養殖が天然に勝てると思うなよ?【本編完結】   作:物体Zさん

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すごい……いきなりね

 

 

 施設を脱出した俺たちは、すぐさま船へと乗り込み、エンジンを全開にしてその場を離脱した。

 

 数十秒後――

 

 ドオォォォンッ!!!

 

 船体がごくわずかに揺れる。

 

 船の後方、バッドランズの大地の一点が、まるで心臓のように赤く脈動し、次の瞬間には凄まじい火柱が天へと伸びていった。

 

 「ヒィ〜……間に合ったな……!」

 

 ちょっと本気でヒヤッとした。あれ、あと十秒遅かったら、全身爆風に巻かれてたぞ。

 

 ヴェロニカが黙って前方の操縦パネルを見ている。デクは相変わらず無言で座っている。さっきから一言も発してねぇけど、たぶん生きてる。多分。

 

 「ん?」

 

 左腕のガントレットに、ピピッと通信通知。

 

 誰だ……こんなタイミングで……

 

 「あ」

 

 通信表示に浮かんだ名前は――

 

 GONJI

 

 うわぁぁぁ……ゴンジだ……! やっべえ、バレてる!!

 

 渋々通話ボタンを押した。

 

 「もしもし〜……」

 

 『すぐに帰ってこい』

 

 「え! なんで!? 俺まだこの星で全然筋トレも狩りも終わってないんだけど!」

 

 『状況が変わった。今すぐだ』

 

 「いやちょ、せめてプロテインだけでも飲ませて……」

 

 『帰ってきたら一日三杯まで許す』

 

 「マジ!? やった!!」

 

 ――じゃない!!

 

 いや、今のってプロテインにつられて即答しちゃったパターンじゃね? 俺、ヤベェ流されてんじゃね?

 

 その後も、ゴンジから立て続けに早口で何か言われたが、途中から内容が難しすぎて、脳内でプロテインの成分表と入れ替わっていった。

 

 結論としては――

 

 「すぐ帰れ!!」

 

 ってことだった。

 

 

 

 ……というわけで。

 

 デクの拠点へ帰還した俺は、篝火の前で休んでいる二人に近づき、少しばかり後ろめたさを感じながら声をかけた。

 

 「いや、あの……ごめーん……ちょっと呼び出されちゃった……もうちょっとこの星で狩りたかったんだけどさ! 帰ってこいってさ……また会おうな!」

 

 ヴェロニカが冷静な声で応える。

 

 「すごい……いきなりね」

 

 そうだよな。唐突すぎて訳が分からんよな。俺も訳が分かってねぇよ。

 

 だが、もっと怖いのは……

 

 デクだ。

 

 何も言わず、ただこちらを見つめているその目が、こう……ものすっごい静かに怒っているように見える。いや、気のせいかもしれない。気のせいであってくれ!

 

 「……デク?」

 

 返事はない。

 

 ……うわぁ……怖ぇ。

 

 「ご、ごめんって! 絶対また来るからさ! ね! 次来る時はなんか美味い肉持ってくるからさ! な!?」

 

 それでも、デクは無言だった。

 

 たぶん怒ってる。いや、間違いなく怒ってる。

 

 でも……許してくれ、デク。

 

 プロテイン三杯がかかってるんだ!!

 

 

 

 俺はそっと船に乗り込み、最後にもう一度だけ手を振った。

 

 霧の中で、彼らの姿が次第に遠ざかっていく。

 

 

 

 「またな、バッドランズ――次はもっとでっかい獲物、狩ろうぜ」

 

 船は重く唸りながら、空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エイペックスさんの乗った船が、空へと消えていった。

 

 それはまるで、嵐のような存在だった。

 

 いきなり現れて、家に勝手について来て、プロテインという意味不明な液体を飲ませてきて、問答無用でトレーニングをやらされ、さらには命の危険すらある戦いにまで巻き込まれた。

 

 だが――

 

 俺は確かに、変わった。

 

 いや、「変えられた」と言うべきかもしれない。

 

 

 

 「あっという間に行っちゃったわね」

 

 ヴェロニカが横で空を見上げながら呟く。

 

 彼女の金髪が風に揺れている。いつもの無表情な顔は、ほんのわずかに寂しそうに見えた。

 

 

 

 ……俺も同じだった。

 

 あの人の全てが、理解できたわけじゃない。

 

 行動も言動も支離滅裂で、まるで何を考えているのか分からなかった。

 

 だが――

 

 あの人は、確かに“本物”だった。

 

 目の前で命を懸けて戦い、冗談を言いながら獣を斬り伏せ、迷いなく進み、何もかもを喰らうように前へ進んでいた。

 

 圧倒的な強さを持ちながら、どこか抜けていて、だが……背中は、大きかった。

 

 

 

 「……なんだったんだ……あの人……」

 

 思わず口に出た言葉は、自分でもはっきりしなかった。

 

 ただ、胸の奥にぽっかりと何かが空いたような感覚だけが残っている。

 

 

 

 ふと、地面に残された足跡を見た。

 

 深く、濃く、まるでそこに刻まれたような足跡。

 

 きっと、すぐ消えてしまうのだろう。

 

 だが、俺はこの痕跡を、決して忘れない。

 

 

 

 ――エイペックス。

 

 あんたは、誰よりも遠くに行ってしまったけど……

 

 今度会う時は、もう少しだけ、近くで戦えるようになってる。

 

 ……きっと。

 

 

 

 風が、湿った霧の匂いを運んでくる。

 

 バッドランズの朝は、いつものように静かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やあ、また会ったね。

 

 宇宙には、そりゃもう数えきれないほどの星があるんだ。燃えるような灼熱の地獄みたいな星もあれば、氷の棺桶みたいに冷たくて静かな星もある。空が割れてる星、音が存在しない星、逆に音しか存在しない星なんてのもあったっけ。

 

 でもね、今回の舞台はそのどれでもない。

 

 「バッドランズ」。

 

 ここは、ちょっとした特別席だ。

 

 何がって? そうだな……例えるなら、銀河中の問題児が「アウト!」をくらって送り込まれる、広大で残酷で、ちょっと面白い、そういう場所。

 

 で、そこにいたのが――そう、我らがプレデター、「エイペックス」ってわけだ。

 

 彼がどんな奴かって? うーん……まず第一に“天然”。これはもう、確定。物理的にも精神的にも天然。それでいて、とんでもないフィジカルモンスター。おまけにプロテインと筋トレが大好き。ああ、それからスピア使いだ。どこかの神話の勇者かってぐらい、スピア一本で宇宙の裏事情までぶっ刺してくる。怖いね。

 

 そんな彼が、ふとした偶然で出会ったのが――デク。

 

 寡黙で無表情。だけど根は真面目で、誰よりも純粋な戦士だ。ちょっと運命に振り回されがちだけど、強いよ、彼も。最後にはちゃんと戦い抜いた。

 

 そしてもう一人。アンドロイドのヴェロニカ。冷静沈着、情報処理能力は超一級品。だけど時々見せる人間らしさが、なんとも言えずチャーミングでね。まぁ、彼女もまた、この“狩り”の物語に欠かせない存在だった。

 

 三人は協力して、バッドランズに潜む謎の地下施設へと足を踏み入れた。

 

 ウェイランドユタニ社――銀河でも指折りの巨大企業。彼らがひっそりとクローンプレデターを育成していたんだ。エイペックスのクローンだけじゃない。ウルフ、スカー、ゴンジに似た個体まで。目的は不明。ただ一つ分かるのは、彼らは狩人の力を利用しようとしていたってことだ。

 

 けど――それが間違いだった。

 

 だって、彼らが模倣しようとしたのは“文化”であり、“誇り”であり、“生き様”だったんだから。数字で割り切れるようなもんじゃないのさ。

 

 結果? 地下施設は爆破、データは全て消去、残ったのはエイペックスの手についた白いアンドロイドの血だけってわけ。

 

 ……さて、そんな武勇伝を引っ提げて、彼は何処へ?

 

 答えは簡単。

 

 ――強制帰還だ。

 

 爆破からの逃走劇を終えた彼が、ひと息つく間もなくガントレットを通して受け取ったのは、エルダー直属の教官「ゴンジ」からの緊急召喚。

 

 「今すぐ帰ってこい」

 

 理由? もちろん訊いたさ。でも答えは「いいから帰ってこい」だけ。古今東西、師匠ってやつはみんなそうだ。

 

 

 

……そして、星の彼方。アヌ族の母星、司令室。

 

 

 

 扉が開き、彼が戻ってきた。

 

 

 

 「ただいま戻りましたー!」

 

 

 

 エイペックスは元気に手を振りながらガントレットを解除する。背中には泥だらけのスピア、腰にはプロテインの空ボトル。服はボロボロ、でも表情は晴れやかそのものだ。

 

 

 

 迎えるのは、重厚な雰囲気を纏った長身のプレデター――エルダー。そして、その隣には、鋭い眼差しと静かな佇まいを保つ一体の熟練戦士が立っていた。

 

 彼の名は、ウルフ。

 

 かつて無数の狩場で修羅を潜り抜けた、孤高の猛者。

 

 エイペックスの姿を目にしても、彼はただ静かに、その帰還を見守っていた。

 

 

 

 エルダーが、口を開いた。

 

 

 

 「エイペックス、よくやった。任務完了だ」

 

 

 

 「え? 任務? 任務だったのこれ???」

 

 

 

 ポカンとした顔で問い返すその様子に、場が少しだけ和んだように見えた。

 

 

 

 そんな彼の隣で、黙していたウルフに、エルダーが視線を向ける。

 

 

 

 「ウルフ。どうした?」

 

 

 

 横に立っていたウルフは、ほんのわずかに顎を引いて答えた。

 

 

 

 「いえ、なんでもないですよ」

 

 

 

 その声は小さくも、確かだった。

 

 喜びでも、驚きでもなく、どこか誇らしさに似たものがそこにはあった。

 

 

 

 ――こうして、ひとつの戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 だが、狩人の旅に終わりはない。

 

 次の獲物が現れるその時まで――宇宙のどこかで、また新たな物語が始まるだろう。 






ちょっとこれ以上は思いつかないなと思い終了!!ありがとうございました。映画が公開されたら書き直しますかねw


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