人間が常に赤ちゃん扱いされるような上位種に生まれたら自分だけおいてけぼり   作:苺のタルトですが

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15話エルフをスカウトして雑誌を作るらしい(前編)

「でね、スカウトされたのよね」

 

「ふーん」

 

気にしな過ぎて、右から左に上から下に聞き流す。

 

「リリシヤも来てね」

 

「はいはい」

 

「約束よ?ふふふ」

 

他のエルフよりも比較的穏やかな話し方なので、気づくのが遅れた。

その日になって腕を取られる。人間に擬態しようとしたら、止められる。

 

「今回はエルフ特集なのだから、人間になってはいけないのよ」

 

「エルフ特集ってなんのこと」

 

スタジオに連れてこられて人に囲まれる。

 

「なに、これ、鬱陶しい」

 

服をあてがわれて、振り払おうとしたら試着室に押し込まれる。

 

「なにこの時間」

 

「いってあったでしょ。写真集の撮影だって」

 

「聞いてない」

 

「言ったわ。ほら、ログにあるでしょ」

 

会話ログという動かない証拠。確かに語ってる。

 

「なんで私?他の子に頼んでよ」

 

「……一人だと、人間に話しかけられてドキドキしちゃうから」

「人間の愚かさに?」

 

「可愛くて直視できないの」

 

そんなこったろうと思った。なんだこのくだらなすぎるオチは。私よりも、もっと適任者がいるだろと尋問する。

 

「リリシヤは、人間に詳しいエルフ一の専門家じゃない?適任者よ」

 

「ぶんなぐられたいのか、コイツ」

 

詳しいから、イコール詳しくなるほど好き、という構図をいい加減ヤメロ。その思い込み、エルフ共通なのなんなの。バカなの、アホなの。ダメだった、アホだったよ。

 

「リリシヤと一緒なら話しかけるタイミングとか、知れるかと思って」

 

「いや、私ほど彼らに話しかけない人いないけど」

 

タイミングってなに?好きに話して、好きに交流すりゃいい。

 

「好きに?で、できるかしら」

 

「ほんと、好きにしろ」

 

「可愛くて、こんなに愛おしい存在に囲まれたら死んじゃいそう」

 

「もう止まればいいよ。止まらないのに止まるとか、それはいわゆる。押すなと言われて、押されない的なネタ」

 

約束された約束事である。ぶん殴りたい。

 

「他のエルフ呼んで、わたしは嫌。嫌ったら嫌!」

 

「そんなぁ。この前、地球人を一人残らず滅ぼそうとした種族から守ったのに、どうしてそんなに頑ななの?」

 

「本気でこいつ、穴に埋めたろか」

 

リリシヤはイラついた。なぜ、助けたのか。目の前で溺れてる人がいたら携帯電話で警察に連絡する、みたいな気持ちなだけ。そんな軽い行いに、意味なんて見出そうとしないでほしい。

別の人になんで助けたんですか、と聞かれたら誰だって「そこに溺れている人がいたからです」と同じセリフになる。そんなことをいちいち抉って取り出そうとしてくる、このエルフがどれだけ非常識な問いかけをしているのか、わかってくれるよな?

 

「着替えましたでしょうか」

 

「あ、今行きます」

 

「おいエルフ。撮影エルフ」

 

「わたしのことかしら?」

 

「エルフに個人名つけても意味ないから、そこに突っ込まないで。わたしはしない。他のエルフ呼ぶからその子にしておいて」

 

「やだわ。リリシヤだから言えたのに」

 

「知るか。そっちは、わたしだからかもしれないけど、わたしだけには言われたくなかったっつの」

 

相談されたくない。知るか、知るか。ぷんぷんなりながら他のエルフを呼び寄せる。特別枠なので、二日の地球の滞在時間を特別に発行する。そもそも、滞在時間を決めたのも、地球を見つけたのもリリシヤだというエルフの認識のせいか皆は、リリシヤの取り決めに素直に従ってくれた。

そこは素直に楽だと思う。言うことを聞かない、なんてことは余裕でできる彼らなのだ。あくまで、善意。

 

「リリシヤ!なんなの?私たちへのサプライズ!?」

 

地球への招待を募集したら、秒で来た。

 

「聞いたぞ。地球のメディアで撮影を行い、特集されるとな」

 

男エルフらも来た。撮影というより、見学枠に無理矢理入り込んだ。

別にかまわない。リリシヤの存在が薄くなるならばなんでも。

 

「ああ、そんな」

 

「どうしたの?人間に話しかけられるか心配だなんて、杞憂よ」

 

早速、彼女の悩みを勝手に読み勝手に答えている。もう、そんな感じでいけばいいや。人間のことに詳しいのは今やリリシヤだけではないのだから。うんうんと頷き、彼らに丸投げ。

 

「じゃあ、あとはよろしくね」

 

「待って、待って」

 

「リリシヤ待って」

 

皆に何故か引き止められる。なぜ?

 

「なに?」

 

「天邪鬼なのは皆理解しているわ。あなたも本当は心の底から参加したいのよね?わかってるのよ」

 

「わかってないわかってない。心底参加したくない」

 

イヤヨイヤヨも好きのうち、じゃないから。エルフ達をこつく。いや、腕を取って連れて行こうとしたからどつく。ドカ、ゴキ、バキッという建物を破壊する音に匹敵する音。人間らは何事かと周りを見る。

そこではエルフが一人、他のエルフを殴りつけていた。それは、事件現場というより、災害現場並みの光景。おかげで、人間達はすくみ切って身動きができなくなっていた。ぶるぶると震える人間達。これに懲りてエルフ達に近寄らなくなる。などということはなく。

 

「もうー、リリシヤ?人間達が私達を怖がってしまったわ?」

 

「ああ、いけないね」

 

エルフ達が話した途端、人間達の記憶からこの時間のことが跡形もなく消えた。霧のように。その瞬間、人間達は目の前の光景も見えなくなり、リリシヤが暴れているところも認識できなくなる。

それにより、彼らはエルフ達は和気藹々としているところだと、目が認識しているだけになった。リリシヤは余計な小細工をと憤慨。

 

「やだなぁ、リリシヤ。そんなに照れなくてもいいのに。分かった。分かった。僕らは君の意思を尊重しよう。見学側に回るといい。わかってるよ、全部」

 

「今のセリフの最初から最後まで探しても、どこにも尊重されてる箇所が見当たらないけどね、フンッ」

 

エルフ達と距離を離して対応。バカバカしくてやってらんないよ、もうっ。心の距離もだいぶ突き放して顔を横に背ける。正直、さっさと帰化して本でも読みたい気分。こちらのトゲついた気持ちなんて、これっぽっちも考慮してない彼ら。

 

「帰るから」

 

「待て、リリシヤ。我らだけ残されても対応を知らないのだが」

 

知るかっと元の場所に戻ろうとしたら、うるうるさせたエルフが目の前にしゃがみ込む。

 

「やだ、リリシヤも一緒がいいわ。お願いよ」

 

その後は撮影エルフ。最初の、リリシヤから失言をもぎ取ったエルフだ。

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