千年戦争アイギスの世界に催眠術師として転生したので好き勝手したい!   作:天河 龍汰楼

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*デルフィーナ

王都周りを警備した帰り。

美味そうな匂いがしてくるのでふらりと立ち寄ってみればすさまじい行列。

まあ、そりゃそうだろうな。この匂いから察するに、王国軍の炊き出しなのだから。

炊き出し、と言ってもいわゆる弱者救済の目的ではないあたりが王国らしいというか、ただのお祭りの名目でしかないわけで。

いつもの流れなら、このあたりの時間でアナウンスが……。

 

「“優勝、オーガスタ!”」

 

ああ、聞こえてきた。

いつも通りに、料理大会が行われていたらしい。

つまり、勝者と敗者がいるわけで。ふとすきっ腹に電流走る。

これは、大チャンスだぞ。

 

「どうせここに……。いたいた、相変わらずだなデルフィーナ」

 

「ええい、微妙に韻を踏みながら名前を呼ぶあなたもお変わりないようでっ!」

 

どうせ分かり切った勝負を挑んで敗北して、ブチぎれながら愛を叫んでいるだろうと彼女の調理場に向かえば、案の定。

別に韻を踏んだつもりはないのだが、興奮気味なこいつに何言っても無駄だろう。

そう、催眠を除いては。

落ち込んでいる……ようには見えないが、弱気なところに催眠は良く効く。

太陽を思わせる橙色の髪に明るい笑顔。なにより日々の味見で鍛えたであろうむちむちのふとももに大盛りの胸。

女性としてこれ以上ない芸術品と言える彼女をいただけるなんて、よだれが止まらないよなぁ……。

 

「って、できるかぁー! 腹が減ってるんだぞ、こっちは! いやほんと」

 

腹が減っては戦ができぬ、とはよく言ったもので。空腹になっていてはエロ妄想もはかどらないのだ。

心の中で叫びながら、もぐもぐむしゃむしゃ、と一心不乱に山盛りの料理を食べ続ける。

オーガスタの作る料理もめちゃくちゃに美味いのだが、あちらは一点ものという感覚が強く、大量生産と大量消費を得意とはしていない(できないとは言ってない)。

その点において、努力と経験を積み重ねたデルフィーナの料理はいつでもどんな所でも、全く同じものを全く完全に作ることができる。

精神的な安定が必要な催眠術を使う身としては、その一定さは何よりもありがたいもの。

 

「ふぅ。ごちそうさま」

 

「はいはい、ありがとうございました。まったく、本当に良かったんですか?」

 

「料理大会のあまりだろうと、お前の作ったものに変わりはないだろ」

 

満腹で幸福な中での軽口も、なかなか気に入っている。

まあ、些細な幸せを壊してまで催眠プレイをする理由もない。

今日のところはこれくらいで勘弁しておいてやろう。

 

***

 

無遠慮に、きれいに、心底幸せそうに、あたしの料理を食べつくして、満ち足りた表情で帰っていく術師を見送る。

間違いなく声の聞こえないところまで行ったことを確認して、ひとつ安堵のため息。

王都の周りの警備なんて、それほど危険はない。そんなことは分かっている。

それでも、腹に爆弾を巻き付けた男が、いつでも万全に帰ってくる、なんて安心はできない。

知ってしまったのは偶然だけれども、それ以来、術師はずっとあたしの心の片隅に残り続けている。

 

「……努力、かぁ」

 

それは、あたしにとって大切な言葉で、信念で、矜持で、柱だった。

あのクソ天才シェフと出会って、そのすべてにほれ込んで。

だからこそ、追いついてやろうと、超えてやろうと、全身全霊をかけてきた。

……でも、術師を見ていると時々考えてしまう。

もしも、あたしに料理の才能が無かったら。

もしも、あたしの容姿がブサイクとまで言わずとも人並みだったら。

もしも、あたしが全てにおいてあの天才シェフの足元にも及ばなかったら。

あたしは、それでも努力をし続けられただろうか。

する。と今のあたしならば即座に答える。

それすらも、努力が実るからこそのたわごとではないか。

 

「はあ、だめだめ。ヨシ! 明るく美少女なデルフィーナさんはそんなことにくよくよしません! あの人はあの人、あたしはあたし!」

 

身を燃やしてでも、輝きにすがりつく姿を振り払う。

そのまぶしさに目を焼かれてしまったら、あたしがあたしでなくなりそうだったから。

あたしができることは、彼の帰る場所を、彩ってあげることだ。

彼が、燃え尽きてしまうことを、ほんの少しでも惜しんでくれたならば。

そのほんの少しが、きっと彼の未来をつないでくれるはずだから。

 




ここまで書き貯め。次はアンケ的にキュウビ。

・デルフィーナ
偶然、催眠術師の奥の手を知ってしまった人。
食いすぎて腹に巻いてあるひもを緩めたら落としてしまったバカが悪い。
矢印はそこまで大きくないが、術師が死んだら急に病むタイプ。
「あたしの料理には、何の価値もないんです。あの人を一瞬、引き留めることすらできないんですよ」

・催眠術師
アビリティ「最期の最後:自身が死亡した時、周囲の敵に貫通のダメージを与える 撤退扱いにならず、再出撃不可」
つまり自爆。ヴィンおじと一緒に作ったが、あちらと違いこれは肉片も残らない。
そのうえセーラの手を振り払って撤退支援を無効化する。曇らせ専用アビリティである。
ダメージ量はブロンズとしては破格。でもエフトラでいいので、星を落とす価値は無い。

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  • アーニャ
  • カルマ
  • エフトラ
  • ファニュア
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