KIVA ReRe:1986↔2008 作:ボルメテウスさん
俺は、マーちゃんと名乗るマーメイドの意思が宿る弓を握り絞める。
握り絞めると同時に、俺の身体にも変化するのが、分かる。
以前、オーガから力を借りた際に、その重量あるオーガスティックを十分に操れるだけの力を得る為の筋肉。
それを無理矢理造り出された感覚とは違う。
それとは正反対に、身体の筋肉が削ぎ落とされるような感覚だった。
そうして、新たな姿へと変わると共に、俺はその手にも弓を持つ。
「これは一体」
それは、先程までの姿と比べても、あまりにも弱い。
普段の俺と変わらない程の力だと分かる。
「姿が変わって、そんな弱々しくなって、勝てるかぁ!」
それと共に、アリゲーターファンガイアは再び俺に殴りかかる。
先程の攻撃を正面から受け止めたら、死ぬ。
それが分かっていた。
だが。
『落ち着いて、あいつは確かに力は強いけど、それだけで、私達には有利になるから』
「えっ」
マーちゃんの言葉に一瞬の疑問。
同時に、それの意味はすぐに理解した。
迫るアリゲーターファンガイアの攻撃。
拳から放たれる威力は凄まじく、その風圧も水の中故に見える。
だけど、拳に当たる前に、俺はその風によって、攻撃が当たる前に飛ばされる。
「なっ」
それと共にアリゲーターファンガイアは、それに驚きながらも、再び攻撃を幾度となく行ってくる。
一撃でも当たれば終わる。
だが、その一撃も当たる気配がない。
まるで、風に飛ばされている紙のように。
『私達の身体はとても軽く、水の軽い流れでも早く動く事が出来る。それは例え地上でも、相手の攻撃の速さで、私達は簡単に避ける事が出来る。 そして』
「はぁ!」
その手に持つ弓の弦を引く。
弦を弾くことで空気を震わせ「真空の矢」を生み出して、放たれる。
『私達、マーメイド族は、歌を、音を操る事にも長けている。 故に…………相手を倒すなら』
「うぉおおおああ!!」
引き絞った弓を放つ。
しかし、アリゲーターファンガイアはその瞬間を狙い、攻撃を仕掛ける。
だが、その攻撃はまるで当たる気配はない。
だからこそ、彼は焦り始める。
先ほどまでは確実にダメージを与えられていた筈なのに。
こちらの攻撃だけが、当たらなくなってきている。
ならばとばかりに放った蹴り上げは空を切り、代わりに返ってきた蹴りが、彼を勢いよく弾き飛ばす。
しかし、俺にはまるで当たる気配はない。
「行こう、マーちゃん!」『えぇ、勿論!』
その言葉と共に、俺は、その手にある弓をゾンバットに噛ませる。
『マーメイドバイト!』
それと共に、手に持っていた弓は巨大化する。
それと共に、弦を引く。
弦を引く度に、アリゲーターファンガイアの身体を次々と拘束していく。
その光景に戸惑っている間も無く、次の瞬間には弓から放たれた真空の矢が、彼の全身へと突き刺さっていく。
その衝撃によって宙に浮かび上がった彼に向け、俺はさらに弦を弾いていく。
弓が引かれる度に、アリゲーターファンガイアの身体が。
「がっがぁぁぁぁ!!」
「『フィナーレ!』」
その一言と共にアリゲーターファンガイアは拘束された矢が、そのアリゲーターファンガイアの強固な鎧を、音の矢が擦り抜けて、彼の体中を突き抜ける。
「ぎゃあああああ!?」
その悲鳴と共に空中にいた彼が落下していき……そのまま地面へ打ち付けられる。
その衝撃により土煙が巻き起こるが……それが晴れた後も、彼は動き出す気配は無い。
そうして……戦いは完全に終わったのだ。
「はぁ…….はぁ……やっと倒せたよ……」『ほらほらぁ、あの愛しの雛月ちゃんの所に行くわよ』
そう、マーちゃんの勢いと共に地上へと辿り着く。
けど、その時。
「えぇ、どういう事!?なんでマーメイド族が!?」
その様子を見ていた奴の存在に、俺達は気づかなかった。