長女転生〜Ifルートだって本気出す!   作:モモンガ様を見守り隊

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二話

 

「なんだ、オマエらもしかして勇者か!」

 

…だれだ?

 

朦朧とする頭で響き渡る声を何とか噛み砕く。

 

…勇者?なんで勇者…

 

「…ぁ?何処だここ?」

 

そんな言葉が頭の上から聞こえる。

 

「行くぞ!」

 

「は?おい…ちょっと待ッ…」

 

…なんだ、何が起こって…

 

 

生暖かいナニカが身体を濡らす。

 

 

「次はお前か!」

 

…ゾワッ…

 

数々の疑問をかなぐり捨て俺は明確な死に全神経を注いだ。

 

振りかぶられたソレを避けるために身体の下敷きになっていた右腕で魔術を発動させる。

 

吹き飛ばされ、受け身も取れず顔から地面に落ちる。

 

「…ガハッ…」

 

血が口に入ってきた。

 

…あぁ、そうだった…目…治さなきゃ…

 

「ハハハ、オレから逃げるか!」

 

重く硬いナニカを引きずる音が頭に響く。

 

「…はぁ、はぁ…」

 

「安心しろ!一発で殺してやる!」

 

 

…嫌だ…まだ、死にたくない…

 

「何事ですか…アトーフェ様…え、ちょ…何してるんですか!」

 

 

殺す…アイツを殺して、『私』は生きる…まだある魔力で…落ち着け、『俺』…ゆっくり…アイツは『私』を見ていない…顔を一発で…

 

身体でストーンキャノンを隠しながら練り続ける。

 

 

 

「おぉ、ムーア見ろ!勇者がオレの寝室で襲ってきたぞ!」

 

 

「…ストーンキャノン」

 

今、練れる最高硬度のストーンキャノンを放つ。

 

\\\ドカーン!!///

 

「…む?」

 

 

ストーンキャノンは、頭から大きく右にそれ、奥の壁にぶち当たり大きな音をだしながら崩壊した。

 

 

 

「おぉ!!やる気になったか!よし続きだ!」

 

…ま、ずい…魔力ももう無い…ダメ、だ

 

 

 

「ふむ、アトーフェ様…この者は既に瀕死のようですよ…」

 

「おう、そうか!なら今楽にしてやる!」

 

「アトーフェ様…こうなされてはいかがでしょう…」

 

 

…何を、言っ…て

 

 

「いいな!よし、オマエ!オレと契約しろ!」

 

 

ダメだ…もうむ、り…

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「…お父様もお母様もどうしてるかしらね」

 

魔大陸のリカリスという街でエリスはルーデウスの肩に頭を預け、そんなことをポツリとつぶやく。

 

…慣れない土地、初めての冒険…これだけの条件が揃えばエリスだってこんなにしおらしくなるだろう。

 

「…平気ですよ。きっとみんな心配して待っていると思いますよ。なんならサウロス様が大規模な捜索隊を集めたりとか…」

 

「…そうね、お爺様ならそうしそうだわ。」

 

若干だが、顔色が良くなった気がする。

 

…もう一押しか?

 

「安心してください、エリスは僕が必ず帰します。」

 

「…ふん、任せたわ。ルーデウス…」そう言ってベッドに倒れ込んだ。

 

そんなエリスを横目に俺は窓の外を眺めながら考える。

 

そういえば、パウロたちはどうしているのだろうか…行方不明で心配でもかけてしまっているかもしれないな…

 

手紙のひとつでも出さないとな…

 

「…」

 

…とにかく寝よう、アイツの言っていたペット探しをしなくちゃいけないんだ。夜遅くまで起きて明日に障ったらまずい…

 

ただ、どうか家族が無事でありますように…

 

俺は2度の人生で初めて神に心から祈った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

暗闇の中に『俺』がいる。

 

身動きひとつ取れない…暗闇がまとわりついてくる。何も見えない、何も感じない…そんな気の遠くなるような時間を過ごす。

 

自我が溶けそうになり、形を失いそうになったその時、地平線の彼方に光が見える。

 

 

 

『俺』は、自身をおもいだす。『俺』はそれをめざして歩き出そうとする。

 

しかし闇がまとわりついて足が動かない。

 

何とかして動こうともがいていると気付けば周りが明るくなっていた

 

 

…あったかい…

 

その熱に身を任せ光を見つめていると、鼓動を感じた。

 

トクンッ…トクンッ…

 

この音を聞いてると眠くなる。

 

『俺』が目を閉じようとしたその時、光は飛んでいってしまった。

 

悲しくなる…孤独が身体を蝕む。閉じかけた目は完全に開かれ涙が零れた…

 

涙は暗闇に溶け、自身と暗闇の境界が曖昧になる。

 

そこに光がやってきた。

 

光は今度は、『俺』を無くさないよう自分から小さな光を取り出した。

 

その光は暗闇と同化していた『俺』の内に入っていった。

 

さっきよりも小さく弱々しい鼓動…しかし、確実に『俺』の中にソレは存在する。

 

 

『俺』はゆっくり目を閉じる。

 

光は徐々にヒトの形になっていき『俺』は光になっていく。

 

 

…おやすみなさい、『レイラ』…

 

うん、おやすみなさい…『レイラ』…

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

「…だ起きないのか!?」

 

「…様、落ち着いてください。もう契約は済んでいるのですから…」

 

…だ、れ?

 

「…瞼が動いたぞ!」

 

「静かにしなさい、とりあえず私が説明するのでアトーフェ様たちは黙っていてください。」

 

「「「え〜!!」」」

 

「え〜じゃありませんよ。彼女が起きた時、警戒するでしょ、早く出てってください。」

 

そう言うとぞろぞろと足音が遠のいていく。

 

それらの音が離れたのを聞いて起き上がる。

 

「やはり起きていましたか」そう灰色の髪の老騎士がレイラにそう言う。

 

「…」

 

「落ち着いて、まず我らがあなたの敵では無いことを…」

 

「…パパ?」

 

「…え?」

 

「パパ!」

 

そう言ってレイラは、ムーアに抱きついた。

 

「…」

 

「…」

 

「…申し訳ないが私はあなたの父上では無い。」

 

するとレイラは悲しそうな顔をした。

 

「…パパじゃないの?」

 

「…ええ、違います。ところであなたのお名前を伺っても?」

 

「…名前?」

 

「そうです、名前です。」

 

 

「…」

 

「…」

 

「…レイラ」

 

長い沈黙のあと、口からポロリと名前が告げられた。

 

「そうですか、レイラと…いい名前ですね。」

 

「…え!?あれ私、なんで…」

 

「…どうかしましたか?」

 

「…」

 

「…レイラ?」

 

「…ッ!」

 

レイラは突然、警戒心を表した。

 

ふむ、これ以上このことを聞くのはよすか…

 

「落ち着いて、あなたの出身地は?他の家族で覚えている者は?」

 

レイラは、その質問を受け俯いてしまった。

 

「…わかんない」

 

レイラの目にはみるみるうちに涙が溜まって行った。

 

「ふ、ふぇぇ〜ん!!!!」

 

…やってしまった、そう思ったのもつかの間、その泣き声を皮切りに後ろの扉にて聞き耳を立てていた親衛隊の面々が次々に部屋に突入してきた。

 

「隊長が女の子を泣かせたぞ!」

 

「最低だ〜!」

 

「隊長と言えど許せぬ!」

 

…まあいいか、勢いで押し切ろう…

 

「レイラ、安心してくれ。あなたに家族がいないなら私たちがあなたの家族になろう。」

 

「…っ、ひっく…」

 

「そうだそうだ!」

 

「俺たちが家族だ〜!」

 

「レイラだって!?贅沢ないい名だね!」

 

レイラは、赤くなった片目で目を瞬かせ、親衛隊を見る。

 

「…ふ、あはははは!!!」

 

「「「ハハハハ!」」」

 

「アーッハハハハ!」

 

ただでさえカオスな空間なのに、本玉であるアトーフェまで乱入してきた。

 

…めんどくさくなるな…

 

「よし!お前、いいな!家族だ!お前は今日からオレたちの家族だ!」そう言って彼女は、レイラの背中をバシバシ叩く。

 

痛そうにしているが闘気をまとっているからか、()()()()で済んでいるようだ。

 

…まぁいいか、目的は達成したし…

 

 

ムーアは収集がつかなくなったこの現状に溜息をつきながら考える。

 

…レイラ、か…名前すらまともに言えないとなると記憶が無いのか?何も覚えてないとなると大変だが受け答えは出来ていた。

 

…記憶が無いのはブラフ?いや、流石にないか…少なくとも目の前のこの子を見る限り、ふりには見えない。

 

逆にこれがフリでできるならそれはそれでウチに欲しい…まぁどちらにしろウチに引き込むのだからブラフだろうがどうでもいいがな…

 

全てはアトーフェ様のために…

 

「ア〜ッハハハハハ!!」

 

高笑いをかましながらそんなこちら気持ちを無視し、レイラを肩車してわっしょいしていたこの魔王に少しムーアは姿勢が崩れそうになる。

 

 

ア、アトーフェ様のために…

 

 

 

 

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