KIVA ReRe:1986↔2008   作:ボルメテウスさん

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 俺は、あの人。

 

 紅さんからの言葉を聞いて、俺はそのまま真っ直ぐと、あの公園へと向かった。

 

 そこに立っていた彼女を、雛月の元に向かう。

 

「雛月」

 

 俺は思わず声を出して、話しかけた。

 

 すると、雛月もまた、こちらに気づいた。

 

 だけど、その顔はこちらを見ない。

 

「藤沼……何してんの? こんなとこで」

 

「俺の台詞だろそれ。友達になりたいって言っただろ」

 

「藤沼ってさ、何かフリをしてるでしょ」

 

「えっ?」

 

 一瞬、思わず身体が固まる。

 

「笑ってるフリ 優しいフリ 心配しているフリ……別に悪いことだって思わないよ、けど、人のこと言えないけど藤沼の顔が見えない」

 

 それに、俺は。

 

「……その通りだと思うよ。俺は演じてる。人に好かれたい。友達が欲しい。人と接するのが苦手な自分に何ができるって考えたら、俺の方がみんなのことを好きになろうって思ったんだ。そしたら演じるのが少し楽になった」

 

 今の俺が、本当に、俺なのか、分からないけど。

 

「うん。私も演じているうちに本当になる気がするよ」

 

 そう言った雛月は、どこか本心だと思えた。

 

 そんな一歩だと思った時。

 

 何かが近づいた気がする。悪寒。

 

 それは、雛月が伝わったように、俺と同じ方向を見る。

 

「なに、あれ」

 

 それはステンドガラスによって出来た怪物。

 

 その怪物は、ゆっくりと、俺の方に近づく。

 

 見つめた先には、何か透明の牙。

 

(まさか、ここで雛月がこいつに殺されてっ)

 

 18年前雛月が最後に目撃された場所。遺体が見つかるのは雪が解けた後だったはず。

 

 ならば、このタイミングで、殺されたっ。

 

 逃げないと。

 

 だけど、この公園に逃げ場がない。

 

 故に、逃げようとしても、隠れる場所がない。

 

 怪物から逃げる為には、俺達では追いつかれてしまう。

 

 隠れようにも、その隠れる場所がない。

 

 ここで、消えてしまうのか。

 

「諦めるか」

 

 何の為に、この時代に来たんだ。

 

 俺は、ここで殺される為でも、雛月を見捨てる為にも来た訳じゃない。

 

 ならば。

 

「やってやるよ」「藤沼」

 

 俺は覚悟を決めたように、手を前に出す。

 

「来いよ、化け物蝙蝠! お前の話に乗ってやるよ!」

 

 そこには、俺達以外誰もいない。

 

 それは、雛月も怪物も同じ認識だった。

 

「おいおい、頭が可笑しくなったのか、餓鬼」

 

 馬鹿にするように笑う。

 

 だけど。

 

『ひひひっ、覚悟は決まったようだなぁ』

 

「っ」

 

 雪の中で、突然聞こえる不気味な声。

 

 同時に、俺の身体から、現れたゾンバット一世は、その姿が現れる。

 

「何、それ」

 

 雛月は、ゾンバット一世に対して、怯えるように見つめる。

 

 だけど。

 

「契約だ、お前に力を与えよう。その代わり、俺様に代価として、ライフエナジーを寄こせ」

 

「ライフエナジー、それはつまり」

 

「あぁ、その通り」

 

 そう、ゾンバット一世の、その視線の先には、怪物がいた。

 

「あのファンガイアの命を貰う」

 

 怪物は、その言葉に驚く。

 

「何をするかと思えば、何が出来るんだ」

 

 ゾンバット一世の言葉に対して、怪物は吠える。

 

 しかし。

 

「こうするんだよ、ガブリッ」「っ」

 

 ゾンバット一世は、そのまま、差し出した俺の手を噛む。

 

 瞬間、感じたのは手の平には鋭い痛みが走る。

 

 それと共に、俺の身体に流れ込んでいるのは異物。

 

 本来、入ってはいけない物が流れ込む。

 

 そんな感覚に襲われながらも、ジャラリという音で、俺の腰に現れた台座。

 

 ピチャリっと、手の平から流れる血が、地面の雪に垂れ流れる。

 

 しかし、俺はそのままゾンバット一世を構え。

 

「変身!!」

 

 まるで、特撮のヒーローのように、ゾンバット一世を構え、そのまま台座に押し込む。

 

 それが合図だった。

 

 ゾンバット一世から響き渡る何かが、俺の身体に覆われる。

 

 先程まで、子供だったはずの俺の身体は、大人の時の俺と変わらない身長まで変わる。

 

 そして、包み込んだのは鎧。

 

 腕を見れば、そこには、包帯が巻かれている。

 

 身体の各部には包帯が巻かれており、その包帯が、まるで俺の身体を拘束している感覚が強い。

 

「藤沼」

 

 その姿を見て、雛月は驚いたように目を見開いていた。

 

 そして、怪物は。

 

「馬鹿なっ、なぜっお前がキバをっ」

 

 そう、この鎧の事を知っているようだ。

 

「キバ? なんだ、それは」

 

 俺は、そう疑問に思い、呟く。

 

 だけど。

 

「キバの事を知らない、ならば、このまま、そのキバの鎧を頂く!!」

 

 怪物は醜悪な笑みを一瞬浮かべる。

 

 同時に、その手に現れたのは剣。

 

 現代日本では、決して見る事が出来ない剣が、怪物の身体から生えた。

 

「っ!」

 

 驚きを隠せない俺を余所に怪物はこちらに迫る。

 

 それに対して、どう行動すれば良いのか。

 

 一瞬だけど、迷った。

 

 けど、未だにこちらを呆けて見ている雛月。

 

 そうだ、俺は。

 

「守る為にっ」

 

 そう、決意を新たにするように、怪物を正面から迎えるように、走り出す。

 

 走り出した時の感想は、正直に言えば、驚きを隠せなかった。

 

 軽い。

 

 それが、俺の、今の感想だ。

 

 身体が、小学生の時よりも。大人だった時よりもずっと軽い。

 

 それと共に正面にいる怪物の動きが見える。

 

 鋭く、斬り裂こうとした剣。

 

 その斬撃を、俺は紙一重で避けると共に、その剣の持ち手を、蹴る。

 

「っ」

 

 しかし、相手は怯む事がない。

 

 いや、違う。

 

「がぁああああああ!!」

 

「なっ」

 

 それはまるで獣のような咆哮だった。

 

 獣の咆哮と共に、そのまま無理矢理、剣を振り切る怪物。

 

 それは、まるで強引に振るった一撃だった。

 

 咄嗟に後ろに避けたが、もしそのままだったらと、血の気が引く想いだ。

 

 しかし、そんな事は気にも留めずに、尚も斬りかかってくる怪物。

 

 攻撃を避けようとするが、避けられない斬撃を何度も避けられる訳がない。

 

 時折避けれるとはいえど、身体は徐々に傷ついていく。

 

 避ける度に聞こえるのは舌打ちの音。

 

 そして、傷付けられた所から感じる痛みと熱さ。

 

「っ」

 

 今、俺は、本当に殺し合いをしている。

 

 それを自覚させるには、十分過ぎる。

 

 キバという鎧のおかげだろうか。

 

 辛うじて、身体は動ける。けど、その動きは人の速度ではなく、怪物と同じ速さだった。

 

 このままでは駄目だ。

 

 俺は何とか打開策を考えるが、いくら考えても思い浮かばない。

 

 そして、それは一瞬だった。

 

 いや、俺が考えに耽ったのが悪かったのだろう。

 

 目の前に迫る剣に対して、避ける事も出来ずそのまま直撃しそうになる瞬間だった。

 

「っ!」

 

 だからこそ、俺はその剣を、手で掴む。

 

「なっ」

 

 刃物を素手で掴んだ。

 

 その行動に対して、驚きを隠せない怪物。

 

 しかし、俺はそんな怪物の動揺に構う事なく、逆にそのまま剣ごと投げ飛ばした。

 

 その勢いは強く、雪の上を転がりながらも止まる事はない。

 

 そして、俺はそのまま走り出し、キバの鎧で強化された脚力で一気に距離を詰めた。

 

 そんな俺の動きに対して、怪物は何とか立ち上がりながら構えるが、遅い。

 

 そのまま、俺は拳を握りしめて殴りかかる。

 

「ぐっ!」

 

 怪物を初めて殴った。

 

 奇妙な感覚だ。

 

 金属のような硬い感触でありながら、柔らかい。

 

 本当だったら、怪我しても可笑しくないそれを簡単に殴り飛ばす事が出来た。

 

 だけど、それと共に感じたのは、達成感ではなく、恐怖。

 

 生き物を殴ったという嫌な感触が、襲う。

 

 けど、それに囚われている場合じゃない。

 

「はああぁぁぁぁ!!」

 

 叫びで、無理矢理誤魔化す。

 

 俺自身が感じる恐怖で動けなくなる前に、怪物を殺す為に。そのまま、拳を繰り出す。

 

 だけど。

 

 その拳は空を切った。

 

 いや、ギリギリの所で躱されたんだ。

 

 同時に怪物が剣で斬りかかる。

 

 それを何とか避けるが、避けきれずに傷を負うが、それでも俺は止まらない。

 

 そんな俺の動きに対して、怪物は舌打ちをしながら距離を取るように離れる。そして、再び剣を俺に向けて構えた。

 

 その動作を見て、俺は直感的に悟った。

 

(来るっ)

 

 それはまるで、居合のような構えだと感じた瞬間だった。

 

 次の瞬間には、既に怪物は目の前にいた。

 

 速いっ!!

 

 そう感じた時には既に遅く、腹部を斬られる感触と共に血が噴き出る感覚に襲われる。

 

 痛みと熱で、嫌な気分になる。

 

 けど。

 

「だんっだんっ慣れてきたぁ!」「っ!」

 

 俺は、そのまま蹴る。

 

 痛みに対しても、殴る際に感じる罪悪感にも。

 

 どんどん、麻痺していく。

 

 今は、それで良い。だから、今は。

 

「絶対、守ってみせるっ!!」

 

 そう決めたんだ!! たとえどんな結果になろうとも、俺は雛月を守ると決めたんだから! それが例え、人じゃないとしても。

 

 いや、寧ろそれを俺がいう資格はない。

 

 だけど、それでも!!

 

 俺はこれ以上傷つけないようにと攻撃を避けたり殴ったりを繰り返したが、避けきれずに傷を負う度に、相手は。

 

「なんだよっお前っ」

 

 表情は変わらない。

 

 だけど、それがどんな感情か、分かる。

 

 恐怖。

 

 先程まで、圧倒的に有利だったはずの怪物が、今では恐怖を感じている。

 

 その事に対して、俺は思わず笑った。

 

 そんな怪物に、ゆっくりと近寄る俺に怯えたように剣を振るう。

 

 しかし、それは無意味な攻撃でしかなかった。

 

 それを弾き飛ばすと、そのまま殴り飛ばす。

 

 同時に斬り付けられた腹部が痛いが気にしない事にした。

 

「はぁ……はぁ」「っ」

 

 もう、お互いに息切れをしている状況だ。

 

 いや、違うか。俺が一方的に攻撃して、相手は避けたり防いだりするのを繰り返しているだけ。

 

「さぁって、とどめと行こうぜぇ、藤沼」

 

 そう、ゾンバット一世が言う。

 

 俺は、自然と、その手にある笛を、そのままゾンバット一世に押し込む。

 

「ウェイクアップ!」

 

 ゾンバット一世の声が響く。

 

 それと同時だった。

 

 ゾンバット一世が、空を舞い上がる。

 

 ゾンバット一世が奏でる笛の音色に合わせてか、周囲の景色が変わる。

 

 先程まで、雪によって覆われていた空は、晴れた。

 

 空に見えたのは、満月。

 

 満月は、そのままゆっくりと、形を変わる。

 

 その変化に合わせるように、俺の右脚の包帯が散る。

 

「っ!」

 

 その瞬間、怪物は、そのまま逃げだそうとする。

 

 だけど。

 

「逃げられないぜぇ」

 

 ゾンバット一世の不気味な声と共に、怪物の身体は包帯によって拘束される。

 

「ひぃ!!」

 

 包帯は、俺の足先で変わらず繋がっている。

 

「ふぅ」

 

 俺は、その場で跳び上がる。

 

 それに釣られるように、拘束していた怪物もまた宙を舞う。

 

 拘束され、完全に身動きが取れない怪物。

 

 そんな怪物に向けて、俺は真っ直ぐと、蹴りを放つ。

 

「あっあぁぁ!!」

 

 その蹴りに対して、怪物は、抵抗する事を許さない。

 

 足先から感じる感触。

 

 それが、何を意味するのか、すぐに理解出来る。

 

「あっぁっ」

 

 怪物の身体がゆっくりと硝子のようになる。

 

 そのまま、硝子にヒビが入っていく。

 

 同時に、それは粉々に砕けた。

 

 同時に、俺の耳元からキバットが飛び立つ。

 

「ひひっ」

 

 ゾンバット一世も、俺の手から離れるように離れていく。

 

 そして、そこには雪の上に砕け散った怪物の残骸が残る。

 

 怪物から出た光、それを見たゾンバット一世は、そのまま食らいつく。

 

「きひひっ、なかなかに良い味だったぜぇ、ファンガイア」

 

 それもやがて風と共に消えていく。

 

 そんな光景を見据えながら、俺は鎧を解いていた。

 

 解除と同時に、すぐに腹部の痛みに襲われる。

 

 血が止め処なく溢れてくる感覚は分かるけど、それがどれぐらい深いのかまでは分からない。

 

 いや、そもそもこの出血量で生きている事自体が不思議なくらいだなと冷静に考えている自分に驚くが。

 

 それよりも今は雛月だ。

 

「雛月」「っ」

 

 俺は、振り返る。

 

 だけど、その視線は、まるで違った。

 

「あっ」

 

 そうか、よく考えれば簡単だ。

 

 俺は、さっきまで、怪物と殺し合いをしていた。

 

 そして、こんな血塗れになっている。

 

 そう考えれば、俺も。

 

「怪物だよな、俺も」

 

 そう呟くと、雛月は驚いた表情になる。

 

「っ」

 

 そんな雛月に対して、俺はゆっくりと近づいていく。

 

 けど、何故か恐怖が湧き上がるのを感じた。

 

 いや、当然だ。

 

 つい、先程まで、人殺しをした奴だ。

 

 だけど、これだけ言いたい。

 

「怪我はないか」「えっ」

 

 その言葉に、雛月は驚いた様子だった。

 

 けど、見た限りでも、怪我はなかった。

 

「怪我はなさそうだったら、良かった」

 

「っ」

 

 俺の言葉に、雛月は驚いた表情のまま。

 

「どうして?」

 

 そう、呟いた。

 

「なんで、私を助けてくれたの? 私は、怪物なのに」

 

 そんな雛月に、俺は思わず笑ってしまう。

 

 いや、本当に可笑しいと思う。

 

 だって、そんな当たり前の事を言うなんてさ。

 

 だから俺は答えた。

 

「そんなの決まっているだろ」「えっ?」

 

 俺の答えに首を傾げる雛月に対して、俺はそのまま答える。

 

 それはとても簡単な事だった。いや、簡単ではないけども、それでも言える事はあったから。だから俺は言ったんだ。

 

「俺がお前を助けたかったからだよ」「っ!」

 

 その言葉を聞いた瞬間だった。雛月の瞳からは涙が溢れていたんだ。

 

「藤沼、私は」

 

 その言葉の瞬間、違和感を感じた。

 

 周囲の景色が歪んだ気がする。

 

「えっ」

 

 同時に重なった声。

 

 見つめた先は、先程までの公園じゃない。

 

「ここって」

 

 見覚えのない場所だった。

 

「どうなっているんだよ、これって」

 

 疑問に思いながら、俺は立ち上がる。

 

 ふと、近くにある新聞を見る。

 

 そこにあった日付は2008年。

 

 戻っている事は分かる。

 

「一体、どうなっているんだ」

 

 そう悩みながら、俺は頭を抱える。

 

 未だに、俺は、まだ何も解決していないのに。

 

「どういう事なんだ、ゾンバット」

 

『キヒヒッ、さぁねぇ、けど、過去だけじゃ分からない事もあるんじゃねぇのかぁ』

 

「……」

 

 その言葉は、確かに合っている。

 

 だから、今は、母さんも、雛月を助ける為に。

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