グッドルーザーを探して   作:なばかりのはばかり

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めだかボックス完結後の話です。
本編のみを参照しておりますので、細かい設定等を気にしない人だけ読んでください。


グッドルーザーを探して

「なぁ、蝶ヶ崎さん」

 

「なんだい、人吉善吉くん」

 

「あんたなら球磨川がどこにいるか知ってるんじゃないのか?」

 

 そんな会話をするふたりは箱庭学園卒業後、10年以上関わりがなかった。

 

「あんたを探すのだって一苦労だった。志布志さんに聞かなきゃ見つけることも難しかった」

 

「へぇ。彼女は元気にやっていたかい?」

 

「ええ、まぁ。まさかマイナス十三組だったあの人が今じゃ精神科医になってるだなんて予想外も予想外の想定外でしたよ。かくいうあなたも—―」

 

 彼らがいるのは児童養護施設。

 しかも、そこに預けられているのは真っ当ではない真っ黒な存在たち。

 

「過負荷を抱える子供たちをケアして育てるだなんて、そんな殊勝な人でしたっけ?」

 

「私たちマイナスは産まれてすぐにその力を発現しているわけじゃありません。元からの資質に加え、過度なストレスを受けることで何かしらのマイナスを生み出す。だったら、環境を整え、過負荷を抱えていても問題ない心を作ることでマイナスの発現を緩和できる。江迎くんみたいにね」

 

「なんもかんもの傷を他人に押し付けていたあんたが過負荷を抱えるための施設を作るってのが意外だって話ですよ」

 

「人吉くん。私にも抱えて抱きしめて繋いで紡ぐ関係ができたのですよ」

 

 彼の左手薬指には銀色の輪がかかっている。

 

「呼んでくださいよ、結婚式。俺ら、浅からぬ関係でしょう」

 

「式は挙げていませんよ。そういうのは私の因縁を晴らしてからにしましょうと約束したので」

 

「因縁?」

 

「私たちマイナスは多くの人を傷つけて生きてきました。そのことを『なかったこと』にする気はありません。償いきれるとも言いません。だから、せめて次の世代の過負荷たちが自分のマイナスに向き合えるように育ててからにしたいのです」

 

「そうッスか……。んじゃ、俺の結婚式で下見してくださいよ」

 

 そう言って人吉善吉は目的の一つを遂げる。

 どこにいるのか不明だったマイナス13組のひとり、蝶ヶ崎蛾ヶ丸へ、結婚式の招待状を送ること。

 

「もちろん、出席させてもらうよ。飛沫さんも来るのだろう?」

 

「はい! あとは球磨川の奴だけなんですがね」

 

「……」

 

 頭を抱えて掻いて、人吉善吉はうなる。

 

「ここの施設を作ったのはね、私だけど私だけじゃないんだ」

 

「?」

 

「おかしいと思わないのかい? これほどの過負荷を集めても外部に何一つとして影響が出ない環境。こんなのが作れるのは、何百年と獅子目言彦を隠匿し続けた不知火の里以外にないだろう」

 

「まさか……」

 

「ああ、もしも球磨川さんを隠し通せる人物がいるのだとしたら、安心院さんか不知火半袖、いや今は帯なんだっけ。彼女くらいのものだろう」

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