「し~ら~ぬ~い~」
「どうしたんだい。善吉。もしやお嬢様との結婚の前に一発遊んでおこうってんでこの帯ちゃんのところへ来たのかい? ダメよ善吉。あたしらは親友じゃないか! そんな、ああ、でも君が望むのなら……」
「ふざけるな! ちょっと半脱ぎになるな!」
「帯がなくなって半袖に戻っちゃう……」
先代の帯同様、着物で過ごす日がちょいちょいあったが、こういうネタをやりたいがためだったんじゃないかと勘繰ってしまう。
「もろもろ聞きたいことは山ほどあるが、単刀直入に言うぜ。おまえ、球磨川がどこにいるのか知ってるのか?」
「知ってるって答えたらどうするんだい?」
「教えてくれって土下座してでも頼むよ」
出会った頃から変わらぬ真っ直ぐな目に、不知火はやれやれと首を振るしかない。
「善吉の土下座は見たいけどさ、させた後に知りませんとは答えられないから先に言っておくけど、あたしは知らないよ」
「でも、蝶ヶ崎さんのことは知っていたんだよな?」
「もちろん。元マイナス13組のよしみだからね」
「教えてくれてもよかっただろ」
「教えたからってどうなるのさ。善吉、おまえのお人好しは度が過ぎてる。しかも変な女に好かれる天才だ。もしもあの施設に関わっていたなら、今の立場はねぇぜ」
おそらく、知らないところで想像もできない戦いがあったのだろう。
知っていたなら首を突っ込んでいたかもしれないし、そうなれば黒神グループでの出世に専念もできていない。
それをわかっていたから黙っていた。
不知火帯、もとい、親友の不知火半袖はそういう奴。
「ありがとよ」
「何がさ」
「別に」
親友相手にこれ以上の言葉はいらない。
「でも、おまえでも球磨川の行方はわからないんだな」
「探してはいるんだけどね。ああ別に、見つけてほっぺにチューしたいとかじゃないよ。あんな特大の過負荷を放っておいたら何が起こるかわかったもんじゃないからってだけ。だから、痕跡を辿って手繰って探ってはいるんだけどね、あたしらは調べたことを調べられないようにすべて『なかったこと』にする。それが不知火の里のやり方なのさ。で、結果、球磨川の旦那がいた痕跡をあたしらが消して回っちまう。堂々巡りならぬ堂々隠しなのさ」
「いや、よくわからんが。堂々隠しってなんだよ。まぁ、でもおまえも知らないんじゃお手上げかな」
「何を言っているのさ、善吉」
「?」
「あたしらにはとっておきのジョーカーがいるじゃないか」
あひゃひゃと笑う親友の提案はできれば呑みたくはない選択だった。