人間が常に赤ちゃん扱いされるような上位種に生まれたら自分だけおいてけぼり   作:苺のタルトですが

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2話エルフ地球に

やってきましたリゾート島。

ぞろりぞろりと団体が到着早々、そわそわと体を揺らしています。

 

「お約束五箇条、もう一度復唱」

 

団体の指揮系統を統括するのは1人のエルフ。

白い方ね。

ダークエルフも居る。

 

ここはリゾート島なんかじゃない。

地球である。

 

地球のここはリゾート地じゃない。

 

エルフ達がずっと人間島人間島と言い放つのをエルフ1冷静な女エルフことリリシヤが眺める。

相変わらず雑音が小うるさいエルフ達であった。

 

こんなに冷たい対応をしているのは単に己が前世人間という存在だからだ。

元人間に人間を愛でる感性は最後までついてこなかっただけだ。

 

他のエルフ達が自分たち以外の存在を好きすぎるってだけの過剰反応。

見ているだけで暑苦しく、見ていられない。

ただでさえ構いすぎるのを見るのは同種族だとして、同じ感性を覚えると言うのに。

 

ただただ、暑苦しいことこの上無し。

見るのももうウンザリ。

この企画をやったのはあまりにうるさ過ぎる人間愛の暴走がデシベル騒音になっていたからだ。

 

前にちょーっと人間の映像を見せたらあっという間にこの生命体はなんだ!?と可愛いの声に埋め尽くされて溺れそうになった。

映像だけでメロメロになった。

人間が動物の赤ん坊にメロメロになるみたいなアレだ。

 

「触らない・抱きつかない・叫ばない・連れて行かない」

 

五箇条の最後を忘れている。

重複しているということは重々理解しているが、意味は同じでも必要なのだ。

 

「住み着こうとしない」

 

「「住み着こうとしない」」

 

この地球に住み着いても良い、なんてなった日には、全員異世界からお引越ししてもおかしくないくらい。

最後はかなり言い含めておかねば。

私は、まるで遠足に行きたがらない子供のように、異世界まで引っ張って帰りたくはないんだ。

 

映像だけで、毎日擦り切れるかと思うほどへばりつくように見ている彼が、現物を見たくなるのは当然のこと。

 

エルフ達は私含めて、全員が食物連鎖頂点と言っても良いほどの高スペックなステータスを持っている。

 

そういう観点ではなんの問題もないのだが、このままでは大量に誘拐してきそうな気迫を感じて仕方なく地球に向かったのだ。

 

先ずは異世界人として地球人と会談をしたりするために、コンタクトを取ろうとして向かおうとしたら、第六感が働いたらしいエルフ達に自分たちも行くと駄々を捏ねられた。

 

正直捏ねたところでなんとも思わず無視して行ったら力技で全員付いてきた。

 

魔法を使えるからなんでもありなんだよな、エルフ。

と、愚痴を言いたくなる。

先ずはどこに行くべきかと悩む。

こんなに美男美女の集団が集まっていて目立たないのは此処がまだ樹海の地だからだ。

 

取り敢えず、人間が沢山いるところにエルフという未知の生物が突然現れたらハザードになるので、常識的に此処へきた。

 

「ちょーっとおー!みてみてぇ!野生の赤ん坊見つけたわよ!」

 

と、担ぎ上げてきたのはきょとんとしたまま運ばれている幼女。

 

「まさかの五箇条のうち二箇条を早速破るとは……耳バットするべき?」

 

一人で呟いているとみんながデレッデレの顔で色々質問した。

どうやらこの樹海で迷子になったらしい。

その樹海度的に迷子になったら一発アウトな深さの位置に居る私達。

 

分かったことはやはり迷子。

そして、数キロ先に子供を探す声。

うん、完璧に探されている。

 

「かんわいい。ふふっ。ツンツン」

 

一人を皮切りにツンツンし始める。

この人数がツンツンしたら大変なことになるが、手加減されており平気そう。

 

あと、普通に触るな。

五箇条の触らないを破るな。

 

「ノータッチ!」

 

叱ると彼らは名残惜しそうに子供からちょっと離れる。

若干、皮一枚くらい。

意思弱いな。

 

「さっさと届けてツアー再開するよ」

 

「そんなっ、折角野生の人間を捕獲出来たのにぃ」

 

「野生の赤ん坊には親がいるの」

 

「娘さんをくださいって頼んだらくれるかな?」

 

「伝家の宝刀という、私の拳を丸めてそのまま殴りつけるやつやられたいの?」

 

結婚式の挨拶じゃないんだから。

アホの言動は無視してさくりさくりと樹海を移動。

 

エルフ集団にパニックにはなったものの、子供の迷子を告げて親を探すと慌てて親達が出てきて子供を抱き上げる。

 

そして、親子の感動場面に水……ではなくエルフがさらりと三人親子を包み込むように突き刺さっていた。

端的に言えば、纏めて抱きしめていた。

場違いが引き起こされている。

 

抱きつく、触る、二つに抵触していることを確認して指を振ると、驚きに硬直せざるを得ない親子からエルフを引っこ抜く。

 

「ふれあい禁止」

 

「あ、あ、ああああ」

 

涙を流すエルフに引いた顔をした人間達を横目にツアーは樹海から遠く離れた場所へ向かう。

そこは首相官邸。

今此処に居るとは限らないけど、アポイントは最低取れるかなって。

 

「きゃー!見て見てっ、人間よ!」

 

「ここは楽園だな」

 

「持ち帰りたーい」

 

「こっそりならバレないかも」

 

「そこ、バレてる」

 

指摘して注意した。

はぁ、面倒になってきた。

そもそも彼らは同行予定じゃなかったのに。

これもそれも彼が無理矢理押し通したからだ。

 

スマホを大量に向けられている。

どうやら、エルフのコスプレだと思われている。

まあ、確かに本物とは思わないよね。

 

ということは、どうやって信じてもらえば良いのだろう。

途端に、なにもかも面倒になった。

どれほど遠回りすることになるのか、目に浮かんだせいだ。

 

「門前払いされる」

 

首相官邸に着くが、やはりどうしたものかとぶち当たる。

 

悩んでいると、建物を透視して首相や幹部達が勢揃いしているのを知ったエルフが皆に教えるので私も透視して中を見る。

 

「総理、どうするのですか!早く指示を!」

 

「待ってても落ちるだけだ!早く言え」

 

なにか慌てている。

見ているものを更に鮮明化させると映像は宇宙を映していて、地球と小さな何かが近付くことを窺えた。

 

「隕石、到達、14時間」

 

地球と隕石がここに落ちてくるらしい。

 

「え?私の可愛い可愛い人間ちゃん達が減っちゃうの?」

 

都市は最悪滅ぶのではないかという大きさ。

それを淡々と説明すると帰ってきた一声だ。

気にするところおかしくないか?

 

「リリシヤ?」

 

甘ったるい声にウンザリ。

 

「お願い。ここに入るのよね?」

 

「まあ、うん。今はまだ実績ないからほっぽり出されておわり」

 

人間が沢山いる施設としか思ってなさそう。

たっぷり間を置いてこちらを見つめるエルフ達の目。

目、目、目。

それに見つめられたのちに大きなため息を吐き出す。

 

「しっかたない。はあー。わたしはどっちでも良いんだけど、誰かあの隕石をどうにかしたい人は居る?」

 

あの隕石程度、ダンボールが棚から落ちてくるレベルでどうにでも出来る。

誰かしたいエルフは居るかなぁ?

因みにここぞとばかり活躍すると嫌というほど人に囲まれまくる未来。

そう付け加えるとエルフ達がシュバッと手をあげる。

 

そういうと絶対に全員手を上げることは理解していたので然もありなんだ。

首相官邸を見るエルフ集団はスマホにバンバン撮られながらも、何食わぬ顔で佇んでいた。

これぞ上位種たる余裕さだ。

 

全員がやりたいのならばやればいい。

一人だけにしろだなどと一言も言っていないし。

面倒なことになったなと1人愚痴る。

これをエルフ達がやったことをまず人間側に認知してもらう。

そのためには、相手にまず説明をしなければならない。

 

干渉する予定でなかったのにどうしてこんなことに。

 

七面倒でもある。

リリシヤはもう隕石をどかして人間に纏わりつかれることを夢想している彼女達を尻目にイラっとなりながら、門の前に立つ門番に手紙を預ける。

 

大体、私たちはエルフ、私たちは魔法を使える。

隕石を退かせる。

どの言葉も信じてもらえないに決まっている。

信じるのはリアリストではない部類の思考だけ。

そんな人がたまたま首相官邸にいる訳がない。

 

というわけで、先ずは相手に反論する余地を無くさせる証拠を先に作っておくことにした。

 

手紙を先に渡しておけばマッチポンプだと思われる事が減るかなぁって。

楽観的な結果にはならないかもしれないけど。

 

それに、全員から敵意を向けられても、それさえデレデレして受け取るのが彼らだ。

 

同族だと思われたくないな。

 

そう思いながらイヤイヤ、仕方なく証拠の為に手紙を認めて門を守る守衛に渡すと、怪訝な顔でこちらを見てから手紙を見る。

 

結果、イタズラな手紙を寄越してっ、という不審で不快で、最悪な相手を見る目を向けられたとさ。

分かっていた。

 

ので、エルフ三人ほど盾にしておいた。

一人でのこのこ行くわけないじゃん。

 

嫌悪さえ感じられる表情にエルフ達はといえば。

 

「な、見てよっ。私を見てるわ?」

 

「おいおい、ぼくを見てるんだ。決まってるだろ」

 

「違うわっ。こっちと目が合ったのよ。あの鋭い目を見た?なんて可愛いの」

 

憎悪の顔をモノともせず、可愛いと言い切る感性は永遠に分からない。

 

元地球人兼元人間の私には、信じて欲しいのに信じてくれない人間不信を加速させる場面でしかないよ。

 

守衛は可愛い可愛いと叫ぶエルフの集団にビビり出す。

ただでさえ美男美女の風貌に可愛いと言われていれば怖くもなるわな。

 

それと、守衛の制服にも着目し始める。

何をする人なのかしらと問われるので、この建物を守るための仕事をするんだと軽く説明。

 

全員がショックを受けた顔をする。

 

「仕事……」

 

「守る……」

 

「嘘ですよね?」

 

「いえ、守ってます。無断で入ったら彼が捕まえに来ます」

 

と、追加で述べれば彼らは何度も何度も守衛を見続けて涙さえ流す者も出始める。

 

どこに泣く要素あった。

 

「こんなに、か弱い存在が同族を守るというの?」

 

「涙が止まらん」

 

「止めろ」

 

うっかり本音が出たけど口を閉じて言わなかったふりをした。

誰も私のことを注目してないから気付かれずに済んだ。

 

号泣し始めたエルフ集団をさらに怖くなったのか、腰に付いていたトランシーバーに手をかけて話し出す相手。

 

その間にちゃっちゃと済ませていこう。

結局、私以外のエルフが人間に群がられる事を夢見て、直ぐに隕石の脅威を取り除く。

 

首相官邸では突然シグナルが消えて、混乱が生じている。

私はエルフを代表して、今隕石を消したので、それを中に入る対策室に居る人達に伝えてくれと、丁寧に伝言を頼む。

 

それから1時間待つ。

私は暇で暇で溜まらなかったのでお金を手にコンビニに行き小説を購入。

他のエルフ達は人間鑑賞に忙しそうで、触りたそうにしている。

なんというか、そんなに触りたいのかな?

 

不気味な心境としか思えない。

思うに、やはり価値観が乖離しているよね。

相容れないけど、そこを受け入れて私は距離を保っておけば良いのだ。

 

「リリシヤぁ。触って良い人間どこよー。早く触りたいのだけど?」

 

「さぁ?知らん。触ったら警察来て囲まれるからダメだからね」

 

「警察?」

 

「守衛の人よりもさらに肩書きが強い人」

 

他にも説明の仕方があるにはあるけど、彼らにはこれで十分だ。

 

「え?可愛いが増えるの?」

 

なんて勘違い、とも言えないけど、厄介でめんどくさくなるので止めた。

面倒なのは私ね。

 

腹が立つほど嬉しそうになにかやらかしそうな面々に再度キツく言い含める。

 

五箇条を思い出させると、彼らは特に五箇条を考えている顔をしてない様子で首相官邸の中に入る官僚達を出待ちのファンのように待っている。

 

こういうの有名人の映像とかで見たことあるので、エルフ達も同じことをしたかったのかもしれない。

真似をして、是非とも御尊顔を近くで見物したいということなのだろう。

 

「首相の名前聞いても良い?」

 

何故気になるのだと怪訝に思い、告げていけばエルフの一人がうんうん頷く。

 

「りょーちゃんだな」

 

名前をもじったあだ名をつける。

それ、本人に言ったら絶対にギョッとするよ?

やめた方がいいのだが、既に全員にあだ名呼びが定着してしまう。

もう考えるのやーめよ。

 

「りょーちゃーん!私たちが隕石をポイしたんでちゅよー!」

 

首相に赤ちゃん言葉ヤメロ。

相手に対して気を遣っているのではない。

私のお腹の腹筋部分が反応して、笑いそうになったからだ。

 

よちよち言葉もやめよう。

皆人間達にそれぞれ声をかけ出す。

五箇条勢いで破るな。

エルフ達の長いお耳を魔法で引っ張って思い出させたら、漸く静かになる。

ここはアイドルの舞台じゃないっての。

 

りょーちゃんこと、日本国首相が大量のシークレットサービスに囲まれて出てきた時、エルフ共の声援及び黄色い声は最高値を更新。

 

煩い、黙れ。

 

それさえも一人とて耳に入ってないだろう。

耳を塞ぎ音を遮断。

 

「首相がこちらを」

 

どこかの誰か、多分官邸の職員らしき相手がこちらに手紙を差し出してくる。

謎のエルフ集団と話したくないから手紙にしたんだろう。

問題は皆が貰いたがっているということ。

 

これはリリシヤが取らなきゃいけないのかな。

取りたくない。

もうそれ、呪いの手紙の域。

 

エルフ達が互いの行動を牽制し合い、陽のエネルギーの筈なのに隠のエネルギーがエルフ達の間を漂い始めた。

そうだ、指名しよう。

 

良くこちらに質問してくる女エルフに取りに行かせる。

 

「やっだぁ!指先触れちゃったぁ」

 

その時、指先が触れたのか、触ってしまったことに大変喜んでおられた。

どうでも良いから、はよ読め。

 

手紙の内容を声に出して読むのをリリシヤも同じような姿勢で聞く。

それを纏めると「こちらに来て話を聞かせて欲しい」とのこと。

 

こっちはそれでいい、とでもいうかと思っていたが、やはり彼らが暴走しかねないので入りたくない。

 

絶対に赤ちゃん言葉で話しかけてしまう。

 

人間の彼らは立派、というか成人した存在なので良い気持ちにはならない。

 

悪意もないと理解してもらうとはとても難しいとリリシヤでも流石に思うし、エルフ達を嫌な目で見られたくない。

困ったなぁ、と眉を下げる。

 

それを眺めたらしいエルフ達は却下されてしまうと予期したのだろう、頼んできた。

いや、頼まれても。

 

もう投げやりになっても許されるんじゃないだろかと、半目。

責任なんて取れないとため息を吐く。

エルフ達はそれを空気で感じ取り、ゆっくり相手を刺激しないように官邸へ雨に濡れたチラシのように進めた。

 

カオスになるぞ……。

ごくりと唾を飲み込んだ。

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