ふはは、天井してまで狙う価値はあった!
でもアロナ、200連で☆3が3体はバカじゃないの?
ヒナちゃとの約束から大体数時間ほど。どれくらいの時間が経ったのかが憶測でしかないのは、俺ちゃんが眠ったからなんだな。
能力を伸ばすと言う名目以外で大量に使ったのはあの時が初めてだったからな。
その分の負債と……横腹を抉られた時の負債が一斉に襲いかかってきたんだろ。
はぁ……自分の体力を明確に把握しないとこうなるんだ。
あと、その時点での身体能力を把握できていなかったことか。
黒い煙からの棘……別に想定していなかった、なんてことはない。そう、そんなことはないんだ。
ただ、何とかできると思った。黒い煙から棘が放たれる……そんな懐からの攻撃にでも対応できると慢心した。
だから俺はダメージを喰らっている。
あぁ、ムカつく。シチュエーションが違うだけでココまでボコボコにされている俺が一番腹立つ。
ヒナちゃんがいなかったら俺は死んでたんだ……。何が英雄だよ、最前線で戦って誰かに心配をかけるようじゃ、英雄なんて遠すぎる。
「…起きたの?」
「……うん。おきた」
「アオ、滑舌が回ってない。寝たいならまだ寝てくれて良いのだけど…。まだ家に到着するまで時間がかかるから」
「ねれないよ。感情が色々あって、多分ねれない」
「…そう。自分のことを責めてしまうから?」
「よく分かってるね」
「私だって、同じ気持ちだった。不甲斐ない自分を責めてしまう。だから、分かるの。……まだ疲労が取れてないでしょう。寝なさい」
優しい口調で、慈しみの感情が含まれた言葉で。
歯を食いしばってでも耐えたいのに。その意識に反して体は眠ろうとしてくる。
ヒナちゃんに甘えることになって。またお世話になっちゃって。
すっごく悔しくなる。
でも……それと同時に。とても嬉しくて、心地よくて、一生浸かっておきたくなる。
「おやすみ、ひな」
「えぇ、おやすみ」
ーーー
「…眠った、のよね」
初めて行った、色々な感情を胸に持ち合わせている人を宥めるという行為。そして、初めてできた友人に思いを込めて発した行動でもあった。
その事実を噛み締めると同時に、アオが現在形として抱えている感情に思いを馳せていた。
ヒナが読み取れる範囲でも、学生が持つべきではない事情があるのは確か。
でなければ、自分を責める姿勢な訳がない。そんな事、あって良いはずがない。
ミレニアムサイエンススクールはゲヘナやトリニティと比べたら学園内の諍いが少ない高校ではあるので、ミレニアムの中での事情ではないのは確かだろう。
学校以外の理由があるとしたら……それは大人かもしれない。
ゲヘナの風紀委員として活動してきて、キヴォトスでの大人の汚さは目にこびりついている。
あまり強く言いたくはないが、この都市のお店は汚い。いや、それどころの話ではない。
汚いと言うにはドス黒い、それがキヴォトスの大人の4割だ。
「……」
もしかしたら、と思考がよぎる。そのタイミングと同時期にセナから渡されたカルテが頭に映り、ついつい歯軋りが鳴った。
あまりに異常な事態に。人体ではありえない現象に。チナツですら恐怖したあれが、もし人体改造で作られたのなら。
最悪を予想して、さらに歯軋りが鳴る。
鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らして、鳴らした。
当の本人であるヒナですら把握できない肌に鳴らしていれば、いつの間にか家についていた。
どうやら、憤りすぎていたらしい。初めての友達が関わっていると思い、周りが見えない程度には感情に包まらていた。
「ごめん…アオ」
背中でぐっすりと眠っていた友人に対して、密かに謝罪をした。
ーーー
"虚ろい、それは竜になれるのだろうか"
知らねえよ。竜や龍の法則なんてな。
"鏡、それは龍になれるのだろうか"
俺は王じゃない。ただの始まりで、視つめる者でしかない。
"世界はどうして廻る?"
旧約か、規定か、規則か、ルールか。そのどれかなんじゃないか?
答えを知りたけりゃ兄様を頼れ。それかグレイトだな。俺はただの観測者。
調停者なんかじゃないんだよ。
"空崎ヒナに守られて満足か?"
は?
"空崎ヒナに守られて満足か?"
聞こえなかった、もう一度言ってくれますの「は?」じゃない。
いつ俺が満足したって言った?いつ俺が!ゲヘナ最強であるヒナに守られたいですって言った!!!
今だって強くなろうとしてる。ヒナに守られてるだけじゃないんだ…!
"確かに強くなっている。だが、緩やかにだ。それで強くなれるのは何百年後か、何千年後か。空崎ヒナの目の前に立てる時、空崎ヒナは死んでいる。老衰か、戦闘での死亡は知らんがな。空崎ヒナが卒業するまで…いや、死ぬまで頼って満足かと聞いている。惚れた女に死ぬまで頼って満足かと聞いているんだ"
裏の俺の言葉。それが、心に深く突き刺さった。
届かないと思っていた閉じていた蓋。頑強な檻に閉じ込めていたソレが、一気に体の中を駆け巡る。
そんなの……!俺だって!!
「ヒナ……」
「どうしたの。
「俺が強くなったら……ヒナと共に戦っても良いか?」
「……?まあ、良いけど」
「そっか…」
「とりあえずご飯食べる?一応おかゆ作ってあるけど」
「食べる…」