とある奴隷の物語   作:mshr

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14話 恩人

いつものようにここトラッサ迷宮の7層で戦っていた。

いつものように戦い、いつものように終わる。そう思っていた。

 

最後に残ったミノに油断したのかもしれない。

ほぼ、戦闘が終わりの段階で壁側に押されてそのまま吸い込まれてしまった。

 

魔物の部屋だ。人生が終わった。瞬間的に恐怖で身が竦んだ時に、「ご主人様」そう言いながらアナンタが盾を突き出し自分の前に出てきたのが見えた。

 

硬直した思考と体が動き出し、若干遅れたものの全員が戦闘に突入した。

 

最初にやられたのはバルタだ。

ハンマーを振り回す関係上どうしても隙ができる。

そこを突かれて攻撃を受けていた。

スパイスパイダーだ。

おそらく毒だろう。

バルタが倒れたのは覚えている。

 

次にバルタの奴隷ファティエだ。

おそらくバルタが倒れたことで動揺したのだろう。

道連れで殉死する。そう考えたはずだ。

実際にはファティエもアナンタも死後相続になっているので死ぬことはないのだが…その動揺を突く形でミノが突っ込んできた。

ミノに体勢を崩された後に立て続けに攻撃を食らっていた。自分にもアナンタにもファティエを助ける余裕はなかった。

 

そこからは無我夢中で戦った。どれくらいの時間戦ったのかは覚えていないがエスケープゴート以外を片付けた時に疲労で崩れてしまった。

 

「ご主人様」

「疲れただけで大丈夫だ。あちこち痛むがアナンタは大丈夫か。」

 

全て捌いたつもりだがあちこち痛む。どれだけの時間やりあっていたんだ?

 

「私は大丈夫です。薬はご主人様がお使いください。」

「後は逃げているエスケープゴートだけだよな。特にスパイダーがいると危険だ」

「こちらに向かってくる魔物はおりません」

「そうか、薬を飲んだらエスケープゴートを片付けよう。」

 

私はアイテムボックスから薬を取り出しながらアナンタに声をかけた。

半分、はアナンタが遠慮するから1/3をアナンタに飲ませ2/3を自身が飲んだ。

水が美味しかった。喉を潤すと共に自分が生き残ったことを実感させてくれる。

 

逃げるだけで攻撃してくることがないエスケープゴートを倒すのはもはや作業だ。

やられようがない。

 

とは言え結構な時間を消費した。

 

全てを片付け見渡すと、バルタとファティエ以外の装備品があるのを確認した。

 

かなりの量があった。

人の多い7層だ。自分たちの前にも戦って全滅したパーティーが居たのだろう。

そう言えばすぐにエスケープゴートは攻撃してこなくなった。

そもそも最初から逃げていたエスケープゴートもいた。

魔物は前に入ったパーティーからある程度のダメージを負っていたのだろう。

 

運が良かった。そしてアナンタが居なくても意識の切り替えができずに、やはり死んでいただろう。

 

そういう意味ではアナンタは命の恩人だ。

 

外に出たら完全に夜だった。何時だ。ものすごく眠い。

 

宿屋に着いたら店主から4時近くだと教えられた…魔物部屋で半日以上も戦っていたのか。

 

部屋に戻り

「どうせバルタが居なくてアナンタがここで寝ても同じ値段だ。同じ部屋で寝て良いぞ。魔物部屋のご褒美だ。」

そう言うと、泥のように眠った。

薄っすらと「ありがとうございます。ご主人様」そう言っているのが聞こえた気がした。

 

 

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