、捩じ切ったり、喰ったり、なんだか青い人型のエネルギーを引っこ抜いたり…とにかくエレベーターの扉がある広間がどんどん血と臓物で汚れていく。
「ウホッ!コイツはワクワクしてきた!」
—殺せ—
なんでか知らんが化け物は俺には襲い掛からず人間ばかりに襲いかかっている。てかさっきから頭の中に殺せ殺せー!って声が聞こえるんだけどなんだよコレ!?ムカつくなぁ…まあいいや、とりあえず強そうなあの蛇からやっちまうか。
スピアを人間から引き抜きくるくると回して血を飛ばし肩に構えた。
視線の先に見える巨大な赤い蛇は嬉々とした表情で人間を貪り血を浴びていた。
「おーい!」
蛇に向かって声をかけるが人間に夢中で反応がない。
そんなんじゃ野生で生きられねーぞ?
「フンッ!」
スピアを蛇に向かって投げた。
螺旋状に高速回転しながら飛んでいったスピアが蛇の頭に突き刺さり勢いのまま吹っ飛び壁に縫い付けられた。
「……チッ弱いなぁ」
まだゼノモーフの方がよく動いてくれるから狩りごたえがある。
壁に縫われた蛇を見ていると殺気を感じた。
「ん?」
人間を襲っていた化け物共が人間を襲う手を止め俺を凝視した。
そして一斉に俺に向かって飛びかかってきた。
「ハハッ!!」
俺を敵と認識したのか?
俺はリストブレイドを伸ばし身構えた。
最初に俺に飛び付いてきたのは羽の生えた小人だ。見た目は醜悪で赤黒くてブサイクだ。奇声を上げ手を広げながら単調に飛びかかってきたから、そのまま首を掴んで床に叩き付けた。べちょっと音がして死んだ。
そしてノコギリのついた腕が沢山ついた黄色い機械が火花を散らせながら滑るように俺に襲いかかる。
「よくわかんね〜」
リストブレイドでノコギリを斬り払い胴体部分に突き刺し動力を停止させた。
「ワオーーーーッ!!!」
狼の遠吠えが聞こえた。
声のした方向を見ると俺よりも少し小さいぐらいの二足歩行の狼がいた。
狼男ってやつか?映画で観た事あるぞ。満月を見たら狼男に変身しちまって人間を殺しちまうんだ。
だが俺が観た奴よりも大分弱そうだ。俺が観たのはそりゃもうマッチョで強そうだった。まさか主人公が狼男に変身して伝説の怪物ドラキュラと戦うとは思わなかった。アレは強そうだったなぁ…
なんてことを考えつつドンドンと床を鳴らしながら二足歩行で走って俺に近づいた狼男が腕を振るった。
五指の血に濡れた爪を伸ばし俺に振るうが、俺はそれを右手で手首を掴んで止め、左手で狼男の首を掴んだ。
狼男が大口を開け吠え威嚇するが、掴んだ首をそのまま握り潰して殺した。
「軟弱だな」
死体を投げ捨て前を見据える。
ゾンビが10人程ワラワラとやってくる。
「生ゾンビは初めてかも」
動きはかなり遅い。走ってくるタイプじゃないみたいだ。
ゾンビは正直怖い。噛まれたらゾンビになっちまうからな。
壁に突き刺さったスピアを引き抜き、最大限まで伸ばして跳ぶようにゾンビに近づいた。
一体ずつ丁寧に頭に向かってスピアを突き刺し殺した。
リーチさえあれば噛まれずに殺せる。こんな楽な獲物はいない。トロフィーにはしたくないけど…
周囲を見渡すと他に化け物はいなかった。しかし、死んだ人間の血と臓物が壁や床に飛び散り白を基調とした広間は赤黒く染まっていた。ヌルっとしてちょっと歩き辛い。兵士達のグチャッとバラバラになった死体が一面に広がり死屍累々の形相だ。
「なんか勢いでやっちまったけどいいよな?人間も死にまくってるし…此処マジでどこなんだ?」
帰るか?なんて思ってガントレットで船を呼ぼうと操作した。
「……は?」
ガントレットがまるで反応しない!!壊れてるのか!?でもバイオマスクの同期は上手くいってるし…どうなってんだ!?
「ん??」
何か音がした。
物音のした方を見た。微かに気配を感じる。マスクを熱源サーマルに切り替えてみるが血で汚れ熱を上手く感知できない。
「人間か?」
弱いが気配を感じる。
血がべっとり付いていて気づかなかったが部屋がある。ガラス窓は血で汚れて最早意味を為していないが、人間を隠すのにいい役割を果たしている。
ガラスに向かって拳を叩き込もうと思いまず触れるが、俺が入っていた箱と同じような感触がしたからやめた。てかよく見ると右の方に扉があった。
ドアノブを掴んで開けようとするが鍵が掛かってるのか開かなかった。
「ふむ…」
壊すか。
軽く殴るとベコって凹みながら扉がぶっ飛んだ。此処のガラスとは違ってコレは普通なのか。よく分からんな。
扉をぶち壊して中に入ると突然叫び声が聞こえ俺の身体に何かが当たった。
「きゃあああああああ!!!」
「く、くるなああああ!!!」
「うわあああああああ!!!」
ビックリしたぁ……
2人の人間が俺にタックルをかましていた。今もポコポコと俺を殴り続けている。
—殺せ—
「いや殺さねーよ」
「え?」
「何を…?」
頭の中に聞こえた声に返事したら、俺を殴ってた人間が言葉を発した。
「あぁ〜ごめんごめん。え〜……大丈夫か?」
「しゃ、喋れるのか!?」
血塗れで傷だらけの若い男が言った。どこかティムの弟に似ている。そしてその横には同じく血塗れで傷だらけの若い女、彼女はジェシーに似ていた。
「……喋れるぞ。なぁ此処は何処なんだ?何か知ってるか?」
しゃがんで人間の視線に合わせて喋りかけた。俺のいる施設は意外と天井が高い。俺が普通に立ってても頭を屈めずに済むくらいには広い。しかし、やはり人間と話す時はこうやって視線の高さを合わせた方が印象が良い。こんなデカい宇宙人に見下ろされながら喋りかけられるのは怖いだろ?まぁモリーに教え込まれたんだけど…
「僕たちもさっきこの施設に降・り・て・きたばかりなんだ。上のロッジで散々な目にあって…逃げてきたらこんな場所で…」
若い男、マーティとその隣にいる女デイナが言うには週末を楽しむために俺たちがいるこの場所から上、地上にあるロッジ小屋にマーティと隣にいる女性デイナを含む5人でやってきた。小屋に来る前のガソリンスタンドで自分達が泊まる小屋では不吉な事が起こると店員に言われたが何も気にせず小屋へとやってきた5人は、酒を飲み音楽をかけて楽しんでいた。しかし、デイナは小屋に地下室を見つける。地下室を探索していると、ある日記を見つけた。
その日記はペイシェンス・バックナーという少女の日記で小屋の持ち主であるバックナー一家の子供だった。日記には恐ろしい内容が記されていて、バックナー一家が小屋で犯してきた恐ろしい罪の数々が記録されていた。そしてデイナはその日記を読み進めていくと、最後のページに謎のラテン語が書かれていて、デイナは思わずそれを声に出して読んでしまったという。
ラテン語を読み上げた瞬間、惨劇が始まった。
「そんなの声に出して読むなよ…!」
俺は驚きながらデイナに向かって言った。
それからカートとジュールズという若者が無惨にも怪物に殺され、グループの中で最も勇敢で屈強な男だったホールデンという男は森から出て助けを呼ぶためにバイクに乗って、あと少しで出れるというところで森を囲うように張られていた謎のバリアにぶち当たり焼け死んでしまった。
なんやかんやと森で逃げて小屋に戻ってきたマーティとデイナは小屋に謎のエレベーターを見つけた。エレベーターに乗り込み地下へと下っていく最中、地下奥深くに広がる暗黒の空間に無数の化け物どもが入った箱を見つけた。
顔が口になっているバレリーナの少女、そして頭に丸鋸が刺さった不気味な男……俺がいた暗黒の空間には俺と同じように箱に閉じ込められた化け物がいた。
そしてエレベーターを降りると俺達が今いるエレベーターの制御室に入り込み、化け物を解放するボタンを押し今に至る。
「お前らのお陰で俺は出れたってわけか」
訳も分からず気づいたら箱に入っててちんぷんかんぷん状態ではあるが、この2人は一応俺を
「俺も何がなんだかわかってないんだ。とりあえず一緒に動こう。俺の側にいれば…多分安全だ」
というかこのエレベーターに乗って外に出れないのか?
2人を連れ制御室から出ると、施設内に通じるフロアの出口に先ほど殺されまくったのと同じ軍服を着た兵士達がやってきていた。
「おっと!」
俺と2人を見つけた兵士達が銃を向ける。
「ちょちょちょっと待ってくれ!!」
両手をあげて降参の意を伝える。2人は俺の後ろに隠れた。なんともみっともない俺の所業だが先ずはコミュニケーションだ。俺はそこらの化け物とは違い、いきなり人間をぶち殺したりしない。え?さっき人間?それは撃たれたからついやっちまったんだよ!!!
銃を構えた兵士達がにじり寄ってくる。そこでチーンと間抜けな音が聞こえた。
俺が閉じ込められていた箱から出る時に聞こえた音だ。
そして一瞬の間に、エレベーターの扉上部にあるランプが点灯した。
広間にいる者達が音が聞こえ立ち止まりエレベーターを凝視する。
「くるぞ」
扉の奥からただならぬ気配を感じた。
エレベーターの扉が開き、中にいた存在が出てくる。
まず見えたのは奇妙なマスクを被った黒いスーツを着た人間の集団だ。
2人が言っていた頭に丸鋸の男。
そしてちょっとデカい白い虫。
エレベーターから出てきたものに向かって兵士達が急いで銃を構える。
しかし誰も撃つことは叶わず蹂躙されていく。手足が吹き飛び血が噴き出し内臓が壁に飛んだ。
兵士に飛び付き襲っていた白い虫が俺の後ろにいるマーティとデイナに気づいた。無数に生えた脚をカチカチと床に鳴らしてグロテスクな口を広げ威嚇する。
マスクの集団は人間を殺め、早々に広間から居なくなり、丸鋸の男は俺達をジッと見ている。
白い虫が奇声を上げ飛んできた。羽も生えてないのに随分飛んでくるな。まるでフェイスハガーだな!
「よいしょ」
飛んできた白い虫を掴んで凝視する。俺に掴まれジタバタと暴れている白い虫。質感はツルッとしていて完全にフェイスハガーだ。胴体は長く脚が8本生えている。口は俺達プレデターのようにクパァと開くタイプでなんだかこうやって客観的に見ると気持ち悪い。やっぱプレデターの顔ってグロいよな。
掴んだ白い虫を、そのまま壁に向かって投げつける。
パァン!と音が鳴って緑色のシミを作って死んだ。
人間をパクパクと襲って殺していた割には弱いな。
「お前はどうする?」
未だ俺達をジッと見ている丸鋸の男に言った。丸鋸の男は両手に鉄のボールを持ち白目がない真っ黒な瞳で俺を見ている。感情や気配を何も感じない、不気味な男だ。
「…………」
「…………?」
ジッと見つめられるだけで何もしてこないし喋らない。なんだコイツ?
「まあいいや、とりあえず行くか」
俺と人間2人、そして丸鋸の男と共に施設内の奥へと進んでいった。
施設内は俺と同じ様にエレベーターから解き放たれた化け物共が暴れ回り人間を殺しまくっている。
怪しいマスクを被った黒いスーツの人間が同じ人間を拷問していた。とりあえずぶっ飛ばしておいた。拷問されてた人間はもう死んでた。
ピエロみたいなやつが襲いかかってきた。リストブレイドで首を斬ったら、その首を持って走って逃げちまった。
逃げ惑う人間達にビューンとモクモクした煙みたいなやつが纏わりつき人間をカピカピに干からびさせて殺していたり、青い人魂を抜き取って殺すお化けみたいなのがいた。俺幽霊だけはちょっと無理なんだよね…ちょっと前に遠い銀河で緑の小さいジジイ幽霊に会ってからというものの幽霊という存在に忌避感を抱いてしまう。
俺が幽霊を見ながらあたふたしていると後ろにいた丸鋸の男が前に出てきた。
「お?」
「………」
相変わらず一言も発しない丸鋸の男。
丸鋸が両手に持った謎の鉄ボールを幽霊に向かって翳した。
すると鉄のボールから禍々しい気配を感じ、次の瞬間。鉄のボールに幽霊が吸い込まれていき消えてしまった。
「除霊的な感じ?」
俺がそう言うと、丸鋸がコクリと頷いた。
そうして施設内を進みながら化け物共を殺し回り、施設の更に地下にあった石造りの部屋にやってきた。
5枚の石盤が並ぶ神秘的な部屋だ。真ん中は広い舞台のようになっており、石盤と舞台の間は底の見えない深い穴になっており冷たい空気が吹いている。それと石盤の内3枚は血が垂れ赤く染まっていた。
その部屋の真ん中にはどこか見覚えのある人間の女性が立っていた。
女性がハンドガンを俺や丸鋸、デイナではなくマーティに向けながら声を上げた。
「愚者が死ねば儀式は完了し世界は救われる!大人しく死になさい!」
「……」
「死ねぇ!!!」
妙齢の女がハンドガンを撃った。銃口が赤く輝き銃弾が発射される。
俺は間髪容れずに射線上に右腕を伸ばして腕甲で防いだ。カァン!と甲高い音が鳴り火花が散って銃弾が弾かれた。
「おいおい危ねーな!」
「なぜ怪物が守る!?あなた達は儀式の為に用意された駒にすぎない!早く人間を殺しなさい!!殺さなければ此処の地下に封印された太古の邪神が甦り地球を滅ぼす!!早く!!」
「ごちゃごちゃと…」
—殺せ—
まただ。また頭の中に声が聞こえた。
「先ずは男からよ!順番に殺さなければダメなのよ!」
全く…この変な場所に来てからずっと頭の中に声が響く…正直めちゃくちゃムカムカしてきた。
横目でデイナとマーティを見ると頭の中の声が大きくなった。そんなに人間を殺してほしいのか?
「………」
「さあ!早く!」
「はいはい分かったよ、うるせぇ女だ」
俺はリストブレイドを最大限まで伸ばし後ろに立っていたマーティを見た。
今まで自身を守ってきた存在が突然敵に回る。それがどれ程恐ろしい事だろうか?
マーティの表情はまるで世界が終わるのではないかという絶望に染まった表情だ。血で汚れ、涙が溢れ、鼻水を垂らしてみっともない顔だ。
「う、嘘だろ…?」
掠れ怯えた声で俺に言う。
「ハハッ心配すんな」
「え?」
俺は
振り向き未だ銃を向ける女へと歩き出した俺は、女を見据えながら言い放った。
—殺せ—
「なぁ…」
「な!なぜこっちに来るの!!早く!!人間を殺しなさい!!」
女の持つ銃から次々に放たれた弾丸をリストブレイドを振るって弾く。
そして脚の筋肉に力を入れて地面を踏み締めて跳ぶように女の前に移動した。
女が突如前に現れた俺に驚き、尻餅をつきながら倒れた。
「ヒィッやめなさい!!」
「お前も人間だろ」
右手で倒れた女の首を掴んで持ち上げ、左手を肩に置いた。掴んだ首を上に向け左手で肩を押さえるとズズルズルと背骨ごと首を引き抜いた。夥しい赤い血が地面に落ち、そして俺の身体を汚す。
「ありゃありゃ」
絶望に染まりながら死んだ女の生首を投げ捨てながら言った俺は、後ろにいた3人に振り返る。
「えっと……」
「その女の人って此処の“館長”じゃないっけ?」
デイナが戸惑った感情のまま俺の投げ捨てた首を見ながら言う。俺が殺したこの女はこの謎の施設の館長だという。
この石造りの神秘的な部屋に来る前に、此処がどういった場所でどんな目的で作られた場所なのか調べ理解していた。頭に響く声でついムシャクシャしてやっちまった。まぁ俺に武器を向けてきたし…もう殺しちまったもんは仕方ない。
「ソノオンナハタイコノジャシンノタメニイケニエヲヨウイシテイタニスギナイ」
「ふぁ!?」
丸鋸が喋った!?コイツ喋れんのか!?
「お前喋れんのかよ」
両手で持つ鉄のボールを弄りながら俺の前に立った丸鋸の男は見上げながら話し出す。
「トキハキタ、ジャシンガメザメル」
丸鋸がそう言うと空間が揺れ始めた。
「何!?」
「地震か!?」
「そうか…始まったのか」
頭に響いていた声が止んだ。
周囲を囲うように設置されていた石盤が倒れ落ちていく。
そして底の見えない穴の底から低く悍ましい唸り声のようなものが聞こえた。
何かが来る。
「きゃあああああ!!!」
「デイナぁぁぁ!!!」
2人が抱き合いながら地に伏せた。頭上からは大きな岩が降ってきて、じきに此処は埋まってしまうだろう。
「お前はどうするんだ?」
「ワレハミマモルダケ」
「そうかい」
なら俺は外に出るとしよう。
抱き合った2人はいつの間にか消えてしまった。地割れにでも飲み込まれたのか?まぁ…なんの感情も思い浮かばない。
部屋を出て急ぎ地上へと向かった。激しい揺れに襲われるが、こんな揺れは俺にとっちゃ大したことない。跳ぶように移動してエレベーターのある場所までやってきた。
エレベーターのある広間は血で染まり汚れている。エレベーターの扉を強引に開けて上を覗くと薄っすらとだが光が見えた。ここを登れば地上に出れそうだ。というかさっさと出ればよかった。
そうして地上へなんとか這い出した俺は外の光景に唖然とした。
空は赤く、血の雨が降り、地下で見たような化け物が沢山闊歩していた。穴から離れて様子を窺っていると一際大きな揺れが起きた。
そして……
エレベーターのあった小屋を大きな人型の燻んだ手が突き破り出てきた。
「ウホ!!!デカい化け物!!!」
俺はそれを見て思わず興奮し声を上げた。
マスクを外し、背中からスピアを取り、リストブレイドを伸ばして、足につけたセレモニアルダガーを握った。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
雄叫びを上げ、地上に出現した巨大な化け物に向かって走った。
「いやいやダメでしょ!!」
「うーん…なんでかな?」
「何回やってもエペを入れたら暴走しちゃうのなんでなのよ!」
頭につけたヘッドギアを取りながらベッドから起き上がり、目の前にいたモリーを見た。
俺はモリーに言われ、なんかよく分からないけど俺の意識と記憶をAIに学習させてゲームの世界に入れたいって事で協力していた。
モリー曰く俺のAIはゲーム管理者の命令を受けずに勝手に動いて勝手に暴れ勝手に勝手を重ねまくるらしい。
「エペって自我が強すぎるのよ!!やっぱゲームに入れちゃダメだわ」
「そ、そうなの?」
俺もゲームを見てたけど、ちょっと楽しそうだったな…あんな化け物と戦ってみたい。
「ま、まぁいいわ!次よ次!次はこれなんだけど…」
「えぇ!!まだあるの!?」
「ゴールドスタンダード、フルーツミックスデラックス味でどう?」
「やります」
「次はフルダイブ型でいくわよーーー!!!!」
「おー!!」
一発ネタです。