人間が常に赤ちゃん扱いされるような上位種に生まれたら自分だけおいてけぼり 作:苺のタルトですが
今日は特別な日なのでおめかししてやってきた。
「来たー。私はついに来た」
地球住みの時には来れなかったコミーケ。たくさんのサブカルが集まる祭典。楽しみだ。たくさん買うぞ。意気揚々と足早に進む。
「走らないでくださぁいー!え、エルフ?のコスプレ?ああ、お似合いですねえ」
ああ、コスプレだと思われている。まあ、それならそれでいーや。都合がいいからそんなゆるい思考で終わらせた。
そんなことより大切なことはこのイベントを勝ち抜くこと。こう言う時には能力を使わない。生のイベントに万能な力など、味のしないご飯を食べるようなものなんだから。
野暮なことなんてしない。並び、周りがざわついているのを聞きながら会場を回る。あのアニメは知ってる。行かねばと足早に動く。
「これから生放送でーす!」
「あれは、ゲームの発売とかを発表する放送!?嘘、動画でしか見たことない」
あまりの楽しさと嬉しさに胸がドキドキする。きてよかった。周りを見るとエルフのコスプレをした人間がたくさんいる。そういえば、今は空前のエルフブームなんだとか。
感想?頭がお花畑なんだなぁって……悪口に決まってるじゃん?
エルフなんて見たくないのに、同じ姿を見てここでも見せられるなんて苦痛以外のなにものでもない。逆にわー嬉しいなんて思うわけがない。嬉しくないに一票である。
何度も言うが人間たちはエルフを美化してるんだってば。言っても信じないんだよきっと。吹き飛ばしたいその思考。
いい加減、脳を停止させるのどうにかしたらいいと思うけど、なくならないんだろうなぁって。まあ、どっちでもいいっていうか、放置一択。
コミーケのところを一回りして、ジュースを飲む。疲れるとかはないんだけど、いっぱい飲むとなんだか会場の一員になれた気分になれる。いろんなものをどんどん買っていく。資金なんて問題ないから。
じゃんじゃん買い込む。太客と知れると周りの視線も変わる。特に企業。個人の人たちはあんまり視線がなかった。金銭ではなくファンとの交流を優先している。
しかし、そんなことは関係ない買いまくる。ファンとかファンじゃないとか関係なくね。何故かというと、エルフたちに配ったり配らなかったりするために。本棚でも置いておいたら勝手に読むから配らなくていいかな。
人間達の娯楽を考えてさまざまなものを買いたいかな。人間たちにも好みがあるし。それに、人間の一人にコミーケだけは心残りなのだと呟いていたから、多分連れていくだろう、誰かが。リリシヤだけは絶対になにもしない。
勝手に連れていくエルフが軒を連ねているのだから、必要が全くないし。ざこざこ買っては亜空間とエルフの本棚にバスっと入れる。エルフたちは何事かとそこに集まり手に取ると人間たちも惹かれるように本を手に取った。
それが二次創作とかコミーケな商品と知れると首を傾げる人や大喜びする人などさまざま。楽しそうだ。実に。
楽しければそれでいいよ精神は大切にしないとね。疲れちゃうし。ニヤニヤするわけじゃないけど心は躍らせておく。
作り出されるものはオリジナル。唯一無二の。漫画やアニメは今やエルフ達も楽しみにしているサブカルチャーだ。国も気合を入れている。
エルフの同人誌も多い。流石はコミーケだ。油断も隙もない。しかし、まあ嫌いじゃないよ嫌いじゃ。
人間だった頃はスマホで二次創作を楽しんだのだから。まさか自分が対象になるだなんて思ってなかったけど。
ひっそり大手や中小企業のステージを見ると知っている最新作のゲームが発表されていた。やった!と皆と一緒に喜ぶ。
ニコニコと周りもゲームの情報で大盛り上がりだ。エルフでも人間でもあるから、ゲームに対する熱量に歓喜する。
「新作が半年後に発売!」
「やったな!」
「楽しみだぁ!」
リリシヤも嬉しくてたまらない。幸せそうに楽しみだと笑みを浮かべている。
「リリシヤ、ねえ、楽しそうじゃないの」
「ん?まぁね」
「未来から取り寄せればいいじゃない?」
「待つのも楽しいって意味でわくわくするの」
隣にフッとエルフ一人が現れたが、気にしない。いつものことだ。それにここならばコスプレをしていると思われているので目立たない。
ただし、ここで誰かに抱き付くと多分、彼女は捕まる。ふん捕まえられるだろう。その時助けるわけもなく放置するけど。
「だから人間たちはこんなに喜んでいるのね。へえ!可愛いじゃないっ」
「助けないからね?知らないから!」
一応伝えても相手は気にせず人間に抱きつこうとして、隣の音の子の子たちの集団を赤面させていた。
エルフは美女美男だからそうなるけど、現金な話だ。しかし、エルフは年齢関係なく愛でるからどんな姿でも気にしないから、見事なバランスで保っている。
「うお!美女に抱きつかれたっ」
「え、なんで?」
「羨ましいっ、え、コスプレコピーだろ?」
「待て、普通に本物臭くね?」
男の子たちは赤くなる。しかし、冷静になる皆に笑いが漏れそうになるが、向こうにこちらは感知できない。
本物だから嗅覚は良い方だろうよ。内心第三者視点で窺っていた。彼らは本物かどうかを見極めようとするが、本物のエルフはその思考さえ知っている。
「君たち他にいるかしら?呼んでくれないかしら!皆で集まって遊びましょうよ!奢るわよっ」
エルフの絶え間ないトーク力にちょっと戦慄する面々。変態かエルフ本人なのか境目がわからないからなあ。
超他人事で見ていると彼らは戸惑った顔でエルフから離れようとしていて、エルフがこちらへ振り向く。こっちを見るなと目を逸らした。
「離れようぜ」
「おう」
「リリシヤ、ダメみたい」
今回のエルフはちょっとだけ控えめな性格らしい。
「別に、他のグループにしておけば」
彼らでなくとも良いのではと提案しても、彼らがよかったのにと落ち込む。落ち込むと言っても一瞬だけ。
それを眺めながらあっちにしとけば良いよ、と男たちがグッズを見せ合い熱く語り合っているテーブルを指差す。
「あらっっ、かわいいっ」
ハートマークを浮かべて一瞬でターゲットを変更した、コミーケエルフはテーブルに移動すると彼らに先ほどのテンションで話しかけていく。
そうである、エルフらは別に人間ならなんでも有りなのであった。
その前に話しかけられた彼らは、エルフの美しさを語りながら心はゲームについてばかりで美しさよりゲームのことで盛り上がっていて、すぐに忘れていた。
美しさが良い人たちもいるかもしれないが、ここはコミーケ。サブカルの頂点イベントだ。別のターゲットになったその相手たちは、美人すぎるコスプレヤーにドギマギしている。
コスプレが美しい人はいるが、エルフのコスプレはキャラというより種族のものなので美しいと思う時点で、元の素顔がわかりやすい。
作りが地球の遺伝子構造からして違うのだと思う。わらわら周りに集まる、カメラを持つ人たちがエルフに撮影してもいいか?と聞いている。
よくコスプレイヤーを撮っている人たちだろう。コスプレ扱いなのか本人なのか疑惑の扱いではあるが、どちらでもいいみたい。
知り合いのエルフはやってきた者たちを拒まない。いいわよ!と元気よく答えるのをリリシヤは背中で聞いて、買うべき本を買いに足を進めた。
「あの!写真撮影いいですか!」
「無理ですすみません」
歩くたびにこの言葉を聞かされるから速やかに家に帰宅して、買った本を読みふけたい。