いつかあの疾走を夢見て   作:高科奈紗

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予定より長くなってしまったので、今回は分割して次回が最終回です。
見通しが甘くて申し訳ないです!(※重大なミスに気付いたので一度削除して修正しました)


TURN-3

 遊未side

 

「レベル4のエレキングコブラに、レベル3のエレキンメダイをチューニング」

 

 ☆4+☆3=☆7

 

「シンクロ召喚、エレキリム」

 

 エレキリム(☆7/ATK 1500)

 

「バトル、エレキリムでダイレクトアタック」

 

 つまらない。

 乾く……満たされない。

 

「やっぱり遊未ちゃんは強いね!」

「そりゃあそうだろ、なんてったってあの不動 遊星の娘なんだから!」

 

 まただ。

 またこれだ。

 何かがある度に、引き合いに出される。

 誰も私を《私》として見てはいない。

 

 

「ねえ、遊未ちゃん! 昨日のドラマ観た?」

「見てない」

 

 理解出来ない。

 他人と話を合わせる為に、大して好きでもない事をする……そんな事に意味があるの? 

 

 

「遊未ちゃん、放課後にみんなで新しく出来たクレープ屋に行くんだけど一緒にどうかな」

「いい」

 

 理解出来ない。

 好きな本も趣味も合わないような人と一緒に遊んだって、窮屈な思いをするだけなのに。

 そもそも私はクレープよりプリン派だ。

 

 

「遊未ちゃん、これからみんなで……」

「やめときなよ。どうせ相手してくれないんだから」

「……………………」

 

 みんな、次第に私を遠ざけるようになった。

 ……いや、私が遠ざけたんだ。

 でもこれでいい。

 私を《私》として見ない人となんて、仲良くなりたくない。

 

 

「キミ、どうしたの?」

「……………………」

 

 大雨の降り頻る中、私と《彼》は出会った。

 ライディングデュエルをしたい、D・ホイールが欲しい……パパにそう頼んで、断られて……頭に来て、カッとなって家を飛び出して……行く宛なんて無くて……

 

 

「後ろに乗りな」

 

 私の現状を見かねた《彼》は、私を自分の家に連れて行った。

 知らない人に易々と着いて行くのはどうかと思ったけれど……正直、あの時の私は全てがどうでもいいと思えるぐらい気落ちしていたんだと思う。

 

 

「……スタンディングデュエルならいいの?」

 

 アカデミアの授業以外で、私とデュエルしてくれる人なんていなかった。

 いや、最初の方はいたけれど……私とデュエルしてもつまらないとか、どうせ勝てないとか言われて……私にとってデュエルの勝敗なんてどうでもいいのに。

 デュエルは心と心を通わせ合うもの、私はそう思っている。

 

 

「響け……シューティング・ブラスト!!」

 

 楽しい。

 すごく……楽しい! 

 この人とのデュエルは、心が躍る。

 乾いた心が潤い、256な世界が彩り鮮やかになる。

 

 

「お前のお父さんって……不動 遊星?」

 

 ああ……結局、この人もそうなのか。

 私を《私》としては見てくれない……期待した自分がバカだった。

 きっとこの人なら、私をちゃんと見てくれるって勝手に思い上がって……。

 

 違った。

 アレは単なる事実確認。

 あの人は……ちゃんと私を《遊未》として見てくれた。

 何度負けたって、悔しがりながら褒めてくれた。

 何度ハッキングしたって、叱りつつプリンをくれた。

 嬉しかった。

 いつの間にか、惹かれていた。

 共に過ごした時間は僅かだったけれど……私の心の中はあの人の事で埋め尽くされていたんだ。

 

 

「んぁ……?」

 

 意識が鮮明になっていく。

 瞼を開くと……何度か見た天井が見えた。

 パパや暁が働いている研究所の休憩室の天井だ。

 なんで此処に……。

 ……ああ、ここに遊びに来て、職員の人とライディングデュエルいっぱいして、疲れたから寝ちゃって……

 

「おはよう」

 

 肩がビクッと跳ねる。

 それと同時に心も躍る。

 

「ん……暁」

 

 体を起こすと、隣に暁がいた。

 自分に掛けられていたタオルケットを退かし、ソファーに座り直す。

 

「これ、暁が掛けてくれたの?」

「ああ」

「……ふふ、ありがとう」

 

 タオルケットを畳み、横に置くと……暁の視線に気が付いた。

 私の顔をジッと見つめている。

 

「な、なに?」

「……………………」

 

 何も言わずに、私の顔を見つめ続けてくる。

 そんな事をされると、変に意識してしまう。

 頬の火照りを感じる…… これが、エモーショナルなセンセーションというヤツなのだろうか……? 

 

「……ヨダレ」

「へっ?」

 

 我ながら、素っ頓狂な声が出たと思う。

 だって、そうでしょう? 

 

「口元にヨダレ付いてる。プリン爆食いする夢でも見てたか?」

「っ〜!!」

 

 暁がケラケラと笑う。

 私は咄嗟に後ろを向いて、机の上に置いてあるティッシュ箱から中身を取り出して口を拭く。

 ……彼にロマンスをカケラでも期待した私がバカだった! 

 

「……ばか」

 

 誰にも聞こえないように、私はそう呟いた。

 暁もバカだし、私もバカだ。

 でも……これでいいんだ。

 これ以上を望んで、もしも彼との仲が壊れてしまうより……この気持ちを抑えておくべきなんだ。

 

「さて、俺はそろそろ仕事に戻るよ」

 

 窓から外を見ると、陽が殆ど沈んでいた。

 淡い光が夜空を薄っすらと照らしている。

 

「まだやる事、残ってるの?」

「ああ。まあ、大して残ってないけどな。後はちょいと書類の整理をして片付けるだけだし」

「なら他の人に任せてさ、私とライディングデュエルしようよ」

「えっ?」

 

 携帯端末をポケットから取り出し、コールする。

 電話先の相手と話しをして……通話を切った。

 

「パパから許可取ったよ」

「お前……まあ、いいや。じゃあやるか」

「うん!」

 

 暁は呆れつつも、私の提案を受け入れてくれた。

 ……そんなんだから、そうなんだよ。

 

 *

 

 薄暗いサーキット場を、いくつものライトが照らす。

 まるで昼間なんじゃないかと思うぐらいに錯覚してしまいそうになる。

 

「暁って高等部3年だよね、なのにバイトばっかりしていいの?」

「いいんだよ、俺は進学も就職もするつもりは無いから」

「ニート?」

「ちゃうわいっ!!」

 

 D・ホイールに跨り、システムの調整をしながら世間話をする。

 取り留めのない日常風景だ。

 

 前に、私が居候している時……聞いた事がある。

 暁の両親は、仕事で海外にいる。

 だから今は一人暮らしなのだ……と。

 

「親元に行くの?」

「いや、旅に出ようかなって」

「……旅?」

「そっ。まあ、ライディングデュエルの武者修行的な?」

「プロを目指してるの?」

「ああ。って言っても、スカウトを受けてるわけじゃないし、なら自分から売り込まないとな。その為にもバイトしてお金貯めてるわけだ」

「ふーん……」

 

 暁はアカデミアを卒業したら、旅に出る。

 自分の夢を追い求め、叶える為に。

 

「……私も連れて行って」

「はっ?」

 

 暁が旅に出たら、暁とこうして毎日のように会う事は難しくなる。

 そんなのは、イヤだ。

 

「……………………」

 

 暁は握り拳を顎に起き、考える仕草をする。

 ……なんで考え込むの、すぐに否定してよ。

 期待しちゃうじゃない。

 

「……ダメだ」

「私が子供だから?」

「ああ」

 

 分かってる。

 私が付いて行ったって……重荷になるだけだ。

 お金を稼ぐ経済力は無いし、家事だって出来ない。

 それでも……理屈では理解していても、納得したくなかった。

 

「じゃあさ、私が勝ったら……私も連れて行って」

「はぁ!?」

「覚悟は、出来てるよ」

 

 私と彼の視線が交差する。

 すると、暁は深くため息をついて……

 

「……分かった。俺が勝ったら諦めろよ」

「もちろん!」

 

 調整が終わり、エンジンに火を焚べる。

 ……分かってる。

 私が勝ったって、負けたって……結果は変わらない。

 パパも、ママも、暁も……絶対に認めてはくれない。

 私だって、重荷になる自分を認める事なんて出来はしない。

 だけど……この気持ちを抑える事も出来ない。

 

「いくぞ、遊未!」

「うん、暁!」

「「フィールド魔法、スピード・ワールド3、セット!」」

 

『デュエルモード・オン』

 

 互いの掛け声と共にスタートカウントが点滅していく。

 

「「ライディングデュエル・アクセラレーション!!」」

 

 遊未:LP 4000 vs 暁:LP 4000

 

 互いにスタートダッシュを切る。

 最初のライディングデュエルでは先手を取られたけれど……今の私なら、いける! 

 

「第1コーナーは貰ったよ!」

「くっ……やるな!」

「えへへ〜……私のターン、ドロー!」

 

 目を瞑り、指先をデッキの一番上に置く。

 そしてカードを勢いよく引き抜く。

 暁に注意されたけれど……これが私のルーティーン、今更変えるつもりはない。

 

(ジャンク・フォアード……よし、このカードなら)

 

 目を開けて、ドローしたカードを確認せずにフィールドに置く。

 

「自分フィールドにモンスターが居ない時、ジャンク・フォアードは特殊召喚できる!」

 

 ジャンク・フォアード(星3/DEF 1500)

 

「そしてチューナーモンスター、ジャンク・アンカーを通常召喚!」

 

 ジャンク・アンカー(星2/ATK 0)

 

 これで私のフィールドにモンスターが揃った。

 

「早速来るか……!」

「いくよ! レベル3のジャンク・フォアードに、レベル2のジャンク・アンカーをチューニング!」

 

 ☆3+☆2=☆5

 

「集いし詩が星々と共に、安らぎを与える旋律を奏でる! 光差す道となれ! シンクロ召喚……穿て! カタパルト・ウォリアー!!」

 

 カタパルト・ウォリアー(☆5/DEF 1500)

 

「そしてジャンク・ドラゴンセントを特殊召喚! このカードは自分フィールドにシンクロモンスターが存在する時、手札から特殊召喚できる!」

 

 ジャンク・ドラゴンセント(☆5/ATK 2100)

 

 どう見てもプラグがモチーフな、機械の体をしたドラゴン。

 ……うん、やっぱりどう見てもプラグだ、コンセントではない。

 このカードをデザインした人に会ったら、鼻で笑ってやりたいよ。

 

「カタパルト・ウォリアーの効果を発動! ジャンク・ドラゴンセントをリリースして……その攻撃力の半分のダメージを相手に与える! ダイブ・カタパルト!!」

「くっ……!」

 

 暁:LP 4000→2950

 

 カタパルト・ウォリアーが急上昇し、暁に目掛けてジャンク・ドラゴンセントを砲弾のように射出。

 その砲撃を受けて、暁のD・ホイールが大きく揺らめく。

 

「っ……いきなり大ダメージかよ!」

 

 車体を持ち直し、こちらの後ろに着いて来る。

 まずはダメージを与えた……このまま押し切る! 

 

「カードを2枚セットして、ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!」

 

 遊未:SC 0→1

 暁:SC 0→1

 

 互いのSCが上昇し、D・ホイールの最高速度が引き上げられる。

 だが、まだデュエルは序盤。

 これから、どう仕掛けてくるか……

 

「……………………」

「……暁?」

 

 ドローしたカードをジッと見つめ続けている。

 暁は長考するようなタイプではない、直感的なプレイングをする人だ。

 私のように、一々思考を巡らせたりはしない。

 ……それなのに、今の暁はいつもと違う。

 それほどにまで、勝ちたい? 

 ……いいや、そうじゃない。

 何かがおかしい。

 

「……カイザー・ブラッド・ヴォルスを特殊召喚」

 

 カイザー・ブラッド・ヴォルス(☆5/ATK 1900)

 

 いつもよりも冷たくて、重苦しい声。

 いつもの暁じゃない……いつも私に光を与えてくれた人じゃない! 

 

「っ……永続罠、シンクロ・ゾーン! このカードがある限り、シンクロモンスター以外の攻撃は行えない!」

 

 これでカイザー・ブラッド・ヴォルスの攻撃は封じた、これで攻撃を封じつつ……カタパルト・ウォリアーの効果でダメージを与えていけば……

 

「……チューナーモンスター、変容王 ヘル・ゲルを召喚」

 

 変容王 ヘル・ゲル(☆1/ATK 100)

 

「え……?」

「ヘル・ゲルの効果を発動。カイザー・ブラッド・ヴォルスのレベルをコピーし、そのレベル×200ポイントのライフを回復する」

 

 変容王 ヘル・ゲル(☆1→5)

 暁:LP 2950→3950

 

 与えたダメージが帳消しにされた。

 ……いや、問題はそこじゃない! 

 ここでヘル・ゲルを召喚してくる……こんな戦術、今まで使って来たことなかった! 

 

「これで揃った……」

「暁のデッキに、レベル10のシンクロモンスターなんていないハズ!」

「ククク……」

 

 暁が不気味な笑みを浮かべると……突然、周囲が真っ黒に染まった。

 

「っ!?」

 

 陽は落ちたけれど、照明で照らされていたハズのサーキット場は……瞬く間に、深い闇に包み込まれた。

 

「なに、これ……なにが起きてるの!」

 

 目が暗闇に慣れてきたのか、次第に景色が鮮明になっていく。

 バックモニターに目を向ける。

 ディスプレイに写っている暁の表情は酷く歪んで見えて……目が血走っていた。

 

 怖い。

 初めて、彼にそんな感情を抱いた。

 そして同時に、直感した。

 あれは暁ではない、と。

 

「あなたは誰!? 暁じゃないでしょ!」

「レベル5のカイザー・ブラッド・ヴォルスに、レベル5となったヘル・ゲルをマイナスチューニング!」

 

 マイナスチューニング……聞いた事のない言葉。

 ヘル・ゲルが黒色の光に変わり、カイザー・ブラッド・ヴォルスに飲み込まれていく。

 普通のシンクロ召喚とは違う、明らかに異質な光景。

 

「混沌の次元より沸き出でし力の源、原点にして全ての頂点! この現世でその無限の渇望を暫し潤すがよい! 神降せよ……究極神 アルティマヤ・ツィオルキン!!」

 

 究極神 アルティマヤ・ツィオルキン(☆0/DEF 0)

 

「レベル0のシンクロモンスター……?」

 

 暁のフィールドに現れたのは、巨大な赤い竜。

 禍々しいオーラと威圧感が全身に伝わり、指先がビリビリと痺れてくる。

 攻撃力と守備力は0だが……普通のモンスターとは格が違うと一目で分かった。

 

「カードを1枚セット、この瞬間……アルティマヤ・ツィオルキンの効果が発動!」

「一体、なにが……」

 

 赤い竜が咆哮を放ち、黒い靄が現れる。

 その靄の中から、1体の竜が飛び出してきた。

 

 スターダスト・ドラゴン(☆8/ATK 2500)

 

「なんで……パパのスターダスト・ドラゴンを、暁が……!?」

「バトル! スターダスト・ドラゴンで、カタパルト・ウォリアーに攻撃! シンクロモンスターでなら、シンクロ・ゾーンの制約は受けまい!」

 

 スターダスト・ドラゴンが攻撃を放とうとした瞬間、私は1枚のカードを発動した。

 

「っ……永続罠、強制終了! カタパルト・ウォリアーを墓地に送って、バトルフェイズを終了させる!」

「チィ……」

「そしてシンクロ・ゾーンの効果を発動! 1ターンに1度、墓地に送られた自分のシンクロモンスターを復活させる! 戻ってきて、カタパルト・ウォリアー!」

「小賢しマネを……ターンエンドだ」

「私のターン……ドロー!」

 

 遊未:SC 1→2

 暁:SC 1→2

 

 これでSCの数は2。

 このターンからSpと魔法カードの使用が解禁された。

 

「Sp-エンジェル・バトン! カードを2枚ドローして、その後、1枚墓地に送る!」

 

 デッキからカードを2枚引いて、元から手札にあったカードを墓地へ送る。

 

「墓地に送った代償の宝札の効果! カードを2枚ドロー!」

 

 これで手札が4枚になった。

 あの赤い竜がどんなモンスターだか知らないけれど……暁がなんでパパのカードを使っているのか知らないけれど、負けるわけにはいかない! 

 絶対にこのデュエル、負けちゃいけない……私は直感は信じない質だけれど、こればっかりは信じる! 

 

「魔法カード、戦士の生還! 墓地のジャンク・フォアードを手札に戻して、召喚!」

 

 ジャンク・フォアード(☆3/ATK 800)

 

「永続魔法、シンクロ・チェイスを発動! そして、シンクロ・ゾーンの効果で特殊召喚されたモンスターは、チューナーとなる! 私はレベル3のジャンク・フォアードに、レベル5のカタパルト・ウォリアーをチューニング!」

 

 ☆3+☆5=☆8

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ、魂を震わし世界に轟け! シンクロ召喚……響け! 閃珖竜 スターダスト!!」

 

 閃珖竜 スターダスト(☆8/ATK 2500)

 

「シンクロ・チェイスとシンクロ・ゾーンの効果により、墓地に送られたカタパルト・ウォリアーとジャンク・フォアードを特殊召喚!」

 

 カタパルト・ウォリアー(☆5/DEF 1500)

 ジャンク・フォアード(☆3/DEF 1500)

 

「カタパルト・ウォリアーの効果を発動! ジャンク・フォアードをリリースして、その攻撃力の半分のダメージを与える! ダイブ・カタパルト!!」

「ぐぅ……小癪な……!」

 

 暁:LP 3950→3500

 

「バトル!」

「おっと。俺のフィールドに他のモンスターが存在する場合、アルティマヤ・ツィオルキンは攻撃及び効果の対象にはならないからな」

「なら……私のスターダストで、パパのスターダストに攻撃! シューティング・ブラスト!!」

 

 私のスターダストと、パパのスターダストの攻撃力は同じ。

 でもこっちのスターダストは、戦闘では1度だけ破壊されない効果を持っている。

 これで一方的に破壊できる……

 

「罠カード、発動! トラップトリック!!」

「なっ……!?」

 

 トラップトリック……デッキから通常罠カード1枚を除外して、同じカードをデッキからセットする罠カード……。

 ……あんなカード、今まで使ったこと無かった。

 やっぱり何かがおかしい! 

 

「デッキからオーバー・ゲインを除外し、同名カードをデッキからセット! このカードはこのターン中に発動する事が出来る! さらに、新たにカードがセットされた事で……アルティマヤ・ツィオルキンの効果が発動!」

 

 再び赤い竜の前に黒い靄がかかる。

 そして、今度現れたのは……

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト(☆8/ATK 3000)

 

「あれは……ジャックおじさんの……!?」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト……ジャックおじさんの、魂のカード。

 幾つもの激戦を戦い抜き、傷だらけになりながらもジャックおじさんのデュエルとプライドを支え続けた……と言われている伝説のモンスター。

 パパのスターダストといい、なんであんなカードを暁が……!? 

 

「俺のモンスターが増えた事で、バトルステップの巻き戻しが起こった。さあ、スターダストで攻撃を続けるのか?」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトには、攻撃力は及ばない。

 そしてさっきセットされた、オーバー・ゲイン……モンスター1体の攻撃力をそのターンの間だけ1000ポイントアップさせる効果がある。

 パパのスターダストに攻撃しても、意味がない……

 

「……バトルは終了。カードを2枚セットして、ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!」

 

 遊未:SC 2→3

 暁:SC 2→3

 

 暁のフィールドにいる、あの赤い竜のモンスター……あのカードの特性が分かってきた。

 他のモンスターを隠れ蓑にする効果。

 そして1ターンに1度、自分の魔法・罠ゾーンにカードがセットされた時にエクストラデッキからシンクロモンスターを無条件で呼び出す効果……この2つを持っている。

 互いの効果が自己完結し、まさに無敵といってもいい能力を誇っている。

 ……だけど、きっと……弱点があるはず。

 今は耐えて、勝機を伺う! 

 

「魔法カード、トラップ・ポーズ!」

「あっ!?」

 

 暁が1枚の魔法カードを発動した瞬間、私のフィールドにある強制終了とシンクロ・ゾーンが石のように固まってしまった。

 

「このターン中、相手の永続罠カードを全て無効にして……その枚数分ドローする!」

 

 暁は新たにカードを2枚ドロー。

 そして、1枚のカードを魔法・罠ゾーンに再びセットした。

 

「アルティマヤ・ツィオルキンの効果、発動!」

 

 これで3度目の効果発動。

 新たに呼び出されたのは……

 

 ブラックフェザー・ドラゴン(☆8/ATK 2800)

 

「今度は、クロウのカードまで……!」

 

 巨大な黒翼を持つ竜、ブラックフェザー・ドラゴン。

 パパの知り合いで、ハイウェイ・パトロールで働いている人だ。

 街中でたまに会って、お喋りするけれど……気さくで優しい、いい人だ。

 箒みたいな髪型はダサすぎると思うけれど。

 

「 Sp-スピードストーム! 相手に1000ポイントのダメージを与える!」

「っ……あぁ……!」

 

 遊未:LP 4000→3000

 

「く……がっ……!」

 

 車体が大きく揺れる。

 いつものデュエルとは違う……ソリッドビジョンとは違う、衝撃。

 まるで、本物の嵐の中で走っているような感覚に襲われる。

 

「ぐっ……うぅ……!」

 

 痛い。

 全身が焼けるような痛みが走る。

 まるで、胴体から上と下が真っ二つに千切れてしまいそうだ……そう思うような、リアルな衝撃が全身を襲う。

 デュエルのダメージが、現実の物になっている……? 

 

「ガハッ……! ケホッ、ケホッ……!」

 

 手袋に真っ赤な染みが付着した。

 鼻腔を擽り、口の中に充満する鉄の匂い。

 ……血だ。

 私は……血を吐き出したんだ。

 

「なに、これ……」

「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果を発動! このカードの攻撃力以下の特殊召喚された効果モンスターを全て破壊し、1体につき500ポイントのダメージを与える!」

「っ……!」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト以外のモンスターは全て攻撃力3000以下。

 スターダストで1体は守れても……受けるダメージは2000ポイント。

 こんなダメージを受けるわけにはいかない……! 

 

「罠カード、発動! シンクロ・バリア・フォース!!」

 

 私が発動したカードから発せられた光線がレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトに直撃する。

 

「カードを破壊する効果を無効にして、私のフィールドにいるシンクロモンスター1体につき500ポイントのダメージを相手に与える!」

 

 発動してから気が付いた。

 私が実際にダメージを受けているのなら……暁も同じようにダメージを受けるのではないのだろうか、と。

 

「だ、ダメ! 今のは……!」

 

 ダメだ、発動したカードを止める事は出来ない。

 シンクロ・バリア・フォースから放たれた疾風は……ブラックフェザー・ドラゴンの翼に吸収された。

 

 

 ブラックフェザー・ドラゴン(ATK 2800→2100)

 

「あ……そっか、ブラックフェザー・ドラゴンの効果は……」

「効果ダメージを受ける時、このカードの攻撃力を700ポイント下げる事でダメージを0にする」

「……よかった」

 

 暁を傷つける事にならなくて、良かった……。

 

「ブラックフェザー・ドラゴンのもう1つの効果! 下がっている攻撃力を元に戻し、その数値分のダメージを相手に与える!」

「っ……あぁっ……!」

 

 遊未:LP 3000→2300

 

「そして、お前のスターダストの攻撃力を700ポイント下げる!」

 

 閃珖竜 スターダスト(ATK 2500→1800)

 

「っ……!」

 

 視界が霞む。

 腕が痛い、お腹が痛い、痛い、痛い、痛い……

 

「バトル! レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトで、スターダストに攻撃!」

「あ……スターダストの、効果! 破壊を無効にする……!」

「だが、ダメージは受けてもらう!」

「っう……!」

 

 遊未:LP 2300→1100

 

「ブラックフェザー・ドラゴンで、スターダストに攻撃! 2度目の破壊は防げまい!」

「あ……っ……!」

 

 遊未:LP 1100→100

 

 スターダストが破壊され、再び衝撃が私の遊未号を襲う。

 このD・ホイールは頑丈に作られている、ダメージを受けても……これぐらいなら、まだ走れる。

 でも、操縦する人間はどうだ? 

 

「ハッ、ァ……ガッ……!」

 

 今にも意識の糸が切れそうだ。

 喉に風穴でも空いてるのか思うほどに、呼吸をするのが難しい。

 口の中に溜まった血が気持ち悪い。

 もう、いやだ……こんなの、いやだ。

 

 私がイケなかったのかな。

 彼と一緒にいる事を望んで……友達以上の関係を望んで、ワガママを言って……。

 ……そうか、バチが当たったんだ。

 今までのバチ……アカデミアの同級生を蔑ろにして、パパやママにワガママばっかり言って、龍亞さんや龍可さんに無茶言って特訓をつけてもらって、クロウに何度も説教されて、ジャンクおじさんの忘れていったクッソマズい激辛カップ麺を勝手に食べたり……

 

「ハハ……私の人生って、ロクでもなかったな……」

「スターダスト・ドラゴンで、カタパルト・ウォリアーに攻撃!」

「っ……」

 

 カタパルト・ウォリアーが破壊され、私のフィールドにモンスターはいなくなった。

 そして手札は0枚で、ライフは残り100。

 

 もういいんだ。

 もう……私はこのまま、死んで……消え去ってしまえばいいんだ……

 

「カードを3枚セットして、ターンエンドだ」

 

 そうして……私の意思はそこで途切れた──

 

 *

 

「ここは……どこだろ」

 

 目を開けると、見知らぬ空間に私は居た。

 まるで宇宙のような……真っ暗なのに、星のような光が煌めいている、広大な空間。

 ……ここが天国という場所なのだろうか? 

 

「遊未」

 

 私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 振り返るとそこには……白衣を身に纏った1人の男の人がいた。

 

「パパ……?」

 

 いや、違う。

 似ているけれど……別人だ。

 だってマーカーが無いし、髪の毛にメッシュも入ってない。

 雰囲気はそっくりだけれど……。

 ……もしかして、この人は……

 

「おじいちゃん……?」

「そうだ、私はお前の祖父……遊星の父親だ」

 

 昔、1度だけ写真で見た事がある。

 パパのお父さんとお母さんの写真……2人とも、優しそうな人に感じた。

 もう、死んじゃってこの世にはいないって聞いてたけれど……

 

「私、やっぱり死んじゃったの?」

「いや、まだ死んではいない。まだデュエルは終わっていない」

 

 言っている事がよく分からないけれど……生きているなら、ここは何処なのだろうか? 

 

「ここは何処なの……? おじいちゃんが、なんでいるの?」

「その質問に答えている時間はない」

「そんなの……」

「彼を救いたいのだろう?」

「っ!?」

 

 おじいちゃんの言葉で、ハッとなった。

 でも……

 

「でも……もうイヤなんだ! 痛いのも、誰かに迷惑かけるのも、重荷になるのも……!」

「遊未」

 

 パシンッ!! 

 

「え……」

 

 左の頬が熱い

 そして、痛い。

 ……おじいちゃんに、平手打ちをされた。

 そして……

 

「お前なら出来る。遊星のように……人の心を繋ぐんだ」

 

 そっと抱きしめられた。

 あの時と……私が家出して、パパと再会した時と同じだ。

 厳しいけれど、優しさも感じる……暖かい感じ……

 

「おじい、ちゃん……わ、私……」

 

 胸の中に秘めた決意を、必死に捻り出す。

 これが……私の導き出した答え。

 

「私、一緒に居たい……暁と、一緒に……みんなと、一緒に……だから、諦めたくない……!」

 

 おじいちゃんはクスッと微笑んで腕を離す。

 

「それでこそ、私の孫だ」

「おじいちゃん……ありがとう」

 

 おじいちゃんの体が、光の粒子のようになって徐々に消えていく。

 

「おじいちゃん……!?」

「未来を信じて、強く生きろ」

 

 遊未……いつでも側に居る。

 私も、遊星も……仲間も──

 

 *

 

 分かった。

 私がするべき事……私が進むべき未来! 

 

「私のターン……」

 

 全身の痛みを堪えて、指先をデッキの上に置く。

 デッキはいつだって私の想いに応えてくれる。

 今だって……そして、これからも……! 

 

「ドロー!!」

 

 遊未:SC 3→4

 暁:SC 3→4

 

「罠カード、トラップトリック! デッキの覇者の一括を除外し、同名カードをセット! そしてアルティマヤ・ツィオルキンの効果を発動!」

 

 暁のフィールドにいる赤い竜が、再び黒い靄を呼び出す。

 そして現れたのは……

 

 パワー・ツール・ドラゴン(☆7/ATK 2800)

 

「師匠のモンスターまで……!」

「そしてセットした覇者の一括を発動! このターン、お前はバトルを行えない」

 

 暁のフィールドには、赤い竜とそれを守る4体のドラゴンがいる。

 対して、私のフィールドはガラ空き……でも、今ドローしたこのカードなら……希望は繋がる! 

 

「魔法カード発動、シンクロ・クリード! フィールドにシンクロモンスターが3体以上、存在する事で……2枚ドロー!」

 

 いいカードをドローした。

 デッキも言ってくれている……私を応援してくれている! 

 

「Sp-エンジェル・バトン! 2枚ドローして……手札1枚を墓地へ送る!」

「チィ……ここで手札増強と入れ替えか。しかしバトルは行えないのだぞ?」

「なら、別の手段で突破するだけ! 魔法カード、調律! デッキからジャンク・シンクロンを手札に加えて……デッキの一番上のカードを墓地へ送る!」

 

 デッキからジャンク・シンクロンを加え、墓地に送られたカードを見遣る。

 よし、このカードなら……

 

「チューナーモンスター、ジャンク・シンクロンを召喚!」

 

 ジャンク・シンクロン(☆3/ATK 1300)

 

「ジャンク・シンクロンの効果を発動! 墓地からチューニング・サポーターを守備表示で特殊召喚!」

 

 チューニング・サポーター(☆1/DEF 300)

 

「レベル1のチューニング・サポーターに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

 ☆1+☆3=☆4

 

「シンクロ召喚……波動竜フォノン・ドラゴン!!」

 

 波動竜フォノン・ドラゴン(☆4/ATK 1900)

 

「チューニング・サポーターがシンクロ素材になった事で、デッキからカードを1枚ドロー! そして、シンクロ・チェイスの効果を発動! シンクロ素材になったチューニング・サポーターを特殊召喚!」

「いくら雑魚モンスターを並べたところで、俺の従えるドラゴンを超えるなど……」

「フォノン・ドラゴンはシンクロモンスターのチューナー、そしてチューニング・サポーターはシンクロ素材になる時にレベル2になれる!」

「なっ……!?」

 

 出来ることは全部やる。

 そして……必ず、暁と共に……! 

 

「レベル2扱いのチューニング・サポーターに、レベル4のフォノン・ドラゴンをチューニング!」

 

 ☆2+☆3=☆6

 

「集いし光が星空を焦がし、聖なる槍を解き放つ! 光差す道となれ! シンクロ召喚……目覚めろ、スターダスト・アサルト・ウォリアー!」

 

 スターダスト・アサルト・ウォリアー(☆6/ATK 2100)

 

「チューニング・サポーターがシンクロ素材になった事で、1枚ドロー! そしてスターダスト・アサルト・ウォリアーの効果を発動! 墓地のジャンク・メイルを守備表示で特殊召喚!」

 

 ジャンク・メイル(☆1/DEF 100)

 

「ジャンク・メイルだと? そんなカード、墓地に……いや、エンジェル・バトンの効果で送っていたのか!」

「その通り! そしてあなたのドラゴンの力、使わせてもらうよ! 罠カード発動、シンクロ・マテリアル!」

「なっ!?」

 

 シンクロ・マテリアル……バトルフェイズを行えなくなる代わりに、相手のモンスター1体をシンクロ素材に使用できるカード。

 覇者の一括でどの道、バトルフェイズは行えないんだ。

 デメリットは気にならない! 

 

「私が選ぶのは……パワー・ツール・ドラゴン!」

 

 パワー・ツール・ドラゴンが、暁の下から私の下へやってきた。

 師匠……あなたの力、借ります! 

 

「レベル7のパワー・ツール・ドラゴンに、レベル1のジャンク・メイルをチューニング!」

 

 ☆7+☆1=☆8

 

 背中に暖かくて、心強い想いが感じる。

 どこか懐かしくて……それでいて、新鮮な気持ち……

 

「世界の未来を守るため、勇気と力がレボリューション! シンクロ召喚……進化せよ、ライフ・ストリーム・ドラゴン!!」

 

 ライフ・ストリーム・ドラゴン(☆8/ATK 2900)

 

「ライフ・ストリーム・ドラゴンだと……!? なんで、お前が……!?」

「ライフ・ストリーム・ドラゴンの効果を発動! シンクロ召喚に成功した時、ライフを4000まで回復する!」

 

 遊未:LP 100→4000

 

 腕の痛みも、お腹の痛みも、喉の苦しみも……綺麗さっぱり消え去った。

 

「ありがとう、ライフ・ストリーム・ドラゴン……」

 

 ライフ・ストリーム・ドラゴンを見遣る。

 優しく頷いてくれた……そんな気がした。

 

「くっ……だが、ライフが回復したぐらいで!」

「ライフ・ストリーム・ドラゴンはチューナーモンスター、そして私のフィールドにはスターダスト・アサルト・ウォリアーがいる!」

「なっ……まさか……!?」

「魔法カード、早すぎた埋葬! デッキからホイール・シンクロンを墓地に送る! そして自身を除外して、スターダスト・アサルト・ウォリアーのレベルを4つ下げる!」

 

 スターダスト・アサルト・ウォリアー(☆6→2)

 

「レベル2のスターダスト・アサルト・ウォリアーに、レベル8のライフ・ストリーム・ドラゴンをチューニング!」

 

 ☆2+☆8=☆10

 

「集いし風の揺らぎが、新たな境地を切り拓く! 光差す道となれ! シンクロ召喚……サテライト・ウォリアー!!」

 

 サテライト・ウォリアー(☆10/ATK 2500)

 

「レベル10のシンクロモンスターだと……!?」

 

 今まで誰にも見せた事のない、とっておきの切り札……ここで切らなきゃ、どうする! 

 

「サテライト・ウォリアーの効果を発動! 自分の墓地に存在するシンクロモンスター1体につき、相手フィールドのカードを1枚破壊する!」

「墓地にいるシンクロモンスターは、スターダストにカタパルト・ウォリアー、スターダスト・アサルト・ウォリアー、フォノン・ドラゴン、そしてライフ・ストリーム・ドラゴン……!」

「よって5枚のカードを破壊する! 破壊する対象は、スターダスト・ドラゴンとレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト、そしてブラックフェザー・ドラゴン、2枚のセットカード!」

「くっ……スターダスト・ドラゴンをリリースして、カードを破壊する効果を無効に……」

「シンクロ・チェイスが存在する時、サテライト・ウォリアーの効果は無効にされない!」

「なっ!?」

 

 サテライト・ウォリアーの放つビームが3体のドラゴンと2枚のセットカード……オーバー・ゲインとシンクロン・リフレクトをまとめて貫く。

 

「ごめんね、パパたちのドラゴン……そして、破壊したカード1枚につき攻撃力が1000ポイントアップする!」

 

 サテライト・ウォリアー(ATK 2500→7500)

 

「よしっ! これであの赤い竜に攻撃が通る!」

「忘れたのか、覇者の一括の効果でバトルは行えない! いくら攻撃力を高めてもバトルを行えなければアルティマヤ・ツィオルキンは破壊できまい!」

「それは……どうかな?」

 

 1枚のカードを魔法・罠ゾーンに差し込む。

 

「赤い竜以外のドラゴンが全滅する、この時を待ってた! 魔法カード、精神同調波!!」

 

 私が発動したカードから、超能力のような波長が流れ出る。

 その波長の向かった先は……暁の赤い竜。

 

「自分フィールドにシンクロモンスターが存在する時、相手モンスター1体を破壊できる! 赤い竜よ、消え去れ!!」

 

 赤い竜は雄叫びを上げ、爆散した。

 

「ぐっ……っ……!」

 

 周囲に大きな衝撃が伝わる。

 次第に爆風は収まり、煙が晴れて……無事に走行を続けている暁のD・ホイールがディスプレイに映った。

 

「暁……、っ!?」

 

 安心したのもつかの間だった。

 

 グウォォォォォ……!! 

 

「なんで……なんで!?」

 

 血の気が引く感覚が全身を過ぎる。

 なんで……赤い竜が破壊されていないの!? 

 

「っ……いや、違う……?」

 

 ディスプレイに再び目を向ける。

 暁のフィールドに存在しているのは1体のシンクロモンスター。

 そして……1枚のカードが発動していた。

 トラップトリックの効果でこのターン、覇者の一括以外の罠カードは発動できない。

 なら、発動しているのは速攻魔法……

 

「過去世……?」

 

 そして、暁のフィールドに存在しているモンスターは……

 

 赤き竜(☆12/DEF 0)

 

「アルティマヤ・ツィオルキンじゃ、ない……?」

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