とある奴隷の物語   作:mshr

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1話 2番目のご主人様に買われるまで

私は生まれた時から奴隷だった。

 

麦や野菜を育てる農園が私の生まれた場所だった。

 

私たち家族以外にも奴隷がいた。

 

狼人族、猫人族、兎人族、共通しているのは獣人だったことだ。

 

生まれたのは馬小屋の中だったそうだ。

 

奴隷の出産なんてそんなものだ。

 

他の奴隷や弟や妹が生まれた時も同じだった。

 

最も、住んでいた家も馬小屋もそんなには変わらない。

 

麦藁の敷かれた1部屋だけの家に何家族も寝ていた。

 

物心がついた時には働かされていた。

 

最初は草むしりや、害虫の駆除。それでも小さな子供の時代には重労働だった。

 

働きが悪いと、鞭で打たれ殴られた。食事を抜かれたこともある。

 

おなかが空く子供時代にただでさえ少ない食事を抜かれるのはきつかった。

 

食事はここにいる奴隷全員分を一括で作っていた。

 

基本的にはクズ野菜の入った麦粥だ。

 

何時も何時も、休みたい、いっぱい食べたい。ただそれだけを思っていた。

 

年を取る毎に与えられた仕事は増えていった。

 

徐々に要領よくなり、鞭で打たれることも殴られることも減った。

 

少しでも休みたい、そう思う私は効率よくやることを覚えた。

 

それでも、鞭で打たれ、殴られているものを助けようと思うことは殆どなかった。

 

例外は家族だけ。それくらい疲れていたのだ。

 

何時かこの境遇から抜け出したい。そう思っていたが、どうすれば良いのかすら解らなかった。

 

ある日、主人や普段偉そうにしている奴隷が武器を持って走ってきた。

 

殺されると思い身をくるめた。

 

彼らは私の横を通り過ぎていった。

 

そのまま見ていると、大きな蜘蛛を集団で武器を使って殴っていた。

 

私が初めて魔物を見た日だ。

 

10歳になった時、私の首と手に枷がつけられた。

 

その日から魔物が出た時に盾を持って戦うようになった。

 

集団で戦うので私が魔物の攻撃を盾で受ける事は殆どなかったが

 

徐々に胸が大きくなり、周りの私を見る目が変わっていった。

 

体を拭く時、服を洗う時、朝の起きて服を着るまでの間に私を見ている気配を感じた。

 

ある日、私の方に近づく気配を感じて目が覚めた。

 

三歳年上のアージュンだ。

 

悲鳴を上げると両親や部屋の大人達に取り押さえられた。

 

次の日、ご主人様や偉そうにしている奴隷…一番奴隷に殴られた。

数日したら、アージュンは居なくなった。

 

ご主人様に番で認められていない相手に手を出すのはご法度だ。

 

逆に言えば、自分が気に入らない相手でもご主人様に命じられたら番になるしかない。

 

しかしアージュンはどうなったのだろう。

 

15歳の秋の繁忙期が終わりを告げたころ、私は家族から引き離された。

 

後で売られたのだと知った。

 

売られた先では環境が一変した。

 

言われるがままに働いていればよかった環境から、徹底的にしつけされた。

 

ご主人様に対する態度、口調、ブラヒム語、その読み書き…100より大きい数がある事を知ったのもこの頃だ。

 

これまでとは違う意味で大変な日々。

 

パンを食べられるようになった。

数日に一回はお湯で体を拭けるようになった。

以前より待遇が良くなった…雑役奴隷には戻りたくはない…。

 

2つ季節が変わったころ、商館の主人であるシラー様の下に連れられた。

 

「ヨシフどう思う」

「微妙ですね。猫人族ですし」

「お前もそう思うか、教育はここまでだな」

 

この時は解らなかったが、ここで夜伽などの妾教育をするかどうかを判断していたようだ。

 

そこから何人もの人に見られたが、なかなか私は売れなかった。

 

何の特技もない猫人族の娘。雑役奴隷としては高く、かといって妾にする程ではない。それが私の評価だった。

 

これらの事は同じ部屋の奴隷から聞いて分かったことだ。

 

同じような価格なら元平民の娘から売れていく。

戦闘奴隷なら経験者の方が売れていく。

 

売れないと徐々に待遇が悪くなっていくのがわかる。

 

秋になり、もう直ぐ冬になろうと言う頃に私は売れた。

 

教育期間も含めれば1年以上売れなかったことになる。

 

私を買ったのは探索者らしい。

 

マティン様、新しいご主人様だ。

友人のバルタ様と迷宮に入っている、そう教えられた。

 

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