ハレチャーン、カワイイーヨ!
「とは言ったものの……」
どうすっかな、この状況。腕を一本取られた事で禁忌ちゃんは臆病な態勢になってる。
結構なスパンで復活する事を考えたら攻めたいが……それをさせてくれないのが禁忌ちゃんと。
本当にさあ、コイツ誰のだよ。ねちっこく相手の嫌なところを突きまくり、命を破滅させようと向かってくる。
それを為す為ならば、己の命を消すのも躊躇わない。
技術的には確かに
「ギテッ!ギカッ!」
「あぁ、マジクソ。クソゲーなんかやり飽きたわ。食いすぎて炎症になるぐらいにな」
どんどん攻撃が激しくなっていくが、対処できないって訳じゃない。
初めから薄々と感じて取っていた。この禁忌、手先が器用って感じじゃなさそうだ。
指先が華麗にしなる人間とは差異を持ち、歪に煙を膨らませている。
地道の耐久戦をしてたら俺が勝つ。
まあ、横腹の傷がなかったらなんだがな……。
思ったよりも損傷の幅がデカい…。動けば動く程に体力とエネルギーが消耗され、段々と要求される精度が高まっていく。
それに比例し、龍麟などのパフォーマンスは上がりまくってんだから笑えねえぜ。
「とりま、2本目」
つっても、黒い煙だ。絶対にどこかで再生が挟まれる。
俺にとっての最善は、ここでもう2本もぶった斬る事。
だが、それで終わりじゃなかったらどうなる。
もし、もしだ。その道が本当の最善じゃなかったらどうなる?
壊れてしまう…ヒナちゃんも、俺も。全て、壊れる…。
「アオ、私の手は必要?」
「ヒナ委員長…!?ダメ!ここにきちゃ!?まずっ…」
そんな俺の忠告が世界に届く事はなく、無遠慮に理不尽に魂を食い尽くさんと黒い煙は迫る。
地面を抉り、空を白面に戻し、全てを壊そうとする。
前時代に抱いた恐怖が……時空を越えてやってきた。
「はぁ…ぬるい」
ヒナちゃんは向かってくる黒い煙に対し、手で払った。
それだけで……黒い煙は完全に霧散した。
「あ、っ、は?」
「ギイァアァ!?」
俺にとっての空崎ヒナは強かった。今の自分よりも圧倒的格上で、勝てる見込みなんて存在しないと思っていた。
しかし、こうも思ったんだ。原作の時間軸までにある程度は近づけるだろうと。
…認識してたんだ。ゲヘナ最強は、所詮常人の勘違いだと。俺たちの次元に届かないと思ったんだ……!!
けど、違う。空崎ヒナは確実に違う…!!この人は間違いない。人類の理解を超えた化け物だ!
「ヒナ委員長……いや、ヒナちゃん。逆に聞くよ。この状況で手伝いがいると思うの?」
「いらないの?」
「いりますお願いしますヒナ様ヒナ様」
「最初から素直にしてなさい…」
呆れのため息を吐きつつ、ヒナちゃんは臨戦態勢を更に尖らせ、禁忌ちゃんを鋭い視線で見る。
俺ちゃん、前々世は男の子だったからね。こういう熱い展開は大大大好きさ!
あぁ、テンションがぶち上がる。鼓動が鳴り、響き、反撃の一手を演奏するかのように辺りが音響と化す。
ふははっ、やはりテンションだ。戦いにはテンションが重要だ!
「あの化け物について分かっていることは?」
「四肢代わりにしている黒い煙は再生するが、その分脆い。接着部分を狙えばいとも容易く砕けるさ。そして、四肢の代わりとなる腕は大体1分で再生する。今んところ、右腕が残り21、左足が残り46になる」
「わかった。私は右足をやる。アオは左腕をお願い」
「りょうかいっ!」
ヒナちゃは己の得物を構えつつ、俺に対して指示を出してくる。
左腕をぶった斬れ、中々に難しいのを出してくれるじゃないのさ。
俺じゃなかったらオ無理さん。そして、俺でもまあまあ厳しいな。
「まあ、さっきまでならな」
「ギイァアァ!?」
「注意が散らばってる。そして……言ったろ。俺はテンション爆上がりだってよ」
龍麟、その能力はテンションが上昇する度にボルテージも比例するように上昇していく。
現在可能な限界にまでな。
「ごめん、ヒナちゃん。後は頼む…」
「…了解。あとは私に任せて」
ここで倒れるのは少し心苦しいが、ヒナちゃんならやり遂げられるだろう。
ーーー
「…アオ、ありがとう。長くの間粘っていてくれて」
「そのおかげで、誰も犠牲に出せずに倒せる」
ヒナや風紀委員の者たちからは「終幕:デストロイヤー」と呼称される機関銃から発される弾丸はどこまでも鋭利に飛んでいき、極小の範囲である接着部分に触れ、爆散する。
派手な爆発によって広がっていく砂煙に目を細めつつ、警戒心を更に高めながら武器を掴む。
幼い頃にゲームで見た第二形態のように……この化け物がまた新しい姿を見せると確信しているから。
身体は女児10歳程度を映しながらも、その脳には確かな論理が載っていた。
強さの上から覆い被さるような冷静さ。それがヒナをゲヘナ最強へと君臨させているのだ。
「ギィああぁダァ!!!!」
悍ましさを感じさせる唸り声と共に繰り出されるのは攻撃。
理性も知性を壊す。見ただけで認識させる……そんな闇の一撃が放たれる。
生徒が持ち得る神秘の反転の恐怖。類似はしているが、間違いなく違っている。
恐怖のイコールであり、恐怖のイコールではなく、恐怖と劣り劣られの関係である。
そう、矛盾。時が進めば神秘を壊し、恐怖を壊し、崇高に牙を剥く傑物。
あぁ、だが……ゲヘナ最強にして最たる硬さを持つヒナには牙は通らない。
最強に挑むには、幾分か早すぎた。
「さて、あなたの番はこれで終わり?異論は言わせない。暴れた分は、殴られないとね?」
ヒナは確かな殺意を持った言葉と共に地面をかけ、空へと跳躍し、武器を捨て……拳を叩きこむ。
武器を使用しての攻撃を予想していた禁忌は戸惑い、困惑し、焦り、攻撃の一手を打ち出せないでいた。
『なぜ』と頭の中で繰り広げられているのも露知らず、ヒナの猛攻は広がっていく。
短い年ながら磨き上げられた才能と経験が猛威を払い、その威力…その鋭さは徐々に増している。
誰も文句の言いようがない最強……それを禁忌は体感し、焦りは加速する。
頭が、直感が、囁いたのだ。この場でゲヘナ最強を終わらせなくては…と。
「ギァラァァ!」
「乱暴な一撃…」
しかし…最強はそれで沈むほどには甘くない。
猛攻の中、無理やり隙を作り出し、出した攻撃。
速度、威力、ストレート過ぎる軌道。ヒナという女王に対して繰り出す一撃にしては……少々お粗末であった。
蝶が空を舞うようにふわりと避けられ、背後から強烈な一撃を叩き込まれる。
抵抗しても、抵抗しても。決して手が届かず、戦いにも満たない争いが繰り広げられている。
禁忌として謳われてるにも関わらず、ただの人間にここまで苦戦をしている。
既に禁忌のプライドはボロボロであり、心が暴走するのも時間の問題だった。
「あなただって色々と考えてるんだと思う。怒って、苦しんで、悲しんで。でもね、私だって怒ってるの。お調子者で、お人好しで、立場関係なく話してくる知人を傷つけられて、少し怒ってるの」
殺意が燃える。冷徹な瞳が更に冷徹に向い、ハイライトがなくなる。
"逃す"なんてあり得ない。今この場で倒す……そう言わんばかりの体。
その目、その手、その心。目の前にした禁忌は後悔をした。
キヴォトスに来た後悔を…。そして、生まれてきた後悔を。
どうも、解説役の鋼色です。
倒れた理由:
まあ率直に言えば横腹への攻撃ですね。ヘイロー持ってても、特殊なエネルギー持っててもね、臓器に穴あいて戦闘は危険です。
加えて、龍麟なんて技使ってる訳ですから。倒れるのは至極当然の摂理ということです。