人間が常に赤ちゃん扱いされるような上位種に生まれたら自分だけおいてけぼり   作:苺のタルトですが

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12話人間見たさに24時間居座ったただの迷惑客通り越して怪異

カフェに入ってみた。

 

地球のおしゃれな街のおしゃれなお店。

 

いい感じの場所。

 

エルフと知らぬように人間に偽装した上で。

 

そして、おしゃれな名前のコーヒーとケーキを注文。

 

待つ間に地球の情報を手に入れる。

 

杖を振るのはなんとなくなので、一々振る必要はない。

 

知りたいと思えば頭に勝手にわかりやすく、入ってくるのだ。

 

そんなふうに街並みを堪能。

 

この店はチェーン店らしい。

 

チェーン店ならば味も安定してるかなと、安心して飲める。

 

食べれるしで、選び方は間違ってない筈。

 

「お待たせしました」

 

「ありがとうございます」

 

注文の品を持ってきてもらい、手をつける。

 

まずはコーヒー。

 

昔は好きじゃなかったけどエルフになったおかげか、美味しい。

 

ケーキもおいしいので、頬が落ちそう。

 

「うーん、おいしい」

 

味わう。

 

「おい、エルフかあれ?」

 

(ん?私は今人間になってるよね?耳とか尖ってないよね?)

 

さわりと耳を触ると丸い。

 

ということは、エルフと思われることはない、のだが。

 

「どういうこ、あーはいはい、はいはいはい」

 

全て悟った。

 

エルフ達がまた、津波のようにザバザバと店の中に雪崩れ込んできたのだ。

 

「お、お客様。お席がそこまでないので、すみませんが」

 

「え?私たちは立ち見でいいわ?ところで、貴方疲れてるわね。今回復してあげるわよ」

 

呑気に入ってきたエルフが、店の店員に惚けた笑みを見せて店員が緑の光に包まれる。

 

緑色は、ヒーリング効果があると知った誰かが、緑の光を採用したらしい。

 

「え、なに?」

 

魔法でいう回復なので、わかりやすいと両者に人気となっている、らしいよ。

 

店員はポカーンという顔を浮かべて左右を見る。

 

きっと、回復していることを実感するだろうさ。

 

あとから。

 

今は驚きで、実感が湧きにくい。

 

「おい、エルフだぞ」

 

「エルフを生で見たの初めてだ」

 

テレビでならしょっちゅう特集されてるもんね。

 

この間なんて、インタビューされてた。

 

厳かな場所で、まるでハリウッドスターの俳優の扱いで。

 

そんな対応しなくても、犬小屋レベルでも喜ぶよ彼ら。

 

「テレビで質問してたかと思えば、質問返しの数がエグかったから覚えてる」

 

観客の一人が話し出す。

 

記者やアナウンサーが質問したら倍以上の質問をやっていたのは、知っている。

 

質問されるよりも、知りたいという感情が爆発したんだろうさ。

 

近くに人間がいて、己に注目し話しかけていればどのエルフでも興奮してウズウズするよね。

 

「見てたぞ。質問してた側が始まる前から、疲れ果ててたよなぁ」

 

そもそも、椅子に対面する前に挨拶のハグが長すぎて多分あれ、ディレクターにカットされてた。

 

一分ハグ時間が映し出されてたんだけど、おそらくあれは一時間くらいされてた疑惑がある。

 

次にカットイン後の相手がくたびれてたもん。

 

服も顔も化粧もくったくた。

 

いつものことかと見たものだ。

 

リリシヤはくぴりとコーヒーを飲む。

 

きっと、ハグされて二分すぎた頃に取材者達はその事態に気付いた筈だ。

 

今日は長い一日になるぞと。

 

だいぶカットされたけど、三時間スペシャルだったからかなり枠を取ってたよね?

 

大盤振る舞いってやつ。

 

「ここに相席させてもらうわね。人間さん」

 

「勝手に座らないでくれる。たくさん席空いてるのに」

 

わざわざここに座るとは、確信犯だよね。

 

擬態は完璧。

 

周りからはどきまぎしている人間に見えている筈なので。

 

エルフの男と女がそれぞれここへ座るのは、相席以外にも座っていれば人間との距離が近いと知っているからだな。

 

立っているよりも座って見ていた方が、見られている方に受け入れられやすい。

 

いや、受け入れているというより、受け入れるしかない。

 

よほど、時間に余裕がなかったり食べ終わっているということでもない限り、注文したものを中途半端に投げ出す人は殆どいないと思うし。

 

現に居心地悪そうにしている人達は、口をつけたものがあるから離れられないでいる。

 

カワイソー。

 

興味ないから、本気で思ってないけど。

 

ミソほどない。

 

「リリシヤも隅に置けないわね。人間にあれだけ興味ないって天邪鬼を気取っておいて。こんなところに来るなんて。うふふっ」

 

「炭にしてやろうか」

 

人間しかいないカフェに行けば人間に囲まれてしまうのは、当然なのに。

 

それをあたかも、人間に会いたいからここへきたように思い込んでいる頭のアホさを燃やしたくなる。

 

このエルフ達、心を読めるのに同じエルフ族だから本心でないとマジで本気で本当に思い込んでいる。

 

長年いるから、それくらいの予想は立てられた。

 

「なにしにきたの。立ち見でもすれば?」

 

暗にここへ座るなと何度も言うのに人間観察に夢中すぎて聞いてやしない。

 

相変わらず言葉を聞かないやつら。

 

「お、お客様。ご注文をお伺いっ、きゃっ」

 

注文メニューを渡そうとした、店員の手を握り込む。

 

「セクハラすな」

 

コーヒーカップで顔を殴りつける。

 

がつんと音がしたが、エルフはニコニコ顔を保持し続けて、名残惜しそうに手を離す。

 

殴りつけられないと毎回やめない往生際の悪さ、学習しろ。

 

擬態はできているので、コーヒーカップでの殴打は誰にも見られていない。

 

下手したら取り沙汰される行為。

 

まあ、取られても全部なかったことにできるから構わないけど。

 

「あらあら、リリシヤっ。お気に入りの場所の人間を取られて嫉妬なのかしら?」

 

「目、ついてる?」

 

「待て待て、リリシヤは人間に人一倍繊細さを求めるんだ。怒るのは当然だ。もっと丁寧にしなければ。専門家の目線というのはいつも厳しい」

 

エルフ達はなるほどと頷いている。

 

これって、所謂犬猫を保護している人達が、第三者にめちゃくちゃ厳しい人がいる時に思考を理解しようとする空気。

 

「うっっざ」

 

うっっっざ。

 

大切なことなので二回言った。

 

何度でも言ってやるわい。

 

ケーキを頬張る。

 

「専門家はいつも的確に我らを試してくれる。身も引き締まるというものだな」

 

「そうねっ。ねぇ、リリシヤ。人間の好きな飲み物ってなにかしら?買ってあげたいのよね」

 

「全種類買ってけ」

 

アドバイスを求められても全部同じ回答をしている。

 

好みなんて人それぞれすぎて、なにもアドバイスできるわけがない。

 

というか、本人に聞くか心を読むなりして買えば済む。

 

「やんっ。人間についての本があれば買いたいわ?」

 

「誰かに書いて欲しいわねぇ」

 

チラチラ、チラチラ。

 

「死んでも書かん」

 

「「「えええ〜〜」」」

 

こっちのエルフ五箇条を破りまくるやつらになぜ、そんなものを書かないといけないのか。

 

大体、人間の本ってなに?

 

幅が広すぎて書くのは、どの部分なのかわからない。

 

「そもそも、なにについて知りたいのか、とかは皆バラバラでしょ」

 

「全てを書いてくれれば解決するでしょう?」

 

「私に言うの解釈違い」

 

「書いてよおー。お願いお願い」

 

「そっちが書け。きっと楽しく暮らせるよ」

 

皮肉でもなんでもなく、事実。

 

エルフ達はその間にメニューを全て注文していた。

 

今厨房は火の海並みに大忙しになっている。

 

こういうところ、後先考えない。

 

仕方なく、出来上がったものをテーブルに全て出して済ませた。

 

エルフ達は人間が作ったものを食べたいというから、過労死させたいのかと全員コンクリートの中に埋める。

 

全員分を作らせたら確実に倒れるのだから、彼らこそコンクリの中で虚無の時間を過ごせ。

 

「きゃ!このコンクリって部屋は三十分も場所を固定されてるわ!」

 

「そんなっ。地球滞在が三十分もなくなるというの!」

 

「くっ、人間は百年も生きれないのに、貴重な三十分を近くで見れないなんて」

 

動けはしないけど、遠くからはガンガン見られる。

 

なにも失うものはそもそもない。

 

静かになった店内。

 

限られた三十分を堪能する為に、椅子に背を預けてコーヒーをお代わりした。

 

「すみません。店長の日替わり焙煎お願いします」

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