艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた2 > ソード・クラッケンとチェーンソー魚 < 作:垂直離着陸式扇風機
登場する艦娘と深海棲艦の名前がわかりました
「振リ切レソウソウニナイ」
防空巡棲姫は、後方から襲ってきた何かに切り取られた艤装を押さえながら言った。
押さえたところには、深海棲艦を深海棲艦たらしめている黒い雲のような何かが漂っている。
戦闘で艤装が破壊されるのは珍しいことではない。
艤装を破壊されても時間をかければ元に戻るし、深海棲艦として生きる力を送り込めば、黒い雲のような何かで破壊されたところを覆ったり、元に戻すことができる。
いずれにしても元の姿に戻るには「食イモノ」を体に取り込む必要があるのだが、後者の場合は生きる力を使いすぎると深海棲艦としての体を保つことすらできなくなる。
「人」、「要員」、「提督」、「艦娘」などから鬼や姫をつけて呼ばれるくらい強くなった深海棲艦ともなると、特定の条件で体と艤装を強化した「壊」という姿に変わることのできる者もいる。
長い時間その姿でいようとすると深海棲艦としての体を保てなくなるし、姿を戻した後には大量の「食イモノ」が欲しくなるという欠点もあるので、どうしてもという時以外は変わりたがろうとしない。
面白半分に力を使ったり姿を変えたりすると、だいたいは失敗する。
その身をもって証明した、少なくない数の深海棲艦仲間から得られた知恵の1つである。
防空巡棲姫が押さえていたところに漂っていた黒い雲は見る見るうちに小さくなって消え、破損した部分には簡易ながらも艤装がまとわれた。
「トニカク急グ」
「ワカッタ」
防空巡棲姫と重巡リ級は何度も後方を振り返りながら、海の上を駆けていった。
鎮守府のある湾と外海の間にはいくつかの小島があり、湾の内側にはそれらの小島よりさらにちいさな無人島がある。
鎮守府から無人島までは、低速の艦娘が通常の速度で移動して3時間程度の距離だ。
普段は航路の目標として、あるいは哨戒任務の休憩地として使われ、深海棲艦の活動が活発な時期には監視所として、活動の穏やかな時には遊び場としても使われている。
ごくまれに、花火を打ち上げる場所になることもある。
足柄は慎重に船を無人島に寄せていった。
18メートルもある船が浜に乗りあがってしまうと、海に戻すのは一苦労どころではすまない。
艦娘が重い艤装を身につけることができるといっても、それは装着ユニットの補助があってのことだ。
ユニットがなければ、「人」が鍛えたくらいの力までしか発揮できない。
ユニット自体のオーバーホールもしておきたいし、そもそも休みの間は身につけたくない。
そんな建前と本音が組み合わさった結果、全員が艤装の装着ユニットを鎮守府に置いたまま島にやってきていた。
したがって、足柄が船の位置を保とうと操っている間に、ローマと羽黒が荷物をゴムボートに乗せて引っ張り、浜まで運ぶということになったのだ。
運び終えると足柄は船を少し沖に出し、アンカーを降ろして泳いで島に渡る。
アブルッツィは船に寝かせたままだ。酔いが覚めれば、自力で合流することだろう。
「さてと。まずは腹ごしらえかしら? 」
「ええ」
ローマの言葉に足柄がうなずいた。
「それが済んだら、さっそく羽黒にレクチャー開始ね」
「足柄姉さん!? 」
羽黒が目に見えてうろたえている。
「あ、あの。やっぱりアブルッツィさんが合流してからのほうが……」
「いいえ」
相変わらずローマの返答はにべもない。
「まずは水着を決めましょう。ただ大胆なだけじゃダメ。かと言って……」
そこで、羽黒の頭から足までをじっくりと眺める。
「大人しすぎてもやっぱりダメ……足柄! 」
「安心してローマさん。羽黒に似合いそうなコーデをいくつか用意してあるわ! 」
「足柄姉さん!? 」
ローマにサムズアップしてみせた足柄に、羽黒がますますうろたえる。
「もちろんローマさんも用意しているわよね? 」
「ええっ!? 」
「当然よ。話があってすぐにアブルッツィと選んだわ」
生き生きとした足柄とローマのやりとりに、羽黒だけがついていけなくなっている。
「そうと決まればさっそく食事ね」
「羽黒もそれでいいわね? 」
ローマと足柄の目は、逃しはしないと語りかけているような光をたたえていた。
ローマたちが訪れている小島の外海側の浜辺では、重巡リ級と防空巡棲姫が岩の上に座り込んでいた。
双方とも変色海域から抜け出た直後よりもさらに艤装が失われており、基部だけが体の表面を覆っているに近い状態だ。
「ココヲ越エル」
防空巡棲姫が島の尾根のほうを指さした。
「陸ヲ通レバ少シハ安全ダロウ」
「ダトイイケド」
リ級はそう言うと、自分たちが渡ってきた海のほうをいまいましげに振り返った。
もっともそれも一瞬のことで、すぐに立ち上がると防空巡棲姫が指さしたほうへと歩いていく。
しばらくすると、いく筋もの白い波が海面に現れ、跡をひきながら島のほうへと向かっていった。
深海棲艦でも「調子乗ってやってると」ダメらしい