艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた2 > ソード・クラッケンとチェーンソー魚 < 作:垂直離着陸式扇風機
羽黒の水着を決めるようです。
ローマは腕を組んで、自信ありげに胸を張った。
足柄はその横で小首をかしげている。
「ん-、こうきたかあ……」
そうつぶやいて、今一つ納得できないという表情で羽黒を見つめる。
二人の視線を浴びている羽黒の目は、あらぬほうに泳いでいた。
散々ローマに注意されて背筋こそ伸ばしているものの、顔が火照っているように見えるのは暑さのせいだけではないだろう。
血色のいい肌にまとっているのは、真珠色でセパレートの水着。
ビキニよりも幅広ではあるが、胸の下からヘソの下まで大きく露出している。
顔が火照っているように見えるのは生地の少なさのせいなのか、露出している部分の体型のせいなのか。
注視されているというのもあるだろうし、それ以外の理由が入り混じっているということもある。
「古代ローマで運動する時に使われていた服装をデザインに取り入れていると水着の説明に書いてあったの。レトロスタイル(
「二千年ほど前をレトロの範囲に含んでいいのかしら?」
ローマの説明にしても足柄のコメントにしても、そして無言のままの羽黒にしても、その水着のデザインが当時の下着に近いことをわかっていないのは明らかだった。
わかっていれば、
「あの、できればもう少し」
と言いかけた羽黒の言葉をさえぎって、
「待って。これくらいのフリルがあったほうが良くないかしら? 」
と言った足柄が、羽黒の股間のすぐ下あたりで手と腕を水平に伸ばしたとは思えないし、否定気味に首を振ったローマの返答が、
「ちょっと賛成できないわね。スカートがひるがえるようにして視線を向けさせようとするのは」
であったとも思えない。
いや、仮にわかったうえで、なおかつ大まじめにやっていたとして、
「いえ、視線の先がどこかを知りたいのよ」
と言った足柄の、片眉を上げるローマに説明した内容が、
「ひるがえっているフリルのほうに視線がいっていたらネコ型気質だって聞いたことがあるから、まずはそこを見分けたいの」
であったのは、注目すべきところを根本的に間違えているとしか思えないし、
「なるほど。確かに情報収集は大事なことね」
と、真剣きわまる表情でうなずいたローマのほうも、理解の方向を間違っていると断定するしかないだろう。
「じゃあ、それも考慮に入れて次にいきましょう」
「そうね」
羽黒が何かしゃべろうとするのを封じるかのように、足柄とローマは別の水着の準備を始めた。
本人たちの気づかないまま見当違いの方向に進んでいく水着選びの終着点がどこになるかは、誰にも想像がつかなかった。
重巡リ級と防空巡棲姫は、島の尾根を越えて鎮守府のある側に降りてきた。
「何カイル! 」
リ級が防空巡棲姫に注意を促して浜のほうを指し示した。
「アレハ……“ヒト”カ? 」
いくら深海棲艦とは言っても、小指ほどの大きさにしか見えない距離では目視で艦娘かヒトかを区別するのは難しい。
艤装の装着ユニットを外しているとあっては、なおさらだ。
「コチラニ気ガツクマデ近ヅクゾ」
「足柄姉さん! 」
「もう少しだけ待って」
足柄は羽黒を振り向きもせずに返事をする。
しかし、羽黒も今回は引き下がらなかった。
「誰かが近づいて来ます! 」
「気ガツイタヨウダ」
重巡リ級が浜にいる3人の動きを見ながら言った。
さっきよりは近づいているが、声が届くには、まだだいぶ遠い。
「ヨシ。教ワッタトオリニヤルカ」
防空巡棲姫は相手の注意をひきつけるように腕を振りながらリ級に言う。
「“ぼでぃ・らんげーじ”ヲ? 」
「ソウ」
古代ローマには革製のビキニがあったらしいですが、それよりも前に古代ギリシャにあったという説も。
あと、ネコ型気質のみわけかたはたぶんそうじゃないと思う。