それからある日の事
5層は4層と比べて人が少ないので余り他のパーティーの戦闘を見る機会がなかったのだが、その日は珍しく見ることができた。
しかし酷いものだった。
そのパーティーは中々にいい装備をしていたのだが、一人の女奴隷が武器も防具も持たずにいるのだ。
「素手で倒すと僧侶になれるんだ。早くやれよ」
ご主人様に
「素手で倒すと僧侶になれるのですが?」
と聞くと
「そうらしい。とは言っても普通は1層かコボルトでやるな。多分別の理由だ。」
「どういうことでしょう?」
「黙って見ていろ。」
私はただ見ていた。
そのパーティーは、女奴隷にスパイダー一体を押し付けた。
女奴隷はおびえて震えるだけだった。
直ぐに苦しみながら倒れた。毒だろう。
誰も助けようとしない。
それどころか笑っていた。
女奴隷は死に、迷宮に吸い込まれていった。
話には聞いていたが、人が迷宮に吸い込まれるのは初めて見た。
何も残らない。恐ろしかった。
そのパーティーはそのスパイダーを倒すとリーダーと思える人が、
「何か文句あるのか」
と言ってきた。
「別にない、ここを通っていいか」
「おうよ、人のやることにケチをつけるな。奴隷の教育がなってないな。何なら俺らが貰って教育してやるぞ」
「こちらはここを通りたかっただけだ。すまなかった」
ご主人様に頭を下げさせてしまった。
「申し訳ございません。」
私も頭を下げた。
「仕事は終わったんだ。ドラッド戻ろうぜ。」
「そうだな、おい、これからは気を付けろ。」
そう言うと、そのパーティーはダンジョンウォークを使い出て行った。
「ご主人様、申し訳ございません。」
「気になるか?」
「はい。」
「後で休憩の時にでも教えてやる。」
嫌な事もあれば良いこともある。
その日、迷宮の床が膨らんでいるのを見つけた。
「ご主人様、床が膨らんでいます。」
「よく見つけられたな。
魔結晶と言い、猫人族は本当に目が良いな。」
ご主人様に褒めて頂いた。
ふくらみは宝箱だ。
と言っても、本当に少し膨らんでいるだけだ。
ご主人様は剣を床に突き刺し切り裂くと、銀貨が一枚出てきた。
「殆ど膨らんでいなかったからな、こんなものか」
「銀貨一枚分の膨らみだから他のパーティーに気が付かれなかったのだろうな。
しかし、よく気が付いたな」
話には聞いてた宝箱だが、私たちのパーティーは初めて見つけたのがこの銀貨一枚だった。
その後、昼ごはんの為に中間部屋に来たらご主人様に話しかけられた。
「アナンタ、今日のあいつらはよ、迷宮に奴隷を処分しに来たんだ。」
「処分ですか?」
「役に立たない奴隷や、病気を貰った奴隷を処分するんだ。
迷宮なら吸い込んでくれるからな、片付けも楽って訳だ」
私は、思わず息をのんだ。
同じ奴隷でもあり恐ろしかった。
「仕事と言っていたし娼館の奴隷で病気を貰ったのではないか?」
「その可能性が高そうだな。僧侶になれば病気が治るとか言って嘘をついて連れてきたんじゃないか?いずれにしてもあまり気持ちがいいものではないな。」
との事であった。
奴隷は売られるだけでなく処分されることもある…恐ろしい。
私はますます身を引き締めた。