艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた2 > ソード・クラッケンとチェーンソー魚 <   作:垂直離着陸式扇風機

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前回のあらすじ

艦娘たちは休暇を取りました。



第2話

 パラシュートを引っ張っていた船は、やかましい音を周囲にまき散らしながら進んでいた。

 ご機嫌な音楽が響いていれば周囲の風景になじんでいただろうにもかかわらず、あいにくとエンジンの活動音は、大声でのやり取りさえ困難にしていた。

 

 そもそも船自体が、深海棲艦との戦いの初期に急きょ建造された18メートル級の魚雷艇である。

 最初のうちは限られた資源で作られたゆえの低品質のまま酷使されていたのだが、艦娘の増加で資源の入手量が増え、品質がよくなってきた一方で使用頻度は減ってきていた。

 

 漁業その他には使えると見なされたので、兵器類を外して民間に払い下げになったものも少なくなかった。

 そのうちの1隻を、鎮守府で購入したのだ。

 

 様々な用途に使うために原型をとどめないくらい改造されているが、あくまでこの鎮守府で使用可能な予算の範囲内での話だ。

 豪華な設備の追加などやりたくてもできない、手作り感あふれる一品だった。

 

 

 元魚雷艇のエンジン音がうるさかったのは、パラセーリングで目的地を探していた間のこと。

 巻き取られたロープの先から艦娘のローマが船に降りて装備を外し終わったころには、船の速度もエンジンの音もずっと控えめになっていた。

 

「あとどれくらいで島に着くのでしょうか? 」

「さあ、どれくらいかしら」

 

 普段よりは大きな声の羽黒の問いかけにローマは答えた。

 いや、そう答えようとする前に、

 

「ああああああああ、ローマママああああああああっ!! 」

 

 泣きながら大声をあげて飛びついた別の艦娘に、もう少しのところで押し倒されそうになった。

 

「ねえ、どうしてアブルッツィはこうなっているの!?」

「それがその、気がついた時にはもうこうなって」

「ローマママああああああああっ!! さびしかったああああああああっ!! 」

 

 羽黒が説明しようとするのもお構いなしに、アブルッツィがローマにしがみついていた。

 アルコールに酔っているのはわかったが、どうしてこうなっているのかは見当もつかない。

 

「アブルッツィ」

 

 アブルッツィを体から引きはがしたローマは、その両頬を手で抑えて目を合わせた。

 

「私はあなたのママじゃない」

 

 ぞくりとするほど抑揚のない声に、アブルッツィの瞳が大きく見開かれた。

 

「ママじゃないの? 」

「そう」

 

 無情な返事にもかかわらず、アブルッツィは泣き出さなかった。

 しばらくローマを無言で見つめ返し、

 

「じゃあ、ローマはわたしのおばちゃん? 」

 

 酷くおびえたようではあったがそう言った。

 

 その場に突然の落雷があったかのように、ローマと羽黒の表情が硬直した。

 生きながらにして伝説となった戦士が互いに向き合って、渾身の一撃で勝負をつけようとしているのを見守っているような、緊張の時間が過ぎていった。

 

 閉じていたローマの口がかすかに開いた。

 すうと息を吸って一言。

 

「お姉ちゃん」

「おねえちゃん? 」

 

 無邪気そのものの表情と口調でアブルッツィが問い返した。

 

「ローマお姉ちゃん」

「ローマおねえちゃん! 」

 

 一言叫んで抱きついてきたアブルッツィの頭をローマがやさしくなでる。

 

「完全にできあがってるわね」

 

 ためいきをついて羽黒にかけた声は、それほどやさしくはなかった。

 

「今からでも引き返しますか? 」

「それはダメ! 」

 

 ローマの声はひときわ厳しくなった。

 

「あなたの恋愛相談のために島に行こうって決めたんだから、今さら尻込みしないで! 気になる相手を振り向かせるには、まず『やる』と決める! Lezione(課題) uno(その1) ! 」

 

 そう言って、小さくうめいているアブルッツィを船べりにもたれかけさせる。

 

「アブルッツィの酔いがさめるまでは、足柄と私に任せなさい。いいわね?」

 

 有無を言わせないローマの口調に、羽黒はうなずくことしかできなかった。

 

 

 

 大気までもが赤く染まった赤い海の上を、深海棲艦が移動していた。

 波はなく、風も吹いていない。重苦しいほどに赤い空間が広がっている。

 

 重巡リ級と防空巡棲姫が移動を続けている。双方とも艤装のほとんどを失っている。

 何度も後ろを振り返りながら、必死になって。何かから逃げようとしている。

 

 見渡す限り赤く染まった大気の一部に、少しだけ色の薄い空間が現れた。

 色の濃さも空間の広さも、不規則に変化を続けている。

 

 重巡リ級が変化を続けている空間に入り込むと、煙に覆われたかのようにその姿が見えなくなった。

 後を追う防空巡棲姫もその煙に覆われたかと思うと、次の瞬間には波のうねる青い海の上にいた。

 

 防空巡棲姫の後方から何かが迫っていた。

 艦娘でもなく、深海棲艦でもない。砲弾、魚雷、航空機などとも違う何かが。

 

「……ッ! ナニサッ……!」

 

 防空巡棲姫は、大きく体のバランスを崩しながら叫んだ。

 先ほどまではあった、片腕にまとっていたはずの艤装が一直線に切り取られていた。

 




有名なPTボートより小型の、イギリス、イタリア、日本などで使用された魚雷艇を参考にしましたけど、これでもパラセーリングに使われている船の2倍くらいの長さがあるんですよね。
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