迷宮に入り始めて3個目の迷宮だ。
4層の中では比較的簡単と言われるトラッサの迷宮に入った。
4層で初めて戦い、3体の魔物と2人で戦うことの厳しさを思い知ってしまった。
攻撃を食らい、薬を使えばそれだけで魔物一体分の稼ぎ以上のお金がかかるのだ。
パーティーメンバーを増やすしかない。そう決断した。
パーティー全体で言えば税金の安い奴隷を買った方がお得だ。
そう言ってバルタとともに商館を訪ねた。
商館で奴隷の値段を知って絶句した。
「村で買われていくのを見ていて5万ナールもあれば安い奴隷なら買えると思っていたのですが。」
「私どもも商売でして、奴隷にも食事や税金、ブラヒム語などの教育費用も掛かっております。如何に安い奴隷でも迷宮で戦えるとなると10万ナールを下回るものは居ないでしょう。」
「そうですか…」
「とは言え、5万ナールで買う方法がない訳ではございません。お聞きになられますか。」
「お聞きしたいと思います。」
「一括の売値の1/4を出していただければ、あとは分割払いと言う形をとらさせて頂きます。先ほども申しましたが私どもも商売ですので、いくつかご理解いただきたいことがございます。
一つは、一回で払うよりも分割で払う方が合計で払う金額が大きくなることです。
特に探索者の方は途中でお亡くなりになる事も多々ございますので。
二つ目には、お買い上げいただいた奴隷に遺言をしていただきます。遺言の内容は死後相続
で相続人は私、シラーとさせて頂きます。
以上でございます。」
「相続人はシラー様ですか。奴隷に自分たちを殺させるつもりではないでしょうね。」
「そこは私を信用していただくしかありませんな。
ただ、私どももここで長きに渡り商売をさせて頂いております。
死後相続ですが実は死ななくても相続が発生する場合がございます。それは奴隷の主人が盗賊になった場合でございます。
盗賊は奴隷を持てません。
遺言をなされていない場合または死後解放の場合は、主人のいない奴隷となりますが、遺言で相続人が指定されている場合のみ相続人の奴隷となります。
つまり。マティン様達の返済が滞った場合、マティン様たちは盗賊になり、奴隷は私の物、ということになります。
その為、分割払いのお客様には死後相続の遺言をお願いしている次第であります。
当然全額払い終わりました際には死後相続は外します。こちらの遺言は無料でさせて頂いております。」
「どうする」
「どうするって別に借金を払えばいいんだろう。」
「勘違いとか怪我とかで支払いが遅れたらどうするんだよ。」
「その点でしたら、数日の遅れならば大丈夫です。冬に税金を払えないと奴隷候補、となるのはご存じでしょうか?
それと同じでいきなり盗賊になるのではなく、借金未納とインテリジェンスカードに出て1季のみ、猶予がございます。ただ、騎士の確認、旅亭の宿泊などのインテリジェンスカードの確認が行われる際に不便が発生しますので早めのお支払いをお願いいたします。
他にご質問点はございますでしょうか?」
「返済はどれくらいになります?」
「一季1万ナールほどになるかと。基本的には季節の間の日にご返済頂いております。初回のみは90日ございませんので調整しておりますが。
ご存じかもしれませんが奴隷には初年度なら3万ナール、初年度を外れますと1万ナールの税金がかかります。
それでも自由民の税金10万ナールと比較すれば初年度でも2万ナール以上は安いことになります。」
「どうする。」
「とりあえず、見せてもらおうぜ。」
「そうだな、頭金5万ナール、バルタはいくらまで出せるんだ」
「4万ナールだな」
「それぞれ買える奴隷を見せてもらえませんか?」
そこから、何人かの奴隷を見させてもらった。
「で、お前はどうする」
「猫人族がいいな。見た中では一番かわいかった。」
「お前なあ、戦闘奴隷を買うんだぞ。それに猫人族はあっちの方は淡白だって言うじゃないか」
「それくらいでいいんだよ。奴隷にいれあげるのもなんだ。戦闘は俺が鍛える。バルタはどうするんだ」
「エマーロの男だな。今の大部屋ではぐっすり眠れねー。エマーロは寝ないらしいからちょうど良い。迷宮にも入ったことがあるそうだしな。」
「2人も買うんです。もう少し、何とかなりませんかね。」
「そうですな、連帯保証をしていただけるなら、それぞれ1万ナールをおまけしましょう。」
「いいか」
「どうせ一蓮托生じゃないか」
「それでお願いします。」
「お決まりになられたようで。ヨシフ、書類を用意しろ。出来上がったら私はお客様と商人ギルドに行く、ホドワの商人ギルドに向かうからザファルを呼んでくるように手配しろ」
「商人ギルドですか?」
「分割払いの契約を商人ギルド神殿で行います。
先ほどの契約方法は商人ギルドのギルド制約によるものですので。
書類は息子のヨシフが用意いたします。
内容を間違いがないか読んでご確認ください。」
こうして、俺たちは奴隷を購入した。