・・・ください、・・・きてください、起きてください!』
「ん〜〜〜〜・・・・・」
目を覚ますと真っ暗な部屋、いや箱の中に積み込まれていた。いつから眠っていたのか、そもそもどこでどうして眠っていたのか。そもそもここはどこなのか、何一つ思い出せない。とりあえずキャロルに起こしてもらったらしい。キャロルのデータ元の小型デバイスとイヤホンが没収?されていなかったことに安堵した。
「おはよう、キャロりん」
『呑気なことを言ってる場合ではありません。ここがどこなのかわかってますか?』
「あ〜〜〜、ここどこ?」
『はあ・・・・・・・』
それはそれはとても深い溜め息をつかれた。普段から溜め息をつかれることは多いが、今回のはかなり精神的に効いた。
『眠る前に居酒屋にいたのは覚えてますか?』
「うん、それは覚えてる。優しい人達が酒を奢ってくれたんだよね」
そこで気づく。もしかしてあの人達って人攫いだったのでは? 私は酒を餌に眠らされて現在進行形で箱に詰められてどこかに移送されているのではないか。どこへ送られて何をさせられるのかはわからないがこのまま箱から出されるまでに脱出しないとナニカされるのは目に見えていた。真っ暗闇なので何も見えないが。
「キャロりん、どれくらいの眠らされてたとかわかる?」
今の頼みの綱はキャロルだけだ。イヤホンを付けているままということはキャロルのことは知らないようだった。キャロルの電源は半永久的に充電する必要がない。どういう仕組みなのかはわからないが、言われた通りに機械を組み立てたらそうなった。
『眠らされていた時間は約2時間半、現在の時刻は午前1時頃です』
長時間揺られていたのによくもまあ幸せそうに眠れていたな、と自分に対して呆れてしまう。2時間半ということは元の場所からはかなり離れたところへと移送されているようだった。あの居酒屋がある居住区は賑わいを見せていたため、犯罪をするのは難しかったのかもしれない。
「私を箱詰めにした奴らの体つきとかわかる? ガタイがよかったら多分負けるだろうし」
『実行した人物は居酒屋にいた連中と同じです』
私はあまりガタイのいい方ではないし、筋肉もそれほどついていない。とはいえ旅をしていて危険な目には何度も晒されてきた結果、逃げ足だけは早い。
「ふむ・・・手足が縛られているわけではなさそうだな」
ゆっくりと優しく上の面を押すと簡単に外の光が見えた。居酒屋から連れ出したままの状態で封もしていない箱に入れられたようだ。
聞き耳を立てる。周りには誰もいないようなのでゆっくり、ゆっくりと蓋を開ける。蓋を持ったまま箱の中で立ち上がるとそこは軽トラの荷物置き場だった。想像よりも雑な計画だったのだろう。本当にお粗末すぎる。
『このまま飛び降りることはできそうです。どうしますか? 私としては飛び降りた方が賢明かと』
確かにキャロルの言う通り飛び降りた方がいいだろう。だが荷物置き場に自分の荷物がなかった。鞄に入っているものといえば、ちょっとの小銭とスクラップブックぐらいだ。他には色々な人にもらったお菓子。捨ててもいいものしか入っていないとはいえ、今まで出会った人達との思い出の写真などが貼り付けてあるスクラップブックを捨ててしまうのは惜しい。
「いや、奇襲する」
近くに置いてあるものは木でできた何かのバットだった。武器としては頼りないが、無いよりはマシだ。
「よし、行ってくる」
『私も一緒にいるので行ってくるは違いますね』
ははは、確かにそうだな。
少しだけ面白かった。久しぶりに面白いからが理由で笑ったな・・・
運転席に一人ひょろい感じの男がいた。耳を傾けると誰かと連絡を取っているようだ。
今だ
後ろから運転席に繋がる窓を割り、助手席に乗り込む。
「うっわあ、な、なんでお前がここにいるんだよ!」
封をしていなかったことに気づいていなかったのだろうか。そんなことはどうでもいい、とにかく運転席にいる男をバットでぶん殴った。
1回
「うっ!」
2回
「い、痛い! やめ」
3回
「なあ、うあっ」
4回
「・・・・・・・」
意外と頑丈な奴だった。ひょろいくせに。男が気絶したのを確認してからハンドルを手に取る。普通車を運転したことは一度もないが、フォークリフトはあるので多分大丈夫だろう。
『かなり荒い運転ですね、普通車を運転したことは』
「ない。でもフォークリフトと同じくらいだと思うから多分大丈夫」
意外と同じようなハンドル捌きでも大丈夫だった。ハンドルが重かったのは大変だったが、そう難しいことではなかった。
何も無いところでブレーキを踏む。
「いやー、危機一髪ってやつだったね」
『あのまま飛び降りればよかったものを・・・・』
「まあまあ、いいじゃん。上手くいったんだからさ」
荷物が全てあるかどうかを確認して車から降りる。自分を攫った代償として男の持ち物と車にあった金を根こそぎ持っていった。根こそぎと言っても元の所持金とほぼ変わりないほどしかなかったが。
「攫われた時はどうなるかと思ったけどまさか収益プラスになるとはね」
『犯罪・・・・・・・・今更ですね』
キャロルが何か言っていたが聞かなかったふりをした。それがいいのだろう。
「それにしても・・・ここどこーーー!!!!!」
どこを見渡してもACの残骸しかない場所だった。物色ついでに色々なACを調べると『ルビコン解放戦線』という知らない集団のACが幾つも見つかった。地球にルビコンという地名はなかったはずだ。念の為キャロルにも聞いてみたが、やはりそんなものは存在しないと言われた。
本当にここはどこなのだろうか・・・・・・・
不安と焦燥感に駆られる・・・・・ということは無かったが、地球に帰れるのかに関しては心配だった。
キャロルの旅の目的は人類の可能性を知るためだ。いつかはシティへ帰らねばならない。
私の旅の目的は目的を果たすまで、そしてシティへ帰るまでの道中キャロルを守ることだ。
キャロルを必ず帰すと覚悟を決めた。絶対にだ、私の命に替えても。
2024/9/2