人間が常に赤ちゃん扱いされるような上位種に生まれたら自分だけおいてけぼり   作:苺のタルトですが

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11話やめよリリシヤ。ごめんなさいをするから許してくれ【戦士・軍人編】

「くっ!もうだめです。前線を維持できません」

 

ここは敵のたくさんいる土地。

 

奪還任務を遂行していたのだが、見つかり敵に囲まれた兵士達。

 

「ぐっ!」

 

「〇〇!」

 

被弾した仲間が倒れ込む。

 

「〇〇!私が行きます」

 

ガンガンと頭痛がしそうな音が水の膜を張ったように聞こえる。

 

それがなんの音もしないとわかったとき、本当に時が止まっていると知った。

 

「ちょっといいか?」

 

「……なっ」

 

武器を突きつけて振り返るとこの世の美しさを集めても表現できない姿を見つけて、言葉を無くす。

 

「エルフ!」

 

「ああ!エルフだ野良人間よ」

 

「野良??」

 

人間の兵士は、ぽかんとする。

 

「聞きたいことがあるのだ」

 

「は、はあ。いや、この状況でか?」

 

「うむ。とても知りたいのだ」

 

エルフは真剣な顔でこちらを見る。

 

この空間は現在時間が止まっており全員が男を除き動かない。

 

エルフは魔法を使えると確かに聞いては居たが、分布場所は民間人のところばかり。

 

「その服だ」

 

「ふ、ふく?」

 

「迷彩服というのだろ?欲しい」

 

「え、なんでだ」

 

エルフの言葉が最初から最後までわからない。

 

男は混乱のまま、問い返す。

 

「可愛いからだ!」

 

「は?」

 

「お前も可愛い」

 

「は?」

 

「私と来ないか?」

 

「はぁあああ?」

 

口説かれていると思いたくない兵士は、問い返しては咀嚼できない状況に考えられなくなる。

 

「これをやるとリリシヤに叱られるしなぁ。うーん……そうだ!こんなところでは落ち着かないな」

 

そう、告げられた時には見覚えのある施設の前にいた。

 

そこは今回の任務を指揮したり、作戦を練るための本部。

 

現地に近い場所だが、離脱の可能性は絶望的で二度と見ることは敵わないと諦めていた場所。

 

そこに移動した。

 

慌てて後ろを見ると仲間達もちゃんと移動していた。

 

「か、帰ってきた、のか?」

 

「帰さない方がよかったか?まだよくわかってないから、間違えてしまったかね?」

 

「いや、いや!帰って来れてよかった!」

 

ありがとうも何度も言う。

 

「可愛いな……ほれ、これを食っていけ」

 

と、飴を渡される。

 

ビール味の飴なのだという。

 

「なんだか、祖父母の家に来た時のようだ」

 

男の兵士はニコニコとなるエルフを見る。

 

「さて、時間を動かす」

 

余裕を持って待ってくれたおかげで、冷静に本部へ伝えられた。

 

「〇〇さん!」

 

今回の後方支援組のリーダーが駆け寄ってくる。

 

「よかった!もうダメかと!」

 

涙をぽろりと流す女性。

 

「夫婦になるのか?」

 

「「なっ」」

 

声をあげると周りの奴らもヒューヒューと口笛を鳴らす。

 

「おいエルフっ」

 

思わず言い返すとエルフはきょとんとなり、指を己にさして私のことか?と聞いてくる。

 

「ああ!簡単にそういうことを言いふらすなっ」

 

「なぜ?両思いなのに」

 

「へ」

 

「は」

 

「「……え?」」

 

男女は互いに顔を見合わせて顔を赤くしていく。

 

「いいではないか別に。今回でお前は教官とやらになるし、妻になるお前は現場から本部勤務になるからちょうどよいだろ?こういうのをぴったりというのだぞ?」

 

「おおお、お前そろそろ口閉じてくんね?命の恩人なのはいやってほどわかってるし!」

 

そう返せばエルフは首を傾げていく。

 

「命を救う?そんなの気にする必要はない。なんたって、可愛い人間が将来私に赤ん坊を見せてくれるという約束をしてくれると信じてるんだ」

 

「ぶほ!」

 

「こほっ、こほっ」

 

「わー、兵長が、あの鬼の〇〇が!」

 

「はははは!」

 

「こりゃ、今夜はパーティだな!エルフさん!あなたも是非来てくれ」

 

「なぬ!?人間の集いに誘ってくれると!なんと光栄なのだ」

 

「集いって、猫みたいなふうに言うな」

 

的確な言葉を一人が言ったが、心理と知れることはないだろう。

 

人質も完全回復され、健康的な体のまま帰る。

 

「ああ、なんとよい」

 

エルフは恍惚とした顔で人間達にありがとうのハグをされて、悦に入っている。

 

「うむ!皆かわゆい!」

 

「こいつ、エルフだな」

 

「しかし、宇宙飛行士に接触したエルフは他のエルフと違うと報告を受けてます」

 

恋人になったようなそうでないような女性が付け加える。

 

「そうだな。おれも権限内で見られる情報で見た」

 

「とてもではないですが、他のエルフの溺愛、人間愛好家のような反応ではないそうですね」

 

「聞いた方がはええだろ」

 

軍の男は大雑把である。

 

「なぁ」

 

「ん?リリシヤか、聞きたいことは」

 

「心読むなよ」

 

「リリシヤそっくりだなお前は」

 

「おれにそっくりなのか?てか、ひどくね?」

 

「いや、平気だ」

 

「ふーん。宇宙飛行士の件はリリシヤって子の仕業なのか」

 

男がたずねる。

 

「そうだな。ところで宇宙飛行士の件とは?」

 

「知らないのか?」

 

「ログにない」

 

エルフは困惑した顔でこちらを見る。

 

「閲覧に規制がかかっている」

 

「閲覧に?」

 

なんのことかさっぱり。

 

「それを無視してなにかやると彼女の怒りは怖い」

 

「その子はお前らのリーダーなのか?」

 

「違う。リリシヤは専門家だ」

 

「専門」

 

「人間の。一番詳しい」

 

「へーっ」

 

男はこれも報告案件かと思案する。

 

「やめておいた方がいい。リリシヤは目立つのを嫌う。報告してもなかったことにされる」

 

「なんだそりゃ。こええな」

 

「そうか?あまりやらない方がいい。私達はお前達が可愛くて仕方ないが、リリシヤは厳しい態度で接する者だ。きっと心の底では同じように人間ちゃん達を構いたいのだよ。心の中で血涙を流しているはず」

 

まるで確信しているように言うエルフ。

 

「なんだか疑わしい部分があるがな」

 

報告を見た時に、そんな感じじゃないと思ったものだ。

 

全体的にリリシヤというエルフが関わった時の態度は、冷めたもの。

 

「ただ、勘違いしてそうではある」

 

男はエルフを見たが、エルフは自慢げに笑う。

 

「嫌いならばあんなに詳しいわけがない」

 

「説得力はあるか」

 

若干胸にひかかるが、今考えても意味はない。

 

「リリシヤは優しい。我らのやりすぎることを止めてくれる。そのおかげで人間ちゃん達に嫌われなくて済んでるぞ」

 

「人間ちゃんって呼ぶな」

 

「ん?可愛いではないか?」

 

そう言われた瞬間強い力で抱きしめられた。

 

文句を言う前に、次の人間を腕に巻き取っている。

 

あちこちから「おばぁ!?」と驚きの声が聞こえてしまう。

 

抱きしめ攻撃に、兵長はわなわなと震えた。

 

「きゃあ!」

 

六十になる軍医であり、高い地位にいる女性の声が聞こえて聞こえないフリをした。

 

「よしよし、怯えるな。ほら、菓子をやろう」

 

エルフは驚いただけと思っており、落ち着くように伝えていた。

 

そんなわけねぇと思っても、彼からすると配慮しているつもりなのだろう。

 

「は、放しなさい」

 

震える声に、エルフが微笑む。

 

「無理をしてはいけない」

 

多分、年齢に引っかかったんだな。

 

「さぁ、座るのだ」

 

「やめなさい」

 

「かわゆい」

 

混乱を来す女性軍医。

 

その時、エルフの後ろの空間が空いて白くて小さい手がエルフ男の襟首を、わしづかむ。

 

「リリシヤ!待ってくれ!私はただ彼女を保護したくてっ」

 

エルフは慌てた態度で言い訳を言い始める。

 

しかし、手は関係なくエルフを空間に引き込む。

 

「自立した人間に無理強いは、いけない?わ、わかった。勉強する。だから、今はやめてほしい。まだ今週の滞在時間は余ってるだろう?お願いだ。もう無理矢理しないから、お願いだ」

 

必死に懇願するエルフの言葉に、リリシヤの手が離れる。

 

「ふう……感謝する。うむ、うむ。ごめんなさいするから、わかった」

 

最後に言い含められたのか空間に向かって頷く男エルフ。

 

空間が閉じ、軍人達は誰も話さない。

 

しかし、エルフは女医師に向き直り謝る。

 

「すまない。無理強いして。ただ、心配なのだ。人間の寿命は九十なのだろう?心配してしまい、嫌がられてもどうしても、気になる。でも、リリシヤが言うには自立した人間は自分で生きていくことを誇りに思っているという。難しいな」

 

エルフは反省の意を示していた。

 

女医は初めは嫌悪があったが、話を聞きダメな生徒を見る目になる。

 

優しさがそこにはあった。

 

「お気遣いはありがとうございます」

 

「うん」

 

男エルフは嬉しそうに笑う。

 

「でも、頑張りすぎはいけないぞ?」

 

高位の軍人は目を丸くしたあと、気恥ずかしそうに目元を緩ませた。

 

心の底から気遣われたことに気付いたのだ。

 

「だが、おかしいな」

 

エルフはほっこりとなっている空間で呟く。

 

なにか思っていたよりも計算外という言い方で。

 

「檻の中にいる人間にはどれだけしても、怒られたことなんてなかったのに」

 

今度こそなにも聞かなかったフリをした。

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