「‥‥…‥‥だれ?」
いつも通り部室に来たらのこたんとあと知らない女子生徒がソファに座っていた。
「あっ、つぶあん」
「のこたん、この子は?」
「ヌン?さっき訪ねてきたから中に入ってもらったんだよ」
「そ、そうなんだ…‥‥で、君は?」
「私、燕谷千春っていいます。生徒会で会計をしていて…‥‥‥」
「生徒会‥‥‥‥あっ、もしかして虎子のやつに用か?」
あいつ生徒会長でシカ部の部長だから生徒会の用事があってここに来たのか?
「いえ、会長に用は特に‥‥…‥‥」
「そうなの?」
じゃあなんでここに?
はっ、もしかしてシカ部入部希望か!?猫山田は結局入部しなかったけど今度こそ部員を増やせるチャンス!
ここはひとつ、シカ部のアピールをしなきゃ!
「えっと、燕谷さんだっけ?今日はシカ部に来てくれてありがとうな!」
「はぁ…‥‥」
「ところで燕谷さんはシカ部がどんな活動しているか知ってるか?よかったら過去のシカ部の活動を紹介させてもらえないか?」
「……‥‥過去の…‥‥」
お!手応えありだ!このまま推していくぜ!
「シカ部っていろんな滑動していてな、たとえばシカの生態に関する動画を作ったり…日野市におけるシカと宗教の在り方についてリサーチしたり…あとは由緒正しきシカの祭典に出たり…」
いつの間にそんなことしてたのかって思ってるけどしてたんだよ。いづれ話してやるからお楽しみに。
「そのときの部長のこしたんがこちらです」
『シカはシカは~う~つ~く~しく~散る~♪ヌヌヌ~ヌヌ~ヌッヌ~』
「ファッ!?」
ノートPCで虎子が自作の歌を歌っている動画を流すのこたん。
のこたん!いつの間にそんな動画を!?
「ちょ、ちょいのこたん!」
「ヌン?なに?」
「そんな動画いつの間に!?」
「シカコレ出場時の映像を用いてより詳しくシカ部の紹介をしたまで…だが?」
だが?じゃないよ!勝手に撮影して人に見せたら虎子の奴に殺されるぞ!?
「……‥‥‥」
うわっ、燕谷さんめっちゃ見てる!これ以上はまずい!シカ部が変な部活に思われてしまう!話をそらさねば!
「シッ、シカ部の紹介はこれくらいにして!えーとえーと、あ!!お茶!!よければお茶飲んでいって!?」
急いで紅茶を淹れて燕谷さんに差し出す。
「…‥‥‥ありがとうございます‥‥いただきます…」
紅茶を渡してなんとか話を逸らしたぜ。
それにしてもこの子何考えてるのかわかんないや…‥悪そうには見えないんだけど壁を感じるっていうか‥‥‥ここは大人しく様子を見て
「ぬっ、ぬっ」
「バッ!」
のこたんが燕谷さんの周りに大量のシカせんべいを置いている!!
「なにしてんのぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「何って…おもてなし」
「シカのおやつでおもてなすな!!」
それ喜ぶのシカだけだし!!
そんな意味不明なことしたらシカ部の印象が悪くなるだろうが…!
「わ、わりぃ、燕谷さん!うちのシカが変なこと言って…」
「……‥‥」<パァッ…>
「え?????」
えっ?なんか嬉しそうなんだけど…なんで?
俺のお茶には一切反応なかったのに?なんでシカせんべいは嬉しいの??
「お、お腹が空いているのか!?それならお菓子もいっぱいあるぞ!仮面ライダーチョコや仮面ライダーグミとかあるぞ!」
「いえ、結構です‥‥」
あっ‥‥‥えっ‥‥?????????????
シカせんべいよりいいやつだよ?人が食っておいしいやつだよ?
「こんなに喜んでもらえるともてなし甲斐があるなぁ~そうだ!特別にこれもあげよう!」
頭を開けて中から何かを取り出そうとしているのこたん。
って、なんか頭の中からなんか声が聞こえてくるんだけど!?怖いって!!
「ほい」
「草ァ!!」
のこたんが渡したのはその辺にも生えてそうなただの草だった。
「これは日野動物園の飼育係さんからこっそり拝借してきた特別な草…君にもわけてしんぜよう…」
いや草もらって喜ぶ人間がどこに…
「…っ!」
いたーーーーーーーーーーッ!!すっごい目の前にいたーーーーーーーーーーーッ!!そしてすっごい嬉しそうな顔してるしーーーーーーーッ!!
お…おかしい…なんでさっきから俺には反応薄いのにのこたんの方は嬉しそうなんだ!?なんでのこたんにはこんなに懐くの!?俺だって後輩に懐かれたい…!先輩として慕ってほしい…!のこたんに負けたくない!!!
「燕谷さん!漫画読むか!?俺のおすすめは『ボボボーボ・ボーボボ』だ!」
「いえ、結構です‥‥」
「じゃ、じゃあ!特撮見るか!?仮面ライダードライブとかどう!?」
「大丈夫です‥‥」
「ゲ、ゲームするか!?みんなでスマブラやろうぜ!」
「…‥‥‥」
「え、えっと…‥‥」
そこから俺は頑張った。近所の懐かない犬の如く塩対応を続ける後輩を手懐けようと手を替え品を替え頑張った…が
「(惨敗…ッ!圧倒的…ッ惨敗…ッ!)」
シカせんべい埋もれほわほわしている二人を背に悔しがる俺。
もしかして俺…嫌われてる…?オタク男子は嫌だってか?
「そろそろ…失礼します…色々と…ありがとうございました…」
「あ…そう…」
「じゃあね~!また来てね!」
「…!…はい」
そう言って燕谷さんは部室を後にした。
「あの草のよさがわかるとはあやつなかなか見る目がある」
「先輩…威厳…のこたん!どうしたら後輩に慕われるんだ!!お”じ”え”で”く”れ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”!!」
「ヌヌン!?落ち着いてつぶあん!!」
俺は泣きながらのこたんに抱きつく。先輩として慕われたいのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
「はぁ~‥‥‥」
帰り道、ため息をつきながら家に帰る俺。
今日は色々したのに何の成果も得られずだったよ。
「コンビニでプリンでも買って帰ろうっと‥‥」
「あの‥‥」
「ええっ!?」
ふいに声をかけられ振り返るとそこには燕谷さんがいた。
「つ、燕谷さん!?」
「粒井先輩に少しお話があって‥‥‥」
「お、俺に?」
一体なんだ?もしかしてこ、告白か!?いや、俺と付き合うのはマズいって!餡子の奴が抹殺しにくるって!!
「先輩?」
「はっ!わ、わりぃ!それで話とは?」
「はい…‥お話というのは‥‥」
「‥‥……‥‥」
「ど…‥‥‥」
「ど?」
「どうしたら先輩みたいにのこたん先輩と親しくなれるんですか!?」
「‥‥‥‥はい?」
いきなり言われたのはのこたんと親しくなれるかだと?ドユコト?
「えっと…‥どういうことだってばよ?」
「先輩ってのこたん先輩仲良いですよね‥‥?」
「えっ?まぁ、クラスメイトで同じシカ部の部員で世話係だし…‥」
「普通にのこたん先輩とおしゃべりできる先輩が羨ましいです…!」
「そんなに?」
何だこの子?あっ、もしかして‥‥‥‥
「君、もしかしてのこたんのファン的ななにか?」
「!?なんでわかったんですか‥‥?」
「いや、顔見ればわかるし…‥‥」
のこたんのことについて話す時すごく嬉しそうな顔してるからさぁ‥‥‥
「‥‥‥実は私、のこたん先輩の大ファンで‥‥‥」
「そうなの?」
意外、まさかののこたんのファンだったこの子。
まぁ、マスコットキャラみたいで好きな人一人くらいいてもおかしくないか。
「今日部室に来たのはのこたん先輩に会いに来て‥‥知り合いの会長がいるなら緊張せず話せるかと思ったんですけどいなくて…‥そしたら粒井先輩が来て余計話すことができなくて‥‥‥」
「そうだったのか」
だから今日部室に来たのか。一見クールに見えるけどただの人見知りする子だったのね。
「のこたん先輩と普通に会話している先輩が羨ましくてついじっと見ちゃって…‥‥気を悪くしてしまったらすみません……」
「いや、大丈夫だ。そんなこと思ってないから」
「ならよかったです‥‥‥」
ほっとする燕谷さん。のこたんとわちゃわちゃしてた時睨んでたのはそうだったのか‥‥‥
「それで…‥のこたん先輩とどうやったらあんなに親しく話せれるんですか!?」
「あっ、そうだったな。えっと…‥‥特にないかな?自然に普通に話すようになっただけ」
「そ、そんなことで…‥‥!?」
えっ、そんな驚くこと?マジコツとかそんなのないからね?
「先輩‥‥‥いえ、師匠!!」
「し、師匠!?」
いきなり師匠呼びだと!?
「私をのこたん先輩と親しくなれるよう鍛えてください!!」
「は、はぁ!?」
「お願いします!お願いします!」
土下座をして何度も頭を下げる燕谷さん。ちょ、こんな道の真ん中でやめて!!
「わ、わかったからとりあえず頭上げろ!」
「!!弟子にしてくれるんですね!」
「あ、ああ。のこたんと仲良くなれるように俺がお前を鍛えてやろう」
「は、はい!」
「とりあえず今日はもう遅いから帰れ。鍛えるのは明日からにしよう」
「わかりました!では今日は失礼します!」
そう言って立ち去る燕谷さん。
なんか俺弟子できちゃったんだけど?
後半からキャラ変わっちゃったつばめちゃん。
安次郎君と師弟関係になったよ。