人間が常に赤ちゃん扱いされるような上位種に生まれたら自分だけおいてけぼり 作:苺のタルトですが
「やだああああ、お菓子買ってえええええー!びえええええんんん」
子供がお菓子売り場でお菓子が欲しすぎて泣いている。うるさいなと思う客達。客達が外へ向かう時に出口へ向かうと声が高いものに耳を独占される。
「やだやだやぁああああああああ!!!!ほしい!人間ほしいよぉ!!!」
うるさいとさっき言ったが訂正しよう。今の方が余程耳が壊れそうだ。
「〇〇ちゃん。どれだけ欲しくても、持っていける人種というのは明確に決まっているらしいの。私達に言われても無理なものは無理なの」
エルフがエルフに説教を述べる光景。困ったわ、やだわ、という顔をしてエルフを宥める美女のエルフ。
「ほしいよぉ、私も人間と暮らしたいよ!」
叫ぶ彼女はエルフの中で一番歳が若く、まだ精神部分が未熟。エルフに未熟などという概念はなく、転生エルフことリリシヤからその概念を拝借して、未熟という状態らしいと、知った。
「〇〇ちゃん、未熟ちゃんと呼ぶわよん?」
「未熟でもなんでいいもんっ。欲しいもんっ。もんもんもんもん!」
「もんもん言われても売ってないのよ?」
「もおおおおああああんんん!!!」
あまり言うと、あの子が来るのに……と嗜めている方のエルフがうーん、と悩む。
「そうだわ、あそこにお菓子が惜しくてないている子がいるから、その子のところで駄々を捏ねさせればいいかもしれないわね」
と、エルフは駄々捏ね丸投げをした。子供に、小さな子供に。
「うわああああんんん買ってええええ!!」
「もう、やめなさいったら」
子の母親が宥めようとしているがうまくいかない。置いて帰るわけにもいかない。そんな母親の元にエルフが二名なんの気配もなくスッ現れる。
「え、きゃっ、え?」
母親は五度見ほど、見やる。彼女達はコスプレか、最近ずっと話題沸騰の本物のエルフという種族なのではと薄っすら予感させた。が、そんなことはつゆ知らぬという体でエルフ二名はよちよちと幼児に向かう。
二人して子供が駄々を捏ねる光景をジッ……と。ジッ、と。
ジッ〜〜〜。
立っていない、座っているのだが目線が駄々を捏ねる子供に近い。そのせいで子供は嫌でも視線に気付く。自分が人生数年の中でここまで見られた記憶などない、と、後々思い出すほどに、見つめられていた。
ジーーーーー。
「買って、おか、し、か」
段々、言葉が尻窄みになる。
「か、か……て」
「……」
「……」
エルフはよく喋る。それなのに二人は喋らず一挙一動を見逃さないという気概で、それらの気持ち一つで見つめているのだ。なので子供や親、しいては周りの客達も釣られて、無言でその異様な光景を見つめている。
「あ、あ、ま、まま」
ついに、子供の口から三大セリフの一つが出た。
一つは「やだ!」二つ目は「ママ」三つめは人によるので……割愛!ママ……ママ、と連呼し始める子に母親はどうしたものかと見ている。声がけをされたわけでも近づきすぎているわけでもなく、なにかされようしている気配もない。
精々、戸惑うくらい子を見ている。と思った時、母親は気づいた。片方のエルフが母親を見つめていることに。
「……ひ」
思わず悲鳴が喉から出た。
「欲しい」
子供がまた、言葉を出したのかと思われたがエルフから発されたことを知ったのは二つ目を言い始めた。
「ほじいいいいいよおおお!!」
「びゃあああああ!!」
子供が泣き出して、駄々を捏ねているエルフが子供と共に叫び始める。
「んもー、だめよぉ?無理なの、ね?」
「やだー!持って帰るー!親子セットで持って帰るうううう!!」
さらっと母親も加えられているところは、他のエルフと同じ性根をしている。
「私だって、持ち帰りたいのをグッと我慢しているの。皆もグッと我慢していて、ここへ来ているの」
ちなみにこのセリフは、母親から目を離さずに全て網羅している。駄々捏ねエルフは、一瞥すらされてない。
「うええん、この建物にいる人たち、みんなのほしいのぉ」
さらに、欲望を拡大させていく。まるで猫のように。ボス猫か?こいつら?と、リリシヤに言われるようなことを。
「私だって欲しいわ。建物どころか、地球のありとあらゆる人類をね」
こっちのエルフはスケールが大きくて、話にならない。
「時間いっぱいにこればいいのよ。滞在に制限はエルフは皆同じ」
「ずっとがいい!ずーっと住みたい!」
わあああんん!!と腕を振り上げる駄々捏ねダンス。
「そんなことをしたら制裁が加えられるってば、知っているでしょ?」
「リリシヤ、厳しい!もっと優しく緩くしてくれればいいのにいい!」
そろそろ、警備員が来る。
「だめ!リリシヤが、この世で一番人間を愛してるの!私たちなんて逆立ちしても追いつけないくらい愛してるの!そんなこと言ったら、私たちの人間ちゃん達の気持ちなんて、雨粒なのよ!」
警備員が来る前に、とんでもない言葉を発し出すエルフ。
「撤回して」
ふ、と三人目が前触れなく現れる。
「あ、リリシヤじゃない」
「リリシヤ、わたしは撤回しないもん!人間ほしーもん!」
「もんもんうっせえな」
機嫌が最大値なので、最初から言葉遣いがフルスロットである。
「人間好き、とか言うのはいいけど、私が好きとか言いふらすのも、言い出すのもやめて」
「そんなのどうでもいいもん」
「宇宙に飛ばすぞ未熟娘」
「未熟でもいいもーん!」
「リリシヤ〜、あっちにあるカフェコーナーに行きましょう。私と一緒に人間ウォッチングしましょうよ」
「こっちは話聞いてないし」
「リリシヤ〜、あっちにホットコーヒーあるんですって」
「リリシヤ!わたし、成熟するから滞在時間を延ばしてっ」
「リリシヤ〜」
「リリシヤ!」
「「リリシヤ」」
ユニゾンして聞こえる声。出なきゃよかったと、後悔したエルフは、フッと消える。付き合いきれないと早期に離脱したのだ。
「あ、リリシヤー、待って〜」
「え、帰るの?じゃあ、私も帰る」
残りの二人も同じように、地元に帰ることに。駄々捏ねエルフはそもそも、なぜここまでになっていたのか?それは、最近エルフの星に近隣の他所のエルフが、人間を気にしているせいでもっと人間がいなければもっと近くにいられないと思って。なので。もっと同じような人間がいないかと、探しにきたのだ。
買い物ができる店を出て直ぐにリリシヤは、エルフの住む集落へ戻っていた。
「はぁ、疲れた」
ちょっと、聞き捨てならぬ言葉が聞こえたから行かねばならなかった。行かなきゃよかったなと、後悔したが行かなかったら行かなかったで、それもそれでモヤッとする。
「人間!人間!私とあそぼ!」
駄々っ子エルフが人間のところに向かうのが見えた。人間達は慣れた様子で、エルフへ対応するのが見えた。
「こっちの人たちも、かなり慣れたか」
様子をちょいちょい見ていたが、これなら他のエルフを招くのもありかな。まだ隣や向こうにいる、違う土地にいるエルフ達が見に来ているのだ。気になるが、ここへ住むエルフ達が独占率が低くなるとガードしている。阻止したくて、エルフ達が動いていた。
それを悠長に眺めているが、いずれ垣根もなくなるだろう。