艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた2 > ソード・クラッケンとチェーンソー魚 < 作:垂直離着陸式扇風機
1隻の船が海の上を走っていた。船尾からは白い航跡が尾を引いて左右に分かれ、やがて海の青色になじむように消えていく。
船尾から伸びているのは航跡だけではない。ロープもだ。
先端には円形で派手な色のパラシュート。ぶらさがっているのはスイムスーツの上にライフジャケットを羽織った女性の姿。
空中散歩を楽しんでいた女性が両腕を大きく開いて肘から先を上げ、左右に振った。
船尾でそれを見守っていた別の女性が操船している別の女性の肩をたたき、振り返る相手の肩越しに直進方向から少しずれた前方を指さした。
了解の合図を見た女性は再び船尾に戻り、ロープを巻き取る装置を起動させた。
回転にあわせてゆっくり、パラシュートと女性が降りてくる。
澄んだ空。美しい海。
このうえなく平和な光景。
言葉通りであれば、どんなによかったことか。
ここは太平洋の赤道近くにある、とある島。
深海棲艦と戦う施設はそれなりに充実している一方で、田舎暮らしに慣れた者ですら快適とは言い難い居住区に囲まれた鎮守府が、島に入り込んだ湾の奥に建てられている。
居住している女性のほぼ全てがこの世界における「人」ではなく、深海棲艦と戦う「艦娘」である。
艦娘は、深海棲艦との戦いに適性を持つ、ごく一部の「要員」だけがなれると推測されている。
「要員」は深海棲艦と戦う「艦娘」の拠点である鎮守府の運営に携わる者のことで、「要員」の中で一番よく知られているのが「提督」と呼ばれる役割の者だ。
しかしながら適性を持つ「要員」、「提督」、「艦娘」たちが見ることのできる「妖精さん」にしても、深海棲艦にしても、いまだに解明されていないことが多過ぎる。
例えば艦娘と共に深海棲艦と戦う「要員」の適性。「提督」の適正。
そして「艦娘」になる適性。
老若男女どころか、動植物、無機物、未確認生命体、深海棲艦さえもが艦娘と共に深海棲艦と戦う「要員」、「提督」、「艦娘」になる適性がある。「人」である必要すらない。
さらに言えば、艦娘と共に深海棲艦と戦う「要員」や「提督」になる適性と「艦娘」になる適性の間に、どのような違いがあるのかもわかっていない。
この世界の「人」もそうなっている理由を考えることができる限り考えたのであろうが、
「適性は『人』の倫理性や道徳性とはまったくの無関係である」
と、結論づけるしかなかったようなのだ。
あるいは「艦娘」の姿。
なぜ艦娘は女性の姿をしているのかという理由もわかっていない。
深海棲艦の一部についてもそうだ。
女性の姿に「なっている」のではなく、服装も含めて「外見が変化している」のではないかと考えている者もいる。
中には、
「破損した時の姿も含めて、見た者が深層心理でそうであってほしいと思っている姿を見ている」
という説を唱える者もいるが、賛成している側が多数派かどうかは書いた者にも見当がついていない。
そしてこういう状況であるにもかかわらず、外見が「女性」である艦娘と「人」、あるいは「艦娘」と艦娘と共に深海棲艦と戦う「要員」や「提督」との間には、ありとあらゆる「人間関係」が起こっている。
元は「ブラジルで生まれ、パプアニューギニアで育ち、エチオピアで働いて、ガボンを訪れた時に結婚し、エルサルバドルに居を移した後に適性が見いだされた人物」であった「提督」と、元は「ボリビア産の飼料とギリシャ産の水を与えられてサントメ・プリンシペで育ったニワトリから生まれ、東ティモールに出荷された卵の殻」であった「艦娘」が、同じ鎮守府で喜怒哀楽を分かち合う、というケースも決して珍しいことではない。
ちなみに、ここで一例として取り上げた「提督」の結婚相手も同じ鎮守府に所属している。
鎮守府の権限が提督とその結婚相手のどちらにあるかについては明らかにされていない。
読んでいる内容が理解できない人もいると思うが、書いた者も内容が理解できないまま書いているので、どうしても知りたい場合は理解できる人を探していただきたいと願っている。
もちろん、無理にそうする必要はないわけだが。
最良の方法は「理解を放棄すること」、ではないかとも思うのだ。
一例ででてきた提督と艦娘の設定はランダムで国の名前を表示して、それにランダムで重ならない数字を振って作りました。
以前、少しでも文字数増やそうと思ってふりがな(ルビ)つけていたら、途中でつけるのが面倒になって。
とは言っても途中でルビなしにするのもアレだし、つけたルビを削除するより全部つけたほうがまだ楽なところまで進んでたから、最後までつけましたけど。
今回は最初から基本的にルビをつけないことにしました。