相澤先生……!バスケがしたいです! 作:ヤマアラシ
「相澤先生……!バスケがしたいです!」
「勝手にしてろよ、帰るぞ俺。」
晴天輝くある日、とある雑木林の中で二人の男性がテントを背にしながら会話をする……片方の、包帯のような布を首に巻きつけた男――相澤消太は呆れ気味に目の前にいる少年を見る。
……何処から取り出したのか、その手にはバスケットボールが握られていた。
少年は
黒い髪はヤマアラシのように逆だっており、相澤とは違いやる気に満ち溢れた獣にも見える瞳をしていた。
少年は、腕を頭の後ろで組みながら、ニコっと笑う……年相応の少年に見えるその笑顔で、少年は言葉を続ける。
「まぁまぁ、ちょっとしたジョークですって……にしても変だな、Ms.ジョークからはこれ言えば大爆笑まちがいなしって聞いたんスけど。」
「あんまりアイツに毒されるな。」
相澤は呆れ気味には少年を見つめる……ご近所事務所だった女のことを思い出しながら、相澤派溜息を付く。
すると、相澤は体ごと少年へと向き直り言葉を紡ぐ。……そこには威圧感があった、とても目の前の中3の少年に向けるべきではない威圧感が、そこにはあった。
「さて……と、俺もこれからは忙しくなる。入試前最後の訓練だ……進路は変える気は?」
「無ぇよ……今更変えられねぇし、変える気もねぇ。」
そう言って、少年は先程までのふざけていた、笑顔を思い浮かべるような目つきから一転、瞳孔の開いたケダモノの様な目へと移り変わる。
「目指すはヒーロー、その為には半端じゃ駄目だ。雄英に行く。」
ヒーロー、それは現代。人類八割が何らかの特異体質であり、個性と呼ばれる能力を持った超人社会。その超人社会で犯罪を犯すヴィランに対処する存在だ。
雄英とは!そんなプロヒーローを数多く輩出してきた名門校……この少年は、その名門校の入試へと足を進めようというのだ。
「苦手な勉強も鼻血を出すほどした。模試のA判定を貰えた。あんたに俺の『個性』の使い方を扱いて貰った……後はアンタから一本とるだけだ。相澤先生。俺は貴方を超える。」
少年が先生と慕う相澤消太も、そのプロヒーローの一人。イレイザーヘッドと呼ばれている……彼は、首元に巻いた。布越しに口元に笑みを浮かべる。
すると、相澤は目の前の少年の名を呼ぶ。
「……
「あいよ。」
相澤はそう言って、首元に巻いた包帯のような布……炭素繊維に特殊合金を編み込んだ特殊な捕縛布に手をかける。
相対する少年――『
「……入試前最後の訓練、内容は?」
「……簡単だ。俺は今から逃げる……お前はそれを捕縛しろ。」
その言葉を聞いて、仁は口元に笑みを浮かべる。
「鬼ごっこか、シンプルでわかりやすいぜ……」
そう言うと、仁から生える二本の帯状の触手は虫が触角をこすり合わせるように擦らせ合う……そして次の一瞬で、相澤へと伸びる。
しかし、相澤は飛び上がりその触手を回避する……伸ばされた触手は、剣が地面に突き刺さる様に地面へと突っ込む。
仁は直ぐ様触手を地面から抜いて、既に遠くの方へ向かい木々を乗り移りしながら猿のように雑木林を移動する相澤を捕捉する。
「逃さねぇ!」
そう言って仁は触手を木々へと伸ばし、ワイヤーアクションの様に飛び上がり木に乗り、逃げる相澤を追いかける。
これは、相澤消太、イレイザーヘッドの一番弟子(自称)の仁 剣が、バスケ選手……ではなく、ヒーローを目指す物語である。