〜魔剣道〜転生者が女性社会のメジャースポーツの頂点を目指す話   作:四足歩行戦車団

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四話 属性魔法と制御

 

『第4赤炎魔法 紅蓮ノ滝』

 

僕は魔力を身体に過剰に纏い備えたが、すぐに限界値を超えた。魔力の壁はゴリゴリと削られてゆき、骨すら残らず焼かれたのであった。リングの上にはサーベルと真里谷であった炭しか残されていなかった。

 

そして、僕の身体はホール横の別室にある魔法陣に再構築された。あれが自分が越えなければいけない壁。あの実力でありながら大和館は準優勝で止まり、その後も挫折ばかりの人生を歩んできたらしい。気軽に頂点を取ると言ったが、僕の目指す果ては想像以上よりも遥かに困難であるらしい。

 

「良いね。俄然燃えてきた」

 

そう考えると居ても立っても居られなくて、すぐにホールへと戻った。すると刈谷が大野にどやされていた。大の大人の女性が男子高校生に頬を引っ張られている。

 

「どうするんですか!あんな大業なんてぶつけて!第四魔法クラスの大業を使うのなんて県大会最上位の連中だけですよ!それで真里谷が辞めるなんて言ったらどうするつもりだったんですか!」

 

「すまん、アイツが楽しそうに魔剣道をするもんだからお姉さんもつい楽しくなっちゃって…ほら、指導者たるもの自身が楽しそうにしないとダメっていうだろ!」

 

「ふざけるな。自分のネタで笑うお笑い芸人なんて見てられないだろ。それと同じだよ。初心者なんだから属性魔法も先ずは手順を追って教えてあげないとダメでしょ!」

 

年甲斐もなく喚く刈谷と年関係なく怒る大野を温かい目で見守っていると、僕の存在に気付いたのか話しかけてきた。

 

「真里谷!大丈夫か?メンタルやられてないか?」

 

「大丈夫だけど、そんなに心配すること?」

 

「当たり前だろ。安全が保障されているとはいえ怖いものは怖いし痛いものは痛いんだからな。初心者相手に大業使ったら殆どの奴は腰を抜かして立てなくなるもんだ」

 

なるほど。この世界の住人の倫理観は緩いのかと考えていたが、一般的にはビビるのが普通の反応であるらしい。まぁ、野球経験のない人に打席を立たせたり、サッカー経験のない人にゴールキーパーをやらせたら、そんな反応をするかもしれない。ただ僕は恐怖よりも闘争心が勝る人間だ。

 

「心配してくれてありがとう。まっ、僕としては目指すべきゴールが分かって少し安心したよ。そして僕が魔剣道をやるためには時間が残されていないことが再認識できた」

 

そう言いながら刈谷を見ると、少し意外そうな顔をしたのちにニヤリと笑った。

 

「高校生相手に勝つのなら、属性魔法の制御は必修だ」

 

属性魔法。それは魔法と科学が発展した今では殆ど使われなくなった魔法技術だ。前世の日常生活で火起こしをするタイミングがないように、日常生活で属性魔法を使う機会はほとんどない。そして前世で人間が機械に勝てないように、こちらの世界でも魔法は魔法機械を使った方が遥かに出力が高く安定していた。なので人間が属性魔法を使うには慣れと訓練が必要となるのだが…

 

「ふふん。こう見えても中学までは百姓の手伝いやってたから、都会にいるシティーガールより属性魔法を使える自信があるんだよね」

 

僕は自信満々に言った。幼い頃から百姓をしていたこともあり各属性魔法を一通り使うことができた。それもどれもが実用的なレベルでだ。

 

「なるほど。ならお前が使える属性魔法を一通り見せてくれないか。その出来次第では属性魔法を使った戦いをしたい」

 

「いいよ。それじゃあ赤炎魔法からみせてあげる」

 

属性魔法大きく分けて五種類ある。

炎や爆発・光などを放出する赤炎魔法。

水や氷などを放出する青水魔法。

雷や風などを放出するの紫天魔法。

土や岩、重力などを放出する黄地魔法。

植物や生命力を司る緑生魔法。

これには体質的に得意不得手があり、得意な魔法であるほど低燃費で高出力の魔法を行使できるようになるのが一般とされていた。

 

「第1赤魔法 火炎」

 

僕は手のひらから炎を出した。その火力は調理用ガスバーナくらいの威力である。

 

「しょぼくない?」

「野焼きとか焚き火の着火をするくらいにしか使わない魔法だからね」

「論外だ。最低でも剣に纏えるくらいの火力が必要だ。他の属性はどんなんだ」

 

「第1青魔法 洗流」

 

そう言いながら手をかざすと、手のひらの真ん中からシャワーが出た。

 

「さっきよりマシだが、なんでシャワーなんだ」

「掃除と牛や馬の水浴びに使っていたからなぁ」

 

シャワー、ミスト、ストレートと放出を調整することもできる。

 

「地味に便利だが論外だ。次の属性魔法行くぞ!」

 

僕はリングに手のひらをついて魔力を込めた。

 

「第2黄地魔法 豊作万歳 」

 

だが何も起こらなかった。

 

「…あれ?」

「その、これはなんの魔法なんだ?」

「畑を耕す魔法だよ。春先に重宝するんだよね」

 

すると刈谷は眉を顰めて言った。

 

「闘技場のリングは人力の魔法では破壊できない硬度だ。だから大地に干渉するタイプの黄地魔法使いは魔剣道では大成しないと言われている。まぁ、使うとすれば具現魔法になるだろう」

 

刈谷はそう言うとその場に成人男性サイズくらいの岩を生み出した。黄地魔法は畑を耕したり、岩を砂に変える魔法など干渉系の魔法は使えるが、具現化を使用した経験はなかった。そして、見様見真似でできるものじゃないと思っていたので、次の属性の魔法を使うことにした。

 

「緑生魔法!と言いたいところだけどリングの魔法伝導率が悪いなら植物操作系は使えないよね。というわけで簡単な治癒魔法を使うよ」

 

そう言いながらサーベルの刃を手を当てて軽く擦てて自傷した。傷口からは血がドバドバと溢れ出している。早く止血しなければ死ぬだろう。

 

ちなみに蘇生装置は基本的に装置に入った瞬間の状態が記録され、リング外に出るか死ねばその記憶をもとに魂が転移され、肉体が復元される仕組みとなっている。なのでここで治癒魔法が失敗しようとも、蘇生時の肉体に支障が起こることはない。なので僕は遠慮なく使った。

 

「第3緑生魔法 造肉」

 

魔力が肉や血となり傷口を埋めた。それを見て大野は感心したように言った。

 

「へぇ、すごいな。緑生魔法って燃費が悪いうえに、知識経験ともにかなり高度なものが求められるのによくできるな」

「まぁ、田舎暮らしだったからね。病院とかすぐにいけないしこのくらいの応急処置は自然と身につくんだよ」

 

嘘である。前世ではスポーツ医学の学科を専攻していたので人体の構造にはそれなりの理解と知識を持っていた。とはいえ就職先は学科とは関係ない営業職であったが、今世での屠殺の経験を通して生物の体内構造に触れた結果、僕の治癒魔法は高いレベルのものになっていた。

 

「ふむ、自己治癒ができるのは凄いが、攻撃性能としては論外だな。最後に残ったのは紫天魔法だが」

「いやーそれがあまり使ったことないんだよね」

「なんだ、急に自信が消えたな」

「なんというか使うのが下手というか、祖父母から言われているんだ。危ないから使うなって」

「まぁ、大丈夫だ。ここでは誰も死にはしない」

「まぁ、そうなんだけど」

 

紫天魔法。これは敢えて最後に残した魔法だ。ぶっちゃけ使いたくない。だが刈谷も自分の時間を犠牲にして面倒を見てくれているのだ。出し惜しみすのは無礼だろう。

 

「制御できないから当たっても文句は言わないでね」

 

自分らしくない時思いながらも念の為に保険はかけておく。その上で禁断の魔法を使う。

 

『第三紫魔法 迎雷桑原』

 

確かこの魔法を使ったのは小学三年生の頃だっただろうか。実家の畑を肥やすために雷を落とそうとした。ただあの時は誘導地点を間違えて鶏舎に雷を落としてしまったのだ。鶏は見事に全滅してフライドチキンになった気がする。そして祖父母にめちゃくちゃ怒られた。

 

それ以来、紫天魔法は使ってない。だから僕は知らなかった。あの時の事故以上に荒ぶることを。

 

「あがっ!」

「おいおい、嘘だろう。自滅したぞ」

 

ホールに爆発音に似た雷鳴が響き渡った。何が起きたのか。あまりの衝撃で頭が真っ白になっていたが、状況を理解したのは蘇生室に転移してからだった。

 

 

「やっぱり、青魔法を使いこなしていくべきだと思うんだよね」

 

属性魔法を一通りお披露目したのち、僕はその内容を総括した。

 

「いや、お前の適性は紫天魔法だ。これから一週間、紫天魔法を鍛えていくぞ」

 

だがその総括は刈谷に秒で否定された。それに対しては僕は冷静に反論する。

 

「僕の魔法見てた?一発芸を披露するわけじゃないんだよ」

「誰もそんなハードな笑いを求めてねーよ。魔法は適性によって魔力効率と威力が大きく変わる。制御できないのは才能がないからじゃない。適性がありすぎて常にアクセルが踏みっぱになってるからだ。加えて女でもドン引きする魔力量、そりゃ制御できずに暴発するはずだ」

 

刈谷は呆れながらも説明を続けた。

 

「だが幸いにも属性魔法は出力を上げるより下げるほうが簡単だ。この一週間で出力を抑えて制御できるようになれば、十分使い物になるだろう。剣の技術と魔力制御、この一週間死ぬ気で取り組んでもらうぞ」

 

刈谷はそう断言した。自分でもびっくりするくらい制御できない紫天魔法。その感覚を形容するなら平均時速230キロのレーシングカーのハンドルを握っているみたいだ。身体への負荷が凄まじいうえに一瞬の油断で大事故を引き起こしかけない。

 

そんな不安は勿論あったが今の僕の師匠は刈谷である。弟子たるもの師匠の育成方針に素人意見をぶつけるべきじゃない。ここは不安を抑えて彼女の方針に従うことにした。

 

 

そして一週間後

 

 

早朝のスポンサーセンター前にて僕は刈谷に言った。

 

「師匠、行ってきます」

「これが最期と思うと悲しくなるな」

「ええ。これまでお世話になりました。必ず勝ちますよ」

 

刈谷はその背中を見つめながら呟いた。立ち去った真里谷の表情はやり切ったと言う清々しさに満ち溢れていた。だが、刈谷は心苦しく思う。

 

「自信満々で学校に行ったけど、自爆が大自爆になっただけなんだよなぁ」

 

結局、僕は紫天魔法を制御できるようにはならなかった。それどころか魔力の基本操作がより効率的になり紫天魔法の出力が大幅に向上してしまったのだ。まぁ、つまりアレだ。一週間じゃ無理だったよ。

 

 

 

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