何度も転生する主人公が、死ぬたびに周りを曇らせていく話。   作:ルヴレ

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曇らせはいい。


毎月杏仁豆腐が魈の部屋の前に置いているのは私のせいっす。

 

 

 突然だが、私は死にたくない。

 これは、人間……いや、生物として当たり前のことだと思う。うん。だから、私は世界平和のためにみんなが平和条約を結べばいいと思うのだ。

 

「そう思いません? 帝君!!!」

「そんなことをしたら、塩の魔神のような目に遭うと思うが」

「ぐ、ごもっともっす」

 

 私は原神の世界に、数年前から転生していた。

 私は前世ではいわばオタクというやつで、原神にどっぷりハマって何十万も課金していた廃課金勢だ。

 そんなオタクとして、原神の世界に転生できたのは、幸運なこと────と思っていたのも最初だけ。

 

 私の転生先は魔神戦争真っ只中だったからだ。

 

 しかも、私は夜叉として生まれた。それだけで死亡フラグがマックスまで跳ね上がった。業障こえーよ。偶然にも鍾離先生こと岩王帝君に会えたのはよかったけど、よく考えたら、私も戦わないとダメってことだし…………オワタ。

 

「黙れ、蓮花。帝君に失礼だ」

「あ、すんません」

 

 私は一応夜叉なので、魈とも話したことはある。ただ、仲良くはない、とだけ言っておく。私と仲の良いのは、帰終様くらいなもの。そんな帰終様も魔神なので私とは滅多に話さない。つまりぼっちだ。

 ちなみに蓮花というのは、私の名前だ。リェンファと読むが、元日本人には言いにくいのでよく噛む。

 

「そういや、魈って杏仁豆腐が好きって聞いたから、あげる。はい、杏仁豆腐。帝君もどうっすか?」

「そのようなもの、我には必要ない」

「ふむ……なら、一つ貰おう」

 

 ガッツリ拒否してきた魈と違って、帝君は一つだけ貰ってくれた。助かる。

 それにしても、またたくさん残ってしまったな。仕方がない。今日もアレをするとしよう。

 

「蓮花。もう遅いから寝ないとダメだよ!」

「帰終様! 私はもう子供じゃないんです! これでもれっきとした夜叉なんです!」

「うんうん、そうだね。蓮花は夜叉だよ。だから、明日も戦うかもしれないでしょ? だから、寝ないとダメ! ね?」

 

 た、確かに! 明日も戦うかもしれないし、寝ないとダメだな。帰終様の言葉に納得して、頷いた。

 

「はい! 寝てきます!」

 

 

 ────と言って素直に寝るとでも思ったか? ふっふっふ。

 私は自室の布団の中で密かに笑った。そして、枕元に置いておいた杏仁豆腐と、タンスの中に入れていた絵葉書を一枚持ち出した。

 

「今日は、なんて書こうかなー。んー。それにしても、今日は月がよく見える! このことを書くか」

 

 空を見上げながら、筆を使って絵葉書を書くことにした。特技の絵を、絵の具を使って書き上げ、その上に筆で軽くメッセージを書く。

 

 今日はいかがお過ごしですか。私は、杏仁豆腐を作りました。あなたの疲れを少しでも癒せたら嬉しく思います。今日は月がよく見えますね。私とあなたが話すことは殆どないかもしれないけど、同じ月を見ているのは、なんとも嬉しい気分になります。

 

 え? キザな文だって? でも、いつも通りにいい天気っすねー、とか書いたら正体がバレバレになるのはわかっている。だから、あえて私の書かなそうな文を書いているのだ。

 

「よーし、できた! これを持ってこー!」

 

 私は杏仁豆腐と絵葉書を持ち、そっと部屋から出た。夜叉の能力を最大限に無駄遣いしながら、気配を消して、魈の部屋までたどり着いた。

 そして、部屋の前にそっと杏仁豆腐と葉書を置いておく。これできっと、食べてくれるだろう。

 

 

 なんでこんなことをしているかって? 私が魈推しだから好感度稼いでる? 違います。私は永遠の煙緋ちゃん推しです。低めな声と足がいいよね、うふふ。…………ゴホン。

 私がこんなことをしている理由は、もちろんある。

 

 大体二年前くらいに、魈が夜に苦しんでいるのを見たからだ。んー、今思えば業障のせいだったんだと思う。

 でも、なぜか私は魈がお腹が空き過ぎて苦しんでるのと勘違いした。

 

「やっぱ、魈と言えば杏仁豆腐だよね!」

 

 そう思い、杏仁豆腐を作ってお大事に、という葉書を書いて魈の部屋の前に置いたのが全ての始まり。それから月一くらいで杏仁豆腐と葉書を置いていたのだが、ある日いきなり業障が原因ってことに気づいた。

 だから、杏仁豆腐と葉書を置くのをやめた……はずだった。

 

「……今日も、置いていないのか」

 

 けど、夜にトイレに行くときに魈のそんな悲しそうな呟きが聞こえてしまい、結局今も毎月杏仁豆腐を置いている、というわけだ。

 

 

「ふわぁぁ……。眠い」

 

 そのまま気配を消したまま部屋に戻り、ようやく布団の中に戻る。

 明日もまた戦わないとダメなんだろう。ぼっちで。

 私の密かな楽しみな杏仁豆腐作りと絵葉書を書くことも、また一ヶ月後にしかやれないことになっちゃったし。

 明日が来るのは嫌だなー。

 

 

「一花多果!」

 

 草元素の神の目が光り、大剣に宿った。私は大剣を全力で振り回して、敵を殺した。

 みんな、やぁ。今日も敵をコロコロしてくるRTAはーじまーるよー。

 というのは冗談。てか、脳内で冗談でも言ってないとやってられない。平和ボケした日本人に人殺しは辛すぎる。

 

「お前が夜叉の蓮花か。俺は蝶の魔神の臣下だ。正々堂々勝負──!」

「む、無理っすよ! 私、一応夜叉だけど、帝君の部下の中だとダントツに最弱だもん!」

 

 ストーリーで全く聞いたことのない魔神の臣下を名乗る男に出会ったので、ガン逃げする。仕方ない。死にたくないもん。私の中の作戦名は、いのちだいじに。作戦に従うのは賢い行動だ。帰終様も言ってた。

 

「邪魔だ」

 

 けど、魈が現れてそいつを一撃でぶっ殺した。すげー。かっけー。

 ぼーっと見ていたら、魈に当たり前のように怒られた。

 

「どうしてお前は攻撃せず、恥をかくような行動をする」

「えーっと、怖いから? てか、できるだけ人殺しはしたくないもん。命は大切にしないと」

「夜叉なのに、甘えたことを言うな」

「えへへ……」

 

 誤魔化して笑うと、魈はそんな私を見かねたのか、遠くへ敵を倒しに行ってしまった。

 

 そういえば、状況説明するとしよう。

 私は今、蝶の魔神とか言う聞いたこともない軍団と戦っている最中だ。魈が私のところまで来たってことは、あと少しで制圧できそうだ。

 

 

「俺たちの勝利だ!」

 

 鍾離先生だけに? なんてどっかの大マハマトラみたいなことが思いつくと同時に、あまりの疲労に膝をついた。

 どうやら、今回も生き延びたらしい。帝君が槍を掲げる姿を見てぼんやりと思う。

 帰終様が疲れて動けない私に、そっと寄り添ってくれた。

 

「蓮花、大丈夫? 私が運ぼうか?」

「だ、大丈夫っす。流石に魔神様に運ばせるわけにはいかないし」

 

 大剣を支えに、なんとか起き上がる。帰終様が寂しげに顔を歪めた。きっと、頼って欲しかったのだろう。

 

 ああ。ゾクゾクする。なんて素敵な顔をしてくれるのだろう。もっと、もっと顔を歪めてくれ。私にそんな顔を見せて。あぁ、この方を悲しませるためには、私は何をすれば良いのだろうか? 

 

 

「は?」

 

 意味がわからない。今は、私は何を思った? 困惑して、頭を抱える。私は曇らせが地雷だったはずだ。それなのに、どうしてあんなことを考えたのか? 

 少し考えて、結論を出す。

 

 あぁ、業障か、と。

 

 ぎゃあああ!!! (クソデカボイス)嫌だ、これ絶対死ぬやつ! 死亡フラグMAX状態まで跳ね上がったよ! 

 

「蓮花、どうしたの?」

「あの、帰終様。やっぱり立てないので、肩を貸してください!」

 

 業障に逆らうために、私は大声で叫んで帰終様に肩を貸してもらった。帰終様はちょっとだけ驚いた顔をしたけど、その後にとっても嬉しそうに微笑んでくれたのだった。

 

 

 

「ストックするっきゃないなぁ」

 

 業障は、人を殺すたびについてくる恨みだ。つまり、これから悪化することは間違いない。

 私は大量の葉書を取り出して、筆を握った。原神の本編通り進むなら、魈だけ生き残ってしまうだろう。ひとりぼっちで璃月を守り続けるなんて、寂しすぎる。

 

 だから、私はいつ死んでもいいように、大量の葉書を書くことにした。

 月の絵を描く。けれど、満月や半月、三日月までいろいろな種類を書いた。そして、花の絵も、その日見た綺麗な石の絵とかも書いた。

 その絵に沿った内容を、書き込んでいく。この絵を見ているとき、私はもういないのだろうか。

 そう思うが、とても想像がつかなかった。

 

 えっ、何? 墓穴掘ってる? うるさい、そんなの知らない! 

 

 

「とか、思ってたんだけどなぁ」

 

 あれから数週間後。私は、魔神に深い傷を負わされて、あっさりと倒れた。業障など関係なく、私が弱いばかりに、だ。あまりの熱さに、お腹を押さえるが、すっかり大穴の空いたお腹を押さえても意味がなかった。

 

「蓮花! だめ、死んじゃう!」

「死ぬな……! お前まで我を、置いていくのか」

「えへへ……」

 

 私は痛む中、無理矢理笑みを浮かべた。

 そして、帝君を探して一つ伝言をした。

 

「あのね、帝君。わたしの、へやのたんすを、見てほしい。それで、それをわたしてほしい」

「大丈夫だ。分かっている。俺はお前が渡していたことを、知っていた」

「そっかぁ、よかったぁ」

 

 帝君は、私の夜のお忍びなどとうに知っていたらしい。それなら、安心。杏仁豆腐は、マルコシアスが作ってくれることだろう。

 

「帰終様、魈、帝君、甘雨…………。私ね、みーんな、だいすき! ありがとねー」

 

 みんなが悲しげに顔を歪めるのを見て、私は心のどこかで喜んでしまうのを感じていた。

 ああ、いい。最高だ。なんて、素晴らしい顔をしてくれるのだろう。特に、魈。彼は手紙の差し出し人が私だと知ったとき、どんな顔をしてくれるのだろう。

 それが見れないのが、残念。

 

 暗転する思考の中、ただそれだけを思った。




一応恋愛要素はおまけ程度に入れる予定ですが、ほとんどないです。

どんなエンドがいい?(イフエンドも書く予定)

  • バッド(主人公にとってハッピー)
  • ハッピーエンド
  • その中間くらい
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