所謂小話短編集的な奴です。
三話編成のつもりでしたが、思ったより長くなり二話編成に。
それではどうぞ!
■Saida:動き始めた探偵
___ここは秋葉原駅からすぐ近くにあるオフィスビル。
そこの一角にある探偵事務所内で、一人の青年が頭に腕を乗せ、机に足をかけ、椅子の上で眠っていた。
見た目は中性的でありながら、非常に若い様子。
とてもじゃないが大人には見えない。
だが…なにより、それよりも目を引くのは。
『鋼鉄の機械のような両腕』
重そうにも軽そうにも見える、その腕は、この『個性』を持つ人が溢れかえる社会に、異質な雰囲気を漂わせていた。
まるで…実在しない物質が組み込まれているかのように。
そんな、男の元に一本の電話がかかってきたようだ。
スマートフォンや携帯電話、トーンダイヤル式電話が主流となった中、今時珍しい回転ダイヤル式の固定電話が、『ジリリリ…』と部屋に鳴り響く。
「…んあ…電話か。…はい、こちら、武装探偵事務所。依頼中の方でしたら合言葉をどうぞ。そうじゃない方はご用件をお願いします」
『…4分の1……俺だ。イヨ』
「…?…4分の1?…そんな合言葉、今は……いや、まさか…!その声、おやっさんか…!?」
手に取った電話の受話器から、渋い男性の声が聞こえると、イヨと呼ばれた青年は驚きの声を上げる。
どうやら、電話の相手とは既知のようだ。
『正解だ。久しぶりだな。推察力が衰えてないようで安心した』
「そりゃドウモ。…はぁ、全く。昔、俺に依頼した時の合言葉を使うなんてな…気づかなかったらどうすんだよ」
『そんときはお前がそこまでの探偵だったと思って、話し始めるだけさ』
「ひっで…!」
青年は相手の言葉に呆れ交じりの苦笑した表情を漏らす。
その様子から、相手との良好な仲が伺えた。
少しして、青年はしばらく逡巡した
「……なぁ、おやっさん。俺、ニュース、見たよ」
『…そうか』
「…俺もまさか、あんな事件が起こるなんて思わなかったからな。気になってしまう。どうしてあんなことが起こったのかが」
『…』
「…だけどな?それよりも何より気になるのが……おやっさん達だ。なぁ、事件が起こって以降…ちゃんと寝れてんのか?」
『………』
「無言は肯定と…受け取るからな?どれくらい寝てないんだ?」
『……三ヶ月以上だ』
「…つまり、事件が起きてからずっと…揃ってろくに寝れていないのか」
『…あぁ、そうだ。その通りだ』
その言葉を聞いて、青年は苦虫を噛み潰したかのように、顔を歪める。
「…心配なのはわかる。多分、文字通り懸命になって探しているだろうことも。こうして電話しているのも、少しでも見つかる確率を上げるために、俺に今回の件を依頼する為だろ?だけどな…いずれ倒れてしまう動き方すんのは、ダメだろ」
『分かっては…いる。だがな…寝ようにも…寝れないんだ』
「まさか…悪夢を見てるのか…?」
『…あぁ。それも…何度も…何度も何度も
「……そう…か」
酷く重く、暗い静かな空気が場に淀み、漂う。
苦く吐き気がするような、そんな空気が場を満たしていた。
そんな空気を変えるためになのか…それとも、旧知の相手の力になりたいと思ったのか。
しばらくして、青年は___イヨはとある決断を下した。
「……決めた。今回の依頼料。無しでいい。それどころかうちのメンバー総動員して、無償で真相探ってやるよ」
『…良いのか?』
「あぁ。どうせ、これを聞いたらあの二人、勝手に動き出すに決まっている。それなら、俺が主体となって動いた方がいいさ。自慢じゃないがうちにはお人好しが集まっているんでな」
相手には見えないと知りつつも、彼は笑みを浮かべる。
自分を鼓舞する為にも…電話相手を元気付ける為にも。
『ッ〜〜!すまない…感謝する』
「気にすんなって。…んじゃ、依頼名を『消えた姫君達』で受注。合言葉は『一番星に願いを』。確かにこの依頼、武装探偵事務所、
そして___鉄腕の探偵は動き出す。
■Saida:『どうか生きていて』
『___貴女にとって、エリカお嬢様とは?』
そう問われたなら、私は真っ先にこう答える。
___一番星のような存在だと。
そう答えるには理由がある。
あれは数ヶ月前、まだ私が玉護石家のメイドとして、働き始めてから二ヶ月も経たない時のことだ___。
「___…はぁ…しんどさに負けて…サボっちゃった」
あの日…私はメイド業務に思わず根を上げて、サボった。
なんせ、玉護石家の従者というのは、その業務が恐ろしく多岐に渡るのだ。
洗濯、掃除、調理等の家事は当たり前。
それに加え、旦那様や奥様の書類整理の手伝い、マナー講習への参加、最低限の護身術の習得、夜間の見回り、食材の仕入れの受け取りetc…。
恐らく、『絶対、他の所ではしないだろ!?』と言われるような事までする…もはや従者業務の皮を被った何かのような仕事内容なのだ。
これで、賃金が低いなどあれば、私は即刻辞めてたかもしれない。
だが…。
12時間労働実働9時間の時給3000円。しかも休憩中も時給が普通に発生する。
週休二日制に加え、毎月有休が3日貯まる。有休は毎年繰越可能。
敷地内の休憩室は最早、高級旅館やホテルそのもの。
食堂の料理は高級フレンチからB級グルメまで取り揃え済み。
などなど、労働内容がきつい事以外はホワイト過ぎて逆に怖いくらいの高待遇なのである。
もう、この職場環境天国という名の麻薬のような環境に身を置いてしまった故に、辞めるに辞めれない…辞めたくない状況だった。
「…メイド長。多分、いなくなった私を探してるよねぇ」
配属されてから二ヶ月。ずっと目を掛けてくれた先輩の顔が浮かぶ。
厳しいけど…親身になってくれるしかっこいい。そんな上司であった。
「怒るかな…怒るよね…はぁ」
期待してくれてるのはわかるし、優しさ故の厳しさというのもわかる。
だからこそ逃げ出したことに落ち込み、空を眺める。
「___ごめん。横に座っても大丈夫かな?」
___そんな時だった。お嬢様と出会ったのは。
ただ。その時の私は。
「良いけど…。えっと…貴女は一体?」
「えっ?……あぁそうか、ごめん。確かに初対面だね。失礼した。…私はつつじ。
「あ、え?先輩!?すみません、タメ口聞いてしまい!」
「あはは…そう固くならないでさ、さっきの口調で話してくれよ。見ての通り、この容姿でさ。幼く見られるのは慣れっこだ。…それにね?私としてはタメ口の方が、好きなんだ。自分の思う通りの話し方をしてくれると嬉しい」
「えっと、じゃあせめて…つつじ先輩で」
「ふふ、良いね」
まだ、お嬢様と一回たりとも直接会ってなかったこと、顔を覚えきれてなかったこと。
お嬢様がメイド服に身を包まれていたこと。声色と口調を変えていたこと。変装も黒髪ロングの赤目となっており、しかもそう簡単に見破れるものではなかったこと。*1
これらが重なって、私は目の前にいるお嬢様を、存在しない架空の先輩『絵具石 つつじ』だと思ってしまっていた。
「___さてと。それで?どうして君はこんな所にいるんだい?確か、君、あねさん___メイド長の元にいた娘だろう?…あぁ、そうだ先に言っておくがこれは怒っているわけではないよ?ただ彼女と何かあったのかなと不思議なのと心配に思ったんだ。…あぁだからさ、何があったのか。よければ話してもらえると助かるよ」
「…はい、ありがとうございます。実は___」
そこからは
なんせ、お嬢様の年上の先輩の振りがあまりにも上手く*2、それはそれは年上の余裕というのか、包容力というのか…、そういうもので私を包みながら話を聞いて、相槌を打って、時には質問してくるのだ。
聞き上手とはこの事を言うのだろう。と漠然と思った。
「___なるほどね。要は期待の重圧としんどさに負けて、それで思わず逃げてきちゃったという訳か」
「はい…」
「そうかそうか…」
人に説明する事で改めて、自分のした事に対する情けなさで気持ちが暗くなり、頭が下がる。
何しているのだろうとも。
けれど。
「…うんそうだね。私から言わせてもらうなら…それは逃げて正解だったと思うよ?」
「えっ」
彼女はその『逃げ』を肯定した。
「で、でも、私逃げたんですよ!?ダメなことじゃ…!?」
「ダメなことじゃない。人間…さ。誰しもずっと頑張れる訳じゃないんだ。それは病気や障害だったり、能力だったり、恐怖や不安だったり、精神的疲労だったり…『普通』ができないことへの諦めだったりでさ。全員が全員、頑張れるわけじゃない、頑張り続けられるわけじゃ…ないんだ」
「…でも……」
「うん。…そりゃね。だからといって、ずっと逃げ続けるのは良くないよ?いつかはその逃げたことに対して向き合わなきゃならない日が、引くに引けない引いちゃいけない戦いが来るから。
……けれど、さ。
一時くらいなら、自分を守る為に。
自分が休む為に。
自分が戦う為に。
自分が進む為に。
立ち止まったり、逃げるのはいいと思うんだ。私は。じゃなきゃ、いつか、自分が自分や周りに押し潰されてしまう」
それは…その言葉には。
一つ一つに、実感がこもっていた。
「だから。一時くらいなら、逃げても良いんだ。
君はすごいと思う。期待に応える為に頑張り続けてたんだ。
でも。私は頑張り続けてしまった人を知っているから…それはお勧めしない。
それは間違った頑張り方だと思ってる。
故に。一時くらいなら休んで良い、逃げても良いんだと。そう言うよ」
実体験なんだろうと、思うくらいには。
その話は酷く現実味を帯びていた。
「……さてと、そろそろ休憩は終わり。お迎えが来たみたいだよ、『
「えっ?……あれ?なんでつつじ先輩、私の名前を知って…?」
「___いた!」
「ほら、メイド長来たよ」
「えっ?あっ…!」
「良かった…こんな所にいたのね」
「えっと…その…」
思わず、しどろもどろになる。
謝らなきゃと思うのに。
声が出てこない。
怖くて固まってしまう。
だけど。
「心配…したんだから」
「…ッ!」
それはメイド長が優しくぎゅっと抱きしめてくれたことで。
氷解した。
「…すみません…でした。メイド長」
「…いいのよ。気にしないで。多分、貴女が逃げたのは、私が重荷を背負わせてしまい過ぎたせいだからよね…?ならむしろ、私が謝らなきゃ」
「…ッ!ごめん…なさい…ごめんなさい!」
「良いの…私が悪いから。謝らなくていいのよ」
そうして少しずつ、心から申し訳なさが溢れてる。
本当に、この人の為に頑張らなきゃと思った。
戦い続けられるように。
偶にゆっくりして、逃げて。
そうして頑張れるように。
「…さてと、行きましょうか。ゆっくりお茶飲みに」
「…はい!」
「…あぁ、それと。そこでサボってる
「…
「今、どうして貴女がここにいるのかは不問にしときます。……ただ、感謝を。ありがとうございました」
「あ、私からも!つつじ先輩!ありがとうございました!」
「…ううん、気にしないで。私はただ本当に話を聞いていただけだから」
「…ふふっ、そういうことにしときます。ではちゃんと部屋で待っておいてくださいね?…また後で会いに行きますから」
そうして、この後、メイド長とゆっくりお茶した後。
メイド長から先輩の正体を教えられ。驚き大慌てして、お嬢様の所にメイド長に連れて行ってもらい、謝りに行き。
「気にしないで」と苦笑されることになった。
___もし、あの時のことがなかったら。私は今、この屋敷で働き続けられてなかったかもしれない。
本当にお嬢様がいなかったら今頃、私はどんなふうに生きていたことかわからない。
だから。だからどうか。
エリカお嬢様が…あの
次回『それは運命の夜』。お楽しみに。
その夜、エリカは…(サーヴァントクラス決定します)
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魔術師と運命を共にする。
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暗殺者と運命を共にする。
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復讐者と運命を共にする。
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運命と出会わない。(サーヴァントなし)