千年戦争アイギスの世界に催眠術師として転生したので好き勝手したい! 作:天河 龍汰楼
王子が遠征から帰り、久しぶりの一日休暇となった。
社畜の身には休みが染み渡るぜぇー、と言いつつ朝早くから目が覚めてしまう悲しき習性よ。
こうなったからには誰かひっかけて遊ぶかぁ。ふひひ。
王子は事後処理で忙しくしてるし、真面目な人たちもそちら側。今がねらい目なのだ。
「あら、術師さんではありませんか」
「さん付けはいらんでしょう、テュトばあちゃん」
というわけで、とりあえずチョロそうな人をと思って歩いていたら、テュトおばあちゃんと出会った。
一緒に彼女が取り出したお茶菓子を食べながら、和やかな談笑をしている最中に吟味してみる。
水のように流れる金髪は魔力の影響か神秘的なグラデーションで彩られ、ともすれば恐ろしさを感じる薄紅色の瞳には深い知恵と優しさをたたえており、どこか包み込まれるような安心感を全身から醸し出している。
ちょっと曲線はなだらかだが、その薄さもまた無駄のない芸術性を高めている。
うーん、これは……アリ!
なんといっても、人避けの呪いのせいでずっと孤独だったから、人恋しくて仕方ないのだ。
少し催眠術を応用して接触の機会を増やすだけで、それはもうチョローん、と……。
「って、できるかぁー! 数百年の孤独なんぞ想像もできんわッ! 下手に依存されでもしたらヤベーんだぞ!」
ふつーにお茶会を済ませてテュトと別れ、誰もいない自室に戻ってから吠える。
愛が重い勢ではないが、その魔法力は本物である。
下手に恨みを買った日には全画面にマルチロックで火球が降ってくることだろう。
さらには、いい人である。
いつも笑顔だし、お菓子くれるし、子供大好きだし。
そんないい人に催眠プレイなんてしようものなら、こっちの心が死んでしまう。
結論、罪悪感とリスクが重すぎて催眠かける気になれないのである。
幸いにも、こっちの世界のテュトは呪いが幾分か薄いらしく、仲間になってからすぐに色々な人に認識されていた。
変なことをしなければ、依存されるようなことはないだろうし、何よりテュトのいい人さが皆に周知されれば、彼女を好きになる人は増えるだろう。
数百年も孤独にさいなまれていた彼女が少しでも癒されれば何よりだし、俺にも悪影響はないだろう。
安泰だな!
***
「二人分、ですか」
呪術師から聞いた、孤独の呪いが効果を発揮しない理由。
王子が特別、というのはなんとなくわかっていた。
しかし、分からなかったのは、あの術師のこと。
催眠術を使う以外に、特筆することもない、普通の人。
「いうなれば、大岩に体を括り付けているようなもの」
催眠術を使って、常にテュトに出会わなければならない火急の用事がある、と認識しているから、彼もまた孤独の呪いを無効化している。
言うだけなら簡単だが、それは自殺行為にも等しい。
荒れ狂う嵐と表現した人避けの呪い。
その嵐の強さは、人を何人も束にして吹き飛ばせるほどの強さだ。
だから、テュトに会えるのは国家の滅亡がかかるほどの大事だけ。そんな状況に常時置かれている精神は、きっとぼろぼろに疲弊していく。
そんなことをすれば、焦燥と不安でどうにかなってしまうのに。
『テュトばあちゃんが、優しい人だからじゃないでしょうか』
なぜ会えるのか、彼に聞いたときの返答を思い出す。
『優しい人には、会いたくなるものですから』
……その通りだと思う。
テュトは、顔を少し赤らめて少し足早に歩き出す。
会いたいと思えば会える、そんな当たり前の幸せを胸いっぱいに感じながら。
・テュトばあちゃん
王子軍に加入したのは割と最近。
かなり無茶をして会いに来てくれる術師にでかめの矢印が向いているにもかかわらず、肉体関係が無いため好意を発散できずに持て余し気味。
・催眠術師
マジで普通の人。レアリティはブロンズ。
人避けの呪い解決法は思い付きでやったらできたのでそのまま続けている。
生まれた時から魔王復活を知ってる身としては、国家滅亡クラスの用事が常に付きまとっていてもいまさらと言う論理。
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