とある奴隷の物語   作:mshr

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11話 借金

6層は長かった。7層は人が多く、稼ぎが少なくなることが予想されたためだ。

 

1年以上6層だった。

 

今でも10日に一回は訓練がある。

 

この日は何と木刀ではなく迷宮内で使うハンマーをそのまま使う事になった。

 

「よく見ていろ」

 

バルタ様はご主人様にハンマーを振った。

それを盾を使って見事にいなしていた。

 

「7層はミノだ。かなりの勢いで、突っ込んでくる。それを防ぐための訓練だ」

 

とんでもないことをやらされるが、何時もちゃんと意味があるのだ。

 

「バルタは同じところに振ってくれる。きっちり防げ」

 

盾で受け止めると吹き飛ばされ体が痛み腕がしびれた。

 

ファティエも同じように吹き飛ばされた。

 

「まともに受け止めるとそうなるんだ、ミノに吹き飛ばされるぞ。

もう一回よく見ていろ。」

 

見ていると、まっすぐに受け止めるのではなく斜めにして方向をそらす形で軌道をずらしていた。

 

何度も練習して飛ばされなくなった。

 

「ミノはこんな攻撃をしてくるのですか」

 

ご主人様に伺ってみた。

 

「三層までは別の迷宮だったんだよ。四層の中では組み合わせが楽なここトラッサに来たんだよ。そこの一層がミノだった。ミノは突進してきて中々の衝撃だったよ。」

 

「そこはどんな魔物が出るのですか?」

 

「一層がミノ、二層がナイーブオリーブとここまではよかった。三層がスパイスパイダーでな、これは不味かった。毒持ちの怖さを知ったよ」

「俺らが食らったわけではないぞ。別のペアが戦っているのを見ていたら毒になってよ。それで知ったって訳だ。」

「あれを見る前に食らっていたら不味かったよな。二人では戦闘中に相方に薬を飲ませられないんだよ。三層は別の迷宮に変えた訳よ。」

 

「そのペアは結局どうなったのですか?」

 

「助けを求めてきたからな。毒消を200ナールで飲ませてやった。見知らぬ男とキスだ。もっと吹っ掛けるんだったな。」

 

「ご主人様なら攻撃を受けないのではないですか?」

 

未だに一回も攻撃を受けた所を見たことがない。

 

「おいおい、俺の事を忘れてないか?」

 

「ご主人様はスパイダーを吹き飛ばていましたが」

 

ファティエがそれに答えた。

 

「そうは言ってもよ、二匹も出るんだぜ。いくらマティンが引き付けてもよ、絶対ではない。毒持ちは盾無しで相手にするには意外と大変だ。お前たちが引き受けてくれていたからトラッサでは大丈夫だっただけだ。」

 

「トラッサは1層から3層が美味しくないからな。初めて潜る迷宮としてはトラッサはないな。」

 

「そうなのですか?」

 

「一層のグリーンキャタピラーの糸は安いから、成りたての鍛冶師でないと入らないんじゃないのか?それも数匹倒せば良い訳だし。ボスは糸を吐いてくるから、一人で入って捕まったらそこで御終いだ。

二層は今度は固いときている。

動きは遅いから相手にはしやすいけどな。

逆にハンマーの相性が良い敵だな。

三層はコボルトだ。

最弱だけれども、ドロップアイテムの売値がな。

と言う訳で、トラッサ4層からがメインだ。

知っていると思うがボスは眠らせてくるから薬代がな。

ボスとは4層を突破する為の一回しか戦ってないだろう?」

 

「そういえばトラッサから移動されないのですね。」

 

「借金をシラー様に返さなくてはいけないからな。借金が無くなるまではトラッサで戦う事になるな。」

 

「私を買った借金は後いくらでしょう?」

 

「後5万ナールだ。頭金が5万ナールで最初は借金が17万ナールくらいあったからな、かなり返せた。」

 

「ファティエは後4万ナールだ。頭金が4万ナールで最初の借金が14万ナールくらいだな。」

 

私達は借金が無くなり更に生活が良くなることを期待した。

 

 

最後に、ご主人様はハンマーを持ったバルタ様、木刀を持ったファティエ、私の三人からの攻撃を捌いてみせた。

 

いつも見ているけれどもやっぱりお強い。

 

ご主人様がおっしゃるには、多対1でも同時に攻撃してくることは殆どないから、攻撃順が分かれば対処できる。

また、位置取りや仕草で自分の考えているように相手を動かして攻撃をさせる。

そうすればそれほど難しくはないのだとおっしゃられる。

 

私も、わざと隙を作る事で攻撃を誘導する事は出来るようになったが、流石に複数の相手に対して行うのは中々に厳しい。

 

「本当にお強いです。」

 

「それ見ろ、俺は弱いだろ、マティンは横やりがあってもハンマーを捌いちまう」

 

「バルタは知っているだろ。上には上がいるよ。」

 

「親父たちだろ。よく知ってるよ。」

 

「お父様ですか?」

 

「そうだよ。親父は冒険者でな、それで冒険者を目指すようになったんだ。バルタの父親も親父のパーティーメンバーだったんだ。それでな。」

 

「冒険者ですか。今はどうされているのですか?」

 

「荷物運び兼、町の用心棒兼、農家だな。10日に一度くらいは迷宮にも入っていたけど、どうしているやら。」

 

「冒険者が農家ですか?」

 

「町って言ってもトラッサみたいな大きな町ではなくて近隣の村の集積所でな。町の御用聞き商人に頼まれたものを運ぶのが主な仕事だ。農家と言うより空いた時間に野菜を作っているというのが実際だな。」

 

それからご主人様やバルタ様の家族のお話を伺った。

 

「冒険者になりたいと言ったら、迷宮では生き残ることが大切だ。更にパーティーリーダーは魔物の攻撃を引きうけ、その上で指示を出すんだ。って言ってぼろぼろにされたよ。バルトの親父もそうだけど深層に潜るような連中は俺たちよりはるかに強いんだよ。」

 

ご主人様の強さはお父様にあるらしい。そして私の初めての日の私のようにボコボコにされた経験もおありなのか。

私もご主人様のように強くなれるのだろうか?

 

数日の訓練の後に私達は7層に入った。

 

 

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