人間が常に赤ちゃん扱いされるような上位種に生まれたら自分だけおいてけぼり   作:苺のタルトですが

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7話鹿とフリーハグ(フリータイム)

現在、地球のとある県にて鹿せんべい片手に、鹿にせんべいをあげていた。

 

今日は一人で観光。

 

バレて囲まれるのなんて真っ平ごめん被るので、人間に擬態中。

 

わざわざエルフという格好で行くなど、囲んでくださいと大声で唱えるのと変わらないからね。

 

人間に魔法云々は見抜けないのでバレることはない。

 

未来的にバレる可能性はない。

 

本当にない。

 

万が一そんなことになったら、リリシヤがそのシステムを消し去る。

 

因みにタイムスリップなどもおちゃのこさいさい。

 

タイムパラドックスさえ起こさずにできる。

 

「まあ可愛いわ?私達が作った飴を食べなさい」

 

「美味しいわよぉ」

 

「可愛い!ほら、これはうちで作ったせんべいよ」

 

「きっとまた食べたくなるものなの。ねえ、お金なんていらないから近くに来て感想を聞かせて?」

 

幼女に大人が誘惑を振り撒いているとなればリリシヤとてソイツにキックをやろう。

 

なんせ、エルフは法的に存在しないのでやり放題だからだ。

 

泥でも汚名でも被っていいとは思う。

 

けど、美男美女エルフ達が老若男女へ声をかけている場合、司法の人間達とて取り締まれない。

 

おじさんという歳の男性が誘われていて、嬉しいという行動よりも困惑が優っているらしく二の足を踏んでいる。

 

「ほら、食べてみて。美味しいのよ?私達とお話ししましょう?」

 

「あ、あの」

 

「あら、どうしたの?」

 

三十代ほどの女性がオロオロとしている。

 

「かわいいわぁ」

 

浄化されそうな顔をしているエルフを湖に落とすのもこちらのやるべきことなのかと、つい考えてしまう。

 

「こっちに来て」

 

「え、あ、あの」

 

「ほら、ね?」

 

などと年上のおねえさんぶってるけど、その実態はただの人間愛好家だ。

 

決して下心なしではない。

 

そうして手を引かれてベンチに座らされかけている男はドギマギしながらせんべいをもらっている。

 

言葉通り甘やかされているので、周りの目も気になるのかあちこちチラッと見ていた。

 

気になるのならば去ればいいのに。

 

幸せそうなので、手を出す基準ではない。

 

(勝手にしてろ)

 

こちらはひっそり人になってせんべいをあげているので、人間側から監視は受けない。

 

対するこれでもかとわかりやすいエルフ達は監視されてようと、その監視される視線さえうっとりしている。

 

流石は人間に溺愛をしている彼らだ。

 

真似したくない。

 

嫌なものを見る目で彼らを横目で観察して鹿にご飯をあげ続ける。

 

やがて、それも手元からなくなるので、次は何をしようかなと立ち上がった。

 

エルフ達はどうしてるかな、と。

 

「フリーハグ、フリーハグよ」

 

「HAAAAAA!?」

 

思わずローマ字に変換されてしまう驚愕の光景。

 

立ち上がってくるりと向くとエルフフリーハグと書かれたプレートを横に立てて、無闇に人間達にキラキラした目を振り撒く者ども。

 

「ひゃあ!」

 

老女がフリーハグの領域に入って驚いている。

 

「まあ!人間が私のところに来てくれたわ」

 

「えー、いいなあ〜」

 

隣にいるおかっぱエルフが羨む。

 

羨むより先に離してやれや。

 

「かんわいい〜、私のうちに持ち帰りたーい」

 

「あらあー、リリシヤにぃ、メッてされるわよぉ?」

 

そのリリシヤさん近くにいますが。

 

わかってて言ってそう。

 

絶対ここにいるってわかってて言ってるな。

 

「あ、あのう、もしもし、あのぉ」

 

老女をそろそろ解放してあげてよ。

 

困ってるのに。

 

「リリシヤ怒ってるかしらー」

 

「あの顔は時間切れね」

 

こちらを顔で判断している気がする。

 

エルフ達は老女を解放し、新たなる獲物を探す。

 

その獲物はお酒の缶を片手にした、顔を赤くしてエルフを邪な目で見ていた男。

 

ヒゲは剃られておらず、清潔感はお世辞にもないと言える。

 

そんな相手に彼女達はやはり区別などせず懐がデカすぎる胸を貸す。

 

「フヘェ」

 

そうだね、大体初めの五分は喜んでいたし鼻の下を伸ばしてたね。

 

「ムー、ムー」

 

しかし、それが三十分から一時間。

 

「ングググゥ!」

 

大体三十分ずつ増えるごとに顔の色が青くなっていく。

 

「フギギギ」

 

遂に抱擁が三時間を超えた頃、男は失神していた。

 

「モガモガモガガガガガ」

 

ず〜っとぎゅうぎゅうしていたら、だれだって絶えきれずにそうなる。

 

「ゴフ」

 

という謎の呻き声を残していく。

 

そして、こちらをゆらりと見てから注意されないことを知り、酔っ払いの男とリリシヤを交互に見てはなぜ、注意されないのだろうかという不思議そうなカンバセを呈していた。

 

「え、リリシヤ?」

 

そんな男のために貴重な鹿の餌やりや、のんびりな時間を消費するつもりはハナからない。

 

エルフをただの妖艶美女と侮るやつに、渡す優しさはどこにも存在してはいないのだ。

 

「どうしたのかしらぁ?リリシヤがだめだって言いにこないの」

 

仲間らがどういうことかと、話し合っている。

 

地球の人なら、選り好みとこちらの気持ちをわかってくれるかもしれない。

 

老女と酔っ払いの違いは、この世の銀河よりも深い。

 

その後、酔っ払いの男は風邪を引かないようにとかけられた毛布に包まれ、木の幹に立てかけられていた。

 

それは殺人事件を隠蔽する現場に見えて、不覚にも笑った。

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