ガンダムブレイカー4 フロンティア戦記   作:ナタタク

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第5話 虚構の中の英雄

「かわいーーーー!!」

ミッション終了後、参加メンバーが集まれる休憩室の中で、妖精の姿のずんだもんを撫でたり抱きしめたりしているリン。

それが気持ちいいのか、されるがままの状態のずんだもんにタオはため息をつくとともに、今の彼女の様子に安心した。

(かわいいは正義…やな。おかげで、すっかり機嫌直してくれたみたいで、安心するわ)

なお、この部屋にいるのはリンとタオのみで、肝心のソロは既に外に出ている。

一言も謝らずに出て行った彼に言いたいことはあるが、ひとまずリンの機嫌がよくなったということで今はよしとした。

「そういえばあんた、なーんか動きが気になったんだけど?」

「え…?」

「だって、確かにあたしをサポートして動いてくれたけど、前にほとんど出なかったわよね?」

タオのガンプラがそもそも、射撃主体のサポート機体だということもあるだろう。

だが、だからといっても、ケルディムガンダムのように戦いようによってはガンガン前に出ることだってできる。

どこか消極的ともとれるタオの動きを気にせずにはいられない。

だからといって、ソロのような動きをされるのもごめんだが。

「ええっと…実をいうと、GBBBBでマルチでミッションをしたのって、今回が初めてなんや。バトルに自信がなくて、自分でチームを作ったり、人のチームに入るってことが…怖くて、できへんかって…」

「ふーん、ってことは、あんたも初心者ってこと。あいつも含めて」

「せやな…今回、チームを組んだのも、あいつが初めてやるってこともあるんやけど…あいつも、まぁ…その、いろいろあって…」

ソロ、士のことを本人の断りなしにベラベラとしゃべるのも、そしてネットのマナーとして現実での自分や他人のことを言うのもご法度であるため、このくらいしか話せない。

それは学校の道徳の中でも既にある話で、リンも深く踏み込もうとは考えなかった。

ミッションを終えて、一人でここを出ていくときの様子にリンも何かを感じていた。

「じゃあさ、また3人でミッションに行くのはどう?」

「ええの?」

「うん、初心者なんだし、遠慮はいらないって!」

「そっか…おおきにな、あいつにも、伝えとくわ」

 

GBBBBをログアウトし、ヘッドギアをはずした士は視線を自分の脚に向ける。

アカウントの時と変わらないように努めた、車いすに座っている自分。

きっと、アカウントで普通に歩いている、もしくは立っている状態でログアウトしていたら、不快感を感じただろう。

「結局、ただの遊びじゃねーか…」

セットしているイカロスガンダムをそのままに、スマホだけを手にして車いすを動かしてベッドへ向かう。

両腕に力をこめて、ベッドへ入ると同時にスマホが震える。

画面にはタオからのショートメールが入っていた。

(今日はおおきにな、明日もGBBBBでプレイしようや!午後5時に集合やからな。あと、午後7時からのGBBBBチャンネル、絶対見とくんやで!)

「GBBBBチャンネル…?」

名前からして、GBBBBと関係のあるチャンネルだということはわかるが、いったいそれを見てなんだというのか。

ただ、この後の時間は退屈だということで、ひとまず彼の言う通り見るのも悪くないだろうと思っていた。

 

「GBBBB…か…」

東京のとあるマンションの一室で、GBBBBのヘッドギアをはずしたパジャマ姿の少女が立ち上がる。

長く伸びたピンク色の髪は結ぶなどして整えられた様子はなく、そんなことを気にせずに少女は自室を出て、リビングへ向かう。

リビングには青年の姿があり、テーブルにはカレーライスが3人分置かれていて、一人分にはラップがされていた。

「おかえり、どうだった?GBBBBは」

「お兄ちゃん…お姉ちゃんは?」

「今日は残業で遅くなるって…だから、今日の晩御飯は僕がやったんだ。といっても、もうすぐでないといけなくなるけど、寝る時間までには彼女も帰ってくるから、安心して」

「別に、気にしなくていいのに…お兄ちゃんだって、お店、あるでしょ」

「これくらいどうってことないよ。同じ東京なんだから。それに、義父さんもいるし」

エプロンを脱いだ青年は少女と向き合う形で椅子に座り、二人で作ったばかりのカレーを食べ始める。

「どう…かな?味は」

「この前と比べたら、おいしい…」

「そっか…よかった。ネットのレシピを調べた甲斐があったよ」

カレーは誰でもおいしく作れるし、カレールーもあるからどうにかなると思って最初は作ったが、それが見事に大失敗だったのが苦い思い出だ。

おかげで少女は不機嫌になり、少女の姉からもなんてものを食べさせるんだと説教され、しばらく正座することになった。

どこかの刑事ドラマにあった、完全犯罪と日曜日に父親が作る晩御飯は必ず失敗する点で共通するというのはその通りだろう。

幸いなのは、二人とも文句は言いながらもちゃんと残さず食べてくれたことだろう。

それを繰り返さないために、こうして残業などでどうにもならなくなった時に助けになれるように、今は少しずつだがレシピを見るなどして料理の勉強はしている。

そして、こういうことを毎日やってくれる母親と妻への感謝を感じずにはいられない。

特に妻はOLとして働いているというのに。

食べ終わると、青年はすぐにそばにおいてある鞄を手にする。

「じゃあ、行くね。お姉ちゃんにも、よろしく言っておいて」

「うん…その、晩御飯…ありがとう」

「どういたしまして」

そそくさとマンションを出て、駐車場に止めてある車に乗る。

車を走らせつつ、ハンズフリー通話をつなげる。

「もしもし、…ううん、大丈夫。今日は仕方ないよ。それに、僕も少し時間あったから、君の分のカレーもあるから、食べて。…大丈夫、あの子もおいしく食べてくれたから。…うん、ちょっとだけ進展あり、かな。…そうだね、GBBBBでの様子は…」

 

「見せてもらおうか…GBBBBの真髄とやらを…。どうもーーー!GBBBBニュースのお時間です!GBBBBアイドルのレコでーす!」

薄いピンクと茶色の混ざったミディアムボブで肌が見えるか見えないかのギリギリの薄さの紫と白の衣装姿をした女性が笑顔で視聴者に挨拶をする。

左右にはツインテールのみがミディアムボブの髪から離れて浮かんでおり、その姿からは現実から配信しているわけではないことがわかる。

彼女はGBBBBの広報を行うために作られたAIアイドルのレコで、AIとは思えない軽快なやり取りも可能であることから評価が高い。

「本日ご紹介するのは、マイスターチームによる生の戦いです!先日行われたクラン勝ち抜きバトルにて、驚異の99連勝を成し遂げたマイスターのクラン、クラン・ラプラス。今回行われるラビアンローズ大会決勝の戦いをぜひご覧ください!」

「クラン・ラプラス…マイスター…ああ、タオが見てたガンプラの…」

そういうことについて全く知らない士だが、タオがあそこまで目を輝かせ、自分の約束を忘れてまで彼のガンプラを見に行っていた。

映像が切り替わり、宇宙空間のラビアンローズ周辺宙域へと舞台が変わる。

そこでは、騎士ユニコーンガンダムをベースとしたSDのガンプラと、ドムをベースに腕部がグフ系、バックパックがゲルググキャノンのガンプラ、そしてマイスターガンダムスーパーストームの姿があった。

相手となるクランは黄金に塗装されたビギナ・ギナとビギナ・ゼラ、ビギナ・ロナの3機。

クラン名はクラン・黄金貴族で、リーダー機と思われるビギナ・ロナがヴァリアブル・メガビームランチャーを最大出力でクラン・ラプラスめがけて発射する。

散開して回避した3機のうち、ドム型がビギナ・ゼラを、ユニコーン騎士ガンダム型がビギナ・ギナを相手する。

「マイスター・ジン!貴様の首とGBBBB最強の称号…このクラン・黄金貴族のドレルがもらいうける!」

スーパーストームのコックピットの中に聞こえる、相手の好戦的な声。

モニターにはパイロットの姿が表示されており、まさに名前通りガンダムF91の消息がよくわかっていない男、ドレル・ロナそっくりのプレイヤーだった。

銀色の髪と褐色の肌をし、赤いネクタイとGBBBBのロゴが刻まれた黒いジャケット姿をした赤いサングラスの青年はそれに不敵な笑みを返す。

「ならば、それを為すだけの力を見せるがいい。このマイスター・ジンの首、簡単にはとらせんぞ」

「ほざくな!!みよ、貴様を倒すために編み出した奥義を!!」

最大火力のヴァリアブル・メガビームランチャーを投げ捨て、バックパックにマウントされているバスターランサーを手にしたビギナ・ロナが搭載されている7発のショットランサーのうち、中央を除く6基を発射する。

6基はいずれも直線的で、スピードはビームやファンネルほどではない。

難なく回避したスーパーストームが右手のビームライフルで攻撃しようとする。

しかし、次の瞬間手にしていたビームライフルがどこからか飛んできたビームを受けたことで爆発する。

「馬鹿め!我が奥義はただの槍ではない!」

その言葉の正しさを証明するかのように、スーパーストームが捉える敵機体反応数が3から9に変化する。

四方八方から飛んでくるヘビーマシンガンやショットランサー、デュエルビームガンの弾幕をよけつつ、接近してくるビギナ・ロナの左腕のビームシールド・サーベルを右手に握ったビームサーベルで受け止める。

「チッ…右手は無事か…!」

「ギリギリだったが…ライフルを手放していたのさ」

次々と襲うクロスボーン・バンガード由来の兵装と機体による攻撃をよけつつ、新たに表れた6機のうちの1機に注目する。

その機体は黄金のベルガ・ギロスで、ショットランサーによる攻撃を終えるとその姿を一瞬だけショットランサーへと戻した後で、今度は黄金のゾンド・ゲーへと変わって動き回る。

改めてほかの機体を見るが、それらも弾切れ回避や有効な攻撃の選択のために姿を一度ショットランサーに戻してから別の姿に変わる様子があった。

「なんだよ、この金きらの攻撃…反則かよ」

いくらガンプラバトルとはいえ、こんな攻撃をする機体をタオが見せてくれたガンダム作品の中では見たことがない。

あまりにも物理法則を無視していて、リアリティのかけらもない。

「なるほど…必殺技か、君の」

「その通り!これこそが我が生み出した必殺技、貴様を倒すための奥義、黄金の軍団だ!」

「うえええ、こんな必殺技もあるなんてーーー!!あ、この映像をご覧の皆様の中に、まだご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、GBBBBよりガンプラバトルにて実装されました必殺技はプライヤーランクC以上のプレイヤーが習得可能なスキルとなっております!技の内容については、これまでのプレイ傾向やガンプラの出来栄え、特性などを加味されて生まれる、同じ技の存在しない…まさに、自分だけの技なのです!!」

「我が奥義の前に、散れ!!」

ライフルを失ってから、回避するか左手の重機関砲でけん制することしかできていないスーパーストームを前にドレルは勝利を確信する。

投げ捨てたヴァリアブル・メガビームランチャーの位置は既にレーダーで感知しており、あとは隙をついてこの火力をぶつければ勝てる。

そこへ向けて機体を飛ばし、手を伸ばす。

「やはりか…そう動くと思っていたよ」

右手のビームサーベルを握ったまま高速回転させて疑似的なビームシールドを生み出して攻撃をしのぎながら、スーパーストームは左手の重機関砲を1発だけ、頭を向けずに左に向けて発射する。

弾丸は回収されようとしていたヴァリアブル・メガビームランチャーに直撃し、中に残っていたエネルギーが大きな爆発を引き起こす。

回収しようとしていたがために近づきすぎていたビギナ・ロナは爆発の影響をもろに受けて吹き飛び、その影響を受けた6基のショットランサーの動きが鈍る。

それらのショットランサーを重機関砲で破壊していき、体勢を立て直そうとしているビギナ・ロナに接近する。

「読まれていた…この私が!?」

「君が投げ捨てた武器の場所を私も既に把握していた。それだけのことだ。さあ、君の奥義はこれでおしまいか?」

「貴様ぁ!!」

ヴァリアブル・メガビームランチャーを回収しようとした左腕が大きく損傷しているが、まだバスターランサーを装備している右腕は無事で、搭載されているヘビーマシンガンで攻撃を仕掛ける。

正面から、そして既に弾道も分かるそれにジンは当たるはずがなく、泳ぐように回避しつつ、右足に搭載されているGNカタールが発射される。

機体とワイヤーで接続されているそれは後部に追加されているスラスターで加速していき、ビギナ・ロナの右手首に突き刺さる。

右手の以上によってバスターランサーを手放してしまうが、まだ左腕のビームシールドサーベルが残っており、それで応戦しようとする。

だが、その前にスーパーストームが至近距離に迫っており、腹部に向けて飛び蹴りをされたことで大きく吹き飛ぶとともにコックピットが激しく揺れる。

どうにか機体各部のスラスターを制御することで体勢を立て直すが、既に目の前にはビームサーベルを振りかぶったスーパーストームが迫っていた。

「面白い必殺技だ。そのガンプラとともに磨き上げて、再び私に挑んでくるがいい」

「マイスター・ジン!!」

一刀両断されたビギナ・ロナは大爆発を引き起こす。

既に残りの機体はジンの仲間がそれぞれ撃破しており、彼らに目立った損傷はない。

「決まったーーーー!!これで、クラン・ラプラスは大会五連覇を達成!もはや、GBBBBに敵なし!彼らを止めることができるクランは現れるのかーーー!!GBBBB以前のサービスから、ランキング上位に名前が挙がっていたマイスター・ジンとクラン・ラプラス!マイスターを打ち破る新星の登場を期待します!」

「…」

バトル映像が終わってからも、士はスマホから手を離すことなく、映像を見つめていた。

やがてスマホがバイブしたことでようやく正気に戻り、表示されたタオのショートメールに目を向ける。

(すごかったやろ!これがGBBBB最強のファイターの力なんやで!!)

「…」

そのメールに対して、士は返事を送ることができなかった。

 

同じ時刻のとある電車の中。

座席に座るビジネススーツ姿の若い女性はスマホで士やタオが見ているのと同じ映像を見ていた。

電車の中には塾や部活帰りの学生や帰宅中の社会人が数多く乗っているが、残業で帰る時間が遅れたためか、いつもよりも乗っている人数は少ない。

映像を見ていた女性はブルブルを体を震わせ、いきなり拳を上げる。

「やったーーーーー!!!!」

数十分前までの疲れを忘れるような喜びを爆発させた彼女だが、周囲からの視線に気づくと顔を真っ赤にして小さくなっていく。

「ご、ごめんなさい…」

今日の試合のことは知っていて、負けることなどないことはわかっていたが、それでも勝利の映像を見るとうれしくなるのは仕方のないこと。

録画して、家で見ればよかったと後悔するが、もう遅かった。

 

 

 

 

 




必殺技
GBBBBにて、新たに追加された要素。
GBBBBにおいてはプレイヤーランクが存在し、ガンプラの出来栄えやミッションの結果、GBBBBにおける活動によってランクが上昇する。
ランクがC以上かつ、一定の条件をクリアすることで、プレイヤー自身のプレイ傾向やガンプラの出来栄え、ガンプラそのものの特性などを加味されたうえで使用可能となる。
また、複数人のプレイヤーの必殺技による連携、そして必殺技そのものの進化の要素もあり、いまだにその全容をつかんだプレイヤーは存在しないという。
なお、クラン・ラプラスに所属するプレイヤーは全員ランクC以上で、マイスター・ジンのランクは現状では最上位のExだが、誰も彼らの必殺技を見たものがいないという。
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