千年戦争アイギスの世界に催眠術師として転生したので好き勝手したい!   作:天河 龍汰楼

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*アーニャ

とある昼下がり。

王子たちが大規模な遠征に出かけている中で、俺たちは王城待機である。

ゲーム的に言うなら、編成メンバーに入っていないわけだが。

ごくまれにメンバーに入る俺と違い、ここ数年遠征に行っていない者も少なからずいる。

副業を持っている場合はそちらに専念するだけだが、そういう訳にもいかない者もいる。

隣で寝転んでいるアーニャも、そんな者たちのうちの一人だ。

 

「暇ですねぇ」

 

「まあ、暇だな」

 

2人して空を見上げるだけの時間の浪費を行いつつ、のんびりとここ最近の話をする。

どこそこの料理がうまかった、アイツやコイツがどんなことをしていた、王子がいつも通りだ、などなど。

のどかな日差しの下で、のんびりと会話を続けているうちにふと思う。

 

「……腹減ったな」

 

「確かに、もうこんな時間ですか」

 

いつの間にか昼前になっていたようで、アーニャがぴょんと飛び上がる。

飛び上がった時に一緒に飛び跳ねる豊満なバスト、ゆるくカールした手触りの良さそうな銀髪、高貴さを感じさせるツノ、しなやかでありながらも強靭な鱗をまとった尻尾。

 

「せっかくですし……」

 

「あー、スマン。今日はミスリアにおごる約束があるんだわ」

 

俺と同じで腹が空いたからどこかに食べに行こうとしていたのだろうが、残念ながら先約がある。

まーじで、残念過ぎる。

今すぐにでも催眠にかけて、そのむっちむちなおしりと太ももを堪能し尽くしたいほどに魅力的な女性なのだ。

 

「そうですか……。では、またの機会にでも」

 

少し残念そうに目を伏せながらも、にっこりと微笑んで次の約束を取り付けてくるアーニャ。

これはもう、合意だよな。

今すぐにでも俺のアスカロンでこのドラゴン娘を退治してやってもかまわないよな?

 

「って、できるかぁー! 性欲が強すぎるんじゃ! しかも竜人族の姫!」

 

「なーに言っちゃってるのさ」

 

ミスリアとのんびりとご飯を食べながら、ついつい漏れてしまった言葉。

当然ながら、ミスリアは呆れかえったような目で俺を見つめてくる。

こいつにはある程度本性をばらしているので、そんな程度はどうでもいい。

しかし、アーニャが王子の寝室に入ったという話は聞かないので、彼女が子作り大好きドラゴンだと知っているのはこの世界で俺一人。

そこは口留めをしておかねばならんか。

 

「ほれ、この肉も食え。……しかし、クラウソラスなぁ」

 

「ありがとー! もぐもぐ、アーニャさんの魔剣? すごいよね、アレ」

 

話題をそらしながら、ぼんやりとアーニャのことを考える。

ドラニア時代からやっていた騎士ごっこはとうに終わり、王国軍の中でもかなり長い付き合いになった。

クラウソラスは亜神との関連が確定しているし、彼女自身も決して二軍でくすぶっていい実力ではない。

こんなことを考えるのは俺の仕事ではないだろうが……。

なんとか、華を持たせてやりたいものだなぁ。なんて。

 

***

 

王宮の中庭。

ふらりと足を向けたそこで、アーニャは唇を尖らせる。

 

「むぅ……失敗しました」

 

アーニャと術師の付き合いはとても長い。

彼が嘘を吐いていないことは重々承知しているし、そこに思うところは無い。

しかし、相手がミスリアなのが悪かった。

魔剣を使う一人として、彼女との交流は浅からぬものがあるし、その人柄も術師との関係性についてもよく知っている。

根回しを怠った自分のミスだと、アーニャは反省していた。

 

「千載一遇のチャンスだったのになぁ……」

 

術師と二人きりになれる機会など、そうあるものではない。

正確には、彼の周りについている護衛たちも居るにはいるが、彼の意思を阻害することは無いので考慮に入れなくてもいい。

いい雰囲気で術師を食事に誘いたい、と思う女性たちは、アーニャが知る限りでも星の数ほどいる。

そのことごとくをいなしたことも、星の数ほどあることをアーニャは知っている。

 

「昔は、あんなにしてくれたのに」

 

封印が解かれる前、みにくい姿の自分をすら姫として扱ってくれた術師。

あの頃の術師は、もっと無鉄砲で、直線的だった。

アーニャが竜人族と人族との橋渡しを願う間に、ちょっとずつ無謀さは減っていき、周りに遠慮するような振る舞いが増えていった。

彼が竜人族からも厚い信頼を向けられるころには、アーニャを友人として扱いながらも、かつてのようにエスコートをしてくれることは無くなった。

 

「はぁ……。術師さん……」

 

かつてを思い出しながら、何度目かわからないため息を吐く。

今はただ、いつかのように優しく手を引いてくれるだけでも、心が満たされるのに。

そんなささやかな願いとともに、膝を抱えるアーニャだった。

 

 




・アーニャ
最古参の一人。
竜人族との融和を考えると王子との交流も大事だったため、スタートダッシュで積極的なアプローチをできずにいた。そのせいで機会を逃してしまったが、同時にそのおかげで術師からは心を開かれており、実はかなり距離が近い。
肉体関係が無いために子作りをそこまで重視しておらず、ピュア乙女になった。そうなったらすごいのは変わらないので、一時的なものではある。

・ミスリア
人柄もあって、術師とは気安くたかり合う関係。
雇い主は王子なので、好感度が半分ずつになっている。
しかし、神獣などの装備は王子にしか作ってないので、そこが気がかり。
もしも術師に何かあった時、ほんの少しでも材料を分けられなかったのかと考えてしまうことだろう。

・護衛のみなさん
当然いる。忍者組をはじめ、隠密が得意な人たちや、普通に遠くから見守っている人たちなど、大体10人近い護衛が常についている。そうでなくても、術師を目で追ってしまう人たちからたくさん見守られている王城では、術師に何かするのはかなり難しい。

・術師
前世知識があったので、ドラニア時代からプリンセスとして扱っていた。
最初期は戦力が少ないこともあっていろいろな戦場に出たり、戦略会議に出たり、外交に出たりしていた。最近は人員が充実してきたので周りから休まされている。
アンナに次ぐ側近、王子の右腕としての仕事は今でも多いが、やっぱり自己評価は低い。
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