「パーツを切るためにそこまでする必要あるのか?手でちぎってしまえば終わりだろ」
「そんなん絶対あかん。GBBBBではガンプラの出来栄えも重要なんや。自分が使う道具を大事に使うのと同じ理屈や」
「面倒くさいな…」
パーツをちぎって取るのをやめ、タオをまねるようにニッパーでパーツを切り取る。
今作っているのはまずは最初ということで、ガンダムをタオと一緒に作っている。
生き生きとしてパーツを切るタオに対して、士の目にはクマができており、うとうとしている状態だ。
あのメールを送った日にさっそくタオが家に押しかけて、数多くのガンプラのリストとそれに関連する作品を見せてきた。
ガンプラと一言で言っても、アニメだけでなく小説や漫画、OVAなども含めると圧倒的な種類が存在し、その中で選ぶことになるのについては想定外だった。
悩む中でどういう機体にするかをようやく決めたが、そこで待っていたのはそれに関連する電子書籍と映像をタオと一緒に見ることだった。
そのおかげで、士は引きこもってから初めての寝不足を経験することになった。
いっそそのまま今日は一日寝るつもりでいたが、連絡もなしにタオがやってきて、おまけに選んだガンプラとそれに関連するものも含めて持ってきた。
おかげで予定が狂ってしまった上に、生き生きしているタオを見ることになった。
(こいつも徹夜してるだろうに、なんでこんなに生き生きしてんだよ…?)
「さて…これでガンダムは完成や。どや?こうして作るんは」
「面倒くさい…お前ひとりでも作れるだろ」
「自分の使うガンプラってゆうのは、自分で作ってなんぼや。ほら、なんかいいもんがあったら、見してみ」
本当に運動部に所属していない帰宅部なのかと疑問に思いながらも言われた通りガンプラのリストを見ていく中で、士はある機体に目が留まる。
設定上では30メートル近い大型モビルスーツで、一年戦争から続いたモビルスーツ開発の一つの終着点と言える世代のモビルスーツ。
「三ガンダム…?妙な名前だな」
「三やない。Ξや、Ξガンダム」
昔劇場版が上映されたことようやく定着したデザインのもので、これに士の目が留まるとはタオも思っていなかった。
ストライクやダブルオー、ビギニングやゴッドガンダムなどの人気の機体を愛機として選ぶプレイヤーが多い中、初心者でこれを選ぶのは稀だろう。
タブレット端末を操作し、内容を洗いざらい確認した後で、士はそれをタオに見せる。
「こいつにする」
「え…?ええの?使いづらいと思うで」
「いい、こいつでいい…俺が決めた」
「まぁ…でも、このままやと何やし、いっそこういうのは…」
タブレット端末を操作し、Ξガンダムやそれに関連する機体について調べ始め、士とタオによる議論がしばらく続いた。
その間、ずんだもんはタブレット端末の中で寝ていた。
「ああ…くそ、眠い…タオのクソッタレ…」
スマホの目覚まし機能が鳴り響き、痛む頭を押さえながらスマホを操作する士は両腕を使ってベッドから出て、車いすに自分の体を持っていく。
今日がタオと約束したGBBBBログインの日で、既に両親の手で机にはGBBBBへアクセスするための端末の準備が完了している。
中央にガンプラをセットする場所があり、その後ろにはAGEデバイス型の端末が既にセットされている。
これはGBBBBに入るための専用の端末で、この中に戦績やガンプラ作成歴などのアカウントデータや作成したガンプラのデータなどが蓄積される。
スマートフォンをセットしても同じ機能があるが、今回のベータテスト参加者に対してはこの専用端末が無料で送付される形になっているという。
そして、端末の前へ向かい、専用のVRヘッドギアをかぶって、ガンプラを左右から挟む形で設置されている操縦桿を握ることで準備が完了する。
正直に言うと、昨日まで連日のようにタオが押しかけてガンプラづくりにいそしんだため、一日寝ていたいと思っている。
だが、既に目覚める5分前にタオからメールが来ており、早く来いと急かされている。
その2人で作ったガンプラを中央に置き、ヘッドギアを装着して操縦桿から電源を操作する。
『WELLCOM TO GBBBB:GUNPLA Battle Blaze:Beyond Borders. Please create your account』
早速表示されたのは自分のアカウントの容姿作成画面だ。
ひとまず背丈は自分と同じにし、髪の色は同じで髪型はワンレングスにし、服装をくたびれた黒いコートとダークブルーのシャツ、黒のネクタイ、スラックスのとてもパイロットというよりもエージェントといえるものを選んだ。
これで、あとは作成完了を押せばいい状態。
だが、その手前にその他オプションのメニューもあった。
わずかに選択アイコンが作成完了に置かれた後で、ひとつ前に戻った。
宇宙戦艦の内部のような広場に、数多くのプレイヤーが集まり、それぞれがプチッガイのNPCのいるカウンターで受付を行っている。
広場の中央にはケルディムガンダムをベースとした青と白のツートンのモビルスーツが等身大の姿で設置されており、中にはこれを見に来たプレイヤーもいる。
その中にはタオの姿もあった。
顔立ちは同じだが、違いがあるのは地球連邦軍の尉官の制服、髪と同じ色のシャツと短パンを着用していることだ。
そして、右肩には丸っこい頭で鞘入りの枝豆をかたどったデザインの大きな耳をした妖精がいることだ。
「やっぱり、かっこえーなー…マイスターガンダムスーパーストーム…」
初めてGBBBBにログインしたタオがどうしても最初に見たかったのはそれで、GBBBBのベータテスター募集のPVに出ていたガンプラだ。
このGBBBB最強のプレイヤーのガンプラであり、PVでは数多くのイノベイド陣営のモビルスーツ達と戦い、すべて無傷で倒す様子が映っていた。
最も、誰がこのガンプラに乗っているのかまではPVではわからなかったが。
これまでにテスター募集が行われたのは4回で、タオはすべてに応募したが落選が続いていた。
それでもあきらめられずに第5回の募集に応募し、通過した時はとてもうれしかった。
「のだ、のだのだ!」
「ずんだもんも思うよな、かっこええよな。僕もこういう戦いしたいわぁー」
「ずいぶん余裕だな、タオ。ったく、アカウント名に使うなよ、それ」
「あ…その声」
はっとしたタオは振り返る。
そこには作成したばかりのアカウントの姿となっている士の姿があり、ひとまずは自分が士だという目印となるように騎士ガンダムの顔がかぶさった連邦軍のエンブレムを見せる。
「ったく、言い出しっぺのお前が別の場所に行ってんじゃねえぞ。すっぽかされたかと思ったぜ」
「ごめんすまん、どうしてもこれを見てからって思うて…」
後頭部に手を置いて軽く頭を下げるタオに士はわざとらしいため息をつく。
見た目がまんまで、おまけにアカウント名がタオだったおかげで簡単に見つけることができたが、もしどちらも違っていて、ここを探しても見つけられなかったらログアウトの後でクレームの電話を入れるつもりだった。
「ほな、さっそく最初の任務へ行こ か。ええっと…」
「ソロ、だ。アカウント名」
ソロを名乗った士は車いすに乗っている状態だった。